明るければいいというわけではない--。夜釣りのヘッドライト選びで見落とされがちなのが、レッドライトの波長と安全設計だ。新作として、高機能なのにコスパのいいヘッドライト全8機種を揃えたハピソンに、開発者が本音で語る製品作りの裏側を聞いた。

写真と文◎松本賢治
ハイスペックなのにコスパ最強!モデルチェンジした「チェストライト」
最初に営業部の酒井さんがハピソン製品の特徴を語ってくれた。
新作はより明るく、より安く
今までヘッドライトは、50lm(ルーメン)あたりの商品を出していたんですけど、今回、リニューアルして、300lmや800lmという明るいヘッドライトを出すことにしました。
一番強いのは現段階では釣具メーカーの中では一番明るい2000lmまで。それでも、総じてお安いというコンセプトで作っています。
この5月にフルモデルチェンジして発売予定のチェストライトは、もう7年前からある人気のロングセラーではあるんですが、これも今回リニューアルすることになりました。旧モデルは充電口がマイクロUSBだったんですが、今回はタイプCになっています。タイプCになることで急速充電も可能となっています。このニューチェストライトは旧モデルよりも小さくなって軽く明るくなってるのに、お値段は安くなっています。
手もと作業の多いアジングに最適
ヘッドライトもアングラーさんは、頭よりも首に掛けて使う方が多いじゃないですか。首に掛けて口に咥えたりして。このチェストライトの特徴は、ストラップを短めにしてもらうと胸に張り付いてブレないし重さも感じにくくなる重心設計にしているところ。動いてもブラブラせず安定する。ライトのヘッドを下方向へ動かせるので足もとも見やすい。だから、手もとの作業の多いアジングでは圧倒的に使いやすくなっています。ただし上方向は照らせません。たとえば、高い位置のガイドへラインを通す時や上へ登っていく時とかですね。
光の照射範囲は集光と散光を切り替えられるようになっていて、ボタンを押している時だけ650lmの明るさになるブースト機能もあります。釣り終わったあとに地形変化とか確認する際に使える強力なモードです。最小は10lmです。
オレンジフィルターとカラーバリエーションの魅力
あと、オレンジフィルターが付いているモデル(ベビーブルーのみ)があるんですが、レッドライトほどではないんですが、魚に警戒心を与えにくい色味になっていて、これは虫の寄り付きがほぼないのもメリットです。あと、赤よりもルアーの色がわかりやすいのも使いやすい点です。オレンジフィルターが標準装備のモデルとそうでないモデルがあるのは、このフィルターを必要としていないアングラーさんもいるためです。光の色を気にされない方もいますので。
カラーは、旧モデルはブラック、ホワイト、レッド、ブルーだったんですが、今回はカラフルでユニセックスなベビーブルーとオリーブグリーン、ネイビーブルーにしましたので女性のアングラーの方にもお使いいただきたいですね。
ココが違う!ハピソンのこだわりのレッドライト
明るさの話をすると……実は暗いのを好まれている方も増えています。とはいえ、売れるのは強い表記のモノが人気で、現場では暗いモードを多用する一方で買う時は最大200lmのモノよりも最大650lmを選んで買われる方が多いです。そして、明るいレッドライトを好まれる方が増えています。光にこだわる方も増えていて強い赤の光を求める方は増えてはいますね。
エントリーモデルYF-605にも搭載された強力レッドライト
強力なレッドライトは一般的には上位機種にしか付いていませんが、ハピソンではエントリーモデルYF-605にも付いています。しかも、従来品の赤より約10倍の明るさにしました。一般的に出回っている赤のライトの波長は630nm(ナノメートル)でちょっとオレンジ寄りの見やすい明るさなんですね。
でも、YF-605に搭載したレッドライトは、波長を暗い赤寄りの660nmにしたんです。暗い波長な分、魚に警戒心を与えにくくなるメリットがあります。だから、常時点灯でも問題なく釣りができ、しかも安全です。
人間には見えやすく、魚からは気付かれにくい
ここからは開発部の武元さんがハピソンの製品の強みを語ってくれた。
強い赤の話の続きですが、暗い波長になればなるほど魚には警戒心を与えにくくなります。暗い赤は近くから水面を照らしても魚は逃げません。赤、緑、青の中でも赤が一番気付かれにくい色で、なおかつ暗い波長の赤だと、より気付かれにくくなります。人間からは比較的見えやすくて魚からはできるだけ気付かれにくい数値ということで660nmにしました。
660nmで50lmは充分すぎる明るさで、他社さんにはない明るいレッドライトです。色味は暗いですが、その分、エネルギー量を与えているから明るく見えます。もっと明るくすることもできるんですが、バッテリーを食います。このモデルなら約7時間使えます。
明るさ・サイズ・電池寿命のトレードオフに挑む開発の苦労
開発としては、要求される光の量と大きさのバランスをどうやって満足してもらえるかに難しさと面白さがありますね。ヘッドライトはこのサイズ感が多いのも、これより大きくなると重くなってしまうためです。ヘッドとは別に頭の後ろにバッテリーを分散させる2WAYも重くなるのでウチではやりません。営業からは、エネルギー量と発光量をもっと大きく、電池寿命をもっと長く、もっと安く……と無理難題を突き付けられています(笑)。どうしても、エネルギー量とサイズ感はトレードオフ(何かを達成するには何かが犠牲になる)の関係になるのですが、それらのバランスを考えながら、より満足していただける機能を追求しております。
YF-600は単四形電池なんですが、YF-601、YF-602、YF-604、YF-605は単四形電池と充電パック電池のYA-LP4の両方が使える。そして、YF-606、YF-280B、YF-281Bは充電式で使えるようにしました。
リチウムイオン電池への徹底した安全対策
中国など海外で作られたものを販売するのではなく、ウチは企画から設計まで国内でやったものを海外工場で作って販売しています。
その中でもこだわりとして、ウチのライトは充電中にライトが使えないようにしてあります。よく、モバイルバッテリーで充電しながら使えるモデルがあるんですけど、リチウムイオン電池って充電中が一番危険なんです。エネルギーがどんどん上がっていく段階の充電中に使っていると高い電圧のところで何度も行ったり来たりするからかなり危ない。リチウム電池はヘタしたら爆発しますから。だから、ウチの製品は事故防止のため、それをできないようにしています。
リチウムイオン電池には、陽極と負極を隔てているセパレーターという紙があるんですけど、強い衝撃でセパレーターを突き破ったり製造段階で異物が混入したり、あるいは作り方が悪くて溶けて遮蔽できなくなったら内部でショートします。ショートした瞬間に発火や爆発に繋がる。どれだけいいメーカーでも、不具合は出てしまう可能性はありますが、もしウチの製品にそういう症状が出て発火してもライトの筐体の外に炎が出ないように設計しています。チェストライトなどは実際に発火テストをして安全面を優先しています。
自社設計だからこそ実現できる安全性とコストパフォーマンス
ライトのみならず電動リールのバッテリーでも発熱し爆発する事故が少なくありません。だから海外製を買ってきたものだと怖い部分がありますから、自社で安全を確保したものを、なるべく安く提供する努力を続けているわけです。
もちろん、明るさの強さはセールスポイントになって、実際に明るさを好まれる方は多いです。明るくするには、いっぱいエネルギー量を使いますからバッテリーの容量が大きくなり内部に使う材料も多くなります。でも、LEDの効率が上がれば少ないエネルギー量で明るいものもできますので、なるべく小型で明るいものを目指しています。
基準として一釣行でバッテリーが切れずに快適に釣りができることはもちろんですが、それ以前に最低限の安全を確保すること。それには、レッドライトやオレンジフィルターも役に立つんですよ。
※このページは『つり人 2026年5月号』に掲載した記事を再編集したものです。


