広大な新潟サーフでシーバスに出会うための「読み」とは?エキスパート猪俣敬太さんが、季節や波、ベイトといった自然のサインを解読する極意を公開。シーズナルパターンから最適なタックル選びまで、1尾に辿り着くための新潟サーフシーバス攻略法を解説。
写真と文◎猪俣敬太(YAMAGA Blanks)
新潟サーフシーバスのシーズン
新潟県の海岸線は約330km。北から南まで広大なサーフエリアが延々と続く地形であり、岩場・砂利浜・ゴロタ石など表情もさまざまで、四季に合わせた魚種がねらえることが一番の魅力である。 地形だけでなく河川の状況変化もサーフでの釣りに大きく影響する。濁りが入るタイミングは見逃せない要素で、集中豪雨や台風による増水期は、河川からシーバスが降りて来るのか、周辺サーフで好釣果を得ている。
シーバスに限って言えば、冬は気温と比例して水温が下がり、早春は雪代が影響して水温が上がらないため、おおむね5月ごろからがシーズンとなる。真夏は河川内に入る個体が多く、サーフは小休止状態だ。暑さが落ち着いた秋は、年によってベイトの種類が変わるがハイシーズンと言っていいだろう。
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「幻」となりつつある冬の風物詩
かつて新潟県と言えば真冬の「ハタハタパターン」のシーバスが有名であった。 海岸線沿いに多くのアングラーが並び、大型ルアーを寒さに耐えながらキャストする光景は真冬の風物詩であったが、今ではその面影は無く昔話になっている。高水温の影響なのか?ハタハタの生息数減少なのか?パンパンに膨れた個体のシーバスは今となっては幻だ。一部地域では成立しているが、期間は1週間~2週間と短く、かつてのような爆発力は影を潜めている。
自然条件を読み解く 下越サーフ攻略の3大要素
私がメインとしているのは新潟県の下越エリア。小規模河川や沖テトラなど、サーフに加わる変化を見極めての探り方や、タイミングが重要な要素になる。居着き個体をねらう釣りではないので、限られた釣行時間で少しでもシーバスに近づくためには、自然条件を味方につけ、読みと勘をフルに働かせる。広大なサーフを目にすればアングラーの存在など小さい物であるが、1尾のシーバスを探し当てる楽しみは、年齢を重ねても衰えることはないのだ。 個人的にサーフでのシーバスフィッシングにおいて意識している要素は「ベイトの接岸」「朝夕マヅメ」「波の高さ」だ。
カタクチイワシが呼ぶ好機を逃さない
新潟県全域にかけて、春~初夏の時期にカタクチイワシの接岸が見られ、釣果を得るための重要な要素になっている。これをアングラーは「イワシパターン」と呼ぶ。接岸理由は定かではないが、毎年ほぼ同じ時期であり、さまざまなフィッシュイーター達が一斉に騒ぎ出すのだ。ここに波が高い日と重なれば、カタクチイワシが沖に逃げることができず、沖テトラや岩陰に身を寄せるため、さらにねらいやすくなる。朝夕マヅメの時間帯となれば最も胸躍る瞬間である。同じ時期に稚アユがベイトになることもあり、サーフ=ベイトフィッシュの重要な関係性は新潟県でも同じである。
ある日の釣行を例にすると、カタクチイワシの接岸が確認され、波の高さ1.5mと絶好の条件。沖テトラに波がぶつかるヨレがねらい目となり、シーバスが連続でヒット。翌日は波が落ちてしまい、同じパターンではヒットせず粘りに粘って夕マヅメの時間帯でランカーサイズをキャッチ。このように、日によって変わるサーフの条件だが、たどり着くためには粘り続ける根性論もときには必要なのかもしれない。
秋の時期についても触れておこう。いわゆる産卵前の荒食いになるのだが、もう一度カタクチイワシが接岸する可能性がある。サイズは春と同じ場合もあれば、マイクロ系のときもある。どちらにしても情報は早いほうがよく、サーフに通い詰めることが一番の近道だ。時期的にどの魚種もいい釣り時期であり、ほかの魚に引っ張られるようにシーバスも最盛期に突入する。
新潟サーフシーバスのルアーセレクトとタックル
ここまで概要に触れたが、タックルやルアーにもシーバスへの近道があると考える。 イワシパターンに関してはミノー系が中心だ。飛距離が出てシャローレンジを波に負けずに泳ぐのが理想的である。カタクチイワシのサイズは10cm前後のため、同サイズのルアーをチョイスしたいところだが、ここは飛距離最優先で考えるのがいい。すると12cm~14cmとなるが私は12cmクラスを使うことが多い。カラーは明るい時間帯が中心になるので、ボックス内のほとんどはナチュラル系で占めることになる。
ここで意識して欲しいのがマダイの存在だ。イワシパターンではショアから高確率でねらうことができるのだが、フック・リングの強度不足により、キャッチできなかったとの話をよく耳にする。私はどちらも強化した状態で挑む。このセッティングはランカーシーバスにも安心である。マダイは春~初冬までヒットの可能性があるため、信頼のおけるルアーには万全を期すのだ。
サーフロッドに求められる軽さ・飛距離・強さ
ここからはロッドについて書いてみよう。サーフロッドに必要な要素は何だろうか?ヤマガブランクスのメーカーコンセプトでもある「軽く・よく飛び・強い」は多くの機種で追求されている要素だが、ここに加えたのが、ヘビーウエイトルアーの投げやすさ。これがヤマガブランクスの考えるサーフロッドであり、その形として「アーリーforサーフ」や「バリスティック・サーフモデル」をリリースしている。
手に取りやすい実力派「アーリーforサーフ」
前者は手に取りやすい価格帯でありながら、ハイエンド機種に劣らない性能を詰め込んでいる。とくにアーリーforサーフの「99ML」はフィネス系の繊細さを兼ね備えた機種で、幅広い釣り方に対応する。ラインナップにはベイトモデルも存在するので、サーフゲームの楽しみ方は自由自在だ。
最高峰の進化「バリスティック・サーフモデル」
後者は2025年のフルモデルチェンジにより、最新のカーボン素材・設計技術を惜しみなく注ぎこみ、最高峰の機種として位置している。サーフロッドにアングラーが求めている部分と、開発・設計側の意図を凝縮させながらテストを繰り返したモデルである。「釣りザオ」とは単なる道具の一部でしかないのだが、ここに求める要素と役割は非常に大きい。 ルアーを遠くに飛ばし、ヒットした魚をバラさない追従性、そして気に入ったロッドを所有する喜びと、魚をキャッチしたときの満足感。港湾部のシーバスに比べると、繊細な部分は除かれるかもしれないが、サーフロッドの最前線を走り続けながらも、ブランク屋としての答えをユーザーへとしっかり届けるための機種である。
変わらぬサーフにあのころの情熱を重ねて
最後に、現在感じているシーバスフィッシングについて書くことでこの稿を閉じたい。新潟県ではシーバスの放流事業を行なっていないため、出会うシーバスは全て人の手が加わらない自然魚となる。アングラーが自然と1対1で向き合える瞬間であり、シーバスはその懸け橋となるのだ。
しかし人気はどうだろう。近年はライトゲームやフラットフィッシュやオフショアの釣りに埋もれてはいないだろうか?近所の魚釣りで1mを超えるサイズを手にできる可能性があり、四季の釣り方が存在する身近なシーバス。ルアーフィッシングの入門書には、ほとんど最初のページに出てくる、日本を代表するターゲットと言っても過言ではないだろう。
昔は自転車の行動範囲でシーバスがよく釣れて、仲間を誘い競い合ったのはいい思い出である。多くの釣り場であのころの原風景が消えつつあるが、サーフの環境は変化が少ないまま時を重ねている。今回の記事が起爆剤となって、2000年代前半のシーバス人気を再び起こすことができないのか。私はそんなことを想っている。
※このページは『つり人 2025年12月号』の記事を再編集したものです。



