田んぼに水が引かれると川にいたナマズは小水路にも入り、田園地帯のさまざまな水辺で釣れるようになる。毎年この時期を心待ちにしているのが、ルアー専門店「アングラーズショップマニアックス」代表の駒崎佑典さん。5月初旬、代掻きが始まった鬼怒川水系での釣行に密着。前夜の雨で大増水した水辺を、どう探索していくのだろう?
田んぼに水が引かれると川にいたナマズは小水路にも入り、田園地帯のさまざまな水辺で釣れるようになる。毎年この時期を心待ちにしているのが、ルアー専門店「アングラーズショップマニアックス」代表の駒崎佑典さん。5月初旬、代掻きが始まった鬼怒川水系での釣行に密着。前夜の雨で大増水した水辺を、どう探索していくのだろう?
写真と文◎編集部
増水時のナマズ釣り
ナマズは基本的に夜行性の魚だ。暗いうちほど活性が高く、釣果も得やすい。だが、駒崎佑典さんはデイゲームが大好きだ。バイトが出そうなピンスポットにねらいを定めてトップウオータールアーを撃ち込み、水面が爆発する捕食シーンをしっかりと目で見て楽しみたいからである。
駒崎さんのナマズ行脚を取材するのは、今年で3年目になる。過去2回とも栃木県の水脈を巡り、今回の目的地も栃木県の鬼怒川水系へ。決定的に違うのは前日に大雨が降ったことだ。朝マヅメをねらうべく午前3時に相棒の金子修さんと合流。道中の車内では、不安8割・期待2割といった会話が交わされた。
金子:コマさん、ヤバい雨が降りましたね。ナマズの嫌いな代掻きの水が溢れ出て、水温も低下。かなり厳しい展開になりそうです。
駒崎:カネちゃん、過去一難しそうなのは間違いない。でも水が出れば魚も動く。水路の広範囲にナマズが散るかもしれないし、付き場が限定的になってポイントを絞りやすくなる可能性もある。まあ、前向きに「増水時のナマズをどう探すか」をテーマにやってみましょう。
増水時に狙うべきポイント
鬼怒川支流の実績河川には夜明けと同時に到着した。さっそくタックルを手に川辺に立つと、赤茶色の水がゴーゴーと流れている。50cmは水位が高そうだ。それでも「バフッ」という捕食音が聞こえ、ふたりの不安は吹き飛んだ。期待を胸に岸際の反転流を撃っていくが、バイトは出ない。目ぼしいスポットをテンポよく探るも無反応。朝のプライムタイムの一時だけ活性が高かったようで、太陽はあっという間に昇りきった。
「大きく移動しましょう。増水している中で無理に釣るよりは、釣りやすい水域に入ったほうがナマズも捕食しやすい。水量の少ない小水路や上流部を探してみましょう」
そう言って、鬼怒川右岸側の支流から左岸側の支流へと車で移動した。本川とつながった水路であれば、ナマズはどこまでも入り込むはず。増水時にねらうべきは、次のようなポイントだ。
1.水が落ちている場所
田んぼの水路の吐き出し口が該当する。水が増えることで吐き出される勢いも強まり、カエルなどのエサが落ちやすくなるため、ナマズが待ち構えている可能性が高い。
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2.強い流れをかわせる窪み・水草地帯・浅場
魚が強い流れを避けられる岸際の窪みや草陰、水路や支流の暗渠にはナマズが潜みやすい。また、こうした場所にはベイトとなる小魚も逃げ込む可能性が高いことから居れば1投目で食う。
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なお増水時は濁りが濃いため、ルアーの音によるアピール力も重視したい。デイゲームでは、着水音の小さなフロッグなどのソフトルアーが警戒されずによく釣れる場面もあるが、増水時にはカチャカチャと音を立てるハードボディーのプラグのほうが、ナマズが気付きやすいといえる。
可動堰の下流へ
小水路を転々とするも、ナマズからの反応は得られなかった。流れの勢いが強すぎるのだ。
駒崎さんは明け方に入った小河川のゴム堰の下流部に入り直すことにした。「ゴム堰」とは、ゴム引布を袋状にした膨張式の可動堰で、ポンプで空気を送り込むことで膨らみ、水を堰き止める。増水した朝の時点ではしぼんでいたゴム堰だが、もともと水量の乏しい小河川ゆえ、数時間で再び膨らんで流れを制御すると読んだのだ。
その読みは的中。明け方の増水が幻だったかのように、ゴム堰の下流部は渇水状態といえるほどの減水を見せていた。急激な水位変化のせいか、小魚が落ち着かずに泳ぎ回り、ナマズもウロウロしている。
「これなら釣れる!」駒崎さんも金子さんも意気込んでナマズシューティングを再開。だが、太陽が真上にあるせいかナマズが身を潜めるシェード(物陰)が少なく、見えるナマズをねらい撃ちしても、驚いて逃げてしまう。興味をもって近づく個体もいたが、バイトには至らない。
「おそらく、バイトを出せるのは深みのある岸際です。ナマズが身を隠しやすく、ルアーを追い込める位置でないと食わせるのは難しいでしょう」
駒崎さんは右岸側から上流を探る。水を堰き止めたゴム堰の上流の橋を回り込み、今度は左岸側から下流へと釣り歩いた。水草が揺らめく深みに、ロデオクラフト「PUP」を引き波を立ててダウンで通すと──「バフッ」という捕食音とともに水面が炸裂!
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「来たあ!」駒崎さんが声を上げると、200mほど下流にいた金子さんがタモを持って全力で駆け付けた。息を切らしてランディングシャフトを伸ばすも、土手が高すぎてシャフトの長さが足りない。駒崎さんは慌てずロッドを金子さんに手渡し、自らタモを持って藪に覆われた土手を滑るように降り、濡れることも厭わずにざぶざぶと水中へ。執念のランディングを決めたのだった。
「太鼓腹のいいナマズです(笑)」計測すると62cm。時刻は11時45分。真っ昼間に手にした価値ある1尾に、快哉を叫んだ。
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リアクションで食わせる
午後からは別水系を探ろうと南下した。鬼怒川から派生する水脈ではなく、利根川支流の飯沼川の支流筋にねらいを定めた。しかしこの川も増水の影響が色濃く、泥濁りで多量のゴミが流れていた。
ナマズシューティングは、駒崎さんの言葉を借りれば「出会い系」の要素が強い。キャスト精度を上げ、バイトがあっても粘りすぎず、フレッシュなポイントを次々に撃っていくことが釣果につながる。ことデイナマズは1投目が勝負。撃ち損じた場合、釣果を得られる確率は30%まで下がる。ここでは金子さんが先行し、駒崎さんが後を釣った。
金子さんのキャスト精度は高く、ねらったピンにドンズバでルアーを入れる。いつ出てもおかしくないコースを通すが、バイトは遠い。後を追う駒崎さんは、金子さんの“サオ抜け"を見極め、変化の乏しい壁際も丁寧に撃っていった。
すでに釣果を得ていた駒崎さんの釣りに、焦りはない。水の吐き出し口にダウンクロスで投げ入れたルアーが反転流に入り、ターンをしたスポットで2尾目がヒット!
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さらに、金子さんが見逃した小さな凹部を探って3尾目!この間に1尾をバラし、2チェイスもあった。それも対岸の日向の壁際での反応だった。
「日向にいるナマズは、基本的に食い気がないと思います。だからリアクションで反応させたい。バイトやチェイスは、ルアーが腹からベチャッと着水したときに出て、壁に当てて落とすような静かなアプローチでは反応がありません。もちろん、壁をタイトに撃つのが絶対条件。壁からルアーが50cm離れたら食わない。それと、リアクションで食わせるには見切られないようにルアーを止めない。着水後すぐに巻いたほうがいいですね」
このアドバイスを受けて、金子さんも日向のスポットを丁寧に探るようになった。対岸の崩れ護岸の裏にルアーを着水させると、その巻き出しで水面が爆発!ようやく乗ったナマズを一気に寄せ、「抜きますよ!」と勢いよく抜き上げたが、足もとまで舞い上がったところで無念のフックアウト。金子さんはヘナヘナと膝から崩れ落ち、この日のストップフィッシングを迎えたのだった。
「ナマズとの出会いを果たすには正確なキャストと質のよいランガンができることが第一。それと口を使わせる一工夫も必要です。フックを細軸にしたり、口にフックを残すためにラインを張りすぎないリトリーブをしたりと、ちょっとした釣り方の工夫がフッキングにつながります。代掻きの収まる頃に今日巡った釣り場を再訪したいですね」と駒崎さんは金子さんに次回釣行の約束をして帰路についた。
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※このページは『つり人 2025年7月号』を再編集したものです。