数年前からのブリブームで沖釣りが注目を集める今、ブリだけでなく、いろいろな魚を釣ってみたい!そう思っている方は多いのでは?
数年前からのブリブームで沖釣りが注目を集める今、ブリだけでなく、いろいろな魚を釣ってみたい!そう思っている方は多いのでは?
そこで、沖釣りビギナーの私、伊藤まきが、遊漁船に乗ってさまざまなターゲットに挑戦します。今回はマガレイ釣りの最中、まさかの珍魚出現!
目次
春の人気魚マガレイをねらう!でも……
午前6時半過ぎにキャッチした全長80cmのメガネカスベ。名の由来は、一対の斑紋がメガネに見えることからだそう。このようにカスベは背中に目あり。
重量は船上計測で3kgを超えていた。尾部には棘が並んでいて、素手で触るのは危険。
4月中旬、道央日本海の沖釣りはサクラマスの釣果が落ち始め、マガレイねらいにシフトする遊漁船が出てくる頃。
マガレイもサクラマスと同じように、北海道に春を告げる人気魚種です。サイズのよさでは浜厚真沖など道央太平洋に分があるとはいえ、近年は日本海の沖や岸でも良型がよく釣れているよう。
何度もお世話になっている遊漁船『第十さち丸』のブログをチェックしていると、平均サイズは20~30cmながら、昨年は45cm級があがっています。
船長の福島敬文さんに連絡すると、3月下旬からカレイ釣りで出航しているそうで、今季も好調に釣れているとか。
おかげさまで当連載は4年目に突入しましたが、これまでの経験からビギナーさんに自信をもって薦められる沖釣り入門魚種がマガレイ。
道央日本海&太平洋で主流の小突き釣りならライトタックルでよく、体力的な負担はかなり少なめ。ライトタックルだから魚の引きも存分に味わえます。
海底は砂地ゆえ、根掛かりすることはほぼなし。港から釣り場まで近く、船酔いの心配も少なめ。船賃が安いのもうれしい♪ それに何といってもよく釣れる、そして旨い! といいことだらけ。
しばらく電動タックルで釣りをしていた私ですが、久々に手巻きのリールで魚とのやり取りを満喫したく、ナギの日を待って出かけました。
カレイの小突き釣りなら自重100g前後のロッドと、小型ベイトリールの組み合わせでOK。根掛かりの心配も少なく、沖釣りビギナーにイチオシのターゲット。
メガネカスベが釣れた!その正体とは
この日の天気は晴れ、最高気温は15℃になる予報。春らしい一日になりそうで、いつになく胸が高鳴ります。午前5時45分、出港。船は30分ほど走り、余市のシンボルといえるシリパ岬の沖で止まりました。パラシュートアンカーを入れた船長から「どうぞ」の合図を受けて実釣開始。水深は約40m。私の釣り座は右舷のトモ。
ロッドはシマノの『カレイBB』。前モデルも愛用していましたが、今モデルはリールシート周りの赤いアクセントが恰好いい♪全5モデルあり、道内でオールマイティーに使えそうな82 H165を選びました。なお、82は8:2調子、165は全長1.65を示します。
ラインはPE0.8号。仕掛けは独特な集魚板が付いた片テンビンタイプの2~3本バリ。オモリは船長の指示で40~50号。春のカレイ釣りで代表的な外道としてツマグロカジカ(地方名:ギスカジカ)が知られていますが、赤などの派手な色に寄りやすいといわれています。まずは黒のオモリをチョイス。
オモリが底に着いたら、その状態でサオ先を小刻みに3~5回動かして小突きの誘いを入れた後、サオ先を50cmほどゆっくり持ち上げ、聞きアワセを入れるのが私のパターン。この動作を繰り返しますが、聞きアワセのときに「カカッ」アタリが出ることも多いです。
そうして1尾、2尾と順調にマガレイを釣っていると、突然、「ドン」と根掛かりのような感触。「砂地なのにおかしいな」と感じましたが、なんとかリールを巻くことができます。
しかし、それにしても重い……。海底に沈んでいるゴミでも引っ掛けたのだろうと思っていると、「グン、グン」と魚らしい手ごたえ。「えっ!?」。ときおり、ドラグが鳴りながらも、必死でリールを巻いていると、異変を察知した船長がタモを持って来てくれました。
水面にゆらりと姿を見せたのは茶色のインベーダー!?船べりまで来て、スーッと移動して逃げようとするところを船長がすくってくれました。
まさか、こどもの頃に夢中になったキャラクターに、再びこうして出会えるとは……。この魚の正体は、メガネカスベ。カスベが釣れるとは夢にも思わず、しばし唖然としました。
メガネカスベ
【ガンギエイ目ガンギエイ科】
- 英名:mottled skate
- 地方名:マカスベ・カスベ・カスペ
口は大人の拳が入りそうな大きさ。愛嬌のある顔だが、成長するにつれ魚食性が強くなるようで、鋭い歯がびっしり並んでいる。口の中に指を入れるのは避けたい。
今回はカレイ釣りだから不要と思ったが、シマノ『FISH GRIP R』を念のため携帯してよかった。使いやすく頑丈で撮影時に活躍。サイズは246mm約150g
水深は約40m。道央エリアのカレイ釣り場としては深いほうで、電動リールを使っている方もいるが、やはり手巻きならではのダイレクト感は楽しい。
視認性のよい穂先は、さまざまな情報を伝えてくれる。このロッドはグラスソリッド穂先。適度な硬さと感度を備え、食い込みがよく、小さなアタリを弾きにくい。
マガレイの最大魚は38cm。このサイズになるとフッキング直後だけでなく、巻き上げてくる途中にも「ガガッ」と引き、スリリングなやり取りを味わえる。カレイがハリを飲み込んでいる場合、頭部の付け根をギュッと強く握り、ハリスを強く引っ張るか、回して引っ張るとスポッとハリが口もとまで出てくることが多い。それでもダメならハリ外しの出番。
「長年釣りをしているが、初めてみた」
カスベはガンギエイ目魚類の総称で、北海道では主に2種のカスベが知られています。
ひとつは、カスベ類のなかでも高級な今回のメガネカスベで、地方名は「マカスベ」など。日本海とオホーツク海、噴火湾の水深5~100mの砂泥域に生息し、留萌・宗谷地方の日本海沿岸では専門にねらう刺し網漁が行われています。
産卵期は春らしく、その時期は岸寄りするのか、カレイ釣りで稀に掛かることがあるとはいえ、釣るのは簡単ではないみたい。「3年前にあがって以来」とは船長、「長年釣りをしていますけど、初めて見ましたよ」とはお隣のベテランさん。私が釣ったのは全長80cmですが、最大1mを超える怪魚です。
もうひとつはドブカスベで、地方名は「ミズカスベ」など。こちらも最大1mを超えますが、水深100~1200mの深海に生息することでメガネカスベとは異なります。
またメガネカスベの吻部は固く、容易に曲げられない一方、ドブカスベは簡単に曲げることができます。どちらも、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧(NT)に指定されている希少な魚です。
胸ビレのゼラチン質が豊富で、煮こごりが旨いカスベは、女性ファンが多い。美容大国の韓国でも人気で、慶事の際に欠かせない魚介なのだとか。
カスベ類は「タコのまくら」や「たばこ入れ」などと称される卵殻の中に卵を産みますが、少ししか産まず、また成長が遅いのが特徴。韓国では漁獲量が減少しているよう。もし釣れたら、大事にいただきましょう!
大好物のカスベを釣った後は、もう夢見心地。それでもアタリは容赦なく、次々にマガレイがヒットします。この日はツマグロカジカや、ほかのカレイはほとんど釣れず、ほぼマガレイオンリー。
途中、3本バリの仕掛けに替えると、すべてのハリに食ってくる多点掛けも数回ありました。マガレイの最大は以前、浜厚真沖で釣った自己記録と同じ38cm。大満足でストップフィッシング。
これまで岸と船で100種以上の魚を釣ってきて、それぞれに思い出がありますが、メガネカスベは衝撃度という点で一番。ねらって釣ることはかなり難しい魚だけに、一生に一度の出会いかもしれません。
調べてみると皮を剥ぐのが大変らしく、帰港後はスーパーか魚屋にお願いしてさばいてもらおうかと考えましたが、こんな機会は滅多にないので、自分でやってみることに。ネットで検索するとペンチで皮を剥ぐという方法が出てきますが、私は滑りにくい手袋をはめて意外にスムーズにできました。
軟骨魚類はサメもそうですが、鮮度が落ちやすいのがネック。しかし、そこは釣りたて。定番の煮つけや唐揚げはもちろん、刺身でもいただきましたが、ほっぺが落ちるとはこのことでしょう。
今回は「何が釣れるか分からない」という沖釣りの魅力をあらためて実感。この号が出る頃は浜厚真沖も本格シーズンを迎え、マガレイ釣りの最盛期に突入。さぁ、春の釣りを満喫しましょう!
使用タックル
ロッド=カレイBB 82 H165
●全長:1.65m
●継数:2本
●自重:96g
●オモリ負荷:30~50号
軽量ブランクスはハイパワーXで強化され、ロッドのネジレやブレを抑え、誘い、アワセ、やり取りといった一連の操作が前モデルより向上。82 H165は道内でオールマイティーに使用できる1本。大ものに負けないバットパワーは今回のメガネカスベで実証済み。全モデル2万円以下の価格設定もうれしい
リール:バルケッタ 200HG
●ギア比:7
●最大ドラグ力:4.5kg
●自重:190g
●糸巻量:PE1号-200g
●最大巻上長:70cm/ハンドル1回転
水深が一目で分かるカウンター付きの小型ベイトリールで、朝夕の薄暗い時間帯でも見やすいLEDバックライトを搭載。51mmのロングクランクハンドルは力強い巻き上げに貢献する。ボディーは軽量カーボン素材C14を進化させた新カーボンを採用。軽さはそのままに剛性と耐久性が大幅にアップしている
※すべてシマノ
仕掛け&替えバリ
左はメガネカスベを導いてくれた、フジワラ『カレイシューター』2本バリ13号。中央は『同船海』3本バリ13号。どちらも独特な集魚板によりアピール度が高い。右はがまかつ『ナノ船カレイ仕掛用替え鈎』。ハリ先があまくなったら即交換が釣果アップの秘訣
オモリ
カレイ用のオモリは数年前から感度がよいと定評のある丸型を愛用。左2つはフジワラ『丸環シンカー』、右は起き上がりがスムーズで仕掛けを躍らすのが容易な同『攻めダルマ』。カラーは定番の黒と赤の他、湖が濁っているときに有効な夜光を用意
イソメはDCMホーマックで150gを2つ購入。1匹を通し刺しや、切って房掛けにして付けたが、充分に足りた。予備として保存が効く人工エサも用意すれば万全だろう
2021/09/28