釣り座が固定されがちなエリアトラウトにおいて、釣果を伸ばすために欠かせないルアーローテーション。とくにそれぞれ違う特性を持つ、プラグとスプーンをうまく使い分けることが、釣果を伸ばすコツになる
写真と文◎塚田智
スプーンで仕掛けていく
巻くだけで任意のレンジまで届けられ、特に操作を加えなくてもアクションしてくれるプラグの釣りに対して、リーリングを止めれば沈んでいき、レンジ調整が欠かせないスプーンの釣りはマニュアル的な操作が必要とされる。操作が比較的簡単なプラグからエリアに入門した人からすると、スプーンの出しどころは案外狭いと感じている読者も多いのではないか。 そんななか、国内エリアトラウトシーンの激戦区でもある北関東を拠点に、エリア歴20年超のベテランである白井亮さんは、レギュラーサイズのスプーンをローテーションに組み込むことで、もっと釣果を伸ばすことができると話す。「プラグでも渋いような低活性のとき、1g以下のスプーンで食わせに振った釣りを展開するのも面白いですが、トラウトがそもそも持っているアグレッシブな反応を引き出すために欠かせないのが、2g前後のスプーンです。とくにテクニカルな操作もいらず、初心者の方でもすぐに実践できますよ」 白井さんがテスターを務めるロブ・ルアーはこれまでプラグを中心にラインナップしてきたが、この度エリアトラウト用のスプーンを展開するブランド、「トラウトスプーンズラボ」代表の秋山徹さんとの共同開発によるスプーン、「スプラグ」をリリースした。「スプラグのコンセプトはずばり、“スプーンとプラグをつなげる架け橋”。放流直後や朝イチなど、高活性な場面はもちろん、プラグとのローテーションに組み込むことで真価を発揮するスプーンです」
スプラグ(ロブルアー)
全12 色展開で、ウエイトは1.8g と2.2g。初心者でも引き感が得やすく、またカウントダウンでボトムを取るのもわかりやすい重さだ。「初心者の方も、2g 前後のスプーンから始めてもらえれば、スプーンの使い方の基本が覚えやすいと思って、このウエイト設定にしました」
朝イチはスプーンで決まり!
11月末、群馬県高崎市にある「榛名高原つり堀センター」を訪れた白井さん。榛名山のふもと、標高600mほどに位置する管理釣り場で、隣を流れる車川の沢水を利用しているので透明度の高い水質が特徴だ。放流されている魚はニジマスのみで、平均サイズは25㎝。ルアー、フライエリアには60㎝級のニジマスが放流されることもある。8時のオープンと同時に釣りスタート。白井さんが最初に結んだのはスプラグの2.2gだ。「スプーンのメリットは、高活性の魚を手返しよく釣っていけるところです。この“手返しよく”というのが重要です。朝イチは前日のプレッシャーから解放されたフレッシュな状態なので、正直プラグでも釣れるんですが、釣りがスローになってしまうのがもったいない。ここを飛ばしてプラグから入る方がけっこう多いんですよね。とにかく朝イチはスプーンで間違いないです。そんなにじっくりルアーを見られるわけでもないので、カラーもいちばん目立つ金系からスタートしましょう」と、そんな言葉どおり1投目からヒット。立った状態でサオの高さは胸の位置に水平に構えてからスタートして、水深15㎝くらいの表層をタダ巻きしていく。「釣れる魚から釣っていこうという考え方です。リールはゆっくり巻く必要はありません。使うスプーンにもよるんですけど、スプラグ2.2gの場合はハンドル1秒1回転くらいでOKです。動きが破綻しないくらいのマックスで速いところですね」表層直下の反応が鈍くなってきたら次はレンジを落としていく。カウントダウンでボトムを取り、同じように等速で巻いてくる。カラーローテに移るのではなく、まずはレンジを合わせていくのがキモだ。サオの角度に注意しながら、反応のよいレンジを探っていく。水平(表層付近)・中・下(ボトム付近)とシンプルに3段階くらいを意識してみよう。「レンジが合ったら次にカラーローテです。スプラグは12色展開で、これだけで充分ローテできるカラーがそろっています。金系で食いが鈍くなってきたら、次に金残しと呼ばれるちょっと地味目のカラー。次に表面が蛍光色で、裏はマットなセカンドカラーと、徐々にトーンダウンしていきます。飛び道具的にシルバー系を挟むのもアリです。拡散力のある金に対して、銀は一点で強い光を発するのでリアクション要素が強く、僕はある程度反応が落ち着いたときに使うことが多いですね」
白井さんの基本的なスプラグのカラーローテ。金系から始めて金残し、セカンドカラー、シルバー系などと展開していく
「板厚差0.2㎜」によるアクションの違い
さて、ここまで紹介したことはエリアトラウト基本のきとも言える内容だが、白井さんがぜひ試してほしいというのが、スプラグの「ウエイトローテ」だ。 スプラグには1.8gと2.2gがラインナップされており、外径と曲げ具合はどちらも同じ。しかし板厚が0.2㎜違っており、このわずかな差が微妙なアクションの違いを生んでいる。「どちらも基本はウォブンロールアクションなのですが、2.2gはスプーンにしては引き感が強く、リアを支点にバリバリウォブリングで泳ぎます。朝イチに2.2gを選んだのはそこで、とにかく巻いて高活性の魚を強波動で釣っていくのに適しているからなんです。一方1.8gはウォブルよりもロールが主体で、スローに巻いてもレンジキープしやすく、スレた魚に強いのが特徴です。高活性な状況が落ち着いたら2.2g→1.8gというウエイトローテをするのも効果的ですよ」実際に記者も引かせてもらったのだが、このわずかな差であっても引き感がずいぶん違うなと感じた。それと、1.8gのほうは時おりアクションが破綻しかけるような、チドるようなアクションも見せた。「そう、1.8gはより暴れるようになっているんです。正直ねらっていたわけではないんですが(笑)、低活性の魚に対して仕掛けていく小技が効くのも面白いところです。ちょっとタップを入れてスライドアクションを出すこともできれば、サオを立ててゆっくり巻くと、ウォブルというよりはS字アクションのような、少しイレギュラーな動きが出せます」これは、スプーンの板厚だけでなく、標準装備されたハリの番手とも関係しているようだ。スプラグには白井さんが普段から愛用するヴァンフック製のハリが付いているのだが、それぞれ線径の違うモデルが採用されている。「2.2gはSP‒31Fという中軸のハリが付いています。このためテールに重心が寄り、速めに巻いてもしっかりウォブルするようになっています。サイズも5番というこのサイズのスプーンにしては少し大きめのものが付いています。対して1.8gはSW‒21Fという中細軸のハリで、重心のバランスが偏らないようなセッティングになっています。もちろんこれは標準で付けているだけなので、自分のよく行く釣り場や魚のサイズに応じてアレンジしてみてほしいですね」
スプリットリングとハリを外した状態で真横から撮影。左が1.8g で、右が2.2g。テールに向けて盛り上がっているが、微妙な板厚の違いがわかるだろうか。普通、板厚が厚いスプーンは動きが鈍くなる傾向にあるが、2.2g のほうは重心がテールに寄ったので強いウォブルが出るようになった
この日白井さんが使ったルアー。上からスプラグ2.2g、スプラグ1.8g、バービーF、バービーママF、バービーロング。ローテもこの順番でやっていくが、プラグへの反応が渋くなってきたとき、起爆剤として「繋ぎ」的に使用するスプーンが実に有効だ
【当日使用したタックル】
左/スプラグ 1.8 g用
ロッド:エキセントリック RM1602ML-G(ロブ・ルアー)
リール:19 ヴァンキッシュ C2000SSS(シマノ)ライン:スーパートラウトエリア ES2 0.3 号(バリバス)リーダー:フロロカーボン0.5 号
右/スプラグ 2.2 g用
ロッド:エキセントリック AR-2632M(ロブ・ルアー)
リール:16 ヴァンキッシュ C2000S(シマノ)
ライン:PE0.2 号
リーダー:フロロカーボン0.8 号