船上からサケ(アキアジ)の跳ねを探しキャストしてねらう「跳ね撃ち」は道北の枝幸や噴火湾が有名だが、札幌近郊の古平でも楽しめる。5年ほど前からこの釣りを提案する遊漁船『アトゥイ』船長の土方康充さんが、適したタックルや釣り方をアドバイス。
船上からサケ(アキアジ)の跳ねを探しキャストしてねらう「跳ね撃ち」は道北の枝幸や噴火湾が有名だが、札幌近郊の古平でも楽しめる。5年ほど前からこの釣りを提案する遊漁船『アトゥイ』船長の土方康充さんが、適したタックルや釣り方をアドバイス。
Photo & Text by Yasumitsu Hijikata(North Angler’s)
North Angler’sとは?:北海道での釣りを満喫するための情報誌。北海道の自然を体感するキャンプの情報や、フィールドを守るための環境問題にも光を当て、多角的な視点からアウトドアライフを提案している。誌面と連動したウェブサイト『つり人オンライン』での記事展開に加え、好評放送中の『ノースアングラーズTV』や公式動画チャンネルである『釣り人チャンネル』を通じても、北海道の釣りの魅力を発信している。
サケ(アキアジ)を船で狙う「跳ね撃ち」
夏の暑さが和らぎ、早朝は肌寒さを感じる9月中旬、積丹半島の秋の風物詩であるサケ釣りがスタートする。毎年、有名河川の河口には多くの釣り人が集まり、肩を並べてロッドを振る光景が見られる。サケ釣り人気を象徴する風景だが、近年はルールやマナー問題が指摘され、このにぎわいを敬遠する釣り人が多くなってきた。
混雑を避けたいなら沖からサケを釣るボートフィッシングのスタイルをすすめたい。ボートなら暗いうちから場所取りする必要はなく、手軽にポイントにアクセスできてストレスなく楽しめる。シーズン開幕は9月後半から。当船では、開業当初(2015年)からサケの跳ね撃ちを行なっているが、2019年頃からお客さんの要望が増え、以来、本格的にねらうようになった。
河口域の陸には釣りをしている人が数多く並んでいるため、ボート釣りをする際は岸から一定の距離を保つ配慮が求められる。「ボートと陸っぱりの人が、お互い快適に釣りをするには適切な距離を取り、マナーを守ることが大切」と私は考えている。せっかく暗いうちからポイントに着いて、いざ釣りをしようと思ったら、ルアーが届く範囲の目の前にボートがある。そんな状況だと誰しも嫌な気持ちになるだろう。
その点、ボートはすぐに移動でき、沖でも跳ねやモジリは頻繁にある。あまりにも陸が混んでいるときは沖に出たり、違うポイントに移動するようにしている。河口沖にはプレジャーボート、ゴムボート、カヤックなどが横並びになっているが、お互いに声を掛け合うことで和やかな雰囲気を維持できていると思う。

サケの跳ね撃ちの仕掛けとタックル
仕掛けは陸っぱりと同様、ウキルアーが一般的。釣り場に到着すると、無数のサケが水面に背ビレを出し、跳ねやモジリも確認できる。ところが、これだけ目の前にサケがいてもウキルアーで食いつかせるのは簡単ではない。遡上を控えたサケはルアーへの反応が鈍いことが多く、食いつくタナやリトリーブ速度をいかに早く見つけだすかが釣果を左右する。そのためルアーの重さや形状、ウキの大きさなど仕掛け全体のバランスが重要になる。勝負タイムは日の出後の数時間。日が高くなるにつれてサケの活性は下がり、食いが渋くなる傾向にある。早朝は神経を集中することが大事だ。
ウキルアー以外にフカセ釣りも有効な手段。食いが悪いと感じたときは、ウキルアーで探った後にフカセ釣りを試すとよいだろう。以前、消波ブロック際をフカセで流すと面白いように釣れたこともあった。

タックル
タックルに関しては、陸っぱりの道具をそのまま使用できる。オフショア専門の人ならキャスティング用やシーバス用で対応可能。ただし、ウキルアーの仕掛けは長いため、ロッドが短すぎるとキャストしづらい。長さは8〜10フィートがベター。
リールは4000〜6000番が適しており、PE2号を200m以上巻けるものを推奨する。ボートではそれほどロングキャストは必要なく、比較的自由なタックルで楽しむことができる。ちなみに札幌市の須田尚典さんは以前、6フィート10インチのバス用ロッドと小型スピニングリール、PE1.5号、40gスプーンでキャッチしている。リーダーは8号程度。陸っぱりと違い、あまり強引なやり取りは求められないが、船前方にアンカーのロープが入るため、ロープにラインが擦れないよう上手く魚を誘導しなければならない。

ルアーとエサ
ウキルアーの場合、スプーンは40〜55gが好適。状況に応じて30g以下のライトな設定もアリだ。ウキはスプーンの重量に合わせてM〜LLサイズを選択。
エサはカツオやサンマがよく使われ、ニンニクやエビ粉など匂いの強いものを混ぜるのが一般的。なお、エサが船の床に落ちると匂いが残る。都度海水で流していただけるとありがたい。
タコベイトは赤やピンクで、サイズは1.5号もしくは2号。フックはシングルとダブル(段差または平行)を状況により使い分けるが、私は主に段差を用い、短いほうのハリにのみエサを付け、長いほうのハリに魚が掛かるようにしている。
ケガ防止の観点からはバーブレスフックをすすめたいが、サケ釣り用のフックは硬い口を貫通させるべく、滑りのよいフッ素加工が施されているものが多い。バーブを潰してしまうとフッ素加工が悪いほうに作用し、すっぽ抜けやすくなるのが難点。さらにエサが脱落しやすくなる。バーブが付いたままの状態が無難だろう。
釣りあげたサケはよく暴れ、ケガをする危険性が高い。ランディング時はタモですくい、魚からハリを外すときは必ずロングノーズのプライヤーを使い、絶対に素手でハリを触らないこと。
初心者から上級者までサーモンフィッシングを満喫できる
お客さんの一人、札幌市の船木厚志さんは、「最近は駐車場や釣り場の確保が難しくなっています。ボートならその点心配せず、気軽に釣りができるのがいいですね」と話す。
ボートだと場所取りの煩わしさを回避でき、ゆったりと釣りができるのも魅力だ。ウキルアーやフカセ釣りを駆使し、魚の動きを読みながら楽しめ、初心者から上級者までサーモンフィッシングを満喫できるはず。

近年、船で岸から近い場所を釣る「インショアゲーム」の人気が高まっているが、サケのボート釣りはそのジャンルに当てはまる。何よりポイントまでの移動がスムーズで、船長からのサポートを受けられるのも魅力。今秋はボートのサケ釣りと秋の味覚を存分に味わってみてはいかがだろうか。

古平漁港から出港。予約は船長の土方康充さんまで。サケ釣りの料金は1人6時間10,000円、8時間12,000円。朝にサケを3時間ほどねらい、ヒラメやブリ釣りに移行することも可能。同船ではレンタルタックルも用意している。気軽に相談してみよう