トーナメントの実力者・荒川通さんがすそのフィッシングパークで披露した表層の難しい魚を反応させるためのルアーとテクニックは？
トーナメントの実力者・荒川通さんがすそのフィッシングパークで披露した表層の難しい魚を反応させるためのルアーとテクニックは？
写真と文◎編集部
異なる水質の池で腕試し
秋が深まり各地の水温が下がってくると冷水性のトラウトたちはルアーにも果敢にバイトしてくるようになるとともに、フィールドイベントやトーナメントも盛んに開催され、いよいよエリアトラウトシーズンの最盛期といった趣になってくる。この世界の実力者としてロケやイベントに引っ張りだこの荒川通さんはこの日、スケジュールの合間を縫って、静岡県裾野市のすそのフィッシングパークにやってきた。上流側から岩盤質なクリアポンド、竹やぶに囲まれたマッディーポンド、平地のミックスポンドと３つの池があり、異なるシチュエーションで釣りが楽しめ、荒川さんのようにトーナメントでさまざまなエリアでの対応力が求められるアングラーにとっては腕試しの場としても魅力的だ。昨年は６月の大雨による被害を受け１ヵ月ほどの休業を余儀なくされたものの、放流される魚のクオリティーは良好で、釣りごたえのある30～40㎝の魚影も多く見つけることができる。準備を終えた荒川さんは、池のコンディションをチェック。クリアポンドではそんな大型の魚が多く見られたが、そのぶん密度は少なめ。一方、マッディーポンドでは表層付近に多くの魚影が確認できた。
フレッシュな魚はボトム付近に
マッディーポンドに釣り座を構えた荒川さん。まずはセオリー通りスプーンで反応を探るが、表層に見える魚の多さに反して反応が薄いようす。「この時期は、朝の冷え込みも大きくなってくるので、陽が高くなる９時ごろから釣れ始めることも多いです」と荒川さん。それでもレンジを下げて表層に見える魚の下、ボトム近くの層をねらったところ、激しく追う魚がいるのが見えた。「沈んでいる魚は、数は少ないですが反応がフレッシュですね」とスプーンで１尾をキャッチ。アストラル１.６ｇの８カウントのレンジだった。さらに４連ジョイントミノーのハイドラムシンキングを同じレンジまで沈めて数尾を追加した。このまま数を伸ばせそうな状況だが、荒川さんは結果がわかりきった釣りを続けるのをよしとせず、数は多いが口を使わせるのが難しい表層の魚にねらいを定めた。魚のようすを観察していた荒川さんはこう言う。「見てください、いま魚の群れは頭の向きをそろえて浮いているでしょう。こういうときは魚が落ち着いてしまっていて口を使わせるのが難しいです。同じように浮いているときでもそれぞれの魚がバラバラな方向を向いているときのほうが好きなんですけどね」常に高い難易度に挑戦していくのがトーナメントアングラーなのだ。
表層のスローな魚へ選択したルアーとは？
そこで荒川さんが手を伸ばしたのはジョイントタイプのクランクベイト・クーガハイドラＦだ。全長は42㎜でシルエットは大きめだ。表層をねらうとすれば、スプーンの表層引きやペレット系のマイクロクランクのスロー引きなども選択肢に入ってきそうだが、このクランクを選んだ理由は？
「太いラインを使いたいのが一番の理由ですね。スプーンやマイクロクランクは細いラインでないと飛距離が出ませんしいいアクションも出せません。とくにすそのフィッシングパークは魚のサイズがよいので強度のあるラインを使いたいですから。クーガハイドラＦのウエイトは２.７ｇで太いラインでも飛距離が稼げます。ジョイント構造なのも魚が口を使わせにくいこの状況で効果があります。通常のクランクはリトリーブスピードを落とすとしっかりアクションしてくれませんが、ジョイントならかなりスローなスピードでも泳いでくれます」ジョイント構造で前後のボディーが小さいパーツになっているぶん、リップが受ける水の抵抗が小さくなっても前部ボディーがキビキビ動き、それに追従する後部ボディーがうねうねとライブリーななまめかしいアクションを生み出してくれるのだ。荒川さんはＰＥ０.３号のタックルでクーガハイドラＦを飛ばし、表層に見える群れのなかを通していく。その飛距離が奏功し、マイクロサイズのルアーが届かない遠方でバイトが出た。しかし、食い込みが浅くなかなかフックアップに至らない。そこでルアーカラーをハイアピールな「合着フルオレンジ」から地味めでありながらレッドグローが入った「ミラージュミスト」にチェンジ。するとフックアップに成功。難しい表層の魚をネットに収めることができた。
表層クランク、３つのリトリーブ方法
荒川さんのリトリーブの仕方を見ると、①ティップを上げて巻く、②ティップを下げて巻く、③シェイクしながら巻くの３パターンで操作していた。「ティップを上げて巻く意図は、単純にレンジを上げて巻きたいのに加えて、水面にイトをつけないようにするためです。とくにＰＥラインは水面につけてしまうと魚が警戒してしまいます。それから、これはプラスアルファの効果ですが、ティップを上げてクランクを斜め上方向に引くようにリトリーブすると、リップが受ける水の抵抗が大きくなってアクションが少しワイドになる効果もあります。ティップを下に向けて巻くのは、ルアーを通すレンジを少し下げたいときですね。最初から下のレンジに入れてしまうと、上にいる魚にプレッシャーをかけてしまうので、まずはティップを上げて上のレンジから通すようにしています。シェイクはただ巻きで反応が悪いとき、よりスローなスピードで誘うための操作です。クーガハイドラＦはジョイント構造なので、短い移動距離で首を振りつつなまめかしいアクションが出せますよ。今日は表層をスローにねらいたい状況に合わせて、まずクーガハイドラＦを選んで、うまく釣果を伸ばすことができました。ただ本来はローテーションのなかで反応のいいルアーを探ってもらうのがいいです。クーガシリーズはバリエーションが豊富なのでぜひそれぞれの特徴を意識して使い分けてみてください」シーズンを迎え、さまざまなテクニックが試されるこの時期。荒川さんの実釣から得られるヒントは、釣果アップの鍵となるだろう。クーガシリーズを活用し、新たな釣りの楽しみ方をぜひ体験してほしい。
この日ローテーションしたクーガハイドラＦのカラー。左上から時計回りにドロップピーチベリー、ミラージュミスト、合着フルオレンジ、コアグリーン。ミラージュミストがこの日のアタリカラー
カラーをチェンジすると、上顎のど真ん中にハリ掛かりするくらいバイトが深くなった
表層ねらいの合間に、ハイドラムでボトム付近もチェックするとこちらのほうがイージーに釣れる
左・ナイロン
ロッド：ブレイクスルー ゼロヴァージ 6’1L（ヴァルケイン）
リール：イグジストLT2000S-P（ダイワ）
ハンドル：ファンネルカーボンハンドル42.5mm（リヴァイヴ）
ライン：トラウトリアルファイターナイロンスーパーソフト３Lb（東レ）
右・PE
ロッド：ブレイクスルー ゼロヴァージ 6’0 ISS（ヴァルケイン）
リール：イグジストLT2000S-P（ダイワ）
ハンドル：ファンネルカーボンハンドル42.5mm（リヴァイヴ）
ライン：トラウトリアルファイターPE0.3 号（東レ）
リーダー：ショックリーダースムーズロックプラス0.6 号（東レ）
荒川通さんのタックル。どちらもクーガハイドラＦ用で、左がナイロンライン、右がPE ラインのセッティング。魚のサイズが大きいのでPE がメインになったが、表層系クランクではしなやかなナイロンラインの伸びによってフッキング率がよくなる。ビギナーにおすすめなのはナイロンラインだ
※このページは『つり人 2024年1月号』を再編集したものです。
