春が深まり、渓魚たちが水面を意識し始める季節。フライに飛び出す美しいアマゴの姿を見たくて、伊豆半島を流れる狩野川へ向かった。釣行の模様と、ヤマガブランクスのフライロッド「LINN」を使った感想も紹介したい。
春が深まり、渓魚たちが水面を意識し始める季節。フライに飛び出す美しいアマゴの姿を見たくて、伊豆半島を流れる狩野川へ向かった。釣行の模様と、ヤマガブランクスのフライロッド「LINN」を使った感想も紹介したい。
写真と文◎編集部
今年も渓流の好機が到来
寒暖差が和らぎ、快適な陽気が続くようになると、つり人編集部にはさまざまな釣果情報が届き始める。なかでも勢いを増してくるのが渓流の便りだ。解禁直後はまだ水温が低く、ようやく一尾に出会えたという報告が多かったが、4月後半にもなると「反応が多く、充実した一日になった」という声が目立ってくる。そんな話を耳にすると、こちらも渓流へと足を運びたくなってくる。
新緑が目に鮮やかなこの季節は、水生昆虫の活動も活発になり、渓魚たちの意識も水面へ向かう。せっかくならフライフィッシングで毛バリを浮かべてみたい。里川でのんびりサオを振るのもよし、開けた本流域で大物をねらうのもよし。そう思案していると、編集長が「狩野川がいいよ」と勧めてくれた。伊豆半島を流れる狩野川といえば、下流域で良型のアマゴが釣れることで知られており、今年もルアーで素晴らしい魚が上がっているという情報を見かけたばかりだ。ただ、そうしたグッドコンディションがフライでも釣れてくれるかなと思っていると、「それなら上流の天城峠付近がいい」とのこと。サイズは控えめながら、ヒレの尖った美しいアマゴが釣れるらしい。
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安定のフライパターン、エルクヘアカディス
ゴールデンウイーク直前のタイミングで、狩野川を訪れた。入渓したのは「道の駅天城越え」周辺だ。この辺りは谷沿いに道路が走っているが、高低差があるため川面は道路からは見えにくい。斜面に残る踏み跡を辿って降りていくと、木々に包まれた小渓流が姿を現わした。下流域とはまるで違う雰囲気で美しい。
さっそくロッドを継いでいく。この日使用したのは、ヤマガブランクスのLINN#3の7フィート5インチ。リーダーは5Xの9フィート、ティペットはフロロカーボンの6X(0・6号)を1ヒロ半。いつもは1ヒロから始めるが、有名河川ということもあって魚はスレ気味かもしれないと思い、ドラッグ回避を優先して少し長めに取ってみた。
フライは#14のエルクヘアカディスだ。エルクヘアカディスは、トビケラを模していて、個人的には一番多用している「いつもの」フライパターン。多少ドラッグがかかっても魚が出てくれることが多く、釣り上がりではほぼこのフライ一択だ。もちろんドラッグが掛かりすぎるとミスバイトも多くなるが、もう一つの定番パターンであるパラシュートだと出ないのに、エルクヘアカディスなら出るという経験が何度もある。
また、その特徴を活かして誘いをかけることもできる。小渓流ではリーダーキャストに近い形でねらうような小場所もあるが、そんな時はテンカラのように毛バリを少し動かすと、魚が飛び出してくることもある。不思議なことに、これをパラシュートでやってもうまくいった試しはほとんどない。
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ヤマガならではの曲がりとパワーがフライロッドにも
まずは魚が潜んでいそうなポイントを順に探っていく。入渓地点周辺は淵が点在しており、期待したがドライフライへの反応は皆無だった。釣り上がるにつれ、浅いチャラ瀬が続く区間へ。
エサ釣りやルアーでは底を擦ってしまうような浅場でも、フライなら問題なく流せる。ここでようやく水面が割れた。飛び出してきたのは18cmほどのアマゴだ。
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どうやら狩野川上流域のアマゴは、直線的に水が流れている場所が好みのようで、小さなスポットでもドラッグを掛けずに流せると高確率で反応してくれる。逆に流し方が悪いと一切反応しないあたりが、いかにもアマゴらしくて面白い。
この日使用したフライロッドのLINNは、国産ルアーロッドメーカー・ヤマガブランクスが手がけた意欲作。ヤマガブランクスと言えば「よく曲がり、パワーがあり、粘る」というイメージだが、このテイストがフライロッドにも盛り込まれているように感じられる。
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今年発売のモデルは7フィート5インチという短さで小渓流でも扱いやすい。キャストの際はラインの重さを感じやすく、力を抜いてストップさえしっかり意識すれば気持ちよくラインが伸びていく。普段よりティペットを長くしていたが、フライの着水位置もねらいどおりに決まる。大きなライントラブルもなく快適に遡行できた。それでいてメンディングやキャスト時の細かい操作も行ないやすい。
ヤマガブランクス/LINN
日本の渓流での釣りを快適に楽しむために開発された純国産のフライロッド。ミディアムスローアクションに設定されており、ラインの重みを常に感じながら心地よいキャストが楽しめる。向かい風に負けずにフライをポイントに届けられるパワーを持ち、ロングリーダー&ティペットでも投射性は良好だ。
ラインウエイトは3WTと4WTの2つが設定されており、里川や本流域など開けた川で使いたい全長8フィート1インチに加えて、2025年には7フィート5インチも登場。8フィート1インチモデルが持つ「しなやかさ」と「芯の強さ」をそのままに、軽快さと繊細さをプラスした7フィート5インチモデルは、狭まった空間の多い小規模渓流において、取り回しがしやすく、ピンポイントへ精度のよいキャストができる。
モデル:03-8.1・04-8.1・03-7.5・04-7.5
価格:5万8000円+税
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サイズアップ作戦は成功……?
釣れる魚のサイズは17~18cm前後が中心だったが、昼を過ぎ虫の飛ぶ姿も増えてきたため、フライを#12へサイズアップ。毛バリを大きくして小さいのは掛かりにくくして良型をねらう作戦だ。するとようやく20cmアップの姿を見ることができた。
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さらに釣り上がっていくと、川の脇にわさび田の石垣が現われた。短い距離ながら段々瀬が続き、まさに小渓流でのフライフィッシングといった風情だ。流心に毛バリを投じると、川底から黒い影が浮かび上がり、フライをくわえた。合わせると、グイグイ川底へ引き込む魚に追従してロッドがどんどん曲がっていく。あまりにきれいに曲がるのでどこまで曲げられるんだろう、とロッドを見ながらやり取りしているとフッとテンションが抜けてしまった。
今日一番の手応えだったが、どうやらフッキングできていなかったようだ。その後も18~20cmほどのアマゴが途切れず釣れ続けたが、大粒の雨が降り出したのでロッドをたたんだ。今年初のフライフィッシングだったが、LINNの快適な使い心地もあって、軽快に釣り上がることができた。
ナチュラルドリフトさせれば素直に反応してくれる小渓流のアマゴたちは、どの水系でも可愛らしい存在だ。今年も多彩な渓魚との出会いを求めて、たくさんの渓流を歩きたい。
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※このページは『つり人 2025年7月号』を再編集したものです。