釣りを楽しみながら学ぶ姿勢が重要だと話すのが松本幸雄さん。もっとエリアを楽しみたい人に向けてステップアップの秘訣を教えてくれた。
写真と文◎編集部
釣れなくても楽しめる人になろう
たくさん釣れば上達するというのは間違いないですが、どう釣ったかによってその成長率は大きく変わります。仮に1日で100尾釣ったとしても作業のように思考停止で釣っていては成長しません。なぜ釣れたのか、仮説と検証を繰り返していくことで経験として蓄積されていくからです。釣れない時でも楽しみましょう。今を牽引するエキスパートと呼ばれる人たちは際限なく釣りを続けるような人たちです。そんな人たちと肩を並べられるのは、やはり釣りが大好きで仕方ない人でしょう!
自分なりの基準を作れ
何事も基準がないとブレてしまいます。安定して釣果を出すためには立ち返る基準が必要です。まずは自分のホームエリアを作ってください。お気に入りの釣り場でも、通いやすい近くの場所でもいいです。ホームを決めたらそこでベースとなるタックルを組み立てましょう。ベースというのは状況を把握できる、つまり、自分が何をしているのか理解して釣りができている状態のことです。言い換えればその場所で一番手堅く釣れる釣り方とも言えます。ルアー選択や状況判断に迷った際、立ち帰れる基準があることで展開を組み立てやすくなります。初心者の方はよく釣れる釣り方を見つけるのが難しいと思いますが、そんな時はエリアのスタッフに聞くのが一番早いです。エリア近くの釣具店さんに聞いてみるのもいいですね。そのエリアで効くど真ん中のルアーが決まったらそれが使いやすいタックルを組めばひとまずベースの完成です。これを基準に、状況や釣り方に応じてアレンジを加えていってください。ただし、人によって釣り方の得意不得意があり、当然エリアによっても反応の良し悪しは変わってきます。なので、どこで誰が使っても絶対にこれが一番!というセッティングはありません。そこを見つけ出すまでの過程も楽しんでください。参考にどのエリアでも手堅い僕なりのセッティングを挙げるとすれば、ロッドはフォーナインマイスター・ホワイトウルフ62UL(ロデオクラフト)にリールはイグジストLT 2000S、ラインはRCマイスターエステル0.35号(ロデオクラフト)、リーダーはRCマイスターショックリーダー0.6号の組み合わせになります。
どのエリアでも外すことはないルアーを松本さんに厳選してもらった。左上からモカDR- F、モカSR- SS、ウッサ、ノア1. 8g、1. 5g、ノア-S1.4 g(すべてロデオクラフト)。ホームエリアが決まれば何が効くのかスタッフに聞くのもよし
釣り場についたらまずは状況把握
エリアフィッシングは膨大なルアーの種類があり、意識がそっちに行きがちですが、フィールドの環境にも注目しましょう。どんなに釣れるルアーでも魚がいないところに投げていては釣れません。たとえば、風が吹いたら魚が浮くというのはよく知られていると思います。さらに時間が経つにつれ、魚は風下に集まります。冬だと朝は魚が沈んでいますが、日差しが入れば浮いてきます。川の水を引き込んでいる釣り場なら冷えた水の入ってくるインレット側よりもアウト側のほうが釣りやすいです。エリアも自然の釣り場と同様に状況に応じて魚の行動は変わってきます。ルアーセレクトももちろん大事ですが、環境の変化もその選択理由に絡んでくるのでしっかり把握しておきましょう。
「どんなアプローチが効く」のかを考える
ルアーで釣果を上げるための要素はさまざまですが、優先順位があります。この順番を覚えておくと迷走した際にどこで躓いているのか整理しなおすことができるはずです。
① 場所選び:その三でも言いましたが、魚がいないところでは釣れません。
② タナを見つける:魚のいるタナ、食うタナは違う場合も多いです。
③ アプローチ:速さや角度、動きの強弱、ドリフト気味など、魚に対してルアーをどう見せていくのかを考えていきます。
④ ルアー選択:こういうアプローチをしたいからこのルアーが適任、という考えで選ぶのがベストです。
⑤ カラーチョイス:数を伸ばすためにカラーは大切ですが、最後の微調整といった感じで①〜④の段階で正解に近付くことが大切です。
この順番でトライ&エラーを繰り返すことで正解に辿り着くことができます。エキスパートたちは状況判断と試行錯誤のスピードが総じてとても早いです。
「釣れなくなってからルアーを変えるのではなく釣れていても途中でルアーを変える」 これができると上達のスピードが格段に早くなります。交換して釣れなくなるかもしれませんが、それも一つの答えであり、次の選択肢を考える材料になります。魚が釣りたくなったら戻ればいい。ルアー交換のコツは「釣れっている時は小さく変える、釣れない時は大きく変える」です。
一つのルアーをもっと使いこもう
このルアーが釣れる! と流行ることがよくあります。話題のルアーを揃えていくのもいいですが、上級者を目指すのであれば一個のルアーを使い込んでどうしてよく釣れるのか分析してみるのも面白いです。ルアーの理解度が高まれば使い所が明確になりますし、タダ巻きでもスピード違い、シェイクなどのロッド操作など一つのルアーで複数の使い方ができれば、闇雲にルアーをたくさん揃えなくても対応できる状況は増えます。
また、ルアーに付いているフックが変われば動きも変わるのはよく知られるようになっており、大きさや線形で調整する人たちもかなり増えました。極まるとスプリットリングでも同じ目的でチューンをすることもあります。
さらに、使うラインの比重でトレースコースが変わります。例えば、上方向に逃がすように引きたいのであれば比重の軽いナイロン、底ベッタリを引きたければ重いフロロカーボンといった具合です。エステルしか使わない人でも同じような考えで比重を変えればルアーの姿勢が変わります。
さらに長さを変えればショック吸収性や水の受け具合なども変わってきます。さまざまなルアーや釣り方に合った最適解を探求してみてください。
苦手をなくす?得意を伸ばす?
よく苦手な釣り方をなくしてそつなくこなせるようになろうとする人がいます。そういう考え方もありかもしれませんが、僕は得意なことをもっと伸ばしていくほうがもっといいと思っています。大会で対戦相手になった時、怖いのは得意な釣りを持っている人です。「こういうときの俺は誰にも負けない」みたいな必殺パターンや、いざというときにすがれる釣りを持っておくといいですね。得意なことをやり込んでいくと苦手な釣りも繋がって上達しますよ。