釣りの世界は日進月歩。常に新しいギアが開発され、新たなメソッドが誕生する。その意味ではスキッディングというメソッドはひと昔前の部類に入るのだろう。が、しかし、この爆発力の凄まじさはどうだ。いささかの衰えも感じないどころか、多くの愛用者たちによってますます円熟味が増している。
釣りの世界は日進月歩。常に新しいギアが開発され、新たなメソッドが誕生する。その意味ではスキッディングというメソッドはひと昔前の部類に入るのだろう。が、しかし、この爆発力の凄まじさはどうだ。いささかの衰えも感じないどころか、多くの愛用者たちによってますます円熟味が増している。
写真と文◎編集部
ジギングのメソッド・スキッディングとは
新潟県柏崎で遊漁船「アシストクラブ金進丸」を営む秋山進一さんといえば、摩擦系ノットの中でも最も簡単で強度も申し分ないと評判のSCノット(ショックアブソーブド・キャプテンノットの略)の考案者として知られ、乗客からも秋山キャプテンと呼ばれている。そんな秋山キャプテンのもうひとつの考案が激しくシャクらないオフショアジギングの「スキッディング」だ。
スキッディングとは、イカの動き=Squidと、滑るような泳ぎ=Skidを併せた造語。使用するのは船のような形状でサイドが直線ではなく曲線(R)を描いた専用ジグだ。このフォルムによって進行方向を切り替え(=スイッチバック)、左右にスライドしながら落ちていく(=スイッチフォール)。
スキッディングのやり方
手順はこうだ。
1.まず指示ダナまでジグを沈めたらプライマリーポジション(スイッチフォールを開始する位置)で一旦静止する。ジグは立っている
2.立てていたロッドを一気に寝かせることで、ラインテンションが抜けたジグはRに沿った動きで滑走
3.ロッドを水平近くまで上げながらラインをスプールから引き出し、再びロッドを下げるとジグがスイッチフォール
この3の動作を連続して行なうことでリズミカルにラインをスプールから引き出し、ジグが回転半径=振り子のようにスイッチバックからのスイッチフォールをする。
この動作を行なうための推奨スタイルは「逆サミング」。普通、右ハンドルのベイトリールであれば左手でパーミングしながら左手の親指でサミングをし、右手はハンドルノブを握るが、逆サミングでは左手でパーミングしながら右手でもパーミングして、サミングは右手の親指で行なう。このフォームにすることでスプールから引き出されたラインスラックがコントロールしやすくなり、バックラッシュを防げるのみならず直接ラインに触れることで感度も増す。
傍からは、ロッドを上下するアクションはジグをシャクリ上げているように見えるが、実際はスプールからラインを引き出すための動きで、ジグはスイッチフォールしている。

・ロッド:アブ・ガルシア/ソルティーステージ プロトタイプスロージギングXSPC-63-1.5-MAX150
・リール:アブ・ガルシア/ソルティーステージ コンセプトフリー
・ライン:バークレイ/スーパーファイヤーラインカラード1.0号
・リーダー:バークレイ/バニッシュレボリューション16ポンド
マダイ向けに考案も他魚種にも好反応
「マダイがジグで釣れること自体は日本各地でよくある現象ですし、うちの船でも長らく通常のジギングでねらっていましたが、実は着底着後のバイトは多いものの中層でのジャーキングでは青物のようには反応がよくありませんでした。むしろフォール中のほうが反応するんですけど、けど通常のジグだと沈下速度がマダイには速すぎました」
試行錯誤の末に完成させたのが「スキッディングメソッド」と「スキッディング専用メタルジグ」。まずは秋山キャプテン自身のルアーブランドであるネイティブデザインズから『ザ・スイッチバッグ』が誕生。その後、ハンドメイドゆえの生産数不足を解消するためアブ・ガルシアから同じ機能を持った『スキッドジグ』と『ショアスキッドジグ』がリリースされた(現在は20~60gのショアスキッドジグ』のみ販売中)。
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ハード(スキッドジグ)とソフト(スキッディング)の完成でマダイの反応は急激に上向いた。フォールでのヒットが増えたのみならず、ジャークしない中層ただ巻きでのヒットも倍増した。さらに、激しくシャクらないこのメソッドはマダイのみならずブリやカンパチなどの青物のほかロックフィッシュにも効果を発揮。ハイピッチでシャクり続ける体力勝負の釣りではないことから、初心者から年配者まで誰でも手軽にジギングを楽しめるようになったというわけだ。
実釣でスキッディングの威力を実感
5月下旬。早朝5時。12名のアングラーを乗せた金進丸は魚探掛けをしながらゆっくりと北上。15分ほど走ったところでスローダウンすると、ほぼ全員が手にしたロッドの先からはイカに似た扁平なシルエットのジグがぶら下がっていた。
「水深40m。上から20mにマダイの濃い反応が出てます。その下から底までイワシの反応がありますから、底まで落とさず20mより上を探ってみてください」
通常はボトムまで探ることも多いが、今回は水深もタナも浅いことから真下にジグを落とすのではなく、正面にロングキャストしたのちスイッチフォールさせ、指示ダナまで来たらゆっくりと斜め引きするという釣り方が有効だった。
ひと流し目からヒットはあったものの単発で、魚探の濃い反応のわりには全体的にはロッドが曲がらない静かなスタートになった。
そんななか、船中1尾目を釣った高橋さんはその後もブレードジグ(ライズジグブレード)でコンスタントに釣果を重ね、あっという間に3尾の良型マダイをキャッチ。
「金進丸さんはよく利用していますが、ここのいいところはルアーも含めて自由にやらせてくれるところです。ショアスキッドジグやザ・スイッチバックも推奨であって強制ではない。タイラバでやるのもOKなんです」
ただ、ブレードが効いていることを確認した数名のアングラーはスキッドジグやザ・スイッチバックにブレードを足していくなど臨機応変。静かなスタートだったが、マダイの活性は急上昇して、トモ側でもミヨシ側でも右舷でも左舷でもロッドが大きく曲がる。そのほとんどのルアーはショアスキッドジグかザ・スイッチバック。釣れるから使うのか、使うから釣れるのか。おそらくどちらも正解だろう。

斜め引きに好反応
マダイは乗っ込みの時期であり、水深が浅いこともあってバーチカルではなく、右舷でも左舷でも真正面にロングキャストをする。投げやすさでいえばスピニングタックルが圧倒的にやりやすい。しかし逆サミングでのスイッチフォールのやりやすさはベイトタックルが圧倒的にやりやすい。というわけで両方のタックルを準備する人が大半。
さらにいえばこの日はマダイがベイトのカタクチイワシ(釣った直後に吐き出していた)を水面まで追い込んでボイルするほど活性が高く、スイッチバックせずともラインを張ったカーブフォール中でもガツガツと食ってきた。フォール中に食わなくても10~15m沈めてから斜め引きをすると、それを追い食い。左舷大ドモの柳澤さんは早々にツ抜けを達成。途中、違うお土産をねらってサビキ釣りに興じたりしながら良型ばかり13尾をキャッチ。
3尾、4尾とマダイをキャッチしたアングラーは3㎏オーバーの良型であってもリーダーを持ってそのまま船内に抜き上げていく。仲間にタモを頼みたくても仲間もファイト中だからだ。

すべてのジギング・タイラバフィールドが舞台
スキッディングはマダイに特化した釣りではない。その証拠に、この日も80cmクラスのブリ、40cm超えのマアジ、キジハタやホウボウやカサゴなどもヒット。13時帰港だが、早くも10時過ぎには大方のメンバーが満足げにまったりとしていたのが印象的だった。

当日も数名のスキッディングデビューのアングラーがいたが、秋山キャプテンのアドバイスで見事に本命や大アジをキャッチしていた。ジグは船上販売もしているので、まずは手軽にチャレンジしてみよう。なお、このメソッドは新潟限定、日本海限定ではない。秋山キャプテンほかアシストクラブのメンバーは太平洋や東シナ海などどこのジギング・タイラバフィールドでもこのメソッドで楽しんでいる。

※このページは『つり人 2025年8月号』を再編集したものです。