大漁は釣り人の夢ですが、その後に待っているのが「大量の魚の下処理・捌き」という現実。疲れた体にムチを打って台所に立つのは正直しんどい……そう感じることも多いのではないでしょうか? しかし、適切なツールを使えば、あの面倒な作業が驚くほど楽になります。さらに、保存アイテムを駆使すれば「お店レベル」の味に昇華させ、長期間楽しむことが可能です。 今回は、釣りメディア編集部員が長年愛用し、「これがないと困る」と断言する、おすすめの調理グッズ&保存アイテムを紹介します。
写真と文◎つり人オンライン編集部・渡辺
面倒な魚の下処理・捌きが劇的に楽になる便利グッズ
魚を捌く時間は、道具ひとつで劇的に短縮できます。まずは、編集部が「効率」と「使いやすさ」で選び抜いた愛用アイテムを紹介します。
和平フレイズ「うろこ取り 味道」
数あるうろこ取りを試した中で、最も実用的だと感じたのが、真鍮(しんちゅう)製のモデルです。
最大の特徴は、素材特有のずっしりとした「重み」にあります。軽いステンレス製はマダイなどの硬いうろこ相手だとどうしても力が必要になります。対して真鍮製は、素材自体の重さにより、あまり力を入れなくてもバリバリとうろこを取り除いてくれます。ヒラメのような特殊なうろこを持つ魚種を除けば、小型魚から大型魚までこれ一本で幅広く対応可能なのも魅力と言えるでしょう。
貝印 キッチンはさみSELECT100
キッチンバサミは、魚の腹を開いて内臓を処理する時や、小型魚の頭を落とす時など、包丁の代わりとして使うことで作業を効率化してくれる便利なアイテムです。
愛用している貝印の「キッチンはさみ SELECT100」は、約3mmという厚刃が特徴。マダイなどの骨が太い魚でも、骨まで包丁で切り開いてから関節を狙えば、刃こぼれすることなく断ち切るパワーがあります。また、刃を取り外して洗えるセパレート構造のため、細かい汚れまで落とせて錆びにくいのも強みです。
筆者は釣行時もエサのカット用などに持参していますが、6年近くハードに使っても切れ味が大きく鈍らない耐久性も魅力。キッチンバサミとしてはやや高価ですが、「買ってよかった」と思えるアイテムです。
東和コーポレーション 黒潮(水産・漁業用手袋)
魚の鋭いヒレやトゲ、エラはまさに凶器です。素手での作業は手荒れや怪我のもとですが、この手袋があれば、鋭いトゲの貫通ダメージ以外は防げるのが魅力です。うろこ取りなどが滑って手に当たっても怪我を防げるため、思い切って作業ができ、結果として効率化にも繋がる面もあります。
ただし、使用後は洗剤を使って、手を洗うように何度かこすり洗いをしないと激臭を放つことになるので、お手入れだけは念入りに行いましょう。
早川工業 PP魚の内臓取り ササラ
特に中型魚以上の血合い掃除を効率化できるアイテムです。 血合いを残すと生臭さの原因になるため、味にこだわるなら必須です。ただし、構造上汚れが溜まりやすいので、こちらも使用後はしっかり洗浄・乾燥させないと臭くなる点だけご注意を。
朝日産業 骨抜き達人3
釣果を料理する際、地味ながら非常に面倒な作業と言えば血合い骨の「骨抜き」です。「骨抜き達人Ⅲ」は、少々高価ではありますが、この作業を効率化してくれる便利なアイテム。
一般的な毛抜き型と決定的に違うのは、バネを内蔵した「ペンチ構造」を採用している点です。グリップ力が非常に高く、中大型魚の太い骨もしっかり掴んでくれるため、骨抜きの作業時間が大幅に短縮されます。特に身が締まって骨が抜けにくい釣りたての魚を捌く際には、その恩恵を強く感じられるでしょう。
釣った魚がお店の味に!旨みを引き出す保存アイテム
たくさん釣れた魚も、ただ冷凍するだけではもったいない。水分コントロールと真空保存を駆使すれば、お刺し身で美味しく食べられる期間を大幅に伸ばすことが可能です。
オカモト ピチットシート
釣った魚を食べ続けて気付いたこと、それは「水分をコントロールすることでより美味しくなる」という事実です。このオカモト「ピチットシート」は、魚の余分な水分や生臭みを取り除く脱水シートで、使い方は下処理した魚を包むだけと非常に簡単。吸水力の違いでいくつか種類がありますが、筆者は汎用性の高い「レギュラー」タイプを選び、包む時間で脱水加減を調整しています。
定番の使い方は、やはり「一夜干し」でしょう。塩水処理した魚を一晩包んで冷蔵庫に入れておくだけで、凝縮された旨味を楽しめます。また、スーパーで買った刺身も、食べる前に1時間ほど包めば余分なドリップが抜け、ワンランク上の味わいに変化します。
さらに釣り人として重宝するのが、アマダイやカマスといった水分量の多い魚への活用です。これらは身が緩みやすく鮮度落ちも早い魚種ですが、サクの状態で数時間脱水処理をしてから保存することで、翌日以降も締まった食感の刺身を楽しめます。
また、板前に教わった応用テクニックとして、釣りたてで身が硬い白身魚にあえて使用する「時短熟成」も効果的です。水分を強制的に抜くことで旨味成分が相対的に凝縮されるため、数日寝かせたような旨味を短時間で引き出すことができます。
ユニ・チャーム フレッシュマスター
ユニ・チャームの「フレッシュマスター」も、釣った魚を美味しく保存するために重宝するアイテムです。 魚を保存する際はキッチンペーパーに包む方法が一般的ですが、通常のペーパーは吸い取った水分(ドリップ)で濡れたままになりがちです。それが魚に触れ続けることは、身質の劣化や雑菌が繁殖する原因となってしまいます。
しかし、こちらのシートは食材に触れる面が特殊なサラサラとした素材でできており、魚の身に触れる部分は常にドライな状態をキープ。余計な水分やドリップを一方的に吸収することで、鮮度を高く保つことができます。
特に効果を感じるのが、カツオやマグロなどの足の早い赤身魚に使用した際です。変色が明らかに抑えられ、見た目の美しさが長持ちします。消耗品としては少々値が張りますが、その鮮度保持能力を知れば手放せなくなるはずです。
貝印 真空ポンプ
魚を美味しく、かつ長期的に保存したいなら「真空パック」の導入がおすすめです。鮮度の大敵である「酸化」を強力に防いでくれます。
中でもコストパフォーマンス最強なのが、貝印の真空ポンプシリーズです。本格的な機械は高価で場所を取りますが、貝印のポンプ式なら非常に安価かつコンパクト。袋のバルブにポンプを当てて手動で空気を抜くだけで、簡単に真空状態が作れます。
また、真空保存する際も、高機能シートとの「合わせ技」がおすすめ。釣った魚を「フレッシュマスター」で包み、これで真空パックしてチルド室へ入れておけば、刺身で食べられる期間が驚くほど伸びます。
一方、冷凍保存の場合は「ピチットシート」で包んでから真空パックするのもおすすめ。真空による「冷凍焼け防止」と、シートによる「解凍時のドリップ吸収」の相乗効果で、解凍した魚が水っぽくならず、劣化を防いだまま保存できます。

