東海大学札幌キャンパスの学生サークル『Star Divers Club』が展開する「もぐって☆Reルアー」プロジェクトは、海中から回収したルアーやオモリを再利用し、その利益を次の活動資金へと還元する、高い意義と循環性をもつ取り組みだ。
東海大学札幌キャンパスの学生サークル『Star Divers Club』が展開する「もぐって☆Reルアー」プロジェクトは、海中から回収したルアーやオモリを再利用し、その利益を次の活動資金へと還元する、高い意義と循環性をもつ取り組みだ。
Photo & Text by North Angler’s
North Angler’sとは?:北海道での釣りを満喫するための情報誌。北海道の自然を体感するキャンプの情報や、フィールドを守るための環境問題にも光を当て、多角的な視点からアウトドアライフを提案している。誌面と連動したウェブサイト『つり人オンライン』での記事展開に加え、好評放送中の『ノースアングラーズTV』や公式動画チャンネルである『釣り人チャンネル』を通じても、北海道の釣りの魅力を発信している。
発端と立ち上げ
事の始まりは、東海大学札幌キャンパスのダイビングサークル『Star Divers Club』が、潜水活動のなかで見つけた海中のルアーやオモリだった。海底に残されたそれらは景観を損ねるだけでなく、絡まった生物を傷つけたり、鉛の溶出によって環境に悪影響を与える可能性もある。そうした現状を目の当たりにした学生たちは、単なる清掃にとどまらず、ゴミとして扱われる釣り具を再び〝使えるもの〞として蘇らせる取り組みを思いついた。
構想が形になる過程で、神恵内村に本社を置く地域商社『株式会社キットブルー』の代表であり、大学OBでもある大塚英治さんが協力。さらに、同サークル創設時の代表を務めた打越元太さんが後輩を指導し、活動の基盤づくりを後押しした。OBと現役学生が世代を超えてつながり、地域の企業も関わるという枠組みは、「もぐって☆Reルアー」の大きな支えになっている。
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回収から再生へ
実際の活動は、海に潜って釣り具を回収することから始まる。採取されたルアーやオモリは、まず学生が持ち帰って選別。状態のよいものは研磨や塗装を施し、再び釣り場で使える形にリペア。傷が深いものや破損したものは、鉛や金属素材を取り出してダイビング用の重りに再加工する試みも進んでいるようだ。こうして、ただの廃棄物として終わるはずだったものが、再び釣り具やダイビング用器材として循環していく。
完成した〝Reルアー〞はキットブルーの商品として販売され、収益はサークルの活動資金に充てられる。リサイクルが経済的な循環と結びつくことで、活動は一過性ではなく継続可能な形となる。
学生たちにとってはダイビング技術の習得や学びの場となり、購入した釣り人にとっても「環境保全に貢献するルアー」を手にできるというWin-Winなメリットがある。買えば買うほど海がきれいになっていく―そんなメッセージ性が、このプロジェクトを特別なものにしている。
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アングラーとの交流で広がる輪
2025年5月、神恵内村で開かれた『第7回海を守るアングラーの集い』に、Star Divers Clubのメンバー4人が参加した。会場では海岸清掃をともに行ない、ブースでは自ら手がけたReルアーや活動のようすを展示。さらに壇上でのプレゼンでは、「きれいな海が戻れば生きものが増え、釣り場としての魅力も長く保たれる」と語り、釣り人にとっても環境保全が大切であることを訴えた。
この場を通じて学生とアングラーの交流が生まれたことは、活動の大きな財産となった。イベントの来場者や釣り人たちは、単なる「ゴミ拾い」ではなく「資源を活かす循環の取り組み」であることに興味を示し、SNS上でも「買うだけで海がきれいになる魔法のルアー」と話題にした人もいた。釣り人は道具を通じて自然と関わる存在であるがゆえに、こうした視点を共有できることは、地域全体にとっても意義深い。
ダイバーとして海を見つめる学生たちと、釣りで水辺に立つアングラーたちとが交わることで、異なる立場から共通の目的を持つ仲間意識が育っている。こうした関係性こそ、「もぐって☆Reルアー」が持つもう一つの価値といえるだろう。
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学園祭でも注目の的
今年6月に開催された札幌キャンパスの『建学祭』では、「もぐって☆Reルアー」のブースが設けられ、リペア品の販売や活動紹介が行なわれた。来場者からの関心は高く、テレビ局の取材も入り、プロジェクトはさらに広く知られることになった。展示を訪れた釣り具クラフトマンからは「今度は一緒にやろう」と声をかけられたそうだ。外部とのつながりも増えている。
同プロジェクトは、単なる学生の課外活動にとどまらない。そこには、海をきれいにしたいという思いと、釣り人や地域社会にメリットを還元する仕組みが織り込まれている。釣り具を再生して流通させることで、環境保全に参加できる人の輪が広がり、誰もが関わりやすい活動として根づいていく。
積丹の海に潜った学生たちの手で拾い上げられた1本のルアーが、新たな命を宿して釣り人のもとに届く。その一つひとつに、海を守るという想いが込められている。この小さな循環の積み重ねが、未来の海と釣り場を支える力になるはずだ。
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