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つり人編集部2026年1月21日

ハサミの刃が欠ける耐摩耗性!? バリバスが開発中の新素材「CNT」ラインとは

「PEライン用のハサミでも切れないどころか、刃が欠けてしまう」。そんな常識外れの耐摩耗性を持つ釣り糸が、現在開発されているのをご存じでしょうか。その正体は「カーボンナノチューブ(CNT)」。

釣りフェス2026のバリバスブースで展示されたこのラインは、株式会社バリバスが自動車部品メーカー・東海理化グループと協力して開発を進めているもの。 従来のナイロン、フロロ、PE、エステルに次ぐ「第5のライン」として、釣りの常識を覆す可能性を秘めています。 今回は、会場で明かされたスペックと、フィールドテストで見えてきた驚きの特徴について解説します。

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まとめ◎つり人オンライン編集部

1946年創刊の雑誌「月刊つり人」を筆頭に数々の釣りに関するコンテンツを作成してきた「株式会社つり人社」のWeb編集部。 80年にわたり「釣り」と向き合ってきた知見と、現場を知り尽くした編集部員・プロアングラーのネットワークを活かし、確かな情報をお届けします。

新素材「カーボンナノチューブ(CNT)」とは

カーボンナノチューブ(CNT)とは、炭素原子同士が強固な共有結合によって円環状(チューブ状)の構造をとった素材です。化学的・熱的に極めて安定しており、これを束ねて糸状にしたものが、現在バリバスが開発を進めている「カーボンチューブ糸」です。

自動車部品などの製造で高い技術力を持つ東海理化グループと、フィッシングラインのトップランナーであるバリバスがタッグを組んで検討を進めているこのプロジェクト。単なる素材の転用ではなく、釣りの現場で求められる性能を追求する中で見えてきたのは、既存のラインとは一線を画す特性でした。

驚異の「耐摩耗性」:PE用ハサミが負ける?

この新素材ラインの最大の特徴は、圧倒的な「耐摩耗性」にあります。開発段階のエピソードとして、「従来のPEライン用ハサミで切ろうとしたところ切れず、逆にハサミの刃のほうがダメになってしまった」という話があるほどです。

CNT (3)

直線強度と耐摩耗性の比較

既存のライン素材と単純な強度比較をすると、以下のようになります。

  • 直線引張強度:PE > CNT > ナイロン・フロロ
  • 耐摩耗性:CNT > ナイロン・フロロ・PE

直線の引っ張り強度こそPEラインに及びませんが(PEより少し弱い程度とのこと)、根ズレなどに対する強さは最強クラスと言えます。障害物周りでの攻防において、これまでにないアドバンテージをもたらす可能性があります。

また、それだけ強度があるにも関わらず、糸自体には一定の「しなやかさ」があるのも特徴です。ノットの締め込みも可能で、電車結びなどが問題なく結束できることが確認されています。

カーボンナノチューブ(CNT)と他素材の比較
素材 直線強度 耐摩耗性 比重
CNT (新素材) 強い 非常に強い


0.87~0.96
(水に浮く)
PEライン 非常に強い 弱い 約0.97
(水に浮く)
ナイロン/フロロ 普通 普通~強い 1.14 / 1.78
(水に沈む)

比重・感度・使用感の実際

実際に釣りの現場で使うとなると、気になるのは比重や感度といった操作性に関わるスペックです。

比重はPEラインと同程度

カーボンナノチューブラインの比重は「0.87~0.96」程度とされており、これは一般的なPEライン(約0.97)とほぼ同等です。水に浮きやすいという特性はPEに近い感覚で扱うことになるでしょう。

「伸びない」のに「しなやか」? 不思議な感度特性

感度に関わる「伸度」については、PEラインよりもさらに少ない(低伸度)というデータが出ています。理論上、伸びが少なければ感度は良くなるはずですが、フィールドテストでは一筋縄ではいかない結果も出ています。

アユの友釣りでのテストにおいては、太い号数を使用した際、「しなやかで感度があまり出ない」という現象が見られました。テスターからは「木綿糸のよう」とも評される独特の質感があり、細い号数に落とすことで十分な感度が得られたとのこと。一方で、このしなやかさがオトリアユの自然な泳ぎを引き出すというメリットも確認されています。

CNT (2)

カーボンナノチューブライン実用化への課題

カーボンナノチューブラインは大きなメリットもある一方で、実用化に向けては課題も存在します。

金属に触れると腐食するリスク

開発段階で判明した大きな課題が、「金属に直接触れると、その金属を腐食させてしまう」という現象です。素材そのものが金属に対して何らかの化学反応を引き起こすと言われており、裸の状態でリールのスプールに巻くと、スプール自体を傷めてしまう恐れがあります。そのため、他メーカーの試作品などでは、表面をポリエチレン(PE)で被覆する対策が取られています。

現状は「黒」しか作れない

もう一つの課題は「色」です。カーボンナノチューブという素材の特性上、現状ではラインのカラーは「黒」しか製造できません。視認性が求められる釣りにおいては不利な要素となり得ます。

ただ、今後の技術開発によるカラー化や、コーティングによる着色で問題はクリアできる可能性もあるとのことです。

まとめ:フィールドテストで進化中

バリバスのカーボンナノチューブラインは、まだ研究段階であり、テスターによるフィールドテストが繰り返されている最中です。どのような釣種に最適化されるのか、コスト面はどうなるのかなど、不明瞭な点は残ります。

ちなみに、この素材には「電気を通す」「特定の条件下で動かすと発電する」という不思議な特性も確認されています。工業製品としての展示会では豆電球を光らせる実演もあったそうですが、これが釣りにどう影響するかは未知数です。

まずは「ハサミで切れないほどの耐摩耗性」という一点だけでも、多くの釣り人が抱えるラインブレイクの悩みを解決する救世主になり得ます。往来の釣りがどのように変わるのか、今後の発表が楽しみです。

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