肘掛け椅子にゆったり座って、釣りにまつわる読書をしたり、釣り場や魚たちに思いをはせたり、お気に入りの道具を眺めたり……。雨の日など釣りに行けないときのそんな過ごし方を英国では「アームチェアフィッシング」と言うそうです。このコラムでは、つり人社の社員が「アームチェアフィッシング」の時間にオススメしたい愛読書を紹介します。
『秘密のクランクベイト』/雨貝健太郎 著
Basser編集部/堀部政男=文
肘掛け椅子にゆったり座って、釣りにまつわる読書をしたり、釣り場や魚たちに思いをはせたり、お気に入りの道具を眺めたり……。雨の日など釣りに行けないときのそんな過ごし方を英国では「アームチェアフィッシング」と言うそうです。このコラムでは、つり人社の社員が「アームチェアフィッシング」の時間にオススメしたい愛読書を紹介します。◎今回の紹介者
Basser編集部/堀部政男
アルバイト面接のために初めてつり人社に来た2003年11月末、その場で『秘密のクランクベイト』を購入。あれから17年が経って、今、著者の雨貝さんといっしょに仕事をしているのは何だか不思議な気分です。
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クランクベイトを見るとそれが作られた風景が思い浮かぶ
釣りエサは、そのおもな目的が魚に食いつかせることであるのに対して、ルアーは、魚に食いつかせることと、「それを使う環境において快適であること」の両方の性能をバランスよく備えていなければなりません。「それを使う環境において快適であること」。つまりルアーには、それが作られた釣り場の環境が色濃く反映されているのです。
たとえば、障害物の有無。根掛かりしやすいモノが多い釣り場から生まれたルアーは、根掛かりしにくくするための機能や構造を備えています。
たとえば、濁度。水が濁っている釣り場から生まれたルアーは、音を発生させたり水を強く押したりといったように、魚の視覚以外の感覚器官に訴える機能を備えています。
クランクベイトに焦点を当てた本作は、テクニックものとしても図鑑としても歴史的資料としても読むことのできる名著ですが、私のおすすめの読み方は紀行文です。地域ごとに釣り場の特徴が際立っているアメリカを、まるでクランクベイトを旅券がわりに旅しているような感覚……。山脈をひとつ挟んでまるで異なる釣り場の様相と、まるで異なるクランクベイトたちを知ることで、無機物であるはずのルアーが、湖で生まれ、進化してきた生き物のようにさえ感じられます。
ルアーが作られた背景や歴史に興味をもつことは、適材適所のルアーセレクトに繋がります。それに現在においては、「この新型コロナ禍が収束したら、あの釣り場でこのルアーでこうして釣ってやろう。ああしてねらってみよう」という妄想フィッシングを膨らませるいいネタにもなるのではないでしょうか。絶版になってひさしく、中古相場も高騰している本書ですが、機会があればぜひ読んでいただきたい一冊です。
『秘密のクランクベイト』
単行本: 191ページ
出版社: つり人社
発売日: 2003/5/1