ウナギ釣りと聞くと、難易度の高い釣りのイメージも強い。しかし、都内の河川に通い詰める大川雅治さんにかかれば「10回行けば9回は釣れる」高確率なターゲットだという。この記事では、そんな名人が実践する「打率9割」のウナギ釣りメソッドを徹底解説。時期や時間帯といった基本から、釣果を大きく左右するポイント選び、こだわりの仕掛け、そして釣り方の一連の流れまで、目からウロコのコツを余すことなく紹介する。
ウナギ釣りと聞くと、難易度の高い釣りのイメージも強い。しかし、都内の河川に通い詰める大川雅治さんにかかれば「10回行けば9回は釣れる」高確率なターゲットだという。この記事では、そんな名人が実践する「打率9割」のウナギ釣りメソッドを徹底解説。時期や時間帯といった基本から、釣果を大きく左右するポイント選び、こだわりの仕掛け、そして釣り方の一連の流れまで、目からウロコのコツを余すことなく紹介する。
◎つり人編集部
ウナギ釣りは初夏が最盛期
ウナギ釣りのベストシーズンは、なんといっても夏、特に6月から8月が最盛期になる。水温が上がり、ウナギの活性が高くなるほか、雨によって好物のミミズなどが川に流れ込むことも一因。大川さんも、この時期に釣行を重ねて多くのウナギを手にするという。
時間帯は日没前から21時ごろ
ウナギは夜行性のため、釣りは夜がメイン。具体的なゴールデンタイムは、太陽が沈み、空が薄暗くなる日没直後から21時ごろまで。この時間帯は、ウナギが巣穴から出てエサを求めて活発に動き回るため、潮の動きに関係なく最大のチャンスタイムといえる。
ただし、例外もある。前日までの雨などで川に濁りが入っている場合は、日中でもウナギの警戒心が薄れ、エサを探しに出てくることが多い。昼間の釣りでも思わぬ釣果に恵まれる可能性がある。
最適な潮回り
大川さんによると、潮回りを過度に気にする必要はないものの、狙い目となるタイミングは存在するとのこと。最も有望なのは、「下げ潮で、かつ流れが緩やかになったタイミング」だという。これは、上げ潮の際に活発になるセイゴやアカエイといった他魚種のアタックを回避する、という意味合いも強い。
-1.jpg?width=768&height=432&name=12-Aug-05-2021-03-35-06-44-AM%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0)-1.jpg)
ウナギのブッコミ釣りタックル&仕掛け
ウナギ釣りでは「ブッコミ釣り」が王道の仕掛けだ。このブッコミ釣りのタックルを紹介しよう。

竿
ウナギ釣りには、特有の繊細なアタリを弾かずに食い込ませることができる、穂先の柔らかいサオが向いている。この条件を満たせば、投げザオやルアーロッドなど幅広く流用が可能。
大川さんが愛用しているのは、ダイワの「リバティクラブ ショートスイング 15号-300」。これはグラスの含有率が高く、しなやかな調子が特長。軽い力でも投げやすいため、まさにウナギ釣りに最適だ。また、障害物のないオープンな場所ではミニパック10号-210などよりライトなサオも使っているとのこと。
.jpg?width=768&height=432&name=dougu1%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
リール
リールはPEライン2号前後を巻いた3300〜4000番程度のスピニングリールが最適。大川さんはソルトルアー用のソルティガ3500、または4000を愛用。パワーのあるリールを使うことで、ヒットしたウナギを一気に寄せられる。また、仕掛けの回収スピードが上がり、オモリが浮き上がることで手前の障害物による根掛かりを軽減させることができるそうだ。
オモリ
中通しオモリなどを使う人も多いが、大川さんは回収時に浮き上がりやすく、根掛かりに強い「ジェット天秤」を使用している。重さは10号〜20号を状況に合わせて使い分け。ここで重要なのは、あえて少し流される重さを選ぶこと。これにより、仕掛けが自動的に広範囲を探ってくれ、ウナギとの遭遇率を高める。
.jpg?width=768&height=432&name=dougu7%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
ハリス
ハリスには、フロロカーボンラインの5号を50cmほどを使用する。比重の高いフロロカーボン素材を選び、長さを50cmと短めに設定するのは、流れの中でもエサを川底にしっかりと安定させるためだ。逆にハリスが長いと、エサが宙層を漂ってしまい、セイゴなど他魚種からの反応が増える傾向にあるという。
そして、5号という太めの号数は、主に根掛かり対策である。万が一根掛かりしても、ハリスを切ることなく、ハリの方を伸ばして仕掛け全体を回収できる強度を持たせている。
ハリ
ミミズ使用時のハリは流線がメインで12・13 号を多用。ドバミミズのときはウナギバリの13号を合わせ、ハゼやカニのときは丸セイゴの12か13号を使用するなどエサによって使い分けする。
ちなみに結びは内掛け結びで7回と多めに巻き付ける。ハリ掛かりしたウナギはチモトまで噛みつくことが多いので、バラシが減るためだ。
.jpg?width=768&height=432&name=dougu8%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
その他の道具
サオを固定する三脚や、夜の釣りがメインになるのでヘッドライトなども必要になる。また、日没後にアタリを確認できるよう、穂先を照らすためのライトもあるといい。大川さんはサオ立ての先端や柵などに取り付けできるLEDライトを持参している。
.jpg?width=768&height=432&name=dougu4%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
ウナギ釣りのエサ
ウナギ釣りに使えるエサはいくつかある。その日によってもどのエサがいいか変わるので、サオを複数出してエサを使い分けると効果的だ。ウナギが好むエサの種類を紹介しよう。
ミミズ・ドバミミズ
ミミズ類は、ウナギ釣りにおいて定番かつ非常に効果的なエサ。
市販品も使用できるが、釣り場で採取することも可能だ。探す場所は、側溝の脇や雑木林の中など、直射日光が当たらず落ち葉が積もった湿った土。このような場所をスコップで浅く掘るだけで、簡単に見つけることができる。特に、団子状のフンはミミズがいる有力な目印となるため、見つけたらチャンスだ。
.jpg?width=768&height=432&name=esa1%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
小魚(ハゼ・イナッコ)
ハゼやイナッコ(ボラの稚魚)などの小魚は、大型ウナギを狙う際の切り札となるエサだ。特に、ウナギが普段から捕食しているマハゼやヨシノボリといった川底に生息する魚は食いが良く、大川さんは「特エサ」と太鼓判を押す。
.jpg?width=768&height=432&name=esa4%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
使用する際は、体長5cm前後を目安に口へチョン掛けする。また、必ずしも活きている必要はなく、死んだ状態でも食いが落ちにくいため、扱いやすい点も大きな魅力である。
.jpg?width=768&height=432&name=esa2%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
テナガエビ
ウナギと同じ川に生息するテナガエビは、彼らの好物であり、非常に優れたエサとなる。ウナギのアタリを待つ間に、足元でテナガエビやハゼ釣りを楽しみながら調達できるのも魅力だ。
.jpg?width=768&height=432&name=p37-sasikae%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
カニ
カニ類も、ウナギにとって身近なエサの一つ。硬い甲羅を持つため、小魚などのエサ取りに強いのが最大の特長だ。ウナギのアタリを待つ間にその場で採取できる手軽さもある。使用する際は、カニの動きを損なわないよう、足の付け根あたりにハリを掛けるのが基本となる。
.jpg?width=768&height=432&name=esa3%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
達人が教えるウナギの釣り方のコツ
実釣取材を行った舞台は、東京都・荒川の江北橋周辺。この日もいとも簡単にウナギを釣り上げた大川さんだが、アタリを出す秘訣は、仕掛けを入れる場所の選定が特に重要だという。取材した情報をもとに、このポイント選定を始めとした、ウナギ釣りの流れを解説していく。
釣果を左右する「ポイント選び」の3条件
当日選んだポイントは、足元が護岸され、岸寄りにはゴロタ(大きな石)が広がり、近くには橋脚も存在する。一見すると、ウナギの隠れ家が豊富な絶好のポイントに思える。
しかし、大川さんはゴロタや橋脚そのものではなく、少し離れた根掛かりのない「泥底」に仕掛けを投入した。ブッコミ釣りで狙うのは、巣穴に隠れている個体ではなく、エサを求めて巣穴から出てきて回遊している、捕食意欲の高いウナギだからだ。
そのため、ウナギの「隠れ家」ではなく、彼らの「回遊ルート」や「エサ場」となる泥底こそが、一級のポイントとなる。では、単なる泥底ならばどこでも良いのだろうか。大川さんは、釣果を上げるために以下の3つの条件を重視する。
緩やかな流れ
大川さんがポイント選びの際にまず重視するのは、流れの当たり方だ。テトラ帯やカーブの外側など、流れが強く当たる場所は避ける。ウナギがエサを探して回遊するのは、急深な場所よりも、流れが緩やかで地形がなだらかな場所だと考えているからだ。例えば、橋脚の裏側にできる「流れのヨレ」などは、まさに狙い目だ。
.jpg?width=768&height=432&name=point5%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
隠れ家との近さ
狙うのは泥底だが、そのすぐ近くにゴロタや橋脚といった隠れ家が点在していることが重要となる。ウナギの行動の起点となる場所が近い方が、遭遇率も高まる。
.jpg?width=768&height=432&name=point3%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
適切な水深
ウナギの密度が高い水深というものが存在する。大川さんは、特に汽水域において、その鍵は「塩分濃度」にあると分析する。ウナギが快適と感じる塩分濃度の層が、ある特定の水深に形成され、魚がそこに集まりやすいという考えだ。
荒川での実釣でも、アタリは水深3〜4mのラインに集中し、この水深が当日の「ウナギの道」となっていたことがうかがえる。
アタリの見極めとアワセのタイミング
ポイントが決まったら仕掛けを投入したらアタリを待つ。2~3本サオを出していくつかの目ぼしいポイントに投げ分けておくと効果的だ。また、5分に一度は竿をそっと手に取り、仕掛けの様子を聞いてみよう。
ウナギのアタリは、エサの端をかじるような「ツン、ツン」という、間隔を置いた小さな反応として現れるのが特徴。この初期アタリで慌ててアワセるのは禁物。まずはサオを手に持ち、ウナギがエサを完全に食い込んだ明確な感触が伝わった瞬間に、鋭くアワせるのがフッキング成功のコツだ。
取り込みは「一気に休まず」が鉄則
魚がハリ掛かりしたら、躊躇は禁物。休むことなく、一定のスピードで一気に巻き上げる。こうすることで、ウナギが障害物に潜り込んで根掛かりしたり、途中でハリが外れたりするリスクを減らすことができる。

「釣れた場所」は一級ポイント
ウナギは群れで行動するわけではないが、好む環境は共通している。そのため、一匹釣れた場所は、他にもウナギが回遊してくる可能性が高い。アタリがあった場所を正確に記憶し、すぐに同じポイントへ仕掛けを再投入することで、連続ヒットも期待できる。
ルールを守ってウナギ釣りを楽しもう
ウナギは、多くの河川で漁業権の対象魚種として設定されている。そのため、該当する河川で釣りをする場合は、必ず定められた遊漁券を購入する必要がある。
さらに、ウナギは絶滅危惧種にも指定されており、その資源保護が大きな課題となっている。この貴重な資源を守るため、各都道府県や漁業協同組合は、採捕できるサイズや尾数、禁漁期間などの詳細なルールを定めている。これらの規則に違反すると罰則が科される場合があるため、釣行前には必ず自治体等の公式情報を確認してほしい。
公的なルールを遵守することはもちろん、必要以上に持ち帰るのを避けるなど、釣り人一人ひとりが環境に配慮する姿勢も重要だ。未来にも豊かなフィールドでウナギ釣りを楽しむため、資源を大切にする心を忘れないようにしたい。
※この記事は『つり人』2020年9月号に掲載した記事を元に再編集しています。