50cmを超える規格外の「ギガアジ」はなぜ生まれるのか?神奈川県水産技術センターの工藤孝浩さんが、その巨大化の謎に迫る。定説を覆す年齢査定から導き出されたのは、回遊型のクロアジが沿岸に居着くことで爆発的に成長する「クロアジ定着化仮説」。アングラーのロマンが詰まった超大型アジの正体とは?

解説◎工藤孝浩(神奈川県水産技術センター 内水面試験場)
巨大化するマアジの謎!ギガアジについての考察
マアジには、大きく分けて2タイプが存在する。沖合を回遊する細身で黒っぽい体色の「クロアジ」と、浅場の根に居着く体高があり黄色みが強い「キアジ」である。絶対数はクロアジが多いものの、脂の乗りが良いキアジは「黄金アジ」などとも呼ばれ、釣り人から重宝される存在だ。
規格外の成長式を持つギガアジ
日本周辺のマアジ資源についての常識は、おおむね次のようなものである。
東シナ海に大産卵場があり、そこで産まれた卵や稚仔は黒潮と対馬暖流によって運ばれ各地で成長する。1歳魚以上では春夏にエサを求めて北上し、秋冬に越冬と産卵のために南下する。6歳で35cm前後に達し、寿命は15歳前後。また、東シナ海を主供給源とする主群のほか土佐湾や相模湾など各地で発生するローカル群が存在し、資源水準が低下するとローカル群の存在が顕著になる。
これは主に東シナ海における研究から導かれたもので、ローカル群の研究は非常に少ない。相模湾における最新の研究では、大きさと年齢は25cmを超えると相関しなくなること、10歳超えはゴロゴロいて23歳も見つかるなど、先の研究結果を覆す事実が次々と明らかになった。また先にも触れたように、「クロアジ型」と「キアジ型」の2型が知られるが、主群=クロアジ型、ローカル群=キアジ型と単純にくくられるものではなく、型ごとの大きさと年齢を調べた研究は信ぴょう性に乏しい。
ここで注目されるのが、40cmを超える「ギガアジ」である。既知の成長式からはみ出す常識外れの超大型は、いったい何者なのだろうか?
超大型に成長する「クロアジ定着化仮説」とは
私は、ギガアジは年齢を重ねた高齢個体ではなく、極めて速く成長した個体であると推測する。その大きな根拠は、私が手にした最大48cmの年齢が、耳石を用いた査定の結果わずか12歳であったことだ。そして、優れたエネルギーの転換効率を持ち、本来は沖合を広く回遊しするクロアジが沿岸に定着した結果、とんでもないスピードで成長してギガアジになるという「クロアジ定着化仮説」に行きついた。
ざっくり言えば、「少ないエサで泳ぎ回る極めて燃費がよいクロアジが、エサに恵まれて動かなくなるとどんどんデカくなる」ということだ。比較表をもとに読者諸兄も仮説を検証していただきたい。
※この記事は「月刊つり人 2021年1月号」の記事を再編集しています。
