川の釣りといえば、ヤマメやイワナ、アユが人気のターゲットだが、中流域の小河川や、平野部を流れる止水に近い用水路など「小川」での淡水小物釣りも、根強い人気を誇る。この記事ではタナゴの仲間や、マブナ、カワムツ、ウグイなど小川や用水路で出会える魚種を紹介する。
川の釣りといえば、ヤマメやイワナ、アユが人気のターゲットだが、中流域の小河川や、平野部を流れる止水に近い用水路など「小川」での淡水小物釣りも、根強い人気を誇る。
特に、護岸されていない小川は、流れが緩いために植物が繁茂し、昆虫や貝、両生類なども多く棲息する。それは魚にとっても格好の住処となり、多彩な命を育む豊かな環境が生まれる。
このような場所は、子どもたちにとっても最高の遊び場だ。安全への配慮は不可欠だが、のべ竿とシンプルな仕掛けで釣りを楽しめ、ガサガサでの生き物採集や、カエルを追いかけるだけでも、一日中遊ぶことができる。
多くの川と、稲作文化に育まれた無数の水路を持つ日本において、小川は最も身近な釣り場の一つだ。いつも何気なく通り過ぎる近所の流れにも、きっとたくさんの魚が泳いでいる。今度の週末、橋の上からそっとその水中を覗いてみてはどうだろうか。
まとめ◎編集部
目次
小川で狙える淡水小物釣りの代表魚種
ここでは、小川で出会える代表的な淡水小物釣りの魚種を紹介していく。
アカヒレタビラ

・分布:宮城県、福島県、関東地方に分布。
・大きさ:最大8cmに達する。
・釣期:一年中釣ることができるが、最盛期は春から初夏。
・棲んでいる場所:平野部の河川・湖・池沼に棲む。
肩部に明瞭な暗青色の斑点(タビラ斑)を持つ。ほかのタナゴ類もそうだが、生きた二枚貝に産卵する魚。アカヒレタビラの場合は、イシガイやドブガイ、カワシンジュガイに産卵する。そのため、生息のためには二枚貝がいることが欠かせない。
アブラボテ

・分布:濃尾平野以西の本州、淡路島、四国の瀬戸内側、九州北部、長崎県壱岐・五島列島福江島に分布。
・大きさ:最大で7cmに達する。
・釣期:一年中釣れるが、最盛期は冬から春。
・棲んでいる場所:丘陵地帯や平野部を流れる細流や湧水、用水路に棲む。
マツカサガイ、ドブガイなどの二枚貝に産卵する。オスはナワバリ意識が強い。油のような色合いと、ぼてっとした腹のふくらみが和名の由来といわれる。
カネヒラ

・分布:濃尾平野以西の本州、九州北部に自然分布するが、霞ヶ浦周辺に移植されて関東平野に定着している。
・大きさ:最大12cmに達する。
・釣期:年中釣ることができるが、最盛期は春から秋。
・棲んでいる場所:河川下流の緩流域とそれに続く用水路、平野部の大きな湖沼に棲む。
秋に繁殖期を迎えるタナゴなので、今の季節にねらう人が多い。タナゴのなかでは大型で、婚姻色も美しい。飼育するファンも多いようだ。
シロヒレタビラ

・分布:濃尾平野、琵琶湖・淀川水系、山陽地方、四国北部に分布。
・大きさ:最大で8cmに達する。
・釣期:一年中釣ることができるが、最盛期は冬から春。
・棲んでいる場所:河川下流の緩流域とそれに続く用水、河川敷内のワンド、平野部の湖沼や溜池に棲む。砂底または砂泥底、護岸の石垣の間、湖岸の岩礁地帯を好む。タナゴ類としては深場にもみられ、琵琶湖では水深30〜40mからも採集される。
カタハガイ、ドブガイ、マツカサガイなどを中心に、琵琶湖ではタテボシガイなどに産卵する。オスは繁殖期になると、尻ビレの外縁部が白、その内側は黒に染まる。
ヤリタナゴ

・分布:本州、四国、九州北部。
・大きさ:10〜13cm になる。
・釣期:一年中釣ることができる。最盛期は春〜秋。
・棲んでいる場所:水草がよく生い茂り、流れの穏やかな河川や湖沼、用水路などに見られる。
マツカサガイ、ヨコハマシジラガイ、イシガイ、ドブガイなどに産卵する。タナゴ類のなかでは体高は低めで、ヤリのような魚体からその名がつけられたといわれる。
マブナ(キンブナ・ギンブナ)


・分布:キンブナは関東〜東北地方、ギンブナは全国に分布。
・大きさ:キンブナは15cm 前後、ギンブナは最大で約30cm。
・釣期:ほぼ周年。
・棲んでいる場所:河川の下流域、湿地帯、湖沼など。
一般に「マブナ」と呼ばれることもあるが、これはゲンゴロウブナ(ヘラブナ)とほかのフナを区別するための総称。釣りの対象魚としてのマブナは、キンブナとギンブナになる。キンブナは名前のとおりやや黄色がかった体色で、ギンブナのほうが比較的体高がある。
日本固有のキンブナは雌雄比がほぼ1対1だが、ギンブナはほぼすべてがメスであり、雌性発生という方法で増殖する。
クチボソ

・分布:かつては生息域が限られていたが、コイやフナの放流に混じって全国に広がり、北海道から琉球列島までいたるところに分布している。
・大きさ:8〜11cm。飼育下ではさらに大型化する。
・釣期:ほぼ周年。
・棲んでいる場所:河川の下流域や湖沼、池や水路などに生息。コンクリート護岸や下水の流入する場所でもよく見られる。
タナゴ釣りをしていると、たいていこの魚も釣れてくる。標準和名はモツゴ。関西ではムギツクのことをクチボソと呼ぶこともある。ウキを元気に引っ張ってくれるので、楽しい相手だ。
アブラハヤ

・分布:日本海側では青森から福井にかけて、太平洋・瀬戸内側では青森から岡山までの河川。北海道では国内外来種として定着。
・大きさ:最大で約15cm。
・釣期:春から秋にかけての比較的温かい時期。
・棲んでいる場所:河川の上流部から中流にかけて。場所によっては池や沼の岸付近でも見られる。
はっきりいって、釣れてもあまり喜ばれないことが多い。しかし清流域のミャク釣りで比較的簡単に釣れるので、子どもたちの遊び相手としては好ターゲットだ。
ウグイ

・分布:琉球列島を除く日本各地の河川や湖沼。
・大きさ:30cm 前後から、最大で約50cm。
・釣期:周年だが、禁漁区・禁漁期間に注意。
・棲んでいる場所:河川の上流域から下流の汽水域、山上湖などに幅広く生息する。
アブラハヤ同様にあまり喜ばれない魚かもしれない。だが産卵期のウグイを好んで食べる地域もあり、味は決して悪くない。ヤマメやイワナと同等か、それ以上に好む人もいる。二度揚げにして甘辛いタレを絡めたり、甘露煮にすると美味だ。
カワムツ

・分布:富山県および静岡県天竜川水系以西の本州、四国、九州に分布する。アユの放流に混じって、そのほかの地域にも広がっている。
・大きさ:10〜15cm。オスのほうがメスよりも大きい。
・釣期:3〜9月。
・棲んでいる場所:河川の上〜中流域に見られ、淵など流れの緩やかな場所を好む。また、物陰に隠れる性質がある。そのほか湖沼にも生息。
あまり食用にされず、釣ってもだいたいリリースされる魚。雑食だが、動物食性が強く、毛バリによく反応する。そのため渓流が禁漁になる時期、テンカラの練習台としては貴重な魚かもしれない。
オイカワ

・分布:北陸と関東以西の本州各地、四国、九州。アユの放流などの影響で、東北地方や南西諸島などにも生息域を広げている。
・大きさ:成魚で15cm程度。
・釣期:ほぼ周年釣ることができる。
・棲んでいる場所:河川の中〜下流域や湖沼に生息。水質汚染や河川改修による環境変化に強いため、都市部にも多い。
関西ではハエ、関東ではヤマベといわれ、数釣りのターゲットとして人気。名手になると時速200尾などという数字をたたき出す。清流のターゲットとして子どもたちにもポピュラーで、ピストン釣りなどのミャク釣り、ウキ釣り、蚊バリ釣りなどさまざまな釣法でねらえる。繁殖期のオスの婚姻色は美しい。
ヌマチチブ

・分布:北海道・本州・四国・九州、壱岐、対馬の海に流入する河川に分布する。またワカサギなどの移植放流に混じって、奥多摩湖、芦ノ湖、富士五湖、愛知県風来湖、琵琶湖などに移入。
・大きさ:最大で15cmに達する。
・釣期:周年釣れる。
・棲んでいる場所:河川の中流〜下流域、湖沼、溜め池、汽水域など、多様な水域に棲む。同属のチチブよりも海水の影響を受けない場所に現われる傾向があり、海水の影響を受ける場所に現われる頻度は北方で多い。
ダボハゼ、ゴリなどと呼ばれる。よく似た種類が多いので、同定するのは難しい。ねらって釣る人は少ないが、食べるととても美味しい魚だ。
ホンモロコ

・分布:琵琶湖の固有種だが、東京都奥多摩湖、山梨県山中湖・河口湖、岡山県湯原湖にも移植されて定着している。
・大きさ:最大で14cmになる。
・釣期:琵琶湖では産卵のために接岸し、さらに流入河川や水路へ入り込む3月中旬から4月下旬が最盛期。
・棲んでいる場所:中層遊泳性で、水深5m以深の湖の沖合の表・中層を小群で遊泳する。
コイ科魚類の中で最も美味とさえいわれる魚。旬は冬から春で、釣りの盛期である春には真子の甘さと旨みも味わうことができる。塩焼きにしてもよいし、骨が柔らかく揚げても硬くならないので天ぷらや揚げものにも向く。よく似た種類にタモロコなどがいる。
ハス

・分布:もとは琵琶湖、淀川水系と福井県の三方五湖に生息していたが、現在は関東から中国地方、九州にも分布する。
・大きさ:30cm前後。
・釣期:通年。
・棲んでいる場所:流れの緩やかな河川下流部や湖沼など。
コイの仲間としては珍しく、魚食性が強い。そのためルアー・フライフィッシングやテンカラでもねらえる。「へ」の字の口が特徴的。関西の一部地域ではケタバスとも呼ばれる。