釣って、焼いて、味わう。北海道のアユ釣り旅は、キャンプと組み合わせるのが最高の贅沢!釣ったばかりの新鮮なアユを炭火で味わい、時間を気にせず釣り三昧。そんな至福の「アユ釣りキャンプ」の魅力と、道内のアユ釣り河川情報をお届け。
北海道のアユ釣り旅は、キャンプと組み合わせるのが最高の贅沢!釣ったばかりの新鮮なアユを炭火で味わい、時間を気にせず釣り三昧。そんな至福の「アユ釣りキャンプ」の魅力と、道内のアユ釣り河川情報をお届け。
Text by Ryo Kobayashi
Photo by Hiroki Hirasawa
(North Angler’s)
North Angler’sとは?:北海道での釣りを満喫するための情報誌。北海道の自然を体感するキャンプの情報や、フィールドを守るための環境問題にも光を当て、多角的な視点からアウトドアライフを提案している。誌面と連動したウェブサイト『つり人オンライン』での記事展開に加え、好評放送中の『ノースアングラーズTV』や公式動画チャンネルである『釣り人チャンネル』を通じても、北海道の釣りの魅力を発信している。
北海道内アユ釣り事情
本州、四国、九州を問わず、夏の釣りものではトップクラスに人気のあるアユの友釣りだが、じつは北海道ではどちらかといえばマイナーなジャンルだ。これは全道的に海釣り人気が高いことに加え、淡水ではアメマス、ニジマス、ヤマメ、オショロコマ、イトウ、ブラウントラウト、ヒメマスなどのトラウト類をねらえる魅力的なフィールドがそこかしこにあるからだろう。アユの魚影が多い河川は、そのほとんどが道南と道央エリアということもあり、「北海道にアユはいない」と誤解している道産子も結構いる。
ただし、北海道がアユ釣りファンにとって魅力のない環境というわけでは決してない。素晴らしい川があり、釣果は数、サイズのどちらも本州の名川と比べても遜色ない。短い夏に急成長すべく、石に付着した藻類を懸命に食むのでヘラブナやカラフトマスのような背中が盛り上がった幅広の体形になる個体も見られる。そして、そんな魚たちは良質の藻類が付いた石をナワバリとして守る習性も特に強いので、ナワバリ争いを利用する友釣りの最高のターゲットになるわけだ。
また、釣れるアユの食味も総じてレベルが高く、朱太川が2016年の『清流めぐり利き鮎会』でグランプリを獲得したのは記憶に新しい。その証拠に近年は、アユ釣りを始める人がジワジワと増えていると感じる。

北海道でのアユ釣りシーズン
北海道では内水面漁業調整規則により、アユ釣りができる期間は7月1日から9月15日に定められている(禁止期間は4月1日〜6月30日、9月16日〜10月31日)。関東以南には5月に開幕し、10~11月までロングランで楽しめる川もあるので、それらと比較すると北海道のアユ釣りシーズンは半分にも満たない。とはいえ、短い夏に集中してサオをだすのも季節限定のプレミア感があり、1回の釣行を大切にする分、中身が濃いものになる。自分はシーズン終了後、しばし気が抜けたような状態、いわば「アユロス」になる(笑)。
季節ごとにいろいろな釣りを楽しむが、そんなふうになるのはアユ釣りだけだ。なお、7月1日から好釣果を期待できる川が多いが、水温が低い一部の河川や流程が長い中~大河川の上流域などは、シーズン序盤はまだ魚影が少なかったり、魚が育ちきってなかったりして厳しいときもある。また、その年、川によっても異なるが、北海道のアユはお盆過ぎから魚体にサビが入り、早い個体は8月20日前後から落ち始める。それゆえ、本来の最盛期は真夏の一番暑い時季、7月中旬~8月中旬だ。

近年人気のアユ釣り河川
道内でアユ釣り人気が高いのは津軽海峡や日本海に注ぐ河川だ。そして、北海道は管理漁協のない川が多いが下記の河川、余市川、朱太川、後志利別川、馬場川、太櫓川、二俣川、濁川、遊楽部川はアユの漁業権を設定している。また、厚沢部川、天の川、知内川は地元有志が資源増殖や釣り場造成を行なっていて、協賛金や協力金という形で任意の遊漁券を販売している。
近年、特に人気がある河川は朱太川、後志利別川、厚沢部川、天の川。いずれも魚影の濃さは甲乙付け難く、解禁当初や最盛期の絶好調な日なら束釣りも充分ねらえる。アユの北限地とされる北海道は夏が短く、冬の海水温も低いのでアユにとって厳しい環境と推測されるが、ここ数年人気河川の多くは好調が続いている。秋に台風や爆弾低気圧による大きな出水がなく、孵化や稚魚の成長が順調で、冬も暖冬傾向。温暖化がプラスに作用しているのかもしれない。

また、アユ釣りの名川として古くから知名度が高い道南の知内川、道央の尻別川はかつて不調に陥っていたが、どちらもここ数年は復調、往年の活気が戻ってきている。尻別川は札幌から約2時間とアクセスがよく、河川規模が大きい。良型を豪快にねらえるフィールドは北海道では貴重なのでうれしい限りだ。
アユ釣り人口が少ないので、いずれの川も本州の人気河川に比べたら釣り場は空いている。本州では空いている釣り場の表現として「一人一瀬」という言葉があるが、北海道では1人で瀬を3つ4つ探れることもよくある。
管理漁協のない小河川も面白い。メジャー河川と異なり手付かずのポイントが多いので、細流で思い掛けず入れ掛かりになることも珍しくない。必然的に7m以下の短ザオでの釣りになるが、大河川の速く太い流れに立ち込むのが厳しくなったシニア、女性や子どものほか、ビギナーのデビュー戦の場としてもちょうどいいと思う。北海道は情報が少ない分、新しい釣り場を開拓する楽しみもある。ただ、その際は北海道には魚種、時期を問わず通年禁漁の保護水面があるので確認しておきたい。
なお、アユの友釣りで必要なオトリは私が知る限り、札幌、余市、黒松内、厚沢部、上ノ国に販売店があるが、川によっては立ち寄るのに不便だったりする。また、苦労して用意した虎の子の1尾を逃がしてしまったり、開始早々にマス類に食われてしまったり、不測の事態も起こりえる。

北海道アユ釣りキャンプのススメ
私は札幌に住んでいるので、道南の川に遠征するときはアユ釣りとキャンプを組み合わせて楽しむことが多い。魅力はいろいろあるが、キャンプをする一番大きな理由は「美味しくアユを食べたい!」から。アユは鮮度が落ちやすいので、釣れたその日に食べるのがベター。しかしながら、たとえば道南で1泊2日の釣行なら、帰宅して夕飯の食卓に並べるべく逆算すると、最終日は昼過ぎには納竿することになる。片道3~5時間掛けて道南まで行き、1日半しかサオをだせないのはあまりにももったいないと感じる。しかも、北海道の川は水温が低く、水温が上がる午後のほうがよく釣れる傾向がある。一番いい時間帯を捨てて帰路に就くのは、ナンセンスな行為だろう。
ちなみに、友釣りはハリ掛かりする場所がまちまちで、腹、頭、エラなどに掛かった個体は死ぬ確率が高い。すぐに食べてしまったほうがいい魚が一定数出るので、キャンプで食べるのは合理的でもある。しかも、キャンプなら炭火で焼ける。私はマンション住まいで炭火が困難なので、この点にも強く惹かれる。アユはやっぱり炭火でじっくりと時間を掛けて焼き、頭から丸ごといただくのが旨い。

また、初日に釣れたアユは食べる分をのぞきオトリ缶や引き舟に生かしておくのだが、川に沈めておくと夜中に増水して流されたり、盗難などのリスクがある。その点、場内に小川や池などの生かしておける水場があるキャンプ場も結構あって便利だ。
車中泊することもあるが、アユ釣りの遠征は道具が多く、濡れたウエア類なども車中にある。寝苦しいくらい暑い日もあるので、テントを設営するほうが自分はぐっすり眠れる。ただ、設営と撤収にできるだけ時間を掛けたくないので、ワンタッチテントを愛用している。
北海道は無料、または格安のキャンプ場が充実していて、最低限の設備があればOKな私のような釣りキャンプ好きには最高の環境だ。低価格で利用できるバンガローやロッジを備えるキャンプ場もあるので、いろいろなスタイルで楽しめるのもいい。


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