「落として巻くだけ」と言われているタイラバだが、実はアングラーの腕によって釣果に差が付く奥深い釣りだ。そこで今回は、鹿児島県を拠点とする人気遊漁船「JUMBO」の平田俊也船長を指南役に迎え、タイラバ攻略の基礎知識を聞いた。船に乗る前の心構えから、フォールで寄せて等速巻きで食わせる基本や反応するレンジが狭い状況を打破する「斜め引き」などの応用、そして釣れる人と釣れない人の特徴まで、この記事でタイラバ上達への最短ルートを学ぼう。

解説◎平田俊也(ひらた・しゅんや)
写真・まとめ◎藤原武史
鹿児島県の錦江湾でタイラバやジギングをメインに出航している遊漁船JUMBO の船長であり、自身もタイラバのエキスパート。
安全で快適な釣りを楽しむための事前準備
今回のテーマで取材を受けた時、この話だけは絶対しないといけないと思ったことがあります。それは他の遊漁船の船長たちと話している時にもよく話題になっていたことで、機会があればその話をしたいと思っていたのです。それは、ロッドやリールといったタックルの話ではなく、リグや釣り方に関することでもありません。けれども、本当に大切なことで、意外と見逃されがちですが、「快適に釣りをし続けること」が重要だということです。そのためには服装や装備が大切だということなのです。
季節の応じた装備を整える
たとえば、寒さに震えながら釣りをしても楽しくないし辛いだけです。それに、寒さや暑さは命に関わります。船の上は逃げ場がなく、街中とでは体感温度がかなり違います。陸地の気温を基準に船に乗ると本当に凍えて釣りどころではなくなります。冬であれば多少過剰に思えるほどの寒さ対策をしてください。船の上で緊急事態になってもすぐに陸地へは戻れないということも覚えておくべきです。防寒は絶対甘くみてはいけません。さらに言えば、船の上では雨が降ったり波をかぶることもありますので防水も重要です。服が濡れれば体感温度も下がります。
夏も快適に釣るための準備が必要です。まずは水分を余分に持って行くことが大切です。炎天下に船上で何時間も過ごすことになるので、熱中症にならないためにも水分は必要です。自分はあまり喉が渇かないからと、ちょっとしか水分を持ってこない方がいますが言語道断ですね。海の上に自販機はありませんから。それと甘いジュースだけ持ち込むのもNG。甘いものを飲めば喉が渇きますから。炎天下では日よけになる帽子もマストです。夏といえども風に当たって体が冷えてしまうこともありますし、直射日光を避ける意味で上着も必ず用意しましょう。
まずは、命を守ることを最優先で。といってもピンと来ないかもしれませんが、船長としてはお客さんに安全に釣りをして帰ってもらいたいのでぜひ知っておいてもらいたいことの一番目に挙げさせていただきました。
マダイの生態を知る。季節による付き場とレンジの変化
私が思うに、マダイはだいたい底付近にいると考えています。ですから、ボトムを取ることがタイラバでは重要になってきます。シーズンによって付き場が変わりますが、それは地域差があって一概にいえません。ただし、水深60mの場所に群れがいることが見つかれば、その地域では水深80m地点ではなく60mの地点を探るといいことが多いです。相対的に春から夏にはそれより浅場で、冬はそれより深場を探ることが一般的に多いようです。
季節ごとにタイラバを追う距離が変わる
ちなみに、付き場よりも重要なのは季節ごとの習性です。春の乗っ込みの時期は産卵のためにメスが縦方向に泳ぐのに合わせて、オスも群れでそれを追うのですが、この縦に追いかける動きがこの時期は特に顕著でタイラバも長く追うようになる気がします。他の時期にも同じような傾向は見られますが、春の時期は特にこの傾向が強い。逆に水温が低い時期はエモノを縦に追う距離が短くなるようです。
つまり、タイラバを追ってくるレンジが明らかに低くなるので釣れるレンジの幅も狭くなると思います。特に冬場はレンジの幅が狭いですから、バーチカルに釣るとあっという間に釣れるレンジを通過してしまいますので、なるべく斜めに引いてそのレンジを長く通せるように釣ることで釣果が上がります。そのため風や潮の流れがないときはスピニングタックルを使ってタイラバを遠投することで斜めに引くことも有効な手段になってきます。
タイラバをどう思っているのかはわからない
マダイの食性は、甲殻類であるエビやカニなども食べますが、イワシなどの魚を追いかけたりもする貪欲な魚です。ただしマダイの口はシーバスや青物のような吸い込み系の口の作りではないので捕食方法は齧ってくる感じ。そう、タイラバをコツコツするあの感じの食べ方です。
マダイがタイラバを何と思って食ってきているのかは正直分かりません。そのため私は、今マダイが何を食っているかの食性よりも活性を気にするようにしています。とはいえ、マダイのことは長年釣っておきながら、実のところよく分からないというのが正直なところです。
タイラバの釣り方は、着底の把握と等速巻きが釣果の鍵
タイラバは、落として巻くだけの非常にシンプルな釣りです。実は、そのせいで私自身、昔はタイラバがあまり好きではありませんでした。しかし、ダイワフィールドテスターの先輩である中井一誠さんのタイラバの釣りを見てからその考え方を改め、自分でもいろいろと考えて釣りをするようにしたところ、なんて面白くて奥深い釣りだと思うようになりました。その辺りも含めた話をしたいと思います。
着底を分かることが重要
先に言ったように、タイラバは船の上から投げたりせずにリールのクラッチを切って底まで沈めることから始めます。このとき大切なことは着底を確実に察知することです。着底するとスプールが一瞬止まるのでそれを見逃してはいけません。スプールの回転を妨げないくらいにサミングするとわかりやすいです。ちなみにサミングの強度で落下速度を自分の思いどおりに操作できます。何にしても着底が分からないとタイラバは始まりませんので、着底がわかる重さのタイラバを使うことが大切です。
等速巻きで上げてくる
着底したら基本は等速巻きです。なるべく同じ速さで巻き続けます。おおよそ水深の1/3か1/2くらいまで巻き上げる感じです。ローギアとハイギアの違いで巻き上げスピードは変わりますが、とりあえず同じ速度で巻き続けることを心がけてください。任意の水深までタイラバを巻き上げたらリールのクラッチを切ってまたボトムまで落とし、また巻き上げ始めます。先ほどと同じスピードで巻くのが基本ですが変えてもいいと私は思います。マダイの活性を探るために速巻きやスローを試してみるのは悪くありません。私も、巻いている途中で急に止めてみたり速く巻いたりと変化を入れて巻いたりもします。
でも、基本はあくまでも等速巻き。等速だからこそ魚が反応してタイラバに追尾したときにハンドルの巻き重りがフワっと軽くなるのに気づきやすくなります。これは魚が追尾したことで水流がタイラバに影響を与えているためで、これがアタリの前触れとなります。これで食ってこないならば、巻きスピードを変化させたり、タイラバの色やシルエットが微妙に合っていないことを示しているので少し違うものに変えてみるのもいいでしょう。基本の等速巻きが前提ですが、釣れないときにはいろいろ試してみることは必要なことだと思います。
勝負はフォールから!タッチ&ゴーの重要性とコツ
タッチ&ゴーもタイラバの基本的な操作です。つまり、底まで落としたタイラバを巻き上げることですが、この基本的な操作だけがタイラバのすべてといっても過言ではありません。この釣りは、実は巻き上げ時よりフォール時が重要だということです。なぜかといえば、タイラバで魚を寄せるのはフォール中だからなのです。とはいえ、実際にはフォールで寄せて巻き上げの時に食わせるというパターンが多いので、巻き上げてから釣りが始まる感覚の方も多いですが、実際は着底前から勝負は始まっており、フォール中に集まってきたマダイを逃さずにフッキングまで持っていくことが大切なのです。そのために一番大事なことは、タイラバが着底したらすぐに素早く底からタイラバを巻き上げてやることです。なぜなら、着底したままのタイラバが止まっていると集まったマダイが興味をなくして離れていってしまうからです。ですから、タッチからゴーまでの時間が短ければ短いほどフッキングへ持ち込むチャンスが増えるわけです。
着底後は速巻きで糸フケを取る
ここでちょっとしたコツをお話ししましょう。それは、着底したら間髪入れずに数回速巻きをするということです。フォール中に潮を受けたPEラインに弛みができて、巻き上げを始めた時にタイラバ自身が動き始めるのにタイムラグが生じるのです。そのタイムラグを極力減らすために最初の数回転を速巻きして弛みを取ってあげる必要があるというわけです。この着底している時間を極力短くすることは、タイラバで釣果をあげるためには絶対やらなければならないことのひとつです。これは海底に根があったりした時に根掛かりを減らすことにも役立ちます。巻き上げが間に合わない時はロッドであおってから巻き上げるのも手ですね。とにかく、タイラバが海底で静止して動かない状態をできる限り減らすことが大切なのです。
船の流し方(ドテラ流し・パラシュートアンカー)の理解
船の流し方を理解しておくことはタイラバをやっていくうえで、まあまあ重要だと思いますよ。ベテランの人ほどこのことを理解しており、それによって自分のタイラバがどのような位置でどのような状態にあるかを分かって釣りをしています。
私がいる九州では基本的にドテラ流しとパラシュートアンカー流しの二種類があると考えてもらっていいです。どちらも船のエンジンをかけずに自然の力で船を流しポイントを探る方法です。ドテラ流しは船体に風を受けて船を真横に流すので片舷に釣り人が位置取りをすることになります。風がない場合は、潮だけに乗せて流すこともあります。それに対してパラシュートアンカー流しは、広がったパラシュート部分に潮の流れを受けさせて流していくやり方です。パラシュートアンカーは舳先または船尾のどちらかから入れるので船は縦に流れていくことになり釣り人は両舷で釣りができます。どちらもイカリを入れないので船が自然と流れていくため、1ヵ所ではなく広範囲を探ることができます。
ここで注意したいのが、船はエンジンを切って止まっているようにも感じますが、実際には常に動いて移動しているということです。ですから船上で何もしてなくても水中にあるタイラバは動いているしライン角度もついていきます。ここをしっかりイメージしましょう。
コツは巻き角度!斜め引きで探るレンジと時間を増やす
ラインが斜めに入っているのと真下に入っているシーンを比較すると、同じ高さまで巻き上げる時に、真下に入っている場合は距離が短く斜めに入っている時は長くなります。
マダイは個体差や時期によってどこまで追いかけるか決まっています。この距離というのが実のところレンジだったりします。水深何mまで、あるいは底から何mまで追いかけるか。ですから、その水深になるまで長く引くことができるほうが断然有利になってくるわけです。仮に底から15mまでマダイが追う状況だとして、縦方向だとハンドル20回転で底から15mに達してしまうのに対して、斜め引きなら40回転させられます。斜め引きのほうが長い距離と時間を誘い続けられますからヒット率も高まるのが道理でしょう。
冬はレンジ幅が狭くなるので、より斜め引きが有効
特に冬はこのレンジ幅がかなり狭くなります。そのため冬はより斜めにラインを入れていく必要があるのです。ここでスピニングタックルによる遠投で、この条件を作り出すことも効果的になります。ただし、ラインが斜めになるほど着底がわかりづらくなります。軽いタイラバで斜めに入れていっても、着底がわからなくなれば本末転倒です。着底を把握することは絶対条件と思ってください。着底を感じられる重さのタイラバを使い、そのうえで斜めに入れていくと考えてください。
本来はタイラバを着底させることが重要でラインの角度はその結果でしかありません。くれぐれも勘違いしないでください。あっそうそう、どんなに斜めにラインが入ってもタイラバが落ちるときはその場所から真下に落ちますよ。だから、タイラバは縦の釣りなのです。
よく釣る人の共通点:アドバイスを聞いて柔軟に楽しむ姿勢
これは、ひと言で言うならば、話を「聞く人」と「聞かない人」の違いと言っていいかもしれません。これは、言葉どおりではなくその心構えとか柔軟な姿勢と言い換えてもいいかもしれません。船長として釣り人たちを見ていると、この違いが後々の釣果に直結していることを実感します。船長としてお客さんに釣ってもらいたいから時々アドバイスとまではいかないまでもちょっと声掛けすることがあります。それにすぐ反応して試してみようとする人は、その時に釣れなくてもいずれ上手になってよく釣るようになっていきます。対して、なんらかのこだわりがあってだとは思いますが、アドバイスを聞かないで自分流を続ける人は進歩がない傾向にあります。
周りを観察してヒントを見つける
私に限らず船長は毎日の傾向を見てのアドバイスなので根拠があります。船長に限らず、釣れている人の釣りからヒントを見つけて自分の釣りに取り入れることも大事。上手い人ほど、釣れている人のヘッドの重さや色、ネクタイの色や種類などをこっちが感心するほどよく見ていますね。そして、巻き速度やタイラバを素直に真似する。その情報をそのまま受け取るというよりは、そこからさらに考察して、楽しもうとしていますね。真似以外にも、弱波動のタイラバで釣れている時にあえて強波動のタイラバを入れてみることも周囲を観察できているからこそ。それで釣れなければ、釣れているものに躊躇なく戻すことができるような柔軟な人が上手くなっていくように思います。
こだわりが強いのは結構ですが、ただ頑な人は上手くならない気がします。特にタイラバでは臨機応変に楽しめる人が結果、よく釣っていると思います。
※このページは『つり人 2026年4月号』に掲載した記事を再編集したものです。




