芽吹きの季節に見つけられる美味しい食材。7沢に分け入っての本格的な山菜採りも楽しいが、身近な里や平地で見つかる野草も立派な自然食だ。川魚や野の食材を生かした料理店を営む戸門剛さんに、おすすめの15種を紹介してもらう。
春は芽吹きの季節。手軽に詰める野草をご紹介
写真・文◎戸門 剛
こちらの記事は月刊『つり人』2018年4月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
芽吹きの季節に見つけられる美味しい食材。7沢に分け入っての本格的な山菜採りも楽しいが、身近な里や平地で見つかる野草も立派な自然食だ。川魚や野の食材を生かした料理店を営む戸門剛さんに、おすすめの15種を紹介してもらう。
戸門 剛
山村文化にも詳しい父や母と家族で自然食材を生かした料理店を営む戸門さん。渓流釣りを愛好し、お店で出すイワナや山菜・野草の数々も自ら調達している
●郷土料理「ともん」
☎ 0429・62・2507
埼玉県入間市春日町1-3-2
※西武池袋線・入間市駅から徒歩10分。火曜・水曜定休
目次
ナズナ
ナズナ
生命力の強い春の七草
小さな白い花が咲く前の若苗が食用になる
春の七草の一つであるナズナは休耕田や荒れ地等でよく見かける越年草。白く小さな花を鈴なりに咲かせ、三味線の撥(ばち)を思わせる果実の形から『ぺんぺん草』の別名で親しまれている。主に1〜2月、地を這うように葉を広げた若苗を食用にする。採取にはナイフがあるとよい。ボイルしたナズナは水気をとり3㎝ほどに切り揃え、すった煎り胡麻、砂糖、醤油と和える。香り豊かな胡麻和えは春の到来を感じさせる一品。そしてナズナと言えばやはり七草粥だ。セリ、ナズナ、ゴギョウ(ハハコグサ)、ハコベラ、ホトケノザ(タビラコ)、スズナ(蕪)、スズシロ(大根)。今やスーパーでも気軽にセットで購入できるこれらの野草だが、自ら採取したものはまた格別のはず。
ノビル
ノビル
野趣漂い酒肴にぴったり
ノビルは全体にネギの臭いがある。ネギ臭がないものは有毒のタマスダレの可能性があるので避けること
1〜4月頃、土手沿いを中心に野原等に自生する。固い地質に密集して生えたものより、小石混じりの柔らかな地質にまばらに生えたもののほうが丸い鱗茎が大きく、引き抜くのも容易だ。スコップを使うと採取には便利だが、鱗茎の小さなものは再び元に埋め直し、次の機会に楽しませてもらう配慮が欲しい。おすすめ料理は『ノビルの一文字』。汚れを落としたノビルを手早く湯に通し冷ました後に、ひげ根を取り除く。青い葉の部分を紐代わりに、鱗茎のやや上からくるくると巻けば、見た目も愛らしい小坊主の出来上がり。酢味噌を添えれば春を感じさせる一品に。酒の肴なら辛みを活かした醤油漬けもいい。密閉出来る容器に板昆布を敷き、生のノビルを重ねて醤油と酒を振り掛け、冷蔵庫に暫く置けば完成だ。
ハリエンジュ
ハリエンジュ
目立つ白い花が可食部
5~6月に目立つ白い花を付ける
主に街路樹として、また最近では川沿いの土手で目にすることも多いハリエンジュ。俗にアカシア(ニセアカシア)と呼ばれ、5月頃から咲き始める白い花を食用にする。採取するなら大通りに植えられたものより、せせらぎに佇むものを選びたい。また満開の花弁よりも五分咲き程度のもののほうが香り、質ともに優れている。ハリエンジュの枝には所々に棘があるので軍手は忘れず持参すること。生は天ぷらにすると上品な甘みがクセになる。またハリエンジュといえば甘酢漬けが定番料理。茎からしごくように花を外し、熱湯でサッと茹でたら冷水に。風味を損なわぬよう優しく絞ったものを甘酢に漬ける。ほのかに赤みが差したら完成だ。そのまま食べても、サラダ等に添えても、またゼリー寄せにしても美しい。
食べられるのは花と花穂。葉や果実は毒性があるので食べない
フキ&フキノトウ
フキ&フキノトウ
春の野草といえばこれ
川辺に多く生えるフキ
田畑の畦や河川敷等を好んで生えるフキは、古来より日本人に愛されてきたキク科の多年草。長く伸びた葉柄や、フキノトウ(若い花茎)を食す。日向より日陰、里より山、暖かな土地より寒い地方のものがアクが少ないように思う。しかし街中のフキノトウでも、地中から姿を現わしたばかりの萌葱色のものは苦味も弱く、天ぷら等に向く。生のものをざっくりと刻み、味噌汁に浮かべても鮮烈な味わいが楽しめる。成長し花が開いたフキノトウは、茹でてから流水にさらしてアクを抜き、刻んで酒と味噌とを合わせたら、しっかり練り上げてフキノトウ味噌に。また、丈が短く柔らかなフキは、それ自体の甘みを活かすため葉ごと切り揃え、薄味の含め煮にするとよい。長く伸びたものは葉を切り落とし、柄の部分だけにして皮を剥く。暫し水に漬けアクを弱めた後、甘辛く強めの味で煮付けキャラブキにするとよい。
春の風物詩といえるフキノトウ。そのままのほかフキノトウ味噌がおすすめ
ヨモギ
ヨモギ
天ぷらでも餅でもよし
身近な土手にも大量に生えるヨモギは食材としても優秀
河原や野原等、日本全国どこにでも見られる多年草。血止めや殺菌効果に優れ、葉裏の綿毛はお灸のもぐさの原料となるが、若葉は食べても美味。食用にはまだ丈が短く、柔らかな先端部だけを選んで摘むとよい。生のヨモギは薄衣でカラッと揚げて天ぷらにする。ほのかな苦みを味わうには天つゆよりもやはり塩で。そしてヨモギ料理の代名詞といえば、茹でたヨモギを刻み、餅と搗き合わせて作るヨモギ餅(草団子)だ。ヨモギの別名、餅草はここから来ている。また、夏の川遊びでは河原のヨモギを石で摺り潰し、その汁を水中眼鏡の内側に塗ればお手軽な曇り止めになる。覚えておいて損はないはずだ。
郷土料理「ともん」
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