アオリイカのエギングが好きで好きでたまらない。そんなスクイッドマニアたちは周年エギをシャクる。それはいつ行っても刺激や発見があるからにほかならない。ましてや初めての場所。シーズン終わりとシーズン始めの狭間という真夏のタイミング。どんな展開が待っているのかはシャクってみないことにはわからない!
アオリイカのエギングが好きで好きでたまらない。そんなスクイッドマニアたちは周年エギをシャクる。それはいつ行っても刺激や発見があるからにほかならない。ましてや初めての場所。シーズン終わりとシーズン始めの狭間という真夏のタイミング。どんな展開が待っているのかはシャクってみないことにはわからない!
写真と文◎編集部
春のデカイカ、秋の新子、夏シーズンは?
大阪生まれの大阪育ち、現在は東大阪市在住の濱口真衣さんは周年アオリイカをエギングでねらう、まさにスクイッドマニア。
近年、釣れるエギとして人気急上昇中のワイルドチェイスをはじめ、売り切れ続出のエギングロッド、さらに、エギングをより快適にするサポートグッズの開発・販売をするエギング専門メーカーのスクイッドマニアを代表する、紅一点のテスターだ。
「エギング以外にもアジングやロックフィッシュも大好きですが、やっぱりアオリイカのエギングは別格に面白くて、やればやるほど奥が深いと感じますね!」と元気いっぱいに語る濱口さんのホームグラウンドは紀伊半島で、自宅のある東大阪市から最南端の串本まで頻繁に往復する日々。漁港や堤防も手軽だが、現在は立ち入り規制も増えていることから、地磯をメインに渡船を利用して沖磯に渡ることも多いという。
「深場に落ちた冬でも、エギが届く範囲に回遊するワンチャンスがあるなら通います。そこから水温が上がってきてどんどん大型が接岸する春はデカイカのチャンスですから時間さえあればエギをシャクっています」と冬から春の楽しみ方を語る濱口さんだが、今回、やって来たのは真夏の伊豆半島。
「九州や四国へ遠征することはありますが、あまり北上することはなく、実は伊豆半島は初めてです。昔からエギングではよく聞く地名なので憧れもある反面、ハイプレッシャーで難しそうなイメージもあります。それと真夏のこのタイミングがどうなのかですよね」
夏エギングの特徴
乗っ込み、産卵というのはエギングにおいては春のキーワード。この産卵が上手くいったうえでその先にあるのが9月以降の秋イカシーズン。つまり、7月と8月は春生まれの新子がエギで釣れるサイズまで成長する期間であり、釣りをする側からするとオフシーズンと言っても差し支えないかもしれない。
「でも、そこがアオリイカの興味深い点で、夏イカシーズンと呼ばれるタイミングも存在するんです。簡単にいえば、大多数が新子である7~8月にもこれから産卵しようとする遅生まれの大型もいれば、すでに良型に育った早生まれもいるということ」
実際、春の大型シーズンに200~300gの小型が釣れることはよくあることだ。おそらく夏になれば500g前後に育って産卵に参加できるようになるのかもしれない。
「でも春先にふ化した早生まれのイカならすでに500g級に育っていてもおかしくありません。生まれて1年くらいの成熟した親イカだって、一度の産卵では死なず、二度、三度と産卵する個体もいますから、今でも2kgとか3kgの産卵絡みの親イカもいるはず。なのに、その横ではハッチしたばかりの赤ちゃんイカがプカプカ浮いているのが夏」
つまりは、行ってやってみないと分からない季節に、行ったことのない場所でこれから釣ろうというわけだ。「めっちゃ楽しみでしかない!」と、あくまでもポジティブシンキングな濱口さんなのであった。
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激流エギング攻略のカギ
今回は西伊豆の田子にて沖磯と沖堤防、翌日はボートを借り、3日目は雲見の沖磯に渡るスケジュール。
初日、沖磯へ渡してくれたのは田子の万集丸。事前に濱口さんからどんな釣り場かを聞かれた記者は「波穏やかな田子湾内の中にある藻場近くの平磯」と答えていた。それは以前、何度かアオリイカ釣りの取材で渡った磯が概ねそうであったからだ。
しかし当日、向かったのは田子の沖磯群の中で港から最も遠く、人気も高いうえに乗れる人数も限られていることから渡礁率が低いカツオ島だった。てっきりこの時期は湾内と思い込んでいたが、船長いわく「産卵目的の湾内の藻場ではなく、潮通しがよくてベイトフィッシュの通り道になるイカの捕食場の可能性があるここでやってみてください」とのこと。つまりは春イカは終わったということだろう。GW前後には湾内に多くいたアオリイカねらいの釣り人もほとんどいない。
カツオ島は北面に長くハエ根が延びており、その際からは水深が一気に10m以上落ち込む。沖向きもせり上がった根がいくつかあり、その溝ではメジナのほかマダイ、イシダイ、イサキ、青ものと多彩な魚が釣れる人気の一級磯だが、名礁の男島・女島との間の水道は川のような激流が走る。
「私、こんな激流の中でエギングをするの初めてです」
百戦錬磨の濱口さんも目を丸くしながらキャストを繰り返すが、着水するとあっという間に潮下に流され、まったく底が取れない状況。めげているのかと思いきや、「モンスター級が出るならこんな一級磯なのかも。ドキドキします!」と目を輝かせて、底取りができそうなヨレを探していく。

「ワイルドチェイス」のナチュラルな動きで勝負
スナップにシンカーを足せば底取りはできるが、あえてシンカーを外してナチュラルな動きを求める。
「このワイルドチェイスは切れのある軽快なダートで誘い、その後の自然なフォールでしっかり抱かせられるエギですから。潮噛みのよさにもこだわったボディー形状で、流れの変化といった海中の細かな情報をアングラーにたくさん与えてくれますし、レンジキープのしやすさも魅力です。なのでシンカーはイカのいるレンジまで届かない最終手段で使うかもしれませんが、まずはこのエギのポテンシャルで勝負してみます!」
ダートは誘いでありレンジキープのための手段で、イカが抱くのはなんといってもその後のフォール中が大半。ましてや産卵期に絡んだナーバスな親イカに対しては安定したブレないフォール姿勢が何よりも重要になる。
「こういうエギがあったらいいなというマニアたちの要望を詰め込んでいます。切れのあるダートと安定したスローフォールって、実は両立させるのは難しい。ワイルドチェイスは難しいロッド操作は必要とせず、リズミカルに3回シャクってもらえれば、思い描いたとおりに右左右と誰でもクイックな幅広ダートを演出でき、アクションを止めれば、ボディーの空気量を多くしてるので安定した姿勢でゆっくりと沈下します」
この動から静への切り替えが、ナーバスなイカに対して非常に有効なため、基本的には3回シャクってフリーフォールという動から静へのセットの誘いでセミオートマチックにイカが抱いてくる。あとは豊富なカラーバリエーションから当たりの色を探したり、ラトルの有無による反応の違いを探ってみたい。
「来ました!」三角に尖った足場のため、ヒットポジションからランディングポジションへの移行もままならずギャフ打ちに苦戦したものの、見事にファーストコンタクトしてきたイカをものにした濱口さん。
「いましたね!キロはないけど、船長が言うとおり、産卵よりも食い気という感じの元気なメスイカですね」
その後、同じ水道からまたまた700gほどのメスを追加。その後は反応が得られなかったが、逆にいえば朝マヅメをうまくモノにしたともいえる。
午後から夕マヅメ前の短時間だけ沖堤防に渡してもらい、船着場付近で300g級のメスを追加し、「これはまだまだ大きくなるでしょう」とその場でリリース。こうして初日は終了した。

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親指サイズと親イカが同居
万集丸では渡船のほかに9.9馬力の船外機がセットされた伝馬船(荷渡し用の小型和船)のレンタルも行なっている。濱口さん自身は、繊細なエギ操作や微かな触りの感知も可能なオカッパリを好むが「とはいえスピーディーに広範囲を探れるのは魅力です。まずは湾内が機能しているのか探っていきましょう」と言って、昨日探った沖堤防の対岸にある弁天島周りの田子湾口からチェック。めぼしい藻場はないように見えたが、いくつもの入り江が重なり、産卵場および秋イカのゆりかごに思えた。そしてすぐ前日にリリースしたイカと同じサイズがヒットしたが単発に終わる。
湾奥にある造船所周辺に濃い藻場があるとのことで行ってみたが、こちらも気配なし。しかし指先ほどのサイズのアオリイカの赤ちゃんが浮いていたことから、少し前までは産卵場として機能していたはずだ。
その後もチェイスがないことから、湾を出て北上しながらショアライン沿いをチェックしていくがチェイスがなく、禁句であるはずの「オフシーズン」という言葉が口から出そうになるなか安良里湾の湾口でついに展開が変わる。
湾央にボートポジションを取って岸に向かって投げてもコンッ。岸寄りにボートポジションを取って湾央に沈めても抱いてくる。着水後、ラインスラックを処理したのち数回シャクってワイルドチェイスをダートさせ、フリーフォールで着底を待つ間に明確なアタリが出るから楽しい。しかも1.5kg以上ある親イカも登場。
「親指サイズと親イカが同居するんですから、やってみないと分かりませんね。もうすぐ始まる秋イカシーズンにはこの親指サイズが主役になって楽しませてくれるんですから面白いです」
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明日の雲見もどうなるかと楽しみにしていたら、夕方、船長から連絡があり、コンスタントに釣れていたアオリイカがこの1週間はまったく釣れていないとのこと。時期的にも大きく好転するよりは終息に向かうと考えるほうが賢明とのことで、最終日は沼津方面に北上してランガンすることに。木負堤防はメインの西面の沖合がホンダワラのジャングルと化し、千切れた海藻がエギに絡まって釣りにならず。
戸田港では目測3kgアップの傷だらけの親イカが目の前を通過。ペアを組むメスを探しているのか、最後の力を振り絞って藻場をさすらう姿からは食い気はまったく感じられなかった。
「真夏でもこうしてフィールドに出ればいろんな発見があるのがエギング。そしてこれから始まる秋イカシーズンも絶対に楽しい発見がいっぱいあると思います」濱口さんはそう言ってまた目を輝かせるのだった。
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※この記事は『海のルアー釣り入門』(新保明弘著)を再編集したものです