バイブレーションと聞くと、どうしても顔が浮かぶアングラーがいる。金森隆志さんだ。20年前、はじめて雑誌に登場したころから「冬の野池のバイブレーション」が十八番だった。今年で立ち上げ10年を迎えるレイドジャパンの処女作もこのカテゴリー。「低水温期の野池の軸であることはいまだに変わりません」と言うその活用術を拝見した。
低水温期の野池で輝く「魅力的なリフト、食べやすいフォール」
写真と文=編集部
この記事は『Basser』2021年12月バイブレーション特集号に掲載したものを再編集しています。Basserのバックナンバーは定期購読をお申し込みいただくとデジタル版バックナンバーが4年分以上読み放題! 詳しくはこちらをどうぞ!バイブレーションと聞くと、どうしても顔が浮かぶアングラーがいる。金森隆志さんだ。20年前、はじめて雑誌に登場したころから「冬の野池のバイブレーション」が十八番だった。今年で立ち上げ10年を迎えるレイドジャパンの処女作もこのカテゴリー。「低水温期の野池の軸であることはいまだに変わりません」と言うその活用術を拝見した。
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金森隆志(かなもり・たかし)
1981年3月2日生まれ。岡山県出身、在住。18歳のころ、並木敏成さんの「情熱大陸」を見て本格的にバスフィッシングをはじめる。一番最初に仲良くなったルアーがバイブレーション。ラトリンジェッターやカリブラ、スラヴァーバイブを投げ倒していたことを記憶している読者も多いはずだ。2011年にレイドジャパンを立ち上げる。第一作は「レベルバイブ」
同コース8投目でようやく出たバイト
10月中旬。水温は20℃ありまだバイブレーションの季節には早いが、金森さんのバイブレーションの釣りを岡山県の野池で拝見した。驚かされるのに10投も必要なかった。
護岸から1.5m沖までは水深70~80cmほどで、そこから1.5mまで落ちる。その境界線上に岩がゴロゴロ入っている素晴らしいスポット。「デカいバスほど食う場所は決まっている。ここは絶対間違いない」と金森さんは朝から同じコースにキャストを繰り返し、8投目でビッグバスを反応させた
上アゴの硬い部分にハリが1本乗っているだけの状態であることを確認した金森さん。「これはバレそうですね。ただ、口の一番硬い部分にハリが乗っているので、慎重にいってもハリがこれ以上刺さってくれることは期待できない。こういうときはイチかバチかでサオを立ててスピーディーにいったほうが確率が高い」。結果は悪いほうに転んだが、ファイト中に極めて冷静なジャッジを下していた。ここからこのコースと向き合う長い1日がはじまった
金森さんは朝イチの10投を、水深1.5mから80cmに浅くなる地形変化上に岩が入っているスポットの同じコースに費やした。金森さんはここを間違いなくフィーディングスポットだと読んだ。
1、2投目はただ巻き。まずは中層を通し、続いてボトムを擦った。
金森「正直、年々ただ巻きで釣れる割合は減っています。『ただ巻き3:リフト&フォール7』、くらいの割合ですね。ただし、ただ巻きで食ってくるバスは太いいい魚が多い。それに、何もない中層でドスンと食ったときほど気持ちいい瞬間はないです」
3投目からはショートストロークのリフトとフォールに切り替えた。サオを10時から12時に操作し(リフト)、その後ラインスラックを巻き取りつつティップを元の位置に戻す。面白いのは、リフト時にピッ、ピッ、ピッと3回ほど段をつけてサオを捌いていたことだ。バイブレーションに限らず、リフト&フォールの釣りではフォール時にバイトが集中する傾向があるので、リフト時のロッドワークにはあまりこだわらないアングラーも多い。しかし金森さんにそれは当てはまらないようだ。
1回のリフトでバイブの移動距離は30 ~ 50cmのイメージ。リフトでも、フォールでも、意識するのは「逃がし」
金森「ワンストロークで直線的にリフトさせるよりも、ロッドワークでヒラッ! ヒラッ! と軌道をズラしながら上げてあげたほうがバスにスイッチが入るキッカケになります。たしかにバイトはフォールで出ることが圧倒的に多いですが、バスが食う気になるキッカケはリフト時に作るものだと思っています。魅力的なリフトでその気にさせて、食べやすいフォールで口にルアーを入れたい。ショートリフトが基軸なのは釣りの精度を上げないと食わない魚が増えたからです」
1投ごとにロッドワークのリズムやストローク幅は変更していたが、金森さんはこのあとも同じコースでリフト&フォールをさせ続けた。朝イチのチャンスを1コースに費やすことは惜しくないのだろうか……と疑問が沸いたが、8投目にバスから回答があった。掛かったのは太い45cm級! この魚はネットイン間際にバラしてしまった。同じコースの8投目でこんなにいい魚が食ってくるとは……。
金森「バイブレーションは弱いルアーです。バスにルアーを追わせて食わせるのではなく、目の前を通して口を開けさせるジャンル。だからいいコースに何度も何度も投げるとこのようにバイトが出ることは多い。とくに真冬は1日中1コースに投げ続けてもいいと思ってます」