米代川をホームにする九嶋貴文さんはアユ釣り競技会で注目される東北の腕利き。長年研究してきた友釣りのエッセンスを盛り込んだシャッドとバイブレーションの2タイプのルアーを監修した。7月1日、大遡上に沸く米代川支流の小猿部川でその挑発力を見た。
米代川をホームにする九嶋貴文さんはアユ釣り競技会で注目される東北の腕利き。長年研究してきた友釣りのエッセンスを盛り込んだシャッドとバイブレーションの2タイプのルアーを監修した。7月1日、大遡上に沸く米代川支流の小猿部川(鷹巣漁協管轄)でその挑発力を見た。
写真と文◎編集部
友釣りエキスパートが監修し、生まれたアユルアー
秋田県北秋田市在住の九嶋貴文さん(49)は阿仁マタギの末裔の家系に生まれ、幼い頃から山川の恵み、豊かな自然を謳歌している狩猟系の人である。米代川のサクラマスをはじめ支流のヤマメ・イワナをルアーや毛バリで釣り、夏になればアユの友釣りを楽しむ。アユ釣り競技会にも積極的に参戦しており東北各地で行なわれるメジャー大会の地区予選では上位の常連、6月20~21日に長良川郡上で行なわれたJFTコムテックカップ全日本アユトーナメントでは6位と健闘の成績を収めた腕利きだ。
東北の夏は短い。だからこそ濃密にアユ釣りを探求し続ける九嶋さん。その実践と研究を活かしてアユルアーも監修。Viva「アユラシックシャッド110F」と「アユラシックバイブ100S」の2機種である。
横にじっくりと探りやすい「アユラシックシャッド110F」
「ルアーであってもナワバリアユを追わせて掛ける原理は友釣りと一緒。よく掛かるオトリの動きに近づけて作り上げました」
「アユラシックシャッド110F」の特徴は超薄型のロングリップが生み出すウォブンロールである。ブリブリと尻振りの大きな動きではなく、九嶋さんの言葉でいえば「"タオタオ"という感じの抑えた泳ぎ」を演出して設計された。瀬肩のカガミなど目視できる場所でどんな泳ぎがよく掛かるのかを観察した結果、この抑えた泳ぎがよかった。またダウンクロスで探っても沖の川底に粘りやすいのも特徴のひとつ。
「天然アユがメインになる釣り場では、友釣りだとオトリの横出し操作、スライドアクションが効果的です。それもじわじわとゆっくり横にオトリを泳がすとよく掛かります。ダウンクロスで入れてもすぐに手前に流されないような動きにすれば、掛かるアユが増えるのではないかと思いました。このシャッドは水受けのよいロングリップの効果でルアーが沖でも適度に粘ってくれる。リップが長いと瀬では動きが破綻してブルブルというノイズがうるさくなりがちですが、このシャッドは暴れすぎません。浅場で流れが緩くても横に引きやすい」
流れの中でも安定して泳ぐ「アユラシックバイブ100S」
一方の「アユラシックバイブ100S」は素早い潜行と流れの中でも安定しやすいステイ能力が持ち味。ヘッド部にフィンを搭載することで動きが抑えられ、流れを逃がしてスライドする。その振り幅がワイドでアユのハミ行動によく似た動きを見せる。
「アユラシックバイブは瀬をダウンでステイさせてじっくりと釣るのに効果的なルアーです。フィンが付いていることから潜行させるのにコツがいります。ルアーが着水してから少しラインを緩めると潜行します」
2機種のルアーサイズは110mmと100mm。小型すぎるルアーよりはこれくらいの大きさがあったほうが良型も揃いやすくシーズンを通じて追われやすいと九嶋さんは話す。

付き場とアクションのパターンを見出す
九嶋さんを訪ねたのは7月1日、米代川水系の解禁日である。この2年ほど米代川は遡上不良にあえいでいたが、今期は凄まじい数のアユが帯になって最上流の花輪地区まで遡上している。本流だけでなく阿仁川、藤琴川、早口川といった人気の支流の友釣り場も遡上限界点まで満遍なく入っているようす。そして今のところ米代川水系で唯一のアユルアー認可区間がある鷹巣漁協管轄の小猿部川も天然アユが充満して川底がピカピカに磨かれている。

九嶋さんが入川したのは小猿部川の中畑橋の下流である。瀬、トロ、淵、瀬、段々瀬と続く変化に富んだ好釣り場だ。監修したルアーがあるとはいえ「解禁日をルアーで釣るのは初めて」とやや不安そうな九嶋さん。膝下くらいの水深のザラ瀬に立つと「アユラシックシャッド110F」に7.5号の3本イカリをセットしてダウンクロスに投げ入れた。所々にキラッと光る食むアユが見え、手前にゆっくり探ってくるとガツンと衝撃。
1投目で掛かったのは16cmクラスの小型だが、何より幸先のよいスタートに九嶋さんの目尻も下がる。「これは凄いことになるかもですよ(笑)」と期待が膨らんだものの後が続かない。ここなら追い気の強い良型がいると思った場所でも無反応。簡単には掛からない状況だ。


ルアーチェンジで良型登場
そこで「アユラシックバイブ100S」に替えてみる。ダウンで一際流れの強い流心部にステイさせるが追われない。沈黙が続き九嶋さんは首をかしげながら釣り下って石裏のヒラキにルアーを入れた。その瞬間、川底に閃光が走ってグイグイと引き込む。サオを曲げ込んで慎重に寄せて躍り上がったのは、20cmは優に超える良型だ。
「大きい!」と喜ぶ九嶋さんはこの日のアユは流れの通った流心よりも多少流れが緩くて浅い場所がよいとにらんだ。その読みは当たった。入れ掛かりの連発とはいかないがポツポツと掛かる魚のほとんどが石裏で反応。しかも18~22cmの良型ばかりでビリアユは混じらない。
ザラ瀬から段々瀬にポイントを移しても同じような傾向があった。そしてこの日はシャッドよりもバイブレーションのほうが追いの立つアユが多かった。
「解禁初期だからなのか、それとも先日振った雨のせいなのか分かりませんが、流心に付くような元気のよいアユが少ないですね。それとシャッドの動きが状況にいまひとつアジャストしていないようです。今日は安定した姿勢で泳ぐバイブレーションのほうがリアクションを誘いやすいように感じます」
オトリを使う友釣りであっても、単純に野アユにナワバリに侵入させただけでは追わないアユがいる。吊り上げてみたり、進入角度を変えたり、オトリを見せる時間を長くしたりと操作の工夫をすることで追いが立つことはよくある。ルアーも同じで深く追ってくるアクションがあり、ルアーの通し方ひとつで反応は変わるのだ。

小猿部川は7月下旬以降が本番
アユは年魚であり1日に1g以上に急成長する。水況やアカの付きぐあいによって成長の仕方も変われば追い気の強さも変わりエサ場となるポイントも変化していく。状況が常に同じではないから奥が深い。
「天然アユは追い気が立つと猛然とルアーに飛び付きます。この小猿部川もスイッチが入った時の入れ掛かりが凄まじい。7月も下旬になればアユは仕上がっていますので、ぜひ遊びに来て欲しいですね」と九嶋さんは笑顔で語った。

※このページは『つり人 2025年9月号』を再編集したものです。