エリアトラウトは繊細なフック使いが釣果に直結するジャンル。ここでは若きエキスパートの和田浩輝さんが、プラグルアーで魚を追い掛け、いかにフックを使いこなすかを見ていきたい
写真と文◎編集部
プラグにはワイドゲイプがマッチする
和田浩輝さんはトラウトキング選手権大会において第16回大会で総合2位、第17回大会、第20回大会で総合優勝を果たし、今年度もエキスパート戦の枠で参戦。ほかにもFF中津川CUPで3年連続年間優勝など数々の実績を残してきた24歳の名手である。今回は和田さんがエリアトラウトの楽しさに目覚めた原点の釣り場という「フィッシングフィールド中津川」でプラグルアーにおけるフックセッティングを教えていただいた。「プラグの魅力は種類によっても異なりますが、クランクであれば巻けば潜ってゆっくり引けてスプーンのように速度調整がシビアではないことです。フローティングモデルはSR、MR、DRと設定されたレンジを引きやすい。シンキングモデルでも任意のレンジを簡単に探れます。ボトムプラグやミノーは操作して掛けるマニュアル感が楽しく、トップはバイトが丸見えなので興奮します」そう語る和田さんがプラグルアー全般に愛用しているフックがヴァンフック「BC-33F」だ。イニシャルのBは「ボトム」、Cは「クランク」を意味し同社のHPでは『クランク&ボトムを極める為に進化したエキスパートフック』と謳われている。特徴はワイドゲイプとストレートなフックポイント。プラグは全般的に口に入りにくいルアーが多いため、口外にも掛かりやすい設計である。「BC-33Fには#6~10までの5サイズがあります。最小の#10やこの冬からラインナップに加わった#9は、小型クランクや5㎝以下のミノーにマッチします。#8はトップルアー、ボトムプラグ、6㎝ミノーから小型クランクまで使用ルアーの多いサイズです。さらに大きな#7、#6は3~5㎝のクランクに組み合わせ、魚の活性に合わせて意図的にハリを大きくしたい時にも使うことが多いですね」
クランクローテーションとフック使い
さて、この日の和田さんに課せられたお題はプラグ縛りで釣果を積み上げ、クランク、ボトム、トップ、ミノーにマッチしたフック使いを見せること。手始めはクランクでやろうと相成ったが、釣りの準備が整ったところで放流が始まった。「本来なら放流タイミングは重めのスプーンを軸に釣りを組み立てたほうが釣果を速く出せます。活性の高い魚は強いバイトが出やすく、ルアーの動きは速いほうが食わせやすいです。だから放流直後はスプーンを投げ、30分くらい経過して活性が落ち着いたところでクランクや他のプラグに替えることが多いです」 そう言ってセットしたのはテールを大きく振る「プレッソ ワブクラスリム」。山際に太陽が隠れたローライトな時間帯ゆえカラーはグローを選択。持ち駒のクランクの中でもハイアピールなタイプで表層付近から探っていくと、アタリは出るものの乗り切らないバイトが多発してしまう。「放流直後で魚の活性が高くバイトに勢いがあるせいかフックに乗りません。こんな時はリアフックを1サイズ上げると効果的な場面が多いです」 ワブクラスリムの通常のフック使いはフロントもリアも#7をセットするが、和田さんはリアフックのみ#6に交換した。すると途端に2尾、3尾と連発し始めた。「ヒットした魚のフックの掛かりどころを見るのも、釣りを組み立てるには重要です。テールフックに掛かった時は追尾しながらついばんだバイトであることが多く、ルアーのレンジが魚の層に合っているといえます。一方フロントフックに掛かってきた場合は、ドンと突き上げて食った強いバイトが出ている証拠です。魚が群れなす層にぴったり合わせるよりも、その上の層を引いたほうが高活性な魚が拾えるケースは多いのです」 釣果をスピーディに持続させるには高活性な魚を追い続けることだ。どの層に活性の高い魚がいるのか見極め、反応のよいルアーの動きやカラーを替え、強いバイトを拾っていく。弱いバイトから合わせてしまうと次の展開は苦しくなり連発のスピードも落ちる。 和田さんはクランクサイズを39㎜から25㎜に下げる。「プレッソ ワブクラJr」のSR(シャローランナー)をセットして前後のフックをフロント#8、テール#7と通常よりワンサイズ上げて早巻きする。これが高活性魚のスピードに合ったのかヒットを量産。さらにはスプーンのように引けるという「プレッソ リバクラ」(30㎜)でもテールフックを#7と大きくして釣果を重ねた。数十分後、放流パワーが落ち着いたところで「プレッソ ワブクラJr」のSS(スローシンキング)に替えて動きを弱くして追加。さらに活性が落ちたところで「プレッソニョロクレイジー」をセットした。「クランク使いはサイズを大から始めて小に落とし、シルエットをスリムにしていくことが多いです。活性が低下していくなか最後に投げるタイプのルアーがニョロ系です」 ニョロ系と呼ばれる『へ』の字型シンキングクランクはウネウネとした動きを見せるが水を動かす力は弱い。和田さんいわく波動的に低活性魚に強いルアーという。追尾してくる魚は多いがツンと突くばかりでフッキングには至らない。ここでも和田さんはリアフックのみ#8から#7にサイズアップしてバイトを拾った。ここまでのクランクにおけるフック使いを見る限り、ルアーチェンジをする前にリアフックの大きさを1サイズ上げるだけで、掛けられる魚がとても増えた印象である。 そして「ニョロクレイジー」でもバイトが取れなくなったところで飛距離が出て底層も探りやすい「プレッソ ワブクラDR」を沖の深みに遠投する。沖に残るフレッシュな高活性魚をねらい、さらにはボトムノックで底の魚を拾う作戦で釣果を持続させていった。
ボトム、トップ、ミノーで食わせるためには
続いて和田さんはボトム系ルアーの「ステップダート」をセットした。ボトム系ルアーの魅力はタフな状況に強いこと。日が高くなり放流パワーが完全に消えて「場が仕上がった(スレた魚ばかりになる)」時にはボトムを試すのが手っ取り早い。フックは前後ともにBC-33F#8。着底後に砂煙を立てるようにボトムを跳ねさせ引いてくると手前のカケアガリでガツンとヒット。このパターンで数尾を掛け、ヒットのたびにフックポイントをチェックする。ボトムルアーはフックが底に当たり続ける。ハリ先が鈍りやすいためマメなフック交換が釣果アップのキモになる。10時を回ると気温が高まり、ふわふわと虫が飛び始めた。ライズが多くなってきた状況を見逃さずトッププラグの「プレッソ ラトリンポッピンバグ」に交換する。フックは前後ともに#8だ。「トップルアーに魚は突き上げてバイトします。ルアーのお腹をめがけて食ってきますので、リアフックをフロントフックと向かい合うようにセットすると乗りがよくなります」そうしてポコッとアクションさせて水面に泡を立て、その泡の中にプラグを置いてポーズ。これを繰り返すと魚が浮上して食らいつく。トップウォーターゲームは視覚的にかなり楽しい釣り方で気温が上がるタイミングは爆発することも多々ある。ひとしきりトップの釣りを楽しんだ後はミノーの「プレッソ ダブルクラッチ」をセットした。ジャークさせて潜らせた後で浮上時に食わせるメソッドで使用する。ミノーは操作感が実に楽しく、浮上したルアーに突き上げるようなバイトが出る。このためフック使いはトップと同じくリアフックを内向きにしたほうがフッキングはよい。しかしこの「マジックジャーク」とも呼ばれるメソッドは魚が見慣れてくると寄ってはきても食いつくまでに至らなくなる場面も多い。この日の釣り場はまさにそんな状況で和田さんはリアフックを外向きに変更した。それから断続的にジャークを入れてボトムまで潜行させ、ボトムノックをする変則的な釣り方を試すとバイトが出た。ボトムノックの釣りは必然的に追尾型のバイトしか出ない。このためリアフックを外向きに変えて皮一枚のバイトを拾ったのだった。
フックセッティング
和田さんがプラグで多用しているフックが「BC-33F」(写真右)。この冬からは新サイズとして# 9 が加わり、小型プラグのフック使いにバリエーションが増えた。また来春リリースとなる「CW-33F」は形状がよりワイドゲイプになった新モデルで高活性魚を掛けやすい
「BC-33 F」はワイドゲイプでストレートなフックポイントが特徴の中軸フック。カラーはフッ素ブラック
プレッソ ワブクラスリム
サイズ39mm。リング構成は前後ともに# 0 のダブルリング。広範囲から魚を呼ぶためのワイドアクションで水押しが強い。また左右移動式ウエイトを採用しており音が鳴る。ハイアピールな表層クランク
●フックセッティング
①通常はフロントもリアも「BC-33F#7」(写真上)
②高活性魚が多い状況ではフロント「BC- 33 F#7」、リアを1 サイズ上げて「BC-33F#6」に変更(写真下)
プレッソ ワブクラJr(SR)
サイズ25mm。フロントはシングルリング#1 、リアはシングル#0のフローティングクランク。表層レンジの活性の高い魚が対象
●フックセッティング
①通常はフロントフック「BC-33F#9」、リアフックは1 サイズ上げて「BC- 33 F#8」にする(写真上)
②放流後など高活性魚が多い状況ではフロントフック「BC-33F#8」、「BC-33 F#7」に変更する(写真下)
プレッソ ワブクラJr(SS)
サイズ25mm。ワブクラjr のスローシンキング(SS) モデルは活性の落ちたスローな魚に、スピードを合わせやすい食わせのアクションが持ち味。リング構成はフロント#1、リア#0
●フックセッティング
フロントフック「BC- 33 F#10」、リアフックは1サイズ上げて「BC-33F#9」
プレッソ ニョロクレイジー
サイズ57mm。リング構成はフロントもリアも# 0 のダブルリング。独自の形状はウネウネとしたアクションを見せ、タフな魚の好奇心をかき立てる。表層からボトムまで幅広い層をカウントダウンで攻略可能
●フックセッティング
①通常はフロントもリアも「BC-33F#8」(写真上)
②ショートバイトが多くフックが乗り切らないならフロントは#8 のまま、リアを1サイズ上げて「BC-33F#7」に変更(写真下)
プレッソ ワブクラ(DR)
サイズ30mm のフルサイズクランク。超デッドスローのリトリーブでもしっかりとねらいたいレンジをキープできて活性の低いトラウトを反応させる。リングはフロントが# 0 のダブル、リアがシングル# 0
●フックセッティング
①通常はフロント「BC- 33 F#8」、リアが「BC-33F#6」
②高活性魚を掛けにいく場合はワイドゲイプの「CW- 33F(プロト)」に交換してハリ立ちをよくさせることも
プレッソ リバクラ
サイズ30mm。逆リップ(上向き)の付いたクランクでフォール姿勢が安定している。スプーンみたいに引けるシンキングクランクだ。リングはフロントもリアも# 0 のダブルリング
●フックセッティング
フロント「BC- 33 F#8」、リアは1 サイズ上げて「BC-33F#7」
プレッソ ステップダート
サイズ40mm。ステップを踏むような規則的で小刻みなダートを得意とする。ミスバイトを軽減するアクションを実現しながら、ニュートラルな魚の活性を強制的に引き上げる
●フックセッティング
フロント、リアともに「BC-33F #8」
プレッソ ラトリンポッピンバグ
サイズ28mm。甘いポップ音でトラウトの注意を引き、スライド幅の短いテーブルターンで口を使わせる。フロントもリアもシングルリング# 0。トップは腹をめがけてバイトする魚が多く、リアフックは内向きにセッティングするのがミソ
●フックセッティング
フロントもリアも「BC-33F#8」
プレッソ ダブルクラッチ45F/60F
サイズ45mmモデルのミノー。マジックジャーが得意。トンプと同じくリアを内向きにするのが通常だが……
●フックセッティング
フロントもリアも「BC- 33 F#9」。60mm モデルはフロントもリアも#8