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つり人編集部2025年12月27日

モンベル店長が教える釣りの防寒 「レイヤリング」の基本とウエア選び

一言で「防寒対策」といっても、じっと待つ釣りなのか、動き回る釣りなのか、その正解はフィールドやターゲットによって千差万別だ。過酷な冬のフィールドでも集中力を切らさず快適に楽しむためには、状況に合わせてウエアを組み合わせる「レイヤリング(重ね着)」の知識が不可欠となる。そこで今回は、機能的なウエアでアウトドアユーザーから絶大な信頼を得ている「モンベル」ららぽーと柏の葉店長・細矢将太さんを直撃。あらゆる状況に対応できるウエア選びの基礎基本を教えてもらった。

モンベルららぽーと柏の葉店 店長 細矢 将太氏

解説◎細矢 将太

宮城、大阪、高知、広島、茨城などの勤務地を経て、現在はモンベルららぽーと柏
の葉店の店長を務める。最近は子どもを寝かしつけた後、夜な夜な房総の海へ繰り出しアジングを楽しんでいる。

防寒対策に重要なレイヤリングシステムって何?

ウエアをアウターレイヤー、ミドルレイヤー、ベースレイヤーという3層に分けて構成することを「レイヤリング」と言います。各レイヤーには役割が分担されており、組み合わせることであらゆる状況に対応でき、快適に過ごすことができるようになります。

  • アウターレイヤー:風や雨、雪、水飛沫などを防ぐ
  • ミドルレイヤー:保温性を確保したり、ウエア内をドライに保つ
  • ベースレイヤー:汗を素早く吸収拡散し、冷えを防いだり保温性を保つ
モンベルのアウターレイヤー:中間着の保温性を守る防風・防水機能
アウターレイヤー。中間着の保温性が落ちないように風雨などを防ぐ役割

着込めばいいわけではない

また、単純にたくさん着込めばよいというわけではありません。気温や状況に応じて細かく調整できることが重要で、各レイヤーの役割を意識して服を選ぶことが大切です。

着合わせにも注意してください。たとえば、ミドルレイヤーとして保温を重視した分厚いフリースやダウンにすると、着ていると暑く、脱ぐと寒いということになります。荷物や置き場が制限される釣り場では快適とは言い難く、体調を崩す原因にもなりかねません。また、着合わせは動きやすさにも関係があります。フリースのような起毛している衣類を重ねて着ると摩擦抵抗が大きくなり、動きにくくなることもよくあります。

摩擦抵抗が生じるミドルレイヤーの重ね着例
ミドルレイヤーを2枚着ると保温性を高められるが、着合わせには注意したい。フリースのような起毛している服を重ねるのは、摩擦抵抗が大きく動きにくくなる悪い例だ

保温性能を支える素材に注目

ベースレイヤーに使われる素材は吸水性、保温性、速乾性などを重視したポリエステルやウールです。コットンは肌触りがよく吸水性が高いですが、乾きが遅く汗冷えに繋がりやすいです。ミドルレイヤーに使われるのは保温性の高いダウンや化繊綿が多いです。

【ベースレイヤー】

モンベルのベースレイヤー:吸水拡散性で汗冷えを防ぐ
ベースレイヤー。汗を吸収・拡散することで冷えを防ぐ

ポリエステル:モンベル製品で使用されるジオラインは吸水拡散性、速乾性がとても高いため、運動量が多く汗をかく状況でおすすめ。制菌効果でにおいの心配も少ない。

ウール:吸水発熱性や保温性が高く、低温下で長時間活動する場合に使われる。汗をかいても冷えにくい。

ベースレイヤーの厚み

モンベルのスーパーメリノウールには薄手(L.W.)、中厚手(M.W.)、厚手(EXP.)、極厚手(EXP.プラス)と厚みが4種類あります。

寒いからといってとにかく厚いもの、という選び方は早計です。適切な厚みでないとかえって汗をかいてしまい、汗冷えしてしまいます。

汗のかきやすさなど個人差でも変わってきますが、ワカサギ釣りやバードウォッチングのようにじっとし続けるのであればスーパーメリノウールの厚手、スノースポーツのように寒い場所でも運動量があるのであれば中厚手を選ぶ方が多いです。汗をかきやすい方であれば化繊のジオラインもおすすめです。

【ミドルレイヤー】

モンベルのミドルレイヤー:ダウンや化繊綿による保温層の確保
ミドルレイヤー。中間着とも呼ばれ、ここで保温性を確保する

ダウン:保温力が高く、とても軽量かつコンパクトに収納できるため、持ち運びにも便利。ただし、汗や水に濡れてしまうとロフト(かさ高)が損なわれやすく、保温力も落ちてしまうのが弱点。

化繊綿:保温力はダウンに少し劣るものの、汗や水濡れによるロフト変化が少ないためあらゆる状況に対応できる。モンベル製品で使用されるエクセロフトは保温力が高く、圧縮を繰り返してもロフトをキープできる。

濡れに強い化繊綿素材エクセロフトのイメージ

運動量で決める! 冬のおすすめレイヤリング例

釣りのスタイル 想定される運動量 推奨レイヤリング構成
堤防アジングなど (静止時間が長い) ウール(厚手)+ダウン+レインウェア
オカッパリシーバスなど (歩行・キャストが多い) ポリエステル(中厚手)+化繊綿+アルパインウェア
ロックショアなど (ハードな移動・アクション) ポリエステル(中厚手)+化繊綿ベスト+アルパインウェア

運動量:少(堤防でのアジングなど)

アジング向け:保温力重視のレイヤリングセット
あまり汗をかかない釣りではウール、ダウンなどで保温力を重視。

アジングではどちらかといえば、細かいポイント移動が多く、大きく動く時は車で、という状況が多いと思います。また、軽量タックルを使い、繊細なアタリを感じ取るためにキャスト後もあまり動きませんよね。そういった場合、発汗量は少なくじっとしている時間のほうが長いため、ベースレイヤーはウールの厚手を着用します。ミドルレイヤーには薄手のダウン、アウターレイヤーには軽量なレインウエアがおすすめです。

下半身はウールのタイツに動きやすいパンツを組み合わせることが多いですが、冷え込む深夜の場合はダウンパンツとレインパンツを組み合わせています。

冬のアジング下半身レイヤリング:ウールタイツとダウンパンツの併用
下半身はウールのタイツに動きやすいパンツでOK。細矢さんは深夜帯など寒い場合はスペリオダウンパンツにアルパインパンツを組み合わせて着用

運動量:中(オカッパリシーバスなど)

シーバス向け:速乾性と耐久性を両立したレイヤリングセット
多少汗をかく可能性があるならポリエステル素材のベースレイヤーで汗冷えを防ぎつつも、ミドルレイヤーによる保温性能も高めておきたい。

基本的にはアジングに近いレイヤリングです。ただし、アジングよりも歩いて広く移動しますし、重いタックルでフルキャストを繰り返すため、ベースレイヤーは保温力と速乾性を兼ね備えたポリエステルの中厚手を選びます。ミドルレイヤーはストレッチ性がとても重要だと感じており、キャスティングサーマルジャケットというストレッチ性の高い化繊綿ジャケットを愛用しています。多少汗をかいても保温力に影響を及ぼしにくく、綿の量も多すぎず動きやすいです。

また、ポイントまでのアプローチの際に一部ヤブ漕ぎをしたり岩場や護岸で膝をつくことも多いため、上下ともアウターレイヤーには強度の高いアルパインウエアを使用しています。

モンベル パームグローブ:繊細な操作を妨げない指出しタイプ
細矢さん愛用のグローブ:寒い季節は手先もかじかみますが、個人的には厚手のグローブを付けてのキャストやロッドワークは苦手でした。指の感覚を残したい方におすすめなのがパームグローブです。指が全て出ているため動かしやすく、素手の操作感に近いです。よほど寒くない限りこれで充分対応できます。

運動量:多(ロックショアなど)

ロックショア向け:機動力重視のベストスタイル・レイヤリング
汗冷え対策はしっかり行ないつつ、動きやすさも重視。温度調整機能があるとなおよし。

さらに運動量が増える場合はミドルレイヤーで調節していくのがおすすめです。ベースレイヤーはシーバスのときと同様でポリエステルの中厚手、ミドルレイヤーに化繊綿のベストを選びます。ベストタイプにすることで保温力は少し下がりますが、腕周りが動かしやすくなって運動性能が向上します。アウターレイヤーはこちらもハードな場面が多いため、アルパインウエアを使用するとよいです。脇にピットジップがあると脱いだり着たりしなくても温度調整できて非常に便利です。

ダイナアクションパーカのピットジップによる換気機能
ダイナアクションパーカは脇に通気するためのジッパーがあり、アウターを脱がずに温度調整ができる

モンベルの釣り専用アウター

最後にモンベルの釣りに特化したアウターのラインナップを紹介。

シーアングラーインシュレーテッドパーカ&パンツ

シーアングラーインシュレーテッドパーカ:綿入りで保温性に優れた海釣り用アウター
シーアングラーインシュレーテッドパーカは化繊綿入りの海釣り用アウターレイヤー。ライフジャケットを着用していても開け閉めしやすい位置のポケットやD環など釣りに特化した仕様だ。シーアングラーインシュレーテッドパンツも綿入りで擦れに強い生地を使用しておりラフに使える。

シーアングラーレインジャケット&パンツ

シーアングラーレインジャケット:防水透湿性に優れた通年用アウター
耐久性の高い防水透湿生地を使用したシーアングラーレインジャケットシーアングラーレインパンツも通年海釣りで使えるアウターレイヤーだ

※このページは『つり人 2026年1月号』の記事を再編集したものです。

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