タックルの進化とともに、釣り方も変化し続けているサクラマスジギング。そのなかで、近年とくに存在感を増しているPEラインも忘れてはならない。低伸度・高感度を武器とする「X9」、伸びを活かしてナチュラルに誘う「X8」。羅臼沖での実釣を通じ、イトの使い分けで広がる戦略について考えてみたい。

文◎齋藤壮平
写真◎株式会社バリバス
元『つり具センター西岡店』副店長。3歳から祖父とともに川釣りに始まり、小中高はコイ・ソウギョ釣りや投げ釣りに熱中。大学時代からはソルトルアー中心にライギョ、内水面などさまざまなジャンルにチャレンジ。近年はショア/オフショアのソルトルアーをメインとし、アユ釣りにも挑戦。現在は長崎・五島列島で遊漁船業武者修行中。
目次
参入者が増加中!進化を続けるサクラマスジギングのアイテム
新しいジャンルの釣りとはいえ、流行し始めてから7年以上が経つサクラマスジギングは、今なお参入者を増やし続けている印象がある。各メーカーも専用アイテムの開発や発売に力を入れており、広がりは着実に進んできた。年末12月の羅臼を皮切りに、胆振、函館、積丹、網走といった各海域では、シーズンや遊漁船の情報も含めて釣りの成立する条件が広く知られるようになり、フィールドとしての土台もすでに整った感がある。一方でメソッドやタックルの進化は今も続いている。多くのアングラーを惹きつける理由の一つは、この釣りが持つ「難しさ」にあると思う。基本動作や考え方は周知され、誰でも楽しめる釣りになった。しかし「みんなが釣れないときに釣る」、「人より釣る」といった段階になると難度は一気に上がり、その日そのときのパターンは非常に多様だ。そうした意味では、まだ発展途上の釣りともいえる。
そのなかで、目に見えやすいルアーやロッドは急速に進化し、現在も毎年のように新製品が登場している。逆に実釣の現場では、ルアーやロッド、アクションといった単体の要素だけでは突き詰めきれない部分が多くあると感じるようになった。そこで重要になるのがタックル全体のバランスだ。私が近年とくに注目しているのは「ライン」である。今年1月、シーズン真っただ中の羅臼沖での釣行を例に、その重要性について考えてみたい。
サクラマスジギングで選ぶべきラインの基準
近年のサクラマスジギングでは、タイミングさえ合えば数釣りを楽しめる機会も増えた。そのなかで多くのアングラーが夢見るのは、3kg、さらには4kgを超える大ものだろう。しかし、そうした価値ある一尾がいつ掛かるかは分からない。そしてそういった魚は、ほかとは比較にならないほど強烈な引きをみせる。とくに羅臼ではキングサーモンを意識するアングラーも多く、私自身もその可能性を常に頭に置いている。
そのときに肝心なのが、ラインへの信頼感だ。耐久性や強度に裏付けられ、「切れるかもしれない」という状況でも耐えてくれる安心感は欠かせない。さらに、この釣りで近年とくに重要だと感じているのが感度である。サクラマスジギングは状況に応じて探るタナやアクションを変えていく必要があり、その判断材料となるのが水中から伝わる情報だ。ロッドやリールも感度に影響するが、ルアーとアングラーを直接つなぐのはラインであり、その性能が釣りの精度を大きく左右する。
状況に応じて伸度の異なるPEラインを使い分ける
私が多用しているPEラインは、『アバニジギング10×10マックスパワーPE X9』だ。今回の羅臼釣行では「55mより上」という大まかな指示のみで、どの層に照準を合わせるかはアングラーしだいだった。もちろんレンジは非常に重要だが、タナが広い状況ですべて探りきるるのは効率的ではない。潮が利いている層や、ジグが軽くなる層など、水中の変化を感じ取りながらヒット率の高いレンジを絞り込むことが釣果につながる。
同時に、私が意識しているのは「ルアー感度」だ。サクラマスジギング草創期は、後方重心のロングジグを使った「フォールで見せて食わせる」釣りが主流だった。しかし近年はオオナゴが減り、イワシやニシンなどがベイトの多くを占めるようになったことが要因なのか、ショートジグや「上げで見せてフォールで食わせる」といった、リフト時の上げのアクションが重視されるようになってきた。そして上げで見せるなかでも、ステイやレベルフォールなど「スローなアクションを入れないこと」が重要になる場面が多いと感じる。ヤマメの習性に起因するものなのか、ステイなどの「止める」動きには反応が悪く、上げのアクションから素早くフォールへ移行させることが肝心だ。
そのうえで、水中のジグの動きを感じ取ることが、この釣りにおける最重要要素の一つである。X9は低伸度かつ水中での直進性も高く、ルアーの動きはもちろん、ルアーに絡んでくる魚の気配も非常に伝わりやすい。アングラーに多くの情報をもたらしてくれるラインだ。LJ(ライトジギング)の1番ロッドにX9を組み合わせた高感度タックルは、私が最初に使うセッティングとなっている。上げのリアクションを重視しながら誘い、情報を集めていくのが最近の組み立て方だ。X9は高い耐久性も特徴の一つで、今回の連続釣行でも摩耗はみられず、遠征における信頼性も高い。「サクラマスタックルでキングサーモンにも備える」という意味でも、大きな安心感を与えてくれるラインである。
伸びのある8本撚りはナチュラルにジグを動かせる
羅臼釣行時は複数のタックルを持ち込んだ。先述したとおり、その日そのときでパターンは異なるので、さまざまな状況に対応できるよう、戦略の幅を広げるためだ。まずはLJの1番ロッド+X9という、自分のなかで最も自信のある組み合わせをセレクト。だが周囲では釣果があがるなか、私にはヒットが訪れない。そのとき感じたのが、シャクっているときに覚えた「カツン」という違和感だった。ジギング経験者なら思い当たる人も多いと思うが、釣れるときは「気持ちよくジグをシャクれている」ことが多い。この「カツン」という感触はそれとはまるで異なっていた。風もあり、ジグの引き抵抗もあり、潮もある程度利いている。
もしかすると、この高感度タックルが今の状況に合っていないのではないか。そう思い、次にSJ(スロージギング)の1番ロッドに『アバニジギング10×10マックスパワーPE X8』を組み合わせたタックルへチェンジした。これは感度重視で思いどおりにジグを動かすという方向とは逆で、「ジグをタックルの力を借りてナチュラルに動かすこと」に特化したセッティングだ。すると違和感は消え、1投目からいきなりヒット。その後も連発し、「ハマった」と感じることができた。
X8はX9に比べると伸度が高く、感度や直進性ではやや劣るものの、このような場面ではその伸びの特性が一つの要素として効いてくることも多い。ショックリーダーには、『ショアレコードショックリーダー[フロロカーボン]』の4〜6号を使用している。不意に訪れる夢の大ものチャンスに備え、低伸度のX9では7〜8m、X8では5mといった具合に、それぞれの特性に合わせて長さを変えている。このように、アイテムの特性を理解し、長所を活かしながら不足を補う組み合わせを考える過程こそ、サクラマスジギングの醍醐味だと思う。状況を読み、道具を選び、戦略を組み立てるのが非常に面白い。
