日中なのに尺超え連発? サーフアジングには、堤防とは違う「爆発力」がある。 天竜川河口を舞台に、エキスパート渡邉長士さんがダウンショットリグでの攻略法を公開。この記事を読めば、あなたのアジングポイントに「サーフ」の選択肢が加わること間違いなしだ。
写真と文◎伊藤 巧
解説◎渡邉 長士
渡邉 長士(わたなべ・たけし)プロフィール:1981年生まれ。千葉県在住。幼少の頃より釣りに親しむ房総半島の申し子。四季折々のターゲットをねらい、なかでもライトゲームには絶対の自信を持つ。誰にでも好かれるキャラクターで各メディアで活躍中。
サーフアジングが秘める「大アジ」への可能性
「アジングは堤防で手軽に楽しめることから幅広い層に支持されている人気ジャンルです。その一方でほとんどのアングラーがサーフを選択肢に入れていません。実にもったいないことです」
黎明期から千葉県の外房をホームにアジングの魅力を発信する渡邉長士さんは、かれこれ30年前からサーフアジングに取り組んでいる。
「当時からアジは漁港の常夜灯周りでねらうものでしたが、照明さえあればフィールドは関係ないと考えた私は、外房に点在する街路灯の明かりがこぼれているサーフを回りました。すると水深が2mもない浅いサーフで次々とアジが食ってきたんです。サーフでもゲームが成立すると確信してからは、潮位に合わせてランガンにサーフを絡めるようになりました。さらにサーフへの釣行を重ねていくうち、アジがフィッシュイーター化していれば日中でも遜色なく釣れることが分かってきました」
なぜサーフのアジはデカいのか?
渡邉さんがサーフアジングを推す理由は、時期や場所にもよるが大アジとの遭遇率が高いこと。これまでの最大寸は43cm。
なぜサーフで釣れるアジは大きいのか。大型のアジは普段は水深が20mを超える沖の深場に身を寄せており、群れでサーフに回遊してきては浅場にシラス(カタクチイワシの稚魚など)を追い込んで捕食している。深場に隣接していれば、それだけでも期待値は高い。
さらに河川の流れ込みは地形の大きな変化点となっている。淡水系の小魚も含めてベイトフィッシュが群れるので、大アジの格好の餌場になっているのだ。
「日中(デイゲーム)」の爆発力
そんなサーフを知り尽くした渡邉さんが最近惚れ込んだフィールドが静岡県の遠州灘。今年の8月下旬に天竜川河口を訪れ、大アジの入れ掛かりに遭遇した。
「その日は日の出前から天竜川河口に入りました。朝マヅメにショゴやハマチが釣れ盛ったもののアジの回遊はありませんでした。太陽も高くなったので諦めて掛塚灯台横の駐車場に戻ってきたとき、投げサビキ釣りの方が35cmほどあるアジを釣りあげたのです。このタイミングで回遊してきたのか!?と、すかさず沖に遠投すると30~37cmのアジがワンキャストワンヒットになったんです。これほど容易く大アジが釣れ盛るなど初めての経験で、あっという間に尺超えのツ抜けを達成したのです。それから再訪する機会を伺っていました。1ヵ月ほど前まではよく釣れていたそうですが、今回釣れるかどうか…。楽しみですね」
こうして11月3日の午後3時に、渡邉さんは再び天竜川河口の掛塚灯台前に降り立った。
サーフアジング用タックルと仕掛けの選び方
渡邉さんが再訪したのは単純にアジを釣るだけではなく、遠州灘のアングラーにサーフアジングの魅力を知ってもらうのが目的だ。
「遠州灘にはハマチやショゴ、サゴシなどが頻繁に回遊するのでショアジギングが浸透しています。その影響なのかアジ釣りのオーソドックスなスタイルもシーバスやショアジギタックルを用いたジグサビキなのです。大アジが回遊する魅力的なエリアにもかかわらず、本格的なアジングタックルでねらっている人が皆無に近いのです。少なくとも私は見ていません。シーバスタックルでも結果は出ますが、感度抜群のアジングタックルを使って繊細な釣りを展開すれば、アジならではの釣趣を堪能でき、一層スリリングで楽しめます」
タックルについては、キャロやフロート用のアジングロッドで通用する。具体的には10g程度のリグをストレスなくキャストできる8フィート前後のロングモデルがサーフで使いやすい。渡邉さんはダイワ「月下美人MX アジング711ML-S」を使用。
ショアアジングでも通用するダウンショットリグ
サーフアジングといえばフロートやキャロを用いた遠投の釣りがセオリーだが、明るい時間帯に渡邉さんはダウンショットリグを多用する。その理由は、他のリグに比べてボトムへのアクセスが早く、そして飛距離を稼げるから。また、カタクチイワシなどの小魚を捕食している状況ならば、ワームをキビキビとアクションさせられるダウンショットリグが抜群に効くとのこと。
リグの詳細は、フロロカーボン1.5号を70cm取りスイベルでリーダーと接続、下にシンカー3~5号程度を結び、スイベルから10cm下の位置に枝スを出す。枝スの長さは状況に応じて調整するが、20cmなど短めでクイックな動きを演出。枝スに結ぶジグヘッドは軽量な0.5gが基準となる。ワームは月下美人アジングビーム バチコンカスタム ストロング2.3in・2.8inを使用した。
ダウンショットリグの使い方は、シンカーでボトムを感じながら小刻みにシェイクしながら手前に探ったり、中層を泳がせるなどさまざま。重要なのは釣り方や釣り場にシンカーをアジャストさせること。天竜川河口のように沖まで濁っているような場所は飛距離が稼げる5号がベスト。フルキャストすれば手前の濁りを通り越す70m沖すら射程内に入る。
夜間はフロートやキャロも用意
もちろんフロートリグやキャロライナリグも欠かせない。夜になるとアジは流れてくるプランクトンを拾うようになるので、長いハリスで浮遊感が演出できる2つのリグが有効なのだ。特にフロートリグは、遠浅のサーフやアジが上ずっている場面で有効。潮にかませてリグを止められるので、アップテンポな釣りでは反応しなかったアジに口を使わせることができる。また遠州灘のような広大なサーフでありがちな強い横風が吹きつける局面でも、少し沈ませて潮に馴染ませることでラインのテンションをコントロールできる。フロートリグが上層の釣りなのに対して、キャロライナリグはレンジを刻めるので、幅広いレンジを手早く探ることができる。
天竜川河口での実釣では良型連発!
渡邉さんはタックルを準備しているときから沖でナブラが沸いていたので、急いでダウンショットリグをフルキャスト。着底直後にアタリが出て、1投目からアジをキャッチした。やはりアジのナブラだったのだ。掛塚灯台前は天竜川から流れ出た砂が堆積して緩い岬になっており、そのカケアガリにベイトフィッシュが付いているようだ。
撮影している間にナブラはどこかに消えてしまい、日没までダウンショットで広範囲を探ったものの、大アジっぽいバラシが1回あったのみ。シログチやニベ、ソゲなどが暇にならない程度に釣れるにとどまる。夕マヅメにアジの回遊がなかったことから、このまま粘っても厳しいと判断した渡邉さんは、明日の朝マヅメに賭けることにしていったん納竿した。
明るくなって始まる驚きの入れ掛かり劇
翌日は午前4時に釣り開始。まだ暗かったのでキャロの釣りから展開。明るくなってくると濁りが沖に広がっていたので、すぐダウンショットに切り替えて濁りの先にリグを遠投した。すると尺には届かないながらもコンスタントに良型のアジが食ってきた。
そして日差しが照り付ける午前6時半過ぎ、無数のカタクチイワシが打ち上げられた。沖に沸いたナブラに向かってキャストすると次々にアジがヒット。
渡邉さんは「やっぱり天竜川河口はデイゲームだな」と確信したように、その後も1時間ほど入れ掛かりを楽しんだ。そして8時には沖に移動したのかアタリが途絶え、代わって30cm超えのカマスが群れだしたので納竿した。
「アジングタックルでは遠投できないと思われそうですが、ダウンショットリグなら70m沖まで守備範囲です。それでいてタックルが高感度なのでアジの小さなアタリを捉えることができます。釣趣を重んじるアングラーの皆さんにも早くサーフアジングを体験していただきたいですね。ライトなタックルで大アジとのファイトはたまりません。天竜川の河口はゲストも豊富です。大アジは通年ねらえるそうですが、ハイシーズンは6~9月とのこと。大アジ回遊の報を耳にしたら、ぜひシーバスではなくアジングタックルを持って出掛けてください」
今回はシーズンを外したこともあって大アジは拝めなかったが、それでもあらためてポテンシャルの高さを感じる釣行だった。「来夏リトライします!」と渡邉さんは次に訪れるときにはサーフアジングを楽しむ人が増えていることを願いつつ遠州灘をあとにした。
※このページは『つり人 2026年1月号』の記事を再編集したものです。



