初心者向けの釣り物といえば「サビキ釣り」が挙げられる事が多い。しかし、アジやイワシなどの回遊魚は季節や場所を選ぶため、いつでも必ず釣れるわけではない。では、初心者が最初のターゲットに選ぶべき最適な魚とは一体何だろうか。本稿では、つり人社代表の山根和明が、釣果を大きく左右する事前の情報収集の重要性をはじめ、手堅く釣れる魚種など、釣りのターゲット選びのセオリーを詳しく指南する。

文◎山根和明(株式会社つり人社代表)
つり人社代表取締役社長。日本釣振興会理事。大学在学中にアルバイトとしてつり人社に入り、卒業後に入社。1946年創刊の月刊「つり人」編集部に配属される。
2006年に同誌編集長、2015年に代表取締役社長に就任。釣りメディア一筋で、企画・編集・事業開発までを一貫して手がけてきた。また、釣り文化の普及と次世代育成にも力を注いでいる。著書に『カッパのいない川で子どもが育つか』がある。
連載 「釣りの疑問に全部答える」 について
― 創刊80周年。釣り専門メディア社長が語る「本質」―
つり人社は2026年7月、創刊80周年を迎える。本連載では、釣り専門出版社の社長として、また長年の編集者として釣り人を見続けてきた山根和明が、釣りにまつわる疑問に正面から答える。毎週更新。
「初心者はサビキ釣り」は間違い?海釣り初心者が陥る罠
このコラムを執筆している5月。陸はすっかり初夏の陽気だが、海の中は気温よりも季節の進行が遅いため、まだ水が冷たい状態だ。
「アジやイワシなら簡単に釣れるだろう」と思っている初心者は少なくない。たしかに、群れが回遊している堤防にさえ当たれば、釣り歴を問わず簡単に釣果を出せる。
しかし、イワシやアジは1年中、堤防に回遊しているわけではない。地域によっても変わるが、たとえば小アジが関東周辺に回遊するのは晩夏から秋にかけてだ。一方、カタクチイワシは春でも回遊するが、マイワシやウルメイワシはやはり夏から秋にかけて回遊することが多い。
このように海の場合、同じ場所で同じ魚が1年を通して釣れることは、ほとんどないと考えたほうがいい。
では、初心者が一番釣れる魚は何だろうか。それは特定の魚種ではない。「今まさに目の前にいて、食う条件が揃っている魚」のことだ。この本質に気づくだけで、釣果は一気に現実的なものとなる。
釣りに行くときは「何を釣るか」か「どこで釣るか」を先に決める
だからこそ、まずは「何を釣るか」あるいは「どこで釣るか」のどちらかを先に決めることが、釣果を伸ばす重要なポイントになる。
特定のターゲットをねらいたい場合は、その魚が今どこにいるかを徹底的に調べよう。現代はインターネットで釣果情報が容易に手に入る時代だ。群れが今どこを回遊しているのか、最新の動向を確認してほしい。
逆に釣り場を先に決めたなら、 その場所で今、どんな魚が釣れているのかを調べる。ここを外すと、いくら頑張っても釣れない。どんな名人でも、そこにいない魚は釣れないからだ。逆に言えば、名人ほどこうした情報を多く持っている。
回遊魚の釣りはまさに「情報戦」
アジやイワシなどの回遊魚をねらう場合、情報の鮮度が命になる。昨日まで爆釣していても、今日はもぬけの殻……なんて事態が普通に起こる。だからこそ、「今まさにどこで釣れているか」の把握が最重要だ。
初心者におすすめの安定して釣れる魚とは?
不確定要素の多い回遊魚とは異なり、回遊しない居着きの魚は安定してねらいやすい。入門ターゲットとして人気を集めるハゼなどは、釣り場ガイド等であらかじめポイントを把握しておけば、手堅く釣果を出せるはずだ。
ただし、ハゼにも当たり年と外れ年がある。「ハゼの湧き」という言葉があるが、その年とくに魚影の濃いエリアをリサーチすることが釣果を伸ばすコツとなる。
子どもでも手軽な清流での「ピストン釣り」
くわえて、夏場にぜひおすすめしたいのが清流での「ピストン釣り」だ。
仕掛けは極めてシンプルで、1〜1.5mほどの短い竿の先に糸と針を結ぶだけ。エサは川底の石の裏で捕まえた川虫を使う。清流に浸かり、流れに対して平行に竿を上下していると、ブルブルとアタリが出て、そのまま魚が掛かる。特別な技術は一切必要なく、子どもでも自然に釣果を出せるのが魅力だ。
私が担当委員として関わっている日本釣振興会のイベント「多摩川フィッシングフェスティバル」でも、毎年奥多摩でこのピストン釣り教室を実施している。募集定員をはるかに上回る応募が殺到する大人気企画だ。
小学1年生から中学生までの子どもたちが、奥多摩の冷たく澄んだ流れに腰まで浸かり、短い竿を出す。ウグイやオイカワが掛かるたびに、あちこちで歓声が上がる。釣りが初めての子どもでも、すぐに夢中になってしまう。これほど手軽かつ確実に魚と遊べる釣りは、そう多くないだろう。
ただし、河川によっては禁止されている場所もあるため注意が必要だ。また、遊漁券が必要な場合が多いが、子どもは免除されるケースもある。事前に確認しておくことをおすすめする。
「釣れる条件」も把握しよう
さらに経験を積んでいくと、ターゲットや釣り場だけでなく、「釣れる条件」というものが見えてくるはずだ。
たとえば、渓流のヤマメやイワナなら「雨後の笹濁り」が好条件となり、磯のクロダイやメジナは「海面がざわつき、濁りが入ったタイミング」で一気に食いが立つ。
反対に、ベタナギで潮が澄んでいる日や、水温が急激に低下した日はどんな魚も食い渋るなど、明確な悪条件も存在する。これらを事前に把握することでも、釣行の精度は大きく上がるはずだ。



