アンダー1gの極小リグ偏重が主流となる現在のアジングシーン。しかし、それは無数にあるアプローチの一部に過ぎない。本記事ではパイオニアの加来匠さんと丹羽喜嗣さんが対談。アジングの面白さと奥深さについて語った。

語り◎加来匠・丹羽喜嗣
写真◎松本賢治・月刊つり人編集部/まとめ◎月刊つり人編集部
加来匠(かく・たくみ):LEONの愛称の元、ライトゲームフィッシング界の先陣を切ってきたパイオニア。日々斬新な釣法とそれに伴う釣り具の研究に余念がない。
丹羽喜嗣(にわ・よしつぐ):ライトソルトが盛んな瀬戸内で腕を磨き、現在は愛媛県の愛南町に移住。地形の変化や潮の変化などの情報をもとに緻密に計算して攻略する理論派アングラー。
90年代後半に同時多発的に火がついたアジング
―おふたりとも瀬戸内海をメインにアジングをされてきたと思います。そもそもの原点を聞かせてください。
加来 アジングという名前の命名者、という立場を一応取らせてもらっているんです。正確には僕が作ったというわけじゃないんですが、綴りをAJINGにするのかAZINGにするのか考えて、メディアに最初に載せたのは僕だったかなと。ただ、ルアーでアジを釣ることに関しては、僕より早くからやっていた方もいて。ハルシオンシステムの楠ノ瀬直樹さんは本当に早かった。外房でメタルジグを投げて大きなアジを釣っていましたよ。
僕自身のルアーフィッシングの原点はメバルです。渓流トラウト用の小さいプラグを海で投げたらメバルが釣れると気づいたのが1990年代初頭かな。95年を過ぎた頃から本格的になって、メバルを釣っているうちにアジも混じってくる。そのアジを専門的にねらうにはどうすればいいかという話が仲間内で出てきて、キャロシンカーをみんなで手作りして試したりしていた。メディアに発表したのが2001年ごろ。広島の雑誌でアジングという名前が初めて出て、あとはご存知の通りです。
丹羽 私が釣りを始めたのは20歳から、福山大学で生命工学を学んでいた頃です。1998年かな。しまなみ海道の因島にある研究室に配属されて、先輩に釣りを教えてもらったのがきっかけ。スプリットショットにワームをちょん掛けするメバル釣りで、デビュー戦でいきなり20cmオーバーが3匹釣れたんですよ。これで完全にハマってしまいまして。
もともと生き物全般が異常なほど好きで、興味があると突き進んでしまうんです。やっているうちに同じパターンが通用しなくなって、先輩だけが釣れて自分には釣れないという不可解な現象が起きる。これはいかんと、研究そっちのけで毎晩釣りに行くようになりました(笑)。
加来 それは研究の対象が変わっただけで、もともと研究者気質なんですよ、丹羽さんは。
丹羽 アジとの出会いは、メバルねらいで仕掛けを回収している時に食ってきたのが最初です。12月、因島の鏡浦というポイントで。ただ当時の私にとってアジは食べるための魚で、しばらくはゲスト扱いでした。でもある時、本気でねらったら全然釣れなかった。その「あれ?」という体験から、ラインの管理と張り方で釣れる魚を選べるんだということに気づき始めたんです。それが今のスタイルの原型です。
加来 おかしなもんで、1990年代後半に全国で同時多発的に火がついたんですよ。誰が始めたというよりも、自然に始まったんだよね。その前提にあったのがメバリング。スプリットショットでメバルを釣っていたからこそアジにも気づけた。アジングという四文字までついて、一気に世の中に広まった感じだよね。
瀬戸内海が育てた流れを読む力
―瀬戸内海でアジングを続けてきたことで、技術的に身についたものはありますか。
丹羽 瀬戸内のアングラーが遠征先でよく思い知らされるのが、「流れがないから釣れない」という感覚です。瀬戸内はとにかくガンガンに潮が流れるんです。それが当たり前の環境で育つと、流れのないところでは魚は釣れないという思い込みができてしまう。私も初めて愛媛に遠征した時、流れのあるところを探して回ったら、むしろそこが釣れなかった(笑)。スタートすら切れない状態でした。
ただ逆に言うと、あの複雑な流れの中で魚をピンで捉える判断を繰り返してきたことで、ラインコントロールと魚の居場所の読み方が徹底的に磨かれたんです。その経験があったからこそ、他のフィールドでも慣れるのが早かった。瀬戸内のアングラーが強いと言われる理由は、そこだと思っています。
20cmを超えるアジはフィッシュイーター
加来 僕がやっているのは、世間から見るとおかしな釣り方に見えるらしいんですよ(笑)。アジング対決の番組を組んでいただいたのに、メタルジグしか持ち出さなかったとか。でもそれは変わったことじゃないんだよね。アジはフィッシュイーターなんですよ。20cmを超えてくると、かなりフィッシュイーターの要素が色濃くなってくる。トップウォータープラグでも釣れるし、ミノーでも釣れる。条件次第で巻いて釣ったり、落として釣ったり、ワインドかけてリアクションで釣ったりしているだけで、実はルアーの基本なんです。
丹羽 その境地に至る感覚、すごくわかります。釣りを突き詰めていくと、余白とか余韻という言葉が生まれてくるんですよ。じゃあこれもいけるじゃん、この解釈も間違いじゃないじゃん、という新しい視点が開けてくる。加来さんの言葉は、その領域に到達した人の言葉だと思います。
軽さだけじゃないアジングの面白さ
―昨今のアジング人気 をおふたりはどう見ていますか。
加来 正直なところ、ライトゲームといえばアジングが8割みたいな世の中になっちゃったんで、嬉しいような寂しいような。命名者の立場を取らせていただいた僕としては、ちょっと言っておきたいんだけど、闇雲に軽い、小さい、細いが正義っていう方向にばかりこの10年で急速に向かっているのがね、とっても悲しい。アンダー1gの釣りを広めたのは僕自身なんです。20数年前、堤防の内側に尺アジが溜まっていて何を投げても食わなかった時、どんどん軽くしていったら0.3gで釣れた。でもそれはたくさんある釣り方のごく一部であり、一番端っこ。それがアジングの王道だと言われるのは違うんですよ。
博多アジミーティングで140人を前に質問したことがあって、3g以上のジグヘッドを持ってきている人はいますか? と聞いたら全員ゼロ。2.5gと聞いても2人だけ。あとは全員1.5g以下でした。もう20年間ずっと同じ質問をされるんですよ、「そんなに重いもので釣れますか」って。そんなに重いと言われる重さが3gで。僕は40gのメタルジグでアジを釣っていますから。
丹羽 同じく悲しいです。そのごく一部の釣り方が面白いと感じてやってくださる方が増えることは否定しません。でもアジングにはもっと楽しい展開があるし、そこにウエイトの概念を無理やり当てはめることで可能性を潰してほしくない。通り一辺倒になると、出会える魚の質は大きく落ちます。
わずか3mの差で40cmオーバーが釣れる
加来 わかりやすい例を話しましょう。山口県の上関の有名な堤防で、みんながジグヘッド単体やキャロで常夜灯の下の22、23cmのアジをボコボコ釣っている。でもそこより手前の暗いところで、2.5gのジグヘッドに3~4インチのワームをつけて、PEの0.6号にリーダー3号でフルキャスト。着水と同時に早巻き。3匹ずつだけ釣ってさっと帰ったけど、釣れたのは全部40cmオーバー。
他にも愛媛県の50cm台が釣れる桟橋で、先行者から「1.2gを表層からゆっくり巻いたら尺アジ連発」と教えてもらったこともある。でも僕は50cmを釣りに来ているわけですよ。1gをブレイクの壁沿いに落として、持ち上げて落とすを繰り返して待つだけで釣れる。みんなが25~30cmでワーキャー言っている立ち位置からわずか3mしか違わないんだぜ。そんな夢やロマンがある釣りなの。
丹羽 窮屈すぎるんですよ、今は。軽さに対して妙な宗教感が出ている雰囲気があります。もっと自由に、自分に合う釣りをしてほしい。その魚を楽しむための手段を自ら制限したら、釣りの質も落ちるし、食の質も落ちます。
アジの食味について
―丹羽さんは今、愛媛県の愛南町で宿と遊漁船を営んでいるそうですが、食としてのアジという観点から話を聞かせ てください。
丹羽 私の場合、美味しいものを食べてもらうというゴールが釣りの根底にあって、その手段としてルアーフィッシングがあります。アジングがよく釣れる時もあればエサのほうが圧倒的に強い場合もあって、その時々で魚を楽しむことを大切にしています。その根源には、愛南町のアジが強烈に美味しいという背景があるんです。
御荘湾の間口周辺で育つアジが別格の理由
―愛南のアジはどこで釣れても美味しいんですか。
丹羽 愛南町全体ではなく、御荘湾の間口周辺にいるアジだけです。豊後水道の水と黒潮と宇和島由来の3つの水が混ざる、水温変動が激しい場所で育ったアジは別格です。天然と言いつつ、養殖かと思うほどいいボディーをしていて、外側にいるアジはほっそりしているのに、そこで一潮過ごすだけでむっちりとした体型に育つ。
加来 御荘湾の奥で釣ったアジを食べたら美味しくなかった。それぐらい違うんだよ、アジって。同じ湾の中でも釣れた場所で違う。
美味しいアジの食べ方と料理の考え方
―美味しいアジは、どう食べるのが一番いいんでしょう。
丹羽 本当に美味しい魚は刺身が一番です。香り、食感、味の三要素がそろった時、人は咀嚼しながら「うん」と頷く。一つでも欠けると「ん?」と首をかしげる。美味しくないものを美味しくして食べるのが料理だと思っていて、三要素のどれかが欠けているアジには、その欠けを補う料理を当てていく。脂はあるけど口の中でとろける感じがないなら焼き料理や天ぷら、脂がなければごま油などを添加する塩ユッケは定番ですよね。そして三つの条件をどれも満たさないアジには……、問答無用でアジフライです(笑)。どんなアジでも美味しくできる料理ですね。
加来 壱岐の50cmアジを塩焼きで食べたことがあるけど、皮の下1枚ぐらいまでは美味しかったけどあとはパサパサだった。
丹羽 そう、長崎は釣れる時期が限られていて、産卵のために集結しているようなアジが多い。あのタイプは仕立て方を頑張らないととびきり美味しくするのは難しいですね。美味しいアジの指標は、40cm以下なら指5本の身幅があるアジが最高クラスです。刺身を食べて皆さんが頷くのは30cmから上で、35cmぐらいまでが身質も香りも最高ですね。
釣りは不定形。アジングはもっと自由であってほしい
―最後に、アジングがこれからどう あってほしいか聞かせてください。
丹羽 アジングというのは、あらゆる釣りの接着剤だと思っています。アジングでの経験が他の釣りに適用される。軽量リグを扱う今のスタンダードな釣りは見かけによらず難しくて、その練習量が他のジャンルでも生きてくる。アジングをやっていてよかったなと言ってもらえる未来になるように活動しています。食の観点からも、釣り人の間口を広げる手段としても、アジングはまだまだ可能性があると思っています。
加来 僕はね、誰もが行く釣り場でアジの大小を釣り分ける方法と、みんなが行かないようなフィールドで大型をねらう話、両方とも面白いということを伝えていきたい。たとえばサクラマスで有名な日本海の河川の河口部には、必ず大型アジが入ってくるタイミングがある。もうサクラマスがいたら、確実にデカアジがその河口部に入ってくると思ってください。アユの稚魚が遡上する前に沿岸に集まるのを食いに来るんです。そこで4~5gのジグヘッドに5cmぐらいのワームを使うと、40cmオーバーが普通に釣れる。
それからもうひとつは夜と昼ね。夜の寒くて暗くて人がいっぱいの堤防に行きたくない人もたくさんいるでしょう。ちょっと頑張って磯場を歩いて岬まで出ましょう。夜が明けた瞬間、アジがいっぱいいますから。結構全国どこでもあります。それに近い釣り方をしてたのが楠ノ瀬直樹さんですよ。あなたが20cmのアジを釣ってるほんの1m脇とかね。そういう可能性が常にアジングにありますよっていうのだけ知っといてほしいなと。
あとね、ワームでの数釣りに飽きたらぜひ硬いものを投げてみて。メタルジグとかメタルバイブとか。それで釣れた1匹とワームで釣れた1匹。喜び方が必ず変わるから、自分の中で。こんなもんで釣れるんだということを経験してください。これは僕の言い方なんだけど、通電してください。電気が通るイメージ。釣りはね、通電しないと釣れないんだよ。だからいっぱいアジが釣れる時にメタルジグやメタルバイブ使って通電させとけば、他の魚が釣れるようになるのよ。メタルジグ苦手な人でも。
軽量リグ・軽量タックルだけが正解じゃない
丹羽 釣りとは0÷0だというのが私の最近の解釈です。不定形、つまり無限の答えがある。何もないところからスタートして、答えは無限大に広がる。一辺倒な方向に大勢が押し込められている今の窮屈さから、もっと自由になってほしい。
加来 道具についても一言。炎上覚悟で言いますが、今や20g台のアジングロッドが出ていて、すごいとは思う。でも僕が好んで使うのは100gぐらいです。軽くて70g。アジングではシーバスが食ってくることだってある。グリップもないくらい細いサオで果たしていいのか、一人ひとりが考えてほしい。世の中の流行りを一旦忘れて、自分に何が合うかを真剣に考えると、釣りの奥行きがもっと広がりますから。
※このページは『つり人 2026年5月号』に掲載した記事を再編集したものです。

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