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つり人編集部2026年2月27日

アジの生態と習性を専門家が解説。キアジとクロアジは「痩せか肥満か」の違い?

堤防からのサビキ釣りにはじまり、ルアーのアジング、そして船でのビシアジなど。アジは我々アングラーにとって、最も親しみ深い魚の一種です。しかし、あまりにも身近すぎるゆえに「そもそもアジってどんな生態をしているの?」と、ふと疑問に思うことはありませんか。そこで今回は、海と魚のスペシャリストの工藤孝浩さんに、アジの知られざる生態や習性を詳しく解説していただきました。

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解説◎工藤孝浩(神奈川県水産技術センター 内水面試験場)
まとめ◎猪俣博史

海や魚に関する書籍やテレビ番組などの監修も数多く手がける海と魚のスペシャリスト。

マアジの基本生態:種類の違いとライフサイクル

アジを狙うアングラーなら一度は耳にする「クロアジ」と「キアジ」の違いから、日本周辺を回遊するアジの系群、そして釣り人のロマンである40cmオーバーの「ギガアジ」の正体まで、まずはアジの分類と成長や産卵などのライフサイクルなど、基本的な生態を紐解いていきましょう。

「キアジ」と「クロアジ」は遺伝的に同じ魚?

アジには、体高が低く背部が黒っぽい沖合回遊群の「クロアジ型」と、体高が高く黄色味が強い瀬着き群の「キアジ型」が知られています。前者は漁獲量が圧倒的に多いものの食味はイマイチで、後者は漁獲量は少ないが脂が乗って美味であるとされています。

両者は体形や体色のみならず食味まで大きく異なることから、別種とはいえないまでも、亜種レベルの違いがあるのではないかと従来考えられていました。しかし、近年進展した遺伝子の研究から、遺伝的に両者には差がないことが明らかになりました。つまり、痩せか肥満かという体質の違いにすぎないようです。黒っぽい体色は透明度が高い環境に、黄色っぽい体色は透明度が低い環境に適応したものと考えられます。

キアジは、内湾などのエサに恵まれた海域に居着き、運動しないために体高が増して体脂肪率が高まります。これはヒトにも通じる現象でよく理解できます。ところが、クロアジはエサが乏しい外洋を泳ぎ続けるにも関わらずキアジと変わらない成長速度なのです。これは、非常に優れたエネルギーの転換効率をもつ体質といえます。

アジには独立した地方系群がある

日本周辺のアジには、生活圏を異にするいくつかの「系群」が存在します。最も大きいのが対馬暖流系群で、台湾北方の東シナ海から九州西岸を経て富山湾までの広域で産卵し、全国漁獲量の7割強を占めます。次に大きいのが太平洋系群で、東シナ海で産卵するものと九州南岸から相模湾までの太平洋で産卵するものがあり、全国漁獲量の1割強を占めます。そのほか、土佐湾や相模湾などで発生するローカル群も存在します。

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寿命は最大15年?サイズと年齢が相関しない最新研究

成長は系群によって異なりますが、平均すると1歳で17cm、2歳で23cm、3歳で27cm、4歳で31cm、5歳で34cm、6歳で35cmになります。ただし、最新の研究では、25cmを超えると大きさと年齢は相関しなくなるので、大型だから高齢とは一概にいえなくなりました。1歳魚以上は初夏にエサを求めて北上し、秋冬に越冬と産卵のために南下します。2歳で半数以上が成熟し、寿命は15歳前後と考えられています。

産卵時期の地域差と稚魚の接岸ルート

産卵期は南ほど早く、東シナ海や九州西岸では1~4月、日本海では5~8月となります。卵や仔稚魚は黒潮と対馬暖流によって沿岸各地へと運ばれて全長5~8cmで着底します。

40cmを超える「ギガアジ」の正体

既知のキアジでもクロアジでもないギガアジの正体について、私は「クロアジ大型化仮説」を提唱しています。その根拠は、耳石を用いたギガアジの年齢査定によります。

たとえば、私が調べた最大個体は、既知の成長式から大きくはみだす48cmでした。これを無理やり式にあてはめると40歳を超える超高齢魚と推定されますが、実際は12歳でした。つまり、ギガアジは年齢を重ねた超高齢魚ではなく、超速で成長した巨大個体だったのです。ここで思い至るのは、クロアジの優れたエネルギーの転換効率です。エサに恵まれない外洋で激しい運動をしつつキアジ並みに成長するクロアジが、エサに恵まれた沿岸に定着したら、常識はずれのスピードで成長するのではないでしょうか。実際、ギガアジは湾奥部などでも釣れることが多く、キアジともクロアジともつかない体形、体色をしています。アングラーの皆さんはどうお考えでしょうか?

釣り人が知っておきたいアジの生態と習性

資源量の推移から、昼行性・夜行性の活動パターンの違い、適水温など、釣果にも直結するアジのディープな習性を解説します。

資源量は減少中

アジの資源量は10~20年周期で大きく増減します。 1960年に60万tあった全国漁獲量は減少を続け、1981年の12万tで底を打って増加に転じました。その後、1996年の40万tをピークに再び減少に転じています。

オスとメスは見分けられる? 釣れ方に差はあるのか

オスとメスの割合は1対1ですが、外見から判別することはできません。魚類にはオスメスによって成長速度や寿命が異なる種が多く知られていますが、アジにはそれがありません。したがって、どの大きさをとってもオスとメスの割合は変わりません。また、オスメスによる行動の違いは知られておらず、釣れ方もオスメスで変わらないものと考えられます。

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アジは昼行性? 夜行性? 時間帯による捕食行動の変化

アジは基本的に昼行性で、夜に眠ります。夜にアマモ場などの浅場を潜ると、1歳未満の小アジ(全長15cm以下)が海底に接地して寝ているようすが観察されます。ライトを当てても接近しても逃げず、熟睡状態です。しかし、成長に伴って眠りは浅く短くなり、やがてマグロ類のように泳ぎながら短時間眠るようになります。そうなると捕食行動の時間が長くなり、夜間にも釣れるようになります。

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アジが釣れる適水温は群れや海域で大きく異なる

アジは北海道の全沿岸から九州南岸までのほぼ全国沿岸に分布しており、さらに国外では朝鮮半島南岸から東シナ海、台湾海峡を経て中国大陸南岸の海南島まで広大な海域に分布を広げています。このことは、幅広い水温帯に適応していることを示しています。

北海道でよく釣れる水温と、南九州のそれを比較すると10℃近くもの開きがあります。また、適水温を求めて日本列島を南北に大移動する群れがある一方で、年間を通じて特定の湾から動かない群れもあります。つまり、アジの適水温は地域ごと、さらには群れごとに異なるので、絶対値としての適水温は存在しないと認識したほうがよいでしょう。

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アジの「視力」と「色覚」の真実

ルアーや仕掛けを見切られないようにするためには、アジの目の仕組みを知ることが重要です。魚類の中での視力レベルや、死角となる視野、そして夜間における色の認識能力について科学的な視点から迫ります。

魚類の中でも低め?視力0.11の世界と死角の存在

網膜上にある視覚のセンサーである錐体細胞の密度から、デジカメの画素数を比較するような手法で、魚類の視力を推定可能です。これによるとアジの視力は0.11と推定されました。多くの魚類の視力は0.1~0.2の範囲にあることから、アジの視力はどちらかといえば悪い部類に入ります。

プランクトンフィーダーゆえの「水平方向」への特化

眼の角膜から水晶体を通って錐体細胞が集中する網膜中央部に入る直線を視軸といい、その方向を見る時に最大の視力が発揮されます。アジはこれがほぼ水平方向であり、真横から真正面のものはよく見えるものの、上方や下方にあるものはよく見えていないと推定されます。

また、アジは体長に対して比較的大きな眼を持っており、眼は平たい体の両側面からやや突出して付いています。そして、正面はもちろん背面の真上からも腹面の真下からも両眼がギリギリ見えます。これは正面のみならず真上も真下も両眼視できる、非常に広い視野を持つことを示しています。死角は真うしろのほんの一角だけです。ただし、広い視野の代償として両眼視のエリアはわずかであり、対象物との距離感の把握は不得手だと考えられます。こうした魚体のつくりから、本来は獲物をねらって捕食するプレデターではなく、プランクトンフィーダーであることがうかがえます。

カラー選択のヒント。日中は「紫外線」が見え、夜間は「白黒」の世界

ヒトの錐体細胞は3色型の色覚を持ち、赤・緑・青の光の三原色の混合でつくられた色が見えますが、アジはそれらに加え紫外線も見えています。錐体細胞は感度が低いので充分な光量を必要とし、日中にその能力を発揮します。

その一方で、低光量下での感度が高い桿体細胞の働きにより、アジは夜間でも物がよく見えています。しかし、桿体細胞は1種類の光にしか反応しないため、色覚には関与しません。つまり、日中のアジは紫外線を含む多彩な色を識別しており、夜間には物はよく見えているものの色は識別していないと考えられます。

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※この記事は2021年に出版された「アジングAnglers!」に掲載した内容を再編集しています。

アジ 魚種別釣りガイド アジング

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列島をゆるがすコロナウイルス。けれども、日増しに暖かくなる春の日を、じっと家にこもって過ごすのはやっぱり体によくない。その点、手軽な海の釣りは、風も気持ちよく、大人も子どもも、思い切り深呼吸しながら時間を過ごせる。ウミタナゴ、メジナ、クロダイ、カレイ、アオリイカ、カサゴ……。元気な魚たちが泳ぐフィールドで、がんばろう、ニッポン! そのほか、3名手の渓流解禁レポート、里川で見つかる美味しい道草、みちのくタナゴ旅など旬の釣り満載でお届け。

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