山口から広島にかけて広がる西瀬戸の海は、マダイの魚影が濃いタイラバの人気スポット。ハイシーズンなら1日で10尾以上釣れることもざらで、しばし80cmを超える大型も顔を出す。そんな豊穣のフィールドをホームに、シーンの最前線で活躍する沖中友志さんの釣行に同行し、好釣果を上げるための秘訣を伺った。

解説◎沖中友志(おきなか・ゆうじ)
写真と文◎伊藤巧(月刊つり人)
1985 年生まれ、広島県在住。タイラバをメインにソルト全般に造詣が深いがまかつラグゼスタッフ。プライベートではバスフィッシングを楽しむ。
シンプルながら釣果に差がつくタイラバ
釣行は1月28日。沖中さんは親交のある土井喬雄さんと木村一広さんを誘い、広島港の海神に乗り込んだ。小川喬也船長によると厳寒期に入ってマダイの活性は著しく下がり、釣り方を誤るとアタリが出ないという。この日は長潮ということもあり、沖中さんは午前11時を回って潮が上げに転じる動き出しからが本番と読んでいた。
海神は午前6時に広島港を出船。大きく南下して室津半島東の水道に入る。水深は40m前後。魚探で地形の変化やベイトの群れを探し、ポイントの風上からドテラで流して実釣スタート。強風にあおられて1ノット超えで流れるので、あまりラインに角度がつかないよう110gのシンカーで反応を伺う。最初にセットしたネクタイは、実績のある赤とオレンジのカーリーテール。事前に活性が低いと聞いていたので、巻き速度は秒速50cm前後とスローな釣りに徹した。
潮が大きく流れるエリアでは、張りのあるロッドがおすすめ
ディープゲームやキャストの釣りも想定して、沖中さんはベイトタックルを2セットにスピニングを1セット持ち込んだ。メインで使うベイトロッドは「ラグゼ桜幻 鯛ラバーR」のB60M-solid.FとB66ML-solid.F。スピニングは「ラグゼ桜幻 鯛ラバーXX」のS65ML-solid。
いずれも一般的な乗せ調子に比べて張りが強く、柔軟ながら食わせるまでのルアー操作に重きを置いた掛け調子に仕上がっている。瀬戸内のような潮が大きく流れるエリアや深場ではシンカーも重くなり、乗せ調子のライトロッドでは大きくもたれてしまう。フックの貫通力も落ちるので、張りのあるミディアムライトやミディアムパワーが使いやすい。
「タイラバといえば乗せ調子が主流ですが、思っている以上にマダイは貪欲な魚ですから張りのあるロッドでも遜色なく釣れますよ。これからタイラバを始めるのであれば、汎用性に優れるミディアムライトのベイトロッドをおすすめします。時期や地域によっては150gを超えるシンカーも使うので、軟らかいロッドでは巻き重りが避けられません」
ベイトリールはスローな巻きが釣れていることを踏まえてローギアを選択。アタリが遠いと釣りが雑になって巻きが速くなりがちなので、低水温期はローギアを多用する。ちなみにスピニングもひと巻き72cmのノーマルギア。いずれもPEラインは0.8号。リーダーはフロロ4号で、ベイトが2ヒロ、スピニングは1ヒロ取っていた。
使用するタイラバのレイアウト
シンカーはタングステンで2タイプ。球状で安定した潮受けが特徴の「ラグゼ桜幻 鯛ラバーQ TGシンカー」を縦の釣りに用い、キャストの釣りには「ラグゼ桜幻 デルタシンカーTG」を使っていた。一部の地域や時期を除き、あらゆる局面でタイラバには操作性に優れるタングステンが有効なのだ。カラーはネクタイに合わせるのが基本。
持参したネクタイは「ラグゼ桜幻 シリコンネクタイ」の桜カーリーとメガシングルカーリー。フックシステムは「ラグゼ桜幻 カスタムチューンフックセット スーパークイック」のSとSSを使用。セッティングの手順は、最初に「ラグゼ桜幻 シンカーストッパー」をラインにセットしてから釣り方や海況に応じたシンカーを通し、ネクタイを専用ホールに通して固定したフックセットを結ぶ。
シンカーストッパーのメリット
重要な役割を果たすのがシンカーストッパー。シンカーはファイト中のバラシを回避するため全遊動が基本だが、深くて潮が強いエリアでは魚が食ってくるまではネクタイユニットと一体化しているほうが圧倒的に釣りやすい。手返しがよくなり着底ヒットのチャンスも逃さない。なお、魚がハリ掛かりして首を振ればシンカーの重みでストッパーは大きくスライドするので、シンカーがユニットから離れてバラシの心配もない。
なお、ハリ先は1尾釣るごとにチェックして少しでも不安を感じたら交換すること。数を釣る人は1尾釣るごとに交換している。特に甲殻類を捕食しているエリアのマダイは噛み方が激しいのでチェックを怠らないように。アタリがあったにもかかわらず掛からなかったときも追い食いがないことを確認した時点で一度ピックアップ。ネクタイが絡まっていないか、ハリ先が潰れていないかをチェックする。トラブルに気づかず使い続けるとキャッチ率が大幅に低下する。
タイラバの縦の釣り:基本の巻き方とアタリの取り方
タイラバの基本は縦の釣り。手順はいたってシンプルで、風上に向かって釣り座を構えたら、タイラバを船べりからフリーフォールさせて、着底したら一定の速度で巻き上げる。マダイやベイトの反応が出ているレンジを通過したら、再び底まで沈めて巻き上げるを繰り返す。マダイは上から落ちてくるものに興味を抱くのでタイラバに気づくと追いかけていき、底から上に向かって泳ぎだしたタイラバに襲いかかる。着底と同時に食ってくることもあるので巻きはじめから集中すること。
アタリは明確。手もとにガツガツと伝わってくるが基本的にアワセは入れず、向こうアワセで掛かるまで一定の速度で巻き続ける。アタリに慌てて巻きの速度を変えたり、手を止めるとマダイが食うのを止めてしまうので、一定の速さで巻き続けることが大切。ガツガツと穂先を叩いている間は、シンカーを攻撃していたり、ネクタイをくわえて頭を振っているだけでフッキングしていない。マダイがフックをくわえて反転するなどガッチリ掛かると大きくロッドが入るので、そのまま慎重に巻き上げる。ファイト中のポンピングはバラシにつながるので厳禁。ロッドを斜め下に構えながら一定のテンションで巻き続け、海面に浮いてきたところで、タモですくう。
巻き速度やアタリが出てからの駆け引きで釣果が変わる
なお、一定の速度で巻いていてもマダイが嫌がってタイラバから離れることがある。低水温期にはよくあることで、タイラバに執着していれば食い直してくることが多い。追い気が薄いと反転して戻っていくので、すかさず底まで落として巻き上げると再び食ってくることがある。
「シンプルな釣りなのでビギナーでも相応にチャンスは訪れますが、巻き速度やアタリが出てからの駆け引きなど明暗を分けるポイントが多く、上級者とは釣果に大きな差がつきます。そんな奥の深さがタイラバの魅力です」
底付近にカタクチイワシの反応が出ていたので、沖中さんは5mほど誘い上げてはフォールを繰り返す。そして周辺にタイラバの存在をアピールするため、数回ごとに10mほど大きく巻き上げて落としていた。ねらいはカタクチイワシを追いかけている良型のマダイだ。
タイラバは集中力が鍵を握るメンタルゲーム
「タイラバはメンタルゲームです」沖中さんは断言する。アタリを引き出すためのテクニックなどノウハウは山ほどあるが、ここ一番で明暗を分けるのは集中力であると。ひたすら巻きとフォールを繰り返すので釣りが単調になりがちなのだ。
「どうしても朝一は気持ちがはやって低活性でも何とか食わせようと頑張りがちです。そこにタイラバの落とし穴があります。釣れない間に疲れてしまうと、肝心の時合に集中力を欠いてアタリを引き出せなかったりバラシを連発したり、ろくなことになりません。比較的自由な遊漁船ならば、私は縦の釣りにキャストを織り交ぜて気分転換しています。適当に休みながら時合に集中したほうが好釣果につながりますよ」
ビギナーは終始集中しようと無理をするので、結果的にアタリの回数に対してのキャッチ率が低くなり、終わってみれば上級者と大きな差がついている。とりわけ活性が低くて食いが浅い低水温期は顕著だという。キャッチ率を上げるためにも釣り人のオンオフが肝要なのだ。潮さえ動けば食いは立つと、沖中さんは休憩をはさみつつ打ち返した。
レンジ攻略の考え方
「誘い上げる高さは、水深や時期、ベイトフィッシュのレンジによっても変わります。今回は春のメインベイトになるカタクチイワシが底に群れているので、5mほどの巻き上げで落としています。ただし狭いレンジを何度も上下させているとマダイが見切ってしまうので、私は5回誘い上げるたびに追加で10mほど早巻きして視界からタイラバを消してから落とし直します」
昼前に干潮から上げに向かって潮が動きはじめて巻きが重くなってきたので、水深が80mほどある屋代島の南に移動。ほどなく沖中さんは本命をキャッチした。この時合に沖中さんは集中して打ち返し、短時間に40cm超えを筆頭に7尾のマダイを釣りあげた。
マダイが浮いていないときは、キャストの釣りで広範囲を斜めに探る
縦の釣りでアタリが途切れると、沖中さんはスピニングタックルに持ち替えては風下にキャストの釣りを展開してアタリを引き出していた。キャストの釣りは船が流れていく方向に探っていくので少々コツがいる。
まずはアンダーキャストで船の流れていく方向に遠投してフリーフォール。フォール中も船はタイラバに向かって流れているので、着底を確認したら素早くラインを巻き取る。ラインが張って角度がついたら、巻き速度に注意しつつ斜めに誘い上げてはフォールを船の下まで繰り返してピックアップ。ただし気配があるなら縦の釣りの要領で誘い上げとフォールで誘い続ける。タイラバに船が近づくにつれてラインが立ってくるので巻き速度も合わせて落としていく。キャストの釣りは、斜めに引くことで長くボトム付近をトレースできるので、マダイが浮いていないときは効率的に釣ることができる。なお、シンカーは球状だと抵抗が大きく巻き重りするので、水切りのよいデルタ形状(三角形)が使いやすい。
ネクタイやシンカーの交換も有効
午後2時を回って終盤。潮は利いているのにアタリが遠のいた。濁った潮が差して透明度が落ちてきたように感じた沖中さんは、タイラバの存在を広範囲に知らせるために強い波動を起こす大きなネクタイに付け替え、抵抗でフォールが遅くなってラインが斜めにならないようシンカーも160gに交換した。「気配はあるのにアタリが途絶えたときは、波動を変えてやると一発で食ってくることがあるんですよ」と解説しながら底まで落として誘い上げると、本当にマダイが食ってきた。しかも水面を割ったのは52cmの良型。単調に打ち返していたら見逃している価値ある1尾だった。
ヒットした同船者と同じ釣り方をして62cm追加
さらに納竿間際に潮が緩んできたので軽くキャストして探っていた沖中さんの隣で、縦の釣りに徹していた土井さんのサオが曲がった。やり取りのようすから良型と判断した沖中さんは「タイラバは連鎖するんですよ」と縦の釣りに切り替えると、この日の最大寸となる62cmを追加した。
こうして食いが渋いなかで9尾もの釣果を手にした沖中さんは「今回は事前に食いが渋いと聞いていたので、途中で気持ちが折れないよう釣ることだけを考えて頑張りました。潮の動きはじめに数が釣れて、緩んできたところで良型を2尾。厳寒期にしてはデキ過ぎの一日でした」と、満足してロッドオフとした。瀬戸内海のタイラバは4月後半からが本番。ぜひエキスパートの戦略を参考に好釣果を上げていただきたい。
※このページは『つり人 2026年4月号』に掲載した記事を再編集したものです。



