アジングロッドの「感度」を科学する。振動伝達、荷重変化、目感度。3つの感度を極限まで高めるためのビルディング術を、注目ビルダー「がう」さんが解説。グリップエンドは開けるべきか?チタンティップの真価とは?物理学的視点から、理想の一本を追求する思考法。

解説◎がう
ロッドビルディング界で注目度の高いブログ「さお・うお・ひと」管理人。理論派で知られ物理学の知識を生かし独創的な作品を多く手掛ける。個人ビルダーの域を超えパックロッドのブランク開発にも挑戦し、釣りフェス2026にも出展予定。
ブログ:さお・うお・ひと
個人ロッドビルダーだからできること
本稿の解説は編集部が気になっていた独創的ロッドビルダー「がう」さんにお願いした。つり人社が運営する釣り専門クラウドファンディングサイト「釣りファン」で目標達成率500%を記録した「スマートフォンサイズに収納可能な超小型ルアータックルセット」のロッド製作も手掛けた人物だ。今回は個々の作業のハウツーは他の機会に譲り、ロッド制作時のアプローチを教えてもらったところ、アジングロッドというタックルの理解を深めるうえで非常に興味深い話が聞けた。以下、がうさんの解説
ロッドビルディングを始めたきっかけは、出張が多い職場にいたときにパックロッドがほしくて、手持ちのサオをぶった切って作ってみたのがきっかけです。いまではブログを通じて興味を持ってくれた方からオーダーをいただくこともあり、得意としているテレスコピックやパックロッドをメインに、ビッグベイトロッドからアジングロッドまで、年間10~20本ほど製作しています。
アジングの世界でロッドビルディングが盛り上がり始めたのは2010年代の前半くらいだと思いますが、アジングロッドで攻めた設計の製品がまだまだ少なく、安全マージンをしっかり取って、誰が使ってもトラブルが起きにくい、でもそのぶん少し過剰に丈夫で重いサオが多かったのかなと。
極限まで繊細な釣りだから、ほんとは強度なんてそこまでいらない。軽ければ軽いほどいいし、感度は高ければ高いほどいい。じゃあ、自分で作ればかなりのところまで追い込めるということで、みなさんロッドビルディングに挑戦していったのでしょう。チタンティップの効能を提唱しビルダーに普及させたミザールさんとか、ほかにもブログなどで発信していたビルダーさんがあれこれ試し、ブログやSNSで共有して試行錯誤しているのと並行してメーカーからもいいものが出てきた、というのがアジングロッドの世界だと思います。
アジングロッドの感度とは?
私がアジングロッドを製作するときには、コンパクトで性能を出せる物とか、世界最軽量を目指すとか毎回テーマを変えてやっているんですが、やっぱり感度にはこだわっています。ロッドビルダーとして感度の話をするには、まずその感度ってなんなのかというところから始めないといけません。
私は大きく3つに分けて考えています。
ひとつは振動伝達。ラインやルアー、地形など、なにかしらの変化が振動として手もとにどれだけクリアに大きく伝わってくるか。いわゆる反響感度とか言われる領域です。
2つ目は荷重変化。潮や風、アタリなどによって手に感じる重みが軽くなったり重くなったりする、その移ろいの伝わり方。ここは振動ではなくて荷重の変化をいかに捉えるか、という話。
3つ目は視覚的な目感度です。
| 分類 | 概要 |
|---|---|
| 1. 振動伝達 | ラインや地形の変化が「振動」として手もとに伝わること。(いわゆる反響感度) |
| 2. 荷重変化 | 潮やアタリによる「重みの変化」を感じること。(振動ではなく重さの移ろい) |
| 3. 目感度 | 穂先の曲がりなど視覚的な変化でアタリを捉えること。 |
ここでは振動伝達と荷重変化をとるためにどうアプローチしているかをお話しますね。
振動伝達は素材の組み方で大きく変わる
まず振動伝達に関しては、一般的に言われているように高弾性のカーボンであったり、素材そのものの伝達のしやすさはもちろんあります。でも、手に入るなかでいい素材のブランクを使うだけでめちゃくちゃ響くかというとそうでもなくて、組み方次第で大きく変わるんです。アーバー(ブランクとリールシートの隙間を埋めるパーツ)の素材や位置関係、グリップ長の取り方、リールシートの配置など、なかなかひと口には言えないほど奥が深くて私も研究中ではあります。
この振動伝達がテレスコピックでいい感じに出たことがあって、どうしたらこれを再現できるのかを未だに試行錯誤しています。これはテレスコだったのでだんだんバットが太くなってきたいところにアーバーを使わないでリールシートを付けるような形で、市販のものだとクリアブルーさんのクリスターみたいな形にも近くなっていたんですが、私の分析では別にアーバーがなかったから感度がよかったわけじゃないのがわかったんです。
「定常波」を探せ
なにが起きていたかというと、穂先から入力された振動は波として伝わってくるので、サオ尻までいったときにそこから跳ね返ってくるわけですね。穂先からの波とバットからの波がちょうど重なる部分で合成されて大きくなる箇所があるはずなんです。物理学では「定常波」と呼びますが、これが起きている部分では、ティップから入力された振動よりも、振れ幅が大きく、長時間振動し続ける波が現れます。ただ組み方が合っていないと定常波がどこでも検知できない場合もありますし、また定常波による振動がノイズとして作用してしまう場合もあるので、唯一解ではないと考えています。
この状態をつくり、その波が最も大きく振れる位置を探したいのです。それは仮組みでパーツを接着する前に確認することができるんです。リールシートの位置を1cm前にずらしたらちょっと外れたなとか、エンドにちょっと板オモリを巻いてあげてバランサーにしたらいい感じになったなとか。逆に消えちゃったなとか。たぶんメーカーだとシリーズのモデルごとにそんな細かいところまで追い込むのは難しいと思うんですけど、ビルダーだったらここに0.5g追加してみようとか、ひとつひとつ手組で見つけていけるのが強みですよね。
具体的にその部分を探すには、仮組みで実際にリールをつけた状態をまず作って、グリップ前方のバットの辺りを軽く弾いて探しています。定常波を拾える位置に付けられていれば、ビーンと数秒振動が出ます。その方法でうまく組めば、結んだラインをつんつんしてあげたりとかしてもやっぱりよく響きます。最終的には釣り場で確かめることになりますが、作業台の上でも振動伝達のセッティングはかなり見極められるんです。
グリップエンドは開ける? 閉じる?
「グリップエンドは開いた(サオ尻を塞がない)ほうが反響感度がよい」という話もよく聞きますが、ごめんなさい、私は否定派です。これは反響感度という言葉に語弊があると思うんですけど、反響っていうのは音が空間の中で跳ね返りながら響くことじゃないですか。ロッドの場合、感じたいのは音ではなくて固体の振動なんです。で、サオ先から伝わった振動がそのまま通り過ぎて終わりじゃなくて、帰ってきたときにうまいこと振動が重なってほしい。エンドを開けるか閉めるかはその跳ね返り方が変わるだけなので……。確かに開けていると楽器のように音はそこから出るんですよ。でもその分は音のエネルギーとして大気に解放されちゃうのでロスなんですよね。なんなら塞いでいたほうがロスなく跳ね返るだろうと。
ただ、開けていたほうが軽くなるっていうメリットは確かにあって、これは後述の荷重変化を考えるときに重要になってきます。あとテレスコを組むときはどうしても開けておかないとメンテナンスができないので実際に作るときには解放するのが多いんですけど、振動伝達の感度にこだわって作ってくださいと言われたら私は閉めますね。
荷重変化は慣性モーメントが重要
荷重変化を感じたいとなると、いわゆるロッドのバランスの話と、穂先の軟らかさの2つの話がよく出てきます。
まずバランスの話で言うと、よくサオ先が上を向くほうがいいとか、リールを付けてどの位置に重心が来るとかをよく考えるじゃないですか。でも荷重変化を感じるってことは簡単に言えばサオが動きやすくなればいいわけですよ。そうなるとバランスというよりも慣性モーメントって話になってくる。
ロッドエンドは軽いほうがいい
タックルを模式化すると手もとのリールから前後に棒が伸びてる状態で、手もとを軸としてその棒を回す動きになる。すると、例えばバランサーをたくさんエンドに入れて、穂先が自然と上を向くようにしたとしても、棒の端を重くしちゃってるので動きにくくなっているんですよ。重たいものが軸から遠いところにあればあるほど動きにくくなるので。なので、エンドにウエイトを入れてバランスをとるっていうのは、アジングロッドにおいてはほぼ百害あって一利なしだと思ってます。
そのうえでバランスも考えていくのですが、重心が完全に手もとにくるゼロバランスや穂先が上がるリアヘビーだと、軽いアジングタックルでは手もとが安定せず優しく持ちにくいんです。それにゼロ負荷状態でも軽く掌に重みを感じていられるほうが変化に気づきやすい。なのでスピニングの持ち方だとほんのちょっと前下がりくらいのバランスのほうが脱力して持てて荷重変化にも気づきやすいです。
ティップ素材は、なんだかんだでチタンが優秀
次にティップの話なんですが、バランスがあまりよくないロッドでも穂先が充分に軟らかければ荷重変化はわかるんですよ。その点でやっぱりチタンティップは有利なんです。普通のチューブラーとかカーボンソリッドでやったら無茶なくらいの極端な曲がりと軟らかさを出しても強度が出せる。カーボンソリッドでやったら0.3mmくらいまで削らないと出せないような入り方をチタンだったら0.5mmとかで出せますから。
金属だからめっちゃ振動が響くってわけでもないんです。確かに、長めのチタンティップで作ると大きめに振動は出るんですけど、やっぱり金属なので重い。その重さが使用感に悪影響を及ぼしたりするので制約もあります。ベリーを強くしないと負けちゃいますし、チタン部分を長くすればするほどダルダルになる。なんだかんだで、マグナムクラフトさんのライトゲーム系のブランクに、ミザールさんのチタンティップを合わせるのがビルダー目線での基準なんでしょうね。
私もチタンティップを組む場合は、手に入るブランクの中でベリーの硬さとそれを受け止めるバットとで悩みながらやるんですけど、チタンの長さを8~12cmくらいの短めにして、継ぎ目の部分の径が1.0~1.2mm、先端を0.5とか0.4mmまで削り込む急テーパーで組むことが多いですね。そこまでやるとほんのちょっとの力でクンッて入るんです。なのでチタンが絶対いいってわけじゃないんですけど、荷重変化が取れる、でも折れない。で、全体としてはちゃんと必要な張りがある、という条件をクリアしていこうとすると、チタンって優秀だよねとなります。悩んでたことが一気に解決しちゃう。
チューブラーやソリッドも適材適所
その一方で、そこまでティップを入らせる必要がないとか、入ったらちょっと使いにくいとかのシチュエーションもあるはず。潮が速いとか、相当なディープを探るとか。それだったらカーボンのチューブラーで作ったほうが振動もよく伝わってきます。
カーボンソリッドはチューブラーよりは軟らかくしたい、でもティップは軽くしておきたいときが出番ですね。先径は0.5mmまではやってみたことがあります。市販でいちばん攻めているロッドもそれくらいですよね。さすがに0.4mm以下になってくるとちょっとしたことで折れてしまいます。0.5mmなら扱いに気をつけていれば大丈夫、でもぶつけたら残念、って感じですね。
こういった柔軟なティップにグロー系のスレッドでガイドを付けて目感度を上げることもあります。
で、最後に身も蓋もないですけど、ロッド自体を極限まで軽く作れればそれだけで荷重変化はとれるので。ロッド重量が20g未満とかになってくると、もう勝手に動くので、なんか全部解決!みたいになりますね。
とりとめのない話になってしまいましたが、釣りフェス2026にも「超本格派・超小継テレスコルアーロッド Gautra Works」として出展しますので、ぜひお声がけください。
※このページは『つり人 2026年1月号』の記事を再編集したものです。
