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North Angler’s編集部2025年11月14日

支笏湖トラウトの近年の傾向は?サクラマスの台頭と、ブラウンの釣果低迷は今シーズンも続くか

札幌近郊のみならず道内各地、道外からも訪れるファンが増えている北海道を代表する巨大レイク、支笏湖。かねてよりニジマスとブラウンの二大看板がアングラーを虜にしていたが、「記録的な高水温」「ブラウンの不調」「サクラマスの増加」という要因が重なり、昨年は少し状況が変わっていた。今シーズンの釣行計画のヒントとして、昨年12月初旬の実釣を交えつつ、各魚種の動向を探ってみたい。

Photo & Text by Hiroki Hirasawa

2024年12月、支笏湖で起きていた「異変」

2023年12月1日の洞爺湖冬季解禁日は道央圏のみならず各地からアングラーが訪れていた。遠征してきたアングラーは宿泊して数日釣りを楽しむのだろう、洞爺湖解禁日の前後は「支笏湖もけっこうにぎわいますよ」と話すのは、苫小牧市の吉道正美さん。吉道さんにはノースアングラーズ201号(2023年1・2月合併号)『ザ・支笏湖チャレンジ』で登場いただいたが、支笏湖の釣りブログを開設し、〝シコバカ〟の愛称で呼ばれる生粋のフリーク。

年によっては洞爺湖の解禁日に駆けつけるが、SNSや知り合いの動向から「今年の解禁日はかなり混雑するかも……」と予測し、2024年の12月1日は朝から支笏湖に向かった。「釣果は小さなニジマスだけでしたが、やっぱり人はそれなりにいましたね」と振り返る。釣行時には必ず水温を計るが、当日は約1ヵ月前とそれほど変わらない9度。「12月に入ってもこれほど高い年は珍しい」と驚いていた。支笏湖フリークの間では、水温が10度を下回るとモンスターブラウンの釣果が上向くといわれ、例年11月には大もの情報が流れる。が、この年はほとんど聞かれず、釣れるのはニジマスが主体。

「知人がキャッチした65cmが把握しているところでは最大」と教えてくれた。前日は雨で厳しい展開が予想されたので、吉道さんと合流したのは12月3日。北西の風4~5m、午前7時まで雨模様とはいえ8時から晴れの予報。雨が上がることを願いつつ、7時にモーラップで待ち合わせた。

本命はブラウンも、サクラマスがヒット

朝でも5~6℃というプラス気温を受け、吉道さんは新品のPEラインに巻き替えてきた。本来なら凍結の恐れがある時季ゆえ、12月は朝からナイロンラインでとおすことがほとんど。しかし凍結の心配が少ないなら、秋~冬に好釣果が出ているジグのジャーキングの操作性を高めるのもよい。ここ数年はジグのジャーキングでニジマスもよく釣れているとはいえ、本来は良型ブラウンに有効なメソッド。遠くのジグにアクションを確実に与えるには伸びの少ないPEに分があるのは明らかで、ナイロンより細い分、飛距離を伸ばすこともできる。どんなフィールドでもジグとPEの相性は抜群だ。

「この時季はいつもなら寒くて凍える感じなのに、今日は本当に暖かいですね。今年は例年より1ヵ月遅れているイメージ。そろそろブラウンがよくなるはず……」。

実釣前、静かに闘志を燃やしていた。ポイント選択に少し迷う。前夜の雨量が多かったため、沢の流れ込みが何本もあり、魚が岸寄りしやすい濁りの入る支笏トンネル周辺が面白いと思った。ところが、早朝にトンネル近辺に入っていた友人から「ダメ」との連絡。そこで北西の風予報を受け、岩内から94km看板付近にエントリーした。なお、支笏湖最大の流入河川である美笛川インレット周辺は、冬から春にかけて産卵するブラウンのオアシスになっていると考え、この時季は余計なプレッシャーを与えないよう入るのを自重している。

ジグミノーにサクラマスが反応

湖岸に降りると向かい風が吹き、沖で白波が立っている。岸に打ち寄せる波もそれなりで状況はよさそう。大きなワンドの左岸端から崖が続き、その前浜はかなり沖までシャローが続いている。水温が下がると大型ブラウンが岸寄りし、過去に何度もよい思いをしているポイント。ここである程度粘る作戦だ。

岸寄りしたブラウンはフローティングミノーやシンキングペンシルの実績が高い。が、しばらくキャストを続けても音沙汰なし。しかしながら射程圏内に泡の筋ができており、気配は悪くない。「ワンチャンスあるはず……」と信じ、少しずつ左岸に移動しながらルアーをローテーションしていると、沖めで強いアタリが伝わった。スピード感あるファイトをいなし、ランディングネットですくったのはサクラマス。ニジマスと思ったが……。表層をタダ巻きしたジグミノー28gを襲った。

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このサイズのサクラマスが多いようだ。ヒットパターンは表層のタダ巻きで、ニジマスと勘違いすることも!?
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サクラマスを導いたジグミノー。D-3カスタムルアーズ『フルベイト』85mm28gグリーンゴールド。支笏湖と洞爺湖、どちらでも大ものの実績が高く、湖好きにとっては欠かせない定番。フックはオーナーばり『カルティバファイアフック』シリーズを愛用

湖岸で見た「ヒメマス」の状況

サクラマスをキャッチした後、波が収まりかけ、波の方向がトンネル側になったのを確認し、岩内から91km看板付近に移動。ここは砂地のシャローだが、意外にも「エゾハルゼミの時季にブラウンが溜まるんです」と言う。沖のカケアガリに付いていて、エサの動向しだいで岸寄りするのだろう。

吉道さんはジグを遠投してジャーキングに徹する。ふと湖岸に目をやると、あちこちに息絶えたヒメマス(地方名:チップ)が打ち上げられているではないか。サイズはどれも30cmほどあり、よく見ると瀕死の状態で水面を漂っている魚もいた。2024年、支笏湖のヒメマス漁は初めて20万尾を超え、過去最高の漁獲量を記録。魚影が多くなっているのを象徴する光景だ。ヒメマスの産卵期は一般的に9~10月だが、異常な高水温から遅れているのかもしれない。流入河川に遡上して産卵する降湖型と、湖岸の浅場で産卵する湖沼型がいるが、91km看板付近は産卵に適したエリアと想像できる。

当初の目論見は外れ、風は吹かず波もなく厳しい状況。なるべくヒメマスを避ける目的もあり、吉道さんはディープが隣接する左岸を進む。ほぼ無風の条件をふまえ、ジグ20gをフリーフォールで30~40カウントダウン。アタリの感じから「それなりのサイズのブラウン」と思しき魚を掛けたが、残念ながらフックが外れてしまった。散見されるヒメマスに心が痛むのもあり、ここでストップフィッシング。朝に集合したモーラップに寄ると、人気の大きなワンドには等間隔で数人のアングラーが並んでいた。

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91km看板周辺は、ご覧のようにヒメマスが多数打ち上げられていたほか、水面を漂う瀕死の魚も見られた

禁漁期に注意

支笏湖ではヒメマスのみ漁業権が設定されており、岸から釣る場合でも遊漁期間を厳守し、遊漁料を払う必要がある。9月~翌年5月までは禁漁期間。また、サクラマスは北海道内水面漁業調整規則により、支笏湖の場合は4~5月が禁漁期間にあたる。この規則をしっかりと頭に入れておきたい。

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ヒメマスは支笏湖漁協が漁業権を取得しており、岸から釣る場合でも遊漁期間と遊漁料が定められている
・遊漁期間:6月1日~8月31日
・遊漁料:陸釣り1日820円、3ヵ月14,300円
・管轄漁協:支笏湖漁業協同組合

近年の支笏湖トラウトの傾向

取材中に釣れたサクラマスは、以前から晩秋~早春に釣果が出ていたが、その数が「年々増えている」と言われ、吉道さんもそう実感している。数だけでなく大ものの話題も届く。以前にNorth Angler’s本誌(2022年5月号)でレポートしているが、同年2月下旬に74cmのモンスターがあがっている。サクラマスもブラウンやニジマスと同様、特大サイズに育つポテンシャルを秘め、注目度は増している。

一方、2000年代前半から支笏湖の釣りを牽引してきた、ブラウンの釣果が低迷していると心配するフリークは少なくない。その原因として、昔から産卵遡上した魚を釣る行為が指摘されている。

ニジマスに関しては、数年前から「少しずつ釣果が上がっている」と語られている。その要因の一つに、2018年9月に大きな被害をもたらした台風後、オコタンペ川インレットに続く道道78号が閉鎖されたことがあるようだ。これにより周辺エリアの釣りが難しくなり、「ニジマスの産卵環境がよくなったのでは」との意見が聞かれる。

またかつて、ニジマスは60cmに大きな壁があったが、近年60cmオーバーはそれほど珍しくなくなった。いずれにしても漁業権対象魚種であるヒメマス以外に増殖義務はないため、今後も釣りを楽しむには、確実なリリースに加えて自然産卵をうながすことが重要になる。

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91km看板エリアではブラウンらしき魚を掛けたが、ファイト中に首を振られてバレてしまった。ヒットルアーはフィッシングショップ清竿堂『SSPジグ』80mm20g。吉道さんにとってジグといえばコレ

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