遠くに行かなくても、夢中になれる魚はいる。仲谷聡さんがリバーハンティングと呼んで提案するのはカワムツやオイカワといった河川の身近な魚をねらう釣り。なかでもカワムツはルアーでねらう通称・川ムツングのほかエサやテンカラでも楽しめる好敵手。 散歩の延長で熱くなれる遊びに出かけよう!
遠くに行かなくても、夢中になれる魚はいる。釣具メーカー「ゴールデンミーン」の開発室長・仲谷聡さんが「リバーハンティング」と呼んで提案するのが、カワムツやオイカワといった身近な河川の魚を狙う釣りだ。なかでもカワムツは、ルアーで狙う通称「川ムツング」のほか、エサ釣りやテンカラでも楽しめる好敵手である。
本記事では、散歩の延長で熱くなれるこのカワムツの釣り方3種を、仲谷さんの解説とともに紹介する。
写真と文◎松本賢治
カワムツ釣りの魅力
45年ほど前……小学生の時にカワムツをルアーでねらっている釣り雑誌の記事を見たんです。スピナーを買って、やってみたら釣れました。でも、今ほど数は釣れなかったです。やっと釣れたって感じでしたね」と懐かしく釣り人生最初の1尾を振り返る仲谷聡さん。そして、ひと通りの釣りをやってきて8年前に再びカワムツのルアーフィッシング=川ムツングへと戻ってきた。だが、昔とは状況は違う。
釣りの進化とタックルの進化によってカワムツは入れ食いとなり、そのゲーム性の高さと新カテゴリーの誕生に熱くなった。 「カワムツは身近にどこにでもいる魚。 しかも、小さくて浅い川に群れていて、雑食性で好奇心も旺盛やから釣りやすい。タックルも軽いし手軽に始められて誰でも釣れるから面白い。だから、釣りがこれからっていうビギナーの方にこそやってほしい釣りですね」と話す。
きれいな小規模河川を何気なくのぞいて小魚の群れを見たことがある人も多いはず。それはカワムツである可能性が高い。ビギナーでもイージーに釣りやすい魚と述べたが、状況次第という難しさもあることからベテランでも楽しめる奥の深さに仲谷さんはハマってしまった。 「すごい群れがおって1投目から釣れたとしても翌日にはおらんとか低活性になってることも多々ある。どっかにはおるんでしょうけど姿が見えないとか。でも、風が吹いたり気温が上がったりして状況が変化すると突然、釣れ出したりする。ちゃんと時合もあるし。やってみると、なかなか奥が深い」
釣り方自体は簡単だ。1~2gのスプーンをメインに、投げてゆっくり巻くだけ。レンジもアバウト。浅いところをねらうためそこまで難しくない。
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カワムツ釣りの時期
考えるとしたらカワムツのいるポイントを探せるかどうか。「最盛期は水温が安定し始める5月上旬~中旬くらいから12月まで。長いでしょ。キモは水温の安定です。4~5月上旬だと冷え込む日もあったりして、まだ水温も安定しないので魚が溜まっているところを探すのに時間が掛かることもある。水温が安定するまでは、どこか下流の水深のあるところにおると思います。 低水温期はまったくおらんからね。でも、水が温んできたら急に現われる。1回支流に入ってきたら、そんなに大移動はしていないと思います。狭い範囲を移動していて環境のいいところへ溜まっている。水温が安定する5月中旬以降ならどこにでもいます」
身近な河川にカワムツはいるのだが、もっと絞り込んだ言葉を付け加えるならアクセスしやすい里山の河川が正解だ。「どうせやるなら、気持ちよくてキレイな川がいい。カワムツもそういう環境のほうが多いし、よく釣れる。都会から近くて静かな里山の小さな川、そういう場所で釣れるんです。上流にはアマゴやイワナがいるけど、カワムツも一応います。ただ、そこまでいくとアブラハヤが増えてくる。アマゴやイワナがいなくなるあたりからはカワムツばっかりになるし、さらに下るとオイカワが混じり、もっと下るとオイカワばっかりになる。だからエリア的には線引きがある感じで、一見カワムツの範囲って狭そうに聞こえるんですけど、実際にはけっこう広いんですよ」と説明する。
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カワムツの産卵は春。オスはオレンジ色の婚姻色が出て追い星が出るのが5、6月でコンディションのいい個体が釣れる(オスのほうがメスよりも大型化する)。ネイビーの縦帯も特徴といえる。 「僕の記録は19cm。それは、武庫川上流(兵庫県)で釣りました。 20cm釣ってる人もいて、すごく迫力ありますよ。引きも強いし。でも、このサイズはなかなかおらん。デカいのは釣りたいですけど15cmが釣れれば満足という感じです」
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カワムツ釣りのポイント
川ムツングは魚の存在を目で確認してからのほうが効率いいことがわかる。ある程度のサイズの群れを見つけたらスタート。もちろん、いることを確認してからなのでサイトで釣ってもいいが、そのエリアをブラインドで探るのが基本。その狭い範囲の一番大きな(強い)個体から釣れて、数を釣るほどにサイズダウンする傾向にある。
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「だから、一発勝負でもある。水質がクリアで浅いところでやるから、一番最初のアプローチには気をつけます。川ムツングとはいえ、遠目から姿勢を低くしてキャストしたりね。減水してさらに浅くなってたりしたら鳥にねらわれるリスクもあるからか、警戒心も強い状態になっていて、水辺に近づいたら散ってしまって釣れなくなります」と最初のアプローチの重要性は他魚種同様だ。
理想の水深はひざほど(水深40〜50cm)だという。 これくらいあると魚のストック量や活性の高さが期待できる=釣りやすい状況だという。さらに、流れもほしい。水質はクリアがいい。 5月に入り、これら条件が揃っていればカワムツは広範囲に散っていることから非常に釣りやすいといえる。
カワムツ釣りのおすすめ仕掛け3種
基本的には先に伝えたスプーンやスピナーでのルアー釣りがオススメだが、仲谷さんはさらにエサ釣りとテンカラ釣りもオススメする。
「カワムツは雑食性でなんでも食べる。 流れのあるところがいいのは、流れてくるエサを食べている活性の高い個体がいて釣りやすいから。エサ釣りだとエサはアカムシとかサシとかでいい。ウキ釣りでね。特にビギナーの方にはオススメですね。すぐに釣れるはずです。
そして、僕が近年トライしているのがテンカラ釣り。これはキャスト自体もちょっとコツがいるから、ベテラン向きではあります。ビギナーの方は最初はキャストが難しいとは思いますけど、ちょっと練習したらテンポよく釣っていけるのでハマると思いますよ。道具も一番シンプルやし。ドライ(水面に浮かせる毛バリ)に魚が出るのが見れるから最高に面白いですよ!」と仲谷さんはルアー、エサ、テンカラの3タイプのカワムツゲームを提案。
イージーな順でいくと、エサ→ルアー→テンカラとなる。そして、それらのロッドは各カテゴリー、ゴールデンミーンからリリースされている。 エサ釣りのロッドは、万能ノベザオの『イージースティック』シリーズ。カワムツにオススメなのはシリーズ中一番短い5.4m。近年、流行りのアユルアーでも使えるパワーと軽さを兼ね備えている。
ルアーロッドは川ムツング専用である「ライトリバーフライ」シリーズ。1g前後の軽量ルアーをきっちりキャストでき、さらに小さなアタリも弾くことないノリのいいティップ。さらに、20cmクラスの大型カワムツも引き抜けるパワーもありバランスよく設計されている。レングスも5フィートと5.6フィートという小規模河川でも使いやすい長さ。リールはビギナーでも簡単にキャストできるようにクローズドフェイスのアンダースピンを付けている。1000番のスピニングでもいい。
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テンカラは『テンカラマスター360』がある。「テンカラのラインはビギナーの方には市販のテーパーラインをオススメします。ロッドに合わせた3.6mが売られているので、それを買ってハリスを結べばすぐに使えます」 カワムツゲームの世界観は現在も拡大中なのだ。
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3種の釣り方でエンジョイ!
仲谷さんのお気に入りは京都の亀岡市、南丹市を流れる園部川とその支流である本梅川(ほんめがわ)。毎年通っており、かなりのポイント数があるようだ。だが、今回訪れた5月上旬のタイミングでは大減水&代かきが重なり川ムツング大ピンチ……という状況だった。
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ルアーで連続ヒット
「毎年通ってますけど、こんなに減水してるのは初めてです。半分以下。おまけに代かきが入ってしまって濁りがすごい。濁ってたらカワムツはおらんようになるんです。でも、昨日のプラで何ヵ所か溜まってるところは見つけてるんで、そこに行ってみましょう。でも、今日、おるかな……」と向かった本梅川の水位のあるポイント。時折、10cmほどのカワムツの小さな群れが見えたものの反応が悪い。
「昨日はすぐ1尾釣れたんですけど今日はチェイスすらしないですね」 しばらくやってみたが不発。川ムツングは基本ランガンの釣り。こんなことではめげない。減水しているため、次のポイントまでが結構遠い。歩く、歩く、歩く……だが、何とも気持ちのいい日和に恵まれ苦にならない気持ちよさ。タックルも少なく軽装備なところもいい。だが、次のポイントでも不発、その次も……。
「まだ(午前)8時ですから。水温が上がってきたら釣れると思いますよ!」と仲谷さん。 午前9時過ぎ。水深のある流れが利いているポイントへ入った。気温もグングン上がってきて、シャローの水温上昇を期待したところで、いきなりアタリがきた。スプーンのうしろ50cmには、カワムツの群れがチェイスしている。 「おるおる!一気に活性が上がってきた感じやね!」と仲谷さんは俄然テンションを上げる。 そして、まずは1尾。そして、2尾目と連発劇のスタート。さらに、同行した川ムツング2度目のビギナー、ウエジュンにもヒット。数尾、釣ったところでスレたのか反応が薄くなったため移動。
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エサ釣りでもキャッチに成功
同じ川でも代かきの影響が少ないところがあり、そこを探してランガン。ルアーで釣果を上げたウエジュンは次はエサ釣りに挑戦。アカムシをエサにウキ釣りで仕掛けを遠くから振り込む。そう、大型から釣れるため最初の数投が勝負。『イージースティック』は軽量で振り込みやすく女性でも難なく使える。長さも5.4mあるため魚から離れてねらえる強みがある。そして、ねらいを瀬落ちに定めた3投目。なんと、今日イチの14cmが飛び出してきた。 「きゃー、むっちゃ引く!やったー!!」 と大騒ぎ。
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テンカラ釣りではオイカワが登場
「2種目達成です。あとはテンカラやね」と気合を入れ直した仲谷さん。 だが、午後から風が強く吹き出したことからテンカラはやりづらくなってきた。それでもしつこくランガンしながら振り続ける仲谷さん。少し離れたところではウエジュンがポロポロとルアーでエンジョイ川ムツング。
「風と今のカワムツの雰囲気からニンフ(沈むフライ)を使ってて、反応はあるんですけど食い込まないですね。夕方、風が止んでライズが始まったら食うと思いますけどね」
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そして、午後4時半を回ったところでライズが始まった。だが、乗らない。そこで仲谷さんはそこの魚は見切って、朝イチにライズしていたポイントへと急いで移動した。フライはドライにシフト。思惑通りここでもライズを確認すると、1投目でヒット。これはオイカワだったのだが仲谷さんはむしろ嬉しそうだ。
「カワムツよりも難易度の高いオイカワが釣れてくれたんで嬉しいですわ。3種達成で納得です。僕がこの釣りにビギナーの方々をよく釣れていくのは、この釣りを楽しんでほしいっていうのだけではなくて、楽しむところや困っているところを見せてもらえるところ。それが開発にすごく生かせるんですよね。イージーやけど難しいところもある。そう言った意味でも川ムツングはいろんなことを教えてくれます」
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記事が掲載されるころには、濁りのない河川なら、どこでも釣れる最盛期に突入しているだろう。
※このページは『つり人 2025年7月号』を再編集したものです。