神社の森などに落ちている「丸く齧られた葉」の正体とは?普段は姿を見せない野生動物も、フィールドには必ず生活の痕跡を残している。本記事では『野生動物の痕跡図鑑』より、知的好奇心を刺激する痕跡クイズを出題。自然観察の楽しさを広げ、アウトドアでの危険回避にも繋がるフィールドサインの読み解き方に迫る。

写真と文◎奥山英治
1962年、東京都生まれ。日本野生生物研究所代表。アウトドア雑誌やテレビを中心に生き物や自然との遊び方を紹介する。メインの仕事場のひとつである栃木県茂木町の「ハローウッズ」では生き物を呼ぶ里山を再生するほか、定期的に観察会の講師も務めている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ)、『自然であそぶ』(ポプラ社)、『作って遊ぶ! 工作KIDS』(小学館)など。
ヒント1【食痕・食跡】:木の葉の端に丸い齧り跡
広葉樹の葉の端が丸く齧られている。こんな痕跡をよく目にするのはお寺や神社の雑木林だ。
【現場の状況】
場所:栃木県
時期:7月
巨木が残る神社やお寺の周りの森。そんな場所で下を見ながら歩いていると、コナラ、クヌギ、ヤマザクラなどの広葉樹の葉が齧られて落ちているのを見かける。よく見ると葉の先を一口二口誰かが齧ってあちこちの樹上から捨てている感じだ。実はある動物が葉を縦に半分に折り、バクっと食べていることからこのような形になる。冬から春先は葉がないので、代わりに木の皮や木の芽を食べているようだ。
ヒント2【糞・爪痕】:針葉樹に残る鋭い傷と小さな糞
このような木の葉や小枝を確認した時は、周囲に小さな丸い種のような糞もたくさん落ちてることがある。これもこの動物のものだろう。
さらにこの動物がいるところでは、周辺の木にこの動物が木登りした時に付ける傷跡も確認できる。かなり鋭い爪をしているようで、木の皮がめくられた場所や引っかき傷が幹の途中から上のほうまで続いている。ちなみに木登りの跡については、ヒノキ、スギ、マツなどの針葉樹のほうが跡も付きやすくわかりやすい。
夜の森ではその姿を目撃できることも
この動物は夜間であれば直接その姿を目撃できる場合もある。木から木へ飛んで移動するので運よく居合わせれば姿に気付くのだ。ただ、飛ぶといっても羽ばたくのではなく、高い所から低い所へ滑空する。もう正体がわかっただろうか?夜行性なので気付きにくいが、身近な里山に意外に多く生息していて、特に大きな木が残るお寺や神社の周辺ではよく見かける。
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【正解】ムササビ

ムササビ(齧歯目リス科)本州、四国、九州に分布。頭胴長約50cm。大型の滑空リスで、いろいろな木の葉、木の実、木の芽などを食べている。昼は木の洞(うろ)で寝て過ごす。お気に入りの巣穴をいくつか持ち、寝る場所をころころ変える。似た動物にモモンガがいるが、モモンガは頭胴長が約20cmと非常に小さいので体の大きさで見分けがつく。
枝から枝へ飛ぶ時は体の横にある被膜を広げ、長い尾でバランスを取り、行きたい方向へ舵を取る。また、グルルル、キュルルルなど鳴き声が独特で、夜の森で聞くと「なんだ?」と耳に残る。
このように動物の痕跡は種類ごとに驚くほど個性がある。書籍『野生動物の痕跡図鑑』では、こうした痕跡パターンを豊富な写真と生態から詳しく解説している。


