今秋、シマノからワカサギ釣り用の穂先「レイクマスターSH」が登場した。長さや硬さ、調子の違いを網羅した全16本という圧倒的なラインナップに加え、初心者でも手に取りやすい価格設定が大きな魅力だ。しかし、選択肢が多いからこそ「どれを選べばいいのか?」と迷ってしまうアングラーも多いはず。そこで今回は、本シリーズの監修者の一人である松田克久さんを直撃。多彩なラインナップの中から、今の自分に最適な1本を導き出す「選び方」を聞いた。
写真と文◎編集部
解説◎松田克久
松田克久(まつだ・かつひさ)プロフィール:高崎市の釣具店「つりピット!」代表。夏はアユ釣り、冬はワカサギ釣りに通い込むシマノインストラクター。ワカサギ歴は40年以上。
シマノ「レイクマスターSH」はワカサギ釣り入門にも最適な穂先
今年もいよいよワカサギシーズンが開幕。今シーズンから本格的に始めてみようと準備している人も多いだろう。格安の手巻きリールセットから電動リールのタックルにステップアップしようとしたときに迷ってしまうのが穂先選びではないだろうか。もちろん相手はワカサギだから、どれを選んでも全く釣果が得られないということはないが、せっかくならよく行くフィールドやスタイルに合わせて最適な選択ができればそれに越したことはない。
この秋シマノから登場した「レイクマスターSH」シリーズは長さ・調子・パワー違いの16本を展開する大型ラインナップ。選ぶ悩みが増えてしまいそうだが、バリエーションが豊富な分、そのときその場所に合ったチョイスが可能になる。
16種のラインナップで、幅広い状況をカバー
群馬県・榛名湖や赤城大沼のお膝元、高崎市で釣具店「つりピット!」を営む松田克久さんはこの穂先の監修に携わったひとり。「16種の一挙リリースであらゆるフィールド、条件をカバーできるシリーズになりました」と話す。
「長さはS:22cm、M:27cm、L:32cm、LL:41cmの4種類で、基本的には使うシチュエーションに合わせて選びます。ドーム船や氷上のテントなど狭いところで使うならS。ボートなど手もとを広く使える釣り方なら長いものが使いやすいです。LLはこれまでシマノのラインナップにはなかった超ロングタイプで対応の幅が拡がりました。 これに調子とパワーの違うタイプがそれぞれ揃っています。パワーによって扱いやすいオモリの重さが変わってきます。出番が多いのは『01』『02』『03』あたりですが、Mには『01』よりもさらに軟らかく繊細な『00』、LLには25gまで背負える『04』パワーのモデルもあります」
FとR、2種類の調子
調子は先調子のFタイプとレギュラーのRタイプの2種類から選べばOK。
「Fタイプは操作性のよい先調子で、癖がなくオールラウンドに使えます。ビギナーの方がまず1本目を買うなら『M02F』か『L02F』あたりを選んでいただければ間違いないでしょう。万能的な長さのMやLに、中間のパワーの『02』です。 一方で前述の『00』パワーの柔軟なモデル『M00F』もFタイプの調子です。これは厳寒期の氷上など激渋な状況が出番です。スローな聞き上げにしかアタリが出ないときなどです。そういうときは仕掛けの上にガン玉を打ってイトをフケさせて食い込ませたり、そこからシャクってリアクションで食わせたりする小技も駆使しますが、ガン玉の重さも感じやすくこういった操作にも最適です。個人的には赤城大沼の氷上で使いたいと思っています。」
「Rタイプの調子はオモリ負荷が胴に乗ることで大きいオモリを使いやすい調子です。深場ねらいの際はもちろん、投入速度を活かし数釣りフィールドで手返しよく連掛けで釣るのもやりやすく、とくにボートにおすすめです。また、胴に入る調子は曲がりシロが大きくとれることから波による揺れを吸収してくれますし、湖流のあるフィールドでボートが左右に振られたり仕掛けがボートの下に入り込んだりするような状況で仕掛けを馴染ませやすいです。
個人的にはR推しです。仕掛けの操作性はFのほうがいいのでビギナーの1本目にはFを挙げましたが、魚を釣る際に不利に働く外的要因への対応幅が広いのです。高速巻き上げでもバラしにくいのもいいですね。 最大25gまでのオモリを背負える『LL04R』は山梨県の西湖や群馬県・神流湖など20~40mくらいの超深場をねらう釣り場で使いたいモデルです。ですが深場だけでなく投入の速さを生かしてすごく釣れる釣り場で早掛けで数を伸ばすのにも活躍します。 それより一段階軟らかい『LL03R』がその長さも相まって追従性が高く、野尻湖など深いけどシビアな仕掛けの扱いが求められるテクニカルなフィールドで使いたいモデルです」
減水+霧雨の赤城大沼で、「レイクマスターSH」を試す
10月初頭、そんな松田さんの今シーズン2度目のワカサギ釣行へ同行させてもらった。フィールドは赤城大沼。群馬県の県庁所在地である前橋市街から近く、県民に最も馴染みがある赤城山の山頂に位置するカルデラ湖である。
今シーズンの赤城大沼は雨が少なかったことで大きく減水中。それによってワカサギの密度が高くなっているためか9月1日の解禁以降好釣果が続いている。赤城大沼のワカサギ釣りの拠点であるレンタルボートと食事処の「バンディ塩原」スタッフによると「ふ化がうまくいったのもあると思います。いまは水深8~10mがねらいめです」とのこと。
去年もボートは好調だったというが、結氷してからはスローダウン。理由として「短期間で全面が凍ったため酸素の供給が少なかったことが活性低下につながったのかもしれない」という。近年は秋が短くなっているのでこの傾向はしばらく続くかもしれない。普段は氷上オンリーの人もボートに挑戦してみてはいかがだろう。
そんな前情報に期待して朝6時(出船は7時)に到着してみると、山上湖の天気はあいにくの霧+雨。水面に波紋ができない程度の霧雨だったものの、風も吹いて横から吹き付けるツラいコンディションに当たってしまった。「霧の日はよさそうなイメージがあるけど、意外と反応が悪いことが多い」と松田さんも不安を口にする。
最初に入ったポイントは林間学校前。魚探を見ながら9m前後のラインをジグザグに操船し、群れの反応が映るところでアンカーを投入した。安価なものでいいので魚探はぜひ持ち込みたい装備だ。水深は9.3m。ボトムギリギリやちょっと浮いたところに群れはちょびちょび映ります」と松田さん。しかし……。「厳しい……。なかなかアタリが出ない」
水に手を浸けてみると気温より暖かい。冷たい雨で活性が下がったのか、光量が少なくエサを見つけてもらえないのか。時おり出るアタリにアワせてみれば12cmクラスの良型が上がってくるものの、どうにもペースが伸びず、9時過ぎにポイント移動。対岸に位置する島裏だ。ここは風裏になっていていくぶん釣りがしやすい。

先調子のFタイプを使い、繊細な誘いを掛けて攻略
この日の松田さんのタックルは電動リール「レイクマスターCT-ET」に穂先はL01FとL02Fの二刀流。オモリは7gで、右手のL01Fには全長130cmの7本バリ仕掛け、左手のL02Fには全長180cmの8本バリ仕掛けを合わせた。
釣り人の操作次第で繊細な誘いを掛けやすいFタイプの穂先で、細かいシャクリを入れたり、スローに聞き上げたり、台から浮かせてステイさせたりと多様な誘いをかけていく。アタリはいずれも単発で、置きザオ中に出たり聞き上げ中に出たりとパターンが見えないため、手もとが休まる暇もない。
それでも根気よく釣りを続けていると、11時過ぎごろから調子が上向いた。連掛けこそないものの時速20~30尾ほどのペースをマークしたところで天候を見つつ早めの納竿となった。 季節が進めば群れも固まり釣りやすくなるはず。
※このページは『つり人 2025年12月号』の記事を再編集したものです。



