テンヤタチウオの釣果、差がつく秘訣は「エサ」にあり!エキスパート三石忍さんが実践する、イワシとサンマの使い分け、釣果を激変させる「味付け」の工夫とは?ライバルに差をつける、ワンランク上のエサ戦略を公開。
テンヤタチウオの釣果、差がつく秘訣は「エサ」にあり!エキスパート三石忍さんが実践する、イワシとサンマの使い分け、釣果を激変させる「味付け」の工夫とは?ライバルに差をつける、ワンランク上のエサ戦略を公開。
三石忍(みついし・しのぶ)年間釣行日数は150~200日。タチウオ、フグ、ヒラメ、カワハギなど海の船釣り全般が得意。入門者へのアドバイスにも定評があり、人気と実力を兼ね備える
写真と文◎可児宗元
協力◎マルキユー
大阪湾のテンヤタチウオ
今や全国的な人気を誇る船からのテンヤタチウオ釣り。その発祥の地である大阪湾では、今年もいよいよ秋の数釣りシーズンに突入した。 この時期になると関西へ出向く三石さん。9月上旬のこの日も10年来通い続ける泉佐野の上丸へやってきた。早朝5時、港を出た船は関空との連絡橋をくぐり、南へ下りながら大阪湾南端部の海域をめざす。友ケ島と淡路島の間にある「洲本沖」がこの日の漁場だ。
ここは水深が100m前後あり、数もサイズもねらえるテンヤタチウオの定番ポイント。当日の朝に釣りをスタートした場所は、水深が100mを少し切るくらい。水深50m前後から上にはベイトらしき反応がびっしり見える。
さっそく釣り開始。三石さんはサンマを巻いたテンヤを軽くキャストしてまずは底まで下ろすと、上へ上へとタチウオのタナを探っていった。電動リールの巻き上げスピードは『3』(シマノ・フォースマスター400)。この時、50cm巻き上げるたびにサオを軽くシャクってテンヤの動きにアピールを加える。
すると85mあたりに来たところでコンッとサオ先を小さく叩くようなアタリ。ここでアワセを入れることなく、慌てず上へ上へと誘い続ける。すると再度コツっと小さなアタリが来て数秒後、サオ先からフワッとテンションが抜けた。サオ先を上げつつ素早くリールのハンドルを巻くと、ギュンッと勢いよく舞い込み、続けて直下に力強く引き込まれた。最初にサオ先がフワッとなったのは、テンヤを追いかけてきたタチウオが下からエサをくわえて持ち上げたから。「食い上げ」のアタリだ。
電動リールの中速で巻き上げを開始すると、掛かった魚が時折り力いっぱい締め込みながら上がってくる。あとは水面近くに光る魚体がのぞいたら、ラインを持ってテンションを緩めないまま素早く船上へ抜き上げる。この日の朝は高活性らしく、船上ではあちこちで銀色の魚体が舞い込むシーンが見られた。
釣果を伸ばすエサへのこだわり3選
タチウオがテンヤにガンガンアタックしてくるうれしい状況となったが、食いがよいぶん、エサも頻繁な交換が必要になってくる。
イワシとサンマの使いこなし
大阪湾で使用するエサは大きく2種類。まず定番で万能なのがイワシだ。釣り船に置いている場合がほとんどで、上丸の場合は使い放題である。そしてもうひとつの定番がサンマ。これは10年ほど前に、テンヤタチウオのトーナメントが始まってから競技者の間で広まった経緯があり、イワシに比べて身も皮もしっかりしていることからエサ持ちが圧倒的によい。タチウオが頻繁に当たってくる際に有効なエサとなっている。ちなみに東京湾の場合は、サンマの使用が一般的に禁止されているので注意してほしい。
この日の三石さんも朝からサンマを多用。あらかじめ『軽締めアミノリキッド』に3時間以上浸けたものに、『アミノ酸α』、エビフレーバーの『ウマミパワー』、『旨〆ソルト』を振りかけてしっかりと「味付け」したものを使用していた。
もうひとつのイワシは、食いが渋い時などにも比較的有効なオールマイティな存在。同時にサンマほど身持ちがよくないので、人によっては塩などで締めておく。三石さんの場合は「塩で締めるとカチッと締まり過ぎてしまう感触があるので、私はもう少しフレッシュ感をキープしたい。そこで塩の代わりに『軽締めアミノリキッド』を使用しています」とのこと。この日もその下処理を施したイワシエサを準備していた。
エビフレーバーを愛用する理由
朝から活発な反応に沸いたこの日の釣りだが、そうした反応も徐々に落ち着いていき、やがて渋い時間帯が多くなるのはこの釣りによくあること。ところがこの時の状況は正反対。時間の経過とともにアタリが出るタナがどんどん上がっていき、テンヤを下ろしていくと30m付近でフッと軽くなって、合わせるとグンッ!と乗るという展開になった。サイズ的には活性のいい小型の群れが沸いているような状況だったが、その中に時折り良型もまじる。最終的にはなんと水深10m前後でもアタリが出るようになった。
そんな中、三石さんが釣りあげたタチウオが首を振って口から何かを吐き出した。正体は小さなアミエビだった。
「今も魚探にびっしり反応が出ているんですけど、タチウオってアミエビなどを捕食してることもけっこうあるんですよ。大阪湾は特に多いんですけど、東京湾でも時期によっては結構あります。その時に捕食されているエサに合わせるっていうのは釣りの基本ですよね。だから私はいつもエビフレーバーの『ウマミパワー』をエサに爆掛けしているんです」とニヤリ。こうした観察や工夫も釣りを面白くしてくれる。
状態のよいエサにこまめに交換
頻繁にアタリを得られたこの日の釣りだったが、それでも釣果には結構な差が出るもの。魚の追いがよいタナを見つけることや、その時の状況に合ったエサやタックルのチョイス、誘いの掛け方など、さまざまな要素で釣果は変わってくる。
それこそがテンヤタチウオ釣りの醍醐味だが、「その中でも誰でもすぐに実践できて、一番大事なのはエサ。エサの状態によって食い込みの強さや早さは如実に変わってきます。さっきよりアタリが減ったな……という時は、テンヤにエサが残っているか、エサが変な姿勢になっていないかをまずチェックしますが、エサの味が抜けちゃっていることも実は多い。そういう時はまだエサが残っていたとしても、しっかり味の付いたベストな状態のものに交換すると釣果がアップします」と三石さん。
こうして終始アタリが続いたおかげでこの日の船はクーラー満タンの人が続出。午前中で納竿しての早上がりとなった。秋の超高活性時期を満喫できた最高の1日だったが、大阪湾のテンヤタチウオ釣りはこれからがハイシーズン。ぜひ遊びに行ってみてほしい。
※このページは『つり人 2025年11月号』掲載の記事を再編集したものです。



