湖から始まったトップルアーの釣りは、川や渓流でも威力を発揮し、とくに昆虫を模した「虫パターン」の人気は高まるばかり。しかし、ルアー操作や流し方しだいでは「全く出ない……」というのもこの釣り。入門者向けに一尾に近づくコツを解説。
湖から始まったトップルアーの釣りは、川や渓流でも威力を発揮し、とくに昆虫を模した「虫パターン」の人気は高まるばかり。しかし、ルアー操作や流し方しだいでは「全く出ない……」というのもこの釣り。入門者向けに一尾に近づくコツを解説。
文と写真◎North Angler’s編集部
North Angler’sとは?:北海道での釣りを満喫するための情報誌。北海道の自然を体感するキャンプの情報や、フィールドを守るための環境問題にも光を当て、多角的な視点からアウトドアライフを提案している。誌面と連動したウェブサイト『つり人オンライン』での記事展開に加え、好評放送中の『ノースアングラーズTV』や公式動画チャンネルである『釣り人チャンネル』を通じても、北海道の釣りの魅力を発信している。
トップルアーを使った「虫パターン」のネイティブトラウト
支笏湖などの湖から始まったトップウォータープラグ(以下、トップ)の釣りが、川でも試されるようになったのは自然な流れだろう。北海道ではフィールドを問わずルアーとフライの両方を楽しむ人が少なくないが、川の定番は浮くタイプのドライフライ。川に生息しているトラウトも湖と同じように昆虫類を捕食している。だとしたら川でもトップが効くのは当然だ。

しかし、意外にも川トップの効果が広く知られるまでには時間がかかった。その背景には川の必携ルアーとして古くから親しまれるシンキングミノーの存在があるだろう。重さを活かして飛距離が稼げ、かつ各レンジを自在に探れ、トゥイッチを入れて操作する面白さ。まさに万能で使いやすく、「釣った感」もあり、今でも一番人気があるのはうなずける。
そんななか、トップが注目されるようになったのは、ヤマメとイワナが中心になる本州と違って、北海道は良型のニジマスとブラウンがねらえることが大きい。ヤマメやイワナ(アメマス)はターン(ルアーが流れを横切って反転する際の動き)に反応しやすい一方、ニジマスとブラウンは元気印の小~中型サイズはヒットしても、大きくなると追って食うことは少ない。良型は楽に捕食できるボトムの底生生物、もしくは水面を流れる昆虫類にねらいを定めているようだ。
魚にとって水面は鳥類などの外敵に襲われる危険性があるが、立派な体躯を誇る良型はリスクと食欲を天秤にかけても後者を選ぶのか。ここ数年で川もトップが脚光を浴びているのは「良型がねらって釣れる」ことにあるだろう。

最適なタックルシステム
川トップにおける操作は、「自然に流すこと(=ナチュラルドリフト)」に尽きる。ターン後の回収中など逆引き状態で食ってくることもあるが、あくまで流れと同調させるナチュラルドリフトが基本と考えたい。
となると、ロッドは長いほうが操作しやすい。小規模河川で真っすぐ上流に撃てるポイントが多いなら問題なくても、流れをまたいで対岸をクロスで釣る場合、ナチュラルドリフトを演出するのにラインを上流側に打ち返す操作(=メンディング)が必要になる。これを行なうには長めのロッドが断然有利。具体的には中規模程度の川なら6フィート6インチ程度はあるとよいだろう。そして、ティップのしなやかなロッドがトップに向いている。
使用するルアーのウエイトにもよるが、小型のトップなら2g未満。腕に覚えがあるベイトタックル愛好者ならよいかもしれないが、キャストに自信のない入門者はスピニングタイプが適している。浮くトップの釣りでは、ラインはナイロンとPEの二択になるが、どちらを選ぶかは好みによるところが大きい。ただ、小型軽量のトップをある程度遠投したいならPEに分があるのは明らか。小規模な川でも大ものが潜んでいる北海道では、倒木など障害物に干渉してもブレイクしないよう0.8号前後が一般的。ナイロン及びリーダーは川の規模と釣れる魚のサイズにより6~10ポンドが妥当だろう。

ルアーは35~40mm3g前後がメイン
肝心要のルアーについては、圧倒的に種類が多いのはセミを模したタイプとはいえ、バッタやカメムシ、カナブンをイメージした形状のトップもある。「コレで釣りたい!」というルアーを使うのもよいが、まずはフィールドを広く観察してみよう。
周囲の森から「ジーッ」とコエゾゼミの大合唱が響いていたらセミルアー、河原にイナゴが飛び交っていたらバッタルアーというように、そのときのメインディッシュと目される捕食物に似せたルアーを選ぶ(=マッチング・ザ・ベイト)のがフライフィッシングにも共通する考え方。また、地域や時期によってはカメムシやガなどが大量発生していることもある。そんな情報にもアンテナを張っておきたい。
とはいえ、川で50mm前後のシンキングミノーが主流であるように、「使いやすいサイズ」というものがある。この点をふまえて、飛距離と見やすさの観点から35~40mm3g前後をパイロット的に使う人が多いようだ。

「見やすさ」はトップの釣りで重要な要素。湖なら波ザブでない限り見失うことは少ないと思うが、流れのある川ではそうはいかない。ミスキャストして着水地点を把握できないと、いつの間にか下流に流されていた……なんてことも。
魚が出た瞬間が分からないとヒット率は大きく落ちるばかりか、何よりトップの釣りが面白くなくなる。視認性が高いのは背中が派手なカラー。それでもルアーのサイズが小さいと流れに揉まれると見失いやすい。そこで出番となるのがマーカーだ。ルアーの背中に貼ることで視認性が抜群によくなる。ルアーの造形が崩れるのを嫌う向きもあるが、最終手段として用意しておくことをすすめたい。

スナップの有無について
スムーズにルアーをローテーションするのに不可欠なアイテムだが、ドラッグがかかる原因になりやすく、アワセを入れた際にタイムラグが生じてフッキングに影響することも。使用する場合はなるべく小さいサイズを選びたい。
トップルアーでの釣り方
貴重な一尾を導くために、いくつか要点を挙げたい。まず、ポイントでの1投目はトップを使うこと。最初にシンキングミノーなどの沈むタイプを投じると、水中にいる魚に警戒心を与え、場を荒らしてしまいかねない。沈むタイプのルアーを使うのは、トップで数投して反応がなく、「ここに魚がいるかどうか」をたしかめたいときにしたい。
リフトをベースにするが、ときおり軽くシェイクを入れて波紋を出すと効果的な場合もある。とくに水深のあるプールは魚が水面のエサに気づいて出てくるまで時間がかかりやすい。こんな場面で波紋を出すと魚にルアーの存在をアピールできる。また、同様の理由で流れの速い瀬もアクションを与えるとよい場合がある。
キャストの方向は自然に流しやすいアップをメインにしたい。対岸を撃つときはアップクロスになるが、メンディングを数回行ないつつ、余分なラインを巻き取りながら自然に流していく。メンディングしてもルアーが流れとズレて不自然な動き(=ドラッグ)をするようになったら回収、再アプローチする。
トップでクロス~ダウンのアプローチはセオリーに反するが、たとえば両岸をボサに覆われた小規模な川で立ち位置が限られるときは、、ボサ際ぎりぎりにルアーを落とし、ラインを出しながら下流に流していくのも手。アップもダウンも真っすぐならナチュラルドリフトを演出しやすい。魚がルアーに気づきにくいと思われる深場や速い瀬は、1~2投であきらめずに数投するのもヒット率を上げるコツ。
また、いかにもという深場は散々叩かれてスレていると考えられ、魚はルアーをうかがいながら本物か偽物かを見定めているかもしれない。そんな状況下では、キャストしてすぐにピックアップすると警戒される恐れがある。ときには辛抱強くルアーを浮かべおくのも大事だ。
この釣りで最大の関門はフッキング。魚が出たのにハリ掛かりしないことはよくある。「バシャ!」と出てすぐに合わせると乗らないことが多く、一呼吸おいてからフッキングの動作に移るのが賢明だ。
釣れないときの攻略法3選
それでも「釣れない……」と言う人にアドバイスをいくつか。
ルアーサイズの変更
魚が出ても乗らないことが多いのが気になるようなら、ルアーのサイズを一回り小さくするのも一つの方法だ。
35~40mm3g前後がパイロット的に使えるサイズと前述したが、20~30mmにチェンジしてみよう。重さは1g台になると思われ、飛距離は出にくくなるものの、単純に小さくなると魚はくわえやすいのかフッキングがよくなる。また、サイズが小さく羽根などのパーツ類が少ないと、複雑な流れでも比較的ドラッグがかかりにくいのも利点だ。
しかし、一方で50mm以上の大型サイズを投入するのも状況しだいで有効な手段。フライだと真似できない存在感はルアーならではといえ、アピールの大きさが釣果につながることもある。とくに大型のベイトが食われていれば、使う価値は充分だろう。
ただし、流れが緩いポイントほど着水音には気を遣いたい。じっくりと水面を凝視している魚に対し、違和感を与えるのは得策ではなく、あくまで本物をイメージしてプレゼントする。叩きつけるように「バチャ!」と落とすのではなく、ソフトに「パシャ……」と着水させよう。

キャストするポイントを工夫
トップの好ポイントとして本物の虫が落下しやすいボサ周りやオーバーハングが挙げられるが、水深のある護岸際も見逃せない。いずれも注目すべきは泡の筋(=バブルライン)。落下物が集中して流れる筋になり、このラインを自然に流せることができれば釣れる可能性はかなり高くなる。ルアーアングラーからするとバブルラインは聞き慣れない言葉かもしれないが、フィールドではキャストする前に必ずチェックしたい。

静かにアプローチする
最後に、トップの釣りに限ったことではないが、川の規模が小さいほどアプローチには細心の注意を払うべき。無闇に水の中には入らず、闇雲に遠投するのも避けるべき。飛距離を伸ばすほど魚に警戒されないとしても、自然に流すのに関門が多く、出たとしてもバラシてしまう危険性は高くなる。トロ瀬などある程度区間の長いポイントは、いくつかのブロックに区切り、手前側から探っていくことを心がけたい。
「虫パターン」の効果は秋が深まる時期まで続く。一般的にタフコンディションとされる真夏の渇水期でも、虫トップは打開策の一つとなる。この夏~秋、川の一番手として使ってみよう!