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つり人編集部2026年5月2日

クマ関連書籍の編集者が教える、釣り人ができる対策4箇条

2025年、秋田県をはじめ日本各地でクマ出没のニュースが世間を驚かせた。釣り人にとっても衝撃は大きく、釣行を控えた渓流釣りファンも多くいたはずだ。小社はベストセラー『熊が人を襲うとき』をはじめ多くのクマ関連書籍を発売してきた。それらの編集に携わった、秋田出身の渓流好き編集者が釣り人に知ってほしいこれからの心構えをお伝えする。

著者:月刊つり人編集部

写真と文◎月刊つり人編集部・小野弘

月刊『つり人』編集部 書籍担当。秋田出身。中学時代からフライフィッシングに親しみ、つり人社では『FlyFisher』編集長を経て書籍担当に。

クマ関連書籍を偏らない視点で送り出した

私は秋田で生まれ育ち、渓流釣りもずっと好きでした。実際にクマと遭遇したことは一度しかないのですが、渓流に行くと足跡やフンなどの痕跡から、身近な存在に感じていました。編集部で書籍の担当となり、クマ関連書籍をこれまで5冊担当し、現在も1冊編集を進めている本があります。クマ本の企画に携わった経緯としては、先輩の編集者が担当した、北海道のヒグマ研究者の岩井基樹さんの著書『熊のことは、熊に訊け。』がすでにありました。また、釣り人の事故の体験談を集めた『釣り人の「マジで死ぬかと思った」体験談』シリーズが好評だったこともあり、クマと遭遇したり襲われた体験談だけを集め、専門家の解説も加えた『熊!に出会った 襲われた』を担当しました。

この本を編集したのは2016年ですが、その最中に秋田県鹿角市でタケノコ採りの人がクマに襲われ4人が亡くなるという大変痛ましい事故がありました。これはただ事ではない、という問題意識が自分の中で明確になりました。そこで、北秋田市のくまくま園の園長さんや、共生を図る活動をしていらっしゃる方に専門的な見地からお話を伺ったり、実際に襲われケガをされた方に原稿を書いてもらったりして1冊にまとめました。

駆除しろとか、クマは大事だとか、一方的な意見によらないでいろいろな立場の人の話から、クマのことを考えてもらう材料にしてほしいと思いました。その後に担当した本も偏った意見にならないようにという軸は変わっていません。

僕ら釣り人は自然の中で遊ばせてもらっている立場なので、クマに対してはシンパシーというか特別な生き物という意識がみんなの根底にある一方で、可能な限り遭遇や事故は避けたい。表紙のデザインは目立つビジュアルになっていますが、内容は大真面目な志がベースにあるんです。

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あ専門家によるクマ解説のほか、登山家、山岳ガイド、クマの生息地に暮らす方の視点、そして「クマに出会った」「襲われた」実体験を収載。どうすれば出会わずに済むのか?出会ったときにはどう対処すべきか?等のヒントが多く詰まった2冊

過熱するクマ出没問題と釣り人の心構え

この本の編集の過程で、元秋田県庁の職員でツキノワグマ研究46年のキャリアを持つ米田一彦さんと知り合い、本を書いていただくことになりました。それが『熊が人を襲うとき』です。米田さんがすごいのは、過去の新聞記事や報道を遡って、1993件・2255人の人身事故例をかき集めて、活動内容別の遭遇事例や季節・シチュエーションの内訳などテーマごとに分析していることです。だからこの本を読むと、クマはいつどのようにして人を襲ったのかがかなり分かります。米田さんにはその後、前述の2016年の事故・十和利山熊襲撃事件だけにフォーカスした『人狩り熊』もご執筆いただいています。

最新刊は稗田一俊さんと長谷智恵子さんの共著『山でヒグマに遭わない・死なない観察力』です。稗田さんは北海道で川魚の撮影を専門にするカメラマンで、長谷さんはクマゲラの研究家。ともにヒグマの生活圏で活動されていることから、いかにヒグマを避けるかの実践的な知恵を豊富にお持ちです。そして、排泄物や木についた爪跡などのさまざまな痕跡に着目して膨大な記録を残されていました。そんな切実な動機でフィールドワークから得たおふたりの知見は非常に説得力があり、おかげさまで発売早々重版となりました。

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北海道の森林深層部での豊富な踏査経験をもつ著者が、多数の写真を活用し、本来のヒグマの素顔と生態、そして地域のヒトとクマの日常にまで迫る。フィールドワークではヒグマとの遭遇はつきものという著者が、ニュースで報道されるヒグマの情報しか知る術のない人たちに、ヒグマは本来どんな動物なのかを伝えたい思いを込めた。ヒグマの生態や行動、食性などを学び、ヒグマ遭遇のリスクを下げるための一冊。

偏った意見も目立つクマ問題

いずれも客観的な視点から原稿を執筆してくださった筆者陣の原稿を編集した後では、世間一般で語られるクマの話は、極端な論を展開する方が目立つ印象がありました。「人間が全部悪い」という立場もあれば、「出たなら片っ端から駆除だ」という声もある。とくに昨年のセンセーショナルな報道が増えたのを受けて、自身の主観だけで意見を述べたり、報道された土地について先入観で語ったりする意見も多くありました。

現在編集中の新刊では、クマ対策に奮闘する行政サイドに取材したいと思い、とある自治体に取材を申し込んだのですが、丁重に断られてしまいました。ひと度、本が世に出てしまえばその内容がどう切り取られて世間に広まってしまうかわからないということに非常に神経をとがらせているようでした。

釣り人はどう受け止めるべきか

議論が過熱するなかで、この事態を釣り人はどう受け止めるべきでしょうか。私は、クマ問題はまず第一に、そこに暮らす人たちの問題であるべきだと考えています。地元の秋田では、アウトドアと無縁で暮らしている人もいる市街地にもクマが出没するようになりました。趣味のランニングを控えたり、お店の自動ドアを手動に変えたりと、生活様式を変えざるを得ないほどの圧力がかかっている地域もある。そこに暮らす人たちと行政が中心になって考え、必要な対策を選ぶべきです。外から無責任に「殺すな」「全部駆除だ」と極端な言葉を投げるのは違うと思います。

他所から遊びに行く釣り人の立場としては、地域が決めた対策があるなら、その判断を尊重する。釣り人ができることは結局のところ「なるべく遭わない工夫」と「遭ってしまった時の備え」を積み上げることです。

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2025年は各地のクマ出没が大きなニュースになった。クマの侵入を防ぐため店舗のドアを手動にするなど行動様式の変容を強いられている地域もある。

釣行時のクマ対策4箇条。天気や水位と同じように情報収集を

最後に、私が実践している釣行の際の具体的な注意点をお話ししましょう。

1. 事前に出没情報を確認し、直近の情報があれば場所を変える

少なくとも直近2週間以内に出没情報があるなら、行き先を変える判断をしてほしいです。クマがそこに留まる理由がある場合があります。特定の食べ物に執着して、同じ場所に居続けることもあります。釣行時は誰でも天気予報や河川の水位情報をチェックしてから出かけますよね。ルーティンの情報収集にクマも加えてください。秋田県では県内のクマ出没情報をマップ上にまとめた「クマダス」というサイトがあります。各自治体が情報発信に力を入れていますからぜひ活用してください。

2. 入渓までの藪・見通しの悪い区間は最大警戒態勢で

川に出てしまえば視界が開けることも多いですが、車を降りて川に入るまでの藪、曲がり角、薄暗い時間帯が危ない。何も考えずに入っていくのが一番よくありません。

3. 単独釣行を避け、音・装備はできる範囲で重ねる

できれば単独釣行は避けましょう。鈴や笛など音については、居場所を教えてしまうという意見もありますが、鳴らさないよりは鳴らす派です。クマスプレーも携帯します。持っているだけでは意味がありませんから、持つなら使い方を事前に確認しておくことです。私は2のような場所ではいつでも噴射できるようにホルスターから出して構えながら歩くようにしています。

4. 痕跡が多いなら、勇気を持って撤退

足跡、食痕、フン、藪の荒れ方など、フィールドサインは重要です。「今日はいつもと違う」と感じたら、撤退する勇気をもちましょう。

クマ関連書籍を編集してきた実感として、最終的に襲われるかどうかの決定的な法則はない、と感じています。ばったり会っても襲われないこともあれば、距離があっても襲われることもある。だからこそ、傾向として語り継がれてきた注意点を尊重しつつ、情報と準備を増やして、遭遇の確率を下げる。過去の事例や専門家の知見を学ぶことは、その確率を下げるのに必ず役に立つはずです。

※このページは『つり人 2026年3月号』に掲載した記事を再編集したものです。

環境レポート 渓流釣り クマ

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列島をゆるがすコロナウイルス。けれども、日増しに暖かくなる春の日を、じっと家にこもって過ごすのはやっぱり体によくない。その点、手軽な海の釣りは、風も気持ちよく、大人も子どもも、思い切り深呼吸しながら時間を過ごせる。ウミタナゴ、メジナ、クロダイ、カレイ、アオリイカ、カサゴ……。元気な魚たちが泳ぐフィールドで、がんばろう、ニッポン! そのほか、3名手の渓流解禁レポート、里川で見つかる美味しい道草、みちのくタナゴ旅など旬の釣り満載でお届け。

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