「友釣りビギナーにぜひ釣ってもらいたい」と猿渡俊昭さんが太鼓判を押す川が板取川上流だ。浸かるだけで癒されるほど透明度が高く、天然遡上の多い今夏は追い合うアユの姿が各所で見られる。
アユ釣り初心者に立ちはだかるのがハリの選択と使い分け。名手・島啓悟さんの極めてシンプルなハリに対する考え方を参考に、自分なりのスタイルを築いてほしい。
写真と文◎編集部
アユ友釣り名手のハリ合わせ
名手たちにハリ合わせについて話を聞くと、難しく考えていない、ハリ合わせはできないという声が多い。島さんの場合も同様で、神経質になるほど意識はしていないと話す。
島さんのハリ選びはいたってシンプルだ。軸となるハリの形状はそのままで軽く・細くするか、太く・重くするかで状況に合わせていくことを基本としている。オトリが小さかったり泳がせたりするなら細く、ケラれるなら重くしてパンチ力を上げるといった具合のスタンダードな考え方だ。シンプルに考える理由は、ハリを変えるだけでなく釣り方を変えても掛かりは変わってくるためハリ選びはあくまでも選択肢の一つに過ぎず広げすぎないようにしているからとのこと。
号数選びも一般的な考え方で、6.5号を基準として釣れるアユのサイズに合わせて20cm以下の小型なら6号、良型でハリが折れたりするようなら号数を7や7.5に上げていく。
島さんの軸となっているのが一角(オーナーばり)。ストレートなハリ先と角張った形状が特徴で掛かりとキープ力を両立させているハリだ。島さんはポンと一瞬だけハリに触っただけでも掛かりやすいストレートなハリ先が好みだそう。
一角には形状は変わらずに細軸で軽い「一角ライト」、太軸で重い「一角ハイパー」が用意されており、号数も同じ展開なので形状・サイズを変えずに重さと太さだけを変えることができるのでハリを変えた効果が分かりやすいのもこのシリーズのメリットだ。
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釣り方に合わせたハリ選び
その釣り方だからこのハリ、というのが島さんの考え方だ。ソリッド穂先を駆使してラインテンションを調節してオトリを動かす島さんのスタイルではソリッドが曲がる程度にテンションを掛けていることが多いため、底べったりで泳ぐフリーな泳がせよりもほんの少し上をオトリは泳いでおり、その分ハリも幾分浮いている。つまり、ハリ先が底石にコンタクトしにくく、ストレート系である一角でも鋭さをキープしたまま釣りができるのだ。
オトリまかせで泳がせる釣り方だと底石に頻繁に当たるためストレート系のハリは不向き。谺(オーナーばり)のようなシワリが入っているもののほうが内側にネムっている分だけハリ先が底石に当たりにくくハリ先の持ちがよい。シワリ形状のものは掛かりの速さがストレート系に劣るものの深く刺さりやすいためキープ力が高いのが特徴でもある。
対して引き釣りではどうかというと、流れに逆らって引っ張るため、ハリは流れを受けて浮き上がっていることが多い。掛かり優先のストレート系でも問題はない。
向こうアワセの釣りであるアユ釣りではハリ先の鋭さはとても大切だと島さんは話す。ハリ合わせはさまざまな要素が複雑に絡み合っているが、まずは難しく考えずに釣り方に応じてハリ先の鋭さを保つことを重視して、少しずつ選択肢を広げていくとハリ合わせの近道になるのかもしれない。
身切れの対策は太軸だけじゃない?
解禁初期や増水時など身切れが頻発する場合、一般的には太軸に変えていくとよいとされているが、実は太くするほど身切れしやすく、細くしたほうが身切れしない場合もあると島さん。
太軸にするほど身切れしにくいというのは抵抗が大きくなるため同じ力では裂けなくなるからだ。一方で、太軸にするとハリの強度は増して硬くなるため伸びなくなる。つまりクッション性が失われてしまうことで身切れを引き起こすこともあるそうだ。その場合はむしろ細軸にしたほうがクッション性を高められて身切れしにくくなる。
また、シーズン後期などアユが大きい場合、ハリが貫通せず、ウロコだけを拾ってくる場合もある。そんなときはハリを重くして弾かれないようにするほかに、ハリスを軟らかくすることでも対処できる。ハリスが柔らかいとハリが巻き付くようになり、ハリ先と皮が長い時間触れることで掛かるチャンスが増えるからだ。

※このページは『つり人 2025年10月号』に掲載した記事を再編集したものです。