磯のロマンは青物や上モノだけではない。仕掛けを投入し、満天の星空の下でアタリを待つ「ブッコミ釣り」は、シンプルな釣り方ながら多彩な大型魚がヒットする身近なビッグゲームだ。
伊豆半島を拠点にハマフエフキ・コロダイ・マダイの「御三家グランドスラム」を一年で達成すべく情熱を燃やすアングラー・U1(ユーイチ)さんに、ブッコミ釣りにおける仕掛けやタックル、エサの選び方について詳しく解説してもらった。

写真と文◎U1(ユーイチ)
静岡県伊豆地方、伊豆大島を拠点とするブッコミ釣り師。時に四国へアカメを、佐渡へ大真鯛をねらいに遠征も行なう。鉄オモリの作成・販売を通じ、環境にやさしい釣りを提唱。実釣の興奮と自然への敬意を両立させるスタイルを貫く。
磯の大物をねらう「ブッコミ釣り」の魅力
お初にお目にかかります。静岡県伊豆を舞台に、「ブッコミ釣り」というスタイルで大物を追い求めているU1と申します。私の釣りの原体験は、バスフィッシングの全盛期だった幼少期に遡ります。例に漏れず私も地元の野池や富士五湖に足を運んでは、いわゆる「ボウズ」を食らって絶望を感じていた一人でした。
そんな私が約10年前、ブッコミ釣りと出会い、人生が変わりました。毎週末のように伊豆へ通い詰め、数百尾のウツボと格闘しながら釣り場の地形や特徴を頭に叩き込み、ついに念願のハマフエフキを手にすることができたのです。
現在は、夜空の下で大物をねらう釣り人集団「ミッドナイトキャスターズ」に所属し、環境に優しい鉄オモリの製作・販売を行なうなど、多方面でこの釣りの魅力を発信しながらまだ見ぬ大物を追い求めている日々です。
古くから磯の大物釣りといえば、イシダイやクエをねらう底物釣りがその代名詞ですが、ブッコミ釣りも本質は変わりません。オモリとエサを付け、遠投あるいは足もとに仕掛けを投入してアタリを待つ。サオ立てに置くのもよし、ピトンで固定するもよし。型に縛られない自由さこそがこの釣りの美徳です。
3魚種を揃えるクエスト感
本命は、ハマフエフキ(タマン)・コロダイ・マダイ。この3種を1年で揃えることを「グランドスラム」と呼んでいます。昨今はここにフエダイが加わり、4種をねらう流れも定着しつつあります。その他、アカハタやカサゴ、コブダイやクエなどの美味しいゲストはもちろん、布団よりも大きなホシエイやマダラエイ、1.5mを超えるドチザメやハンマーヘッドシャークといったサメ類も人気のターゲットです。
どの魚も引きがすさまじく、仕掛けの強度と釣り人の腕が試されるのがブッコミ釣りの醍醐味です。特にハマフエフキは、その圧倒的なパワーから「磯のダンプカー」と称されるほどです。ちなみに私は釣れれば何でもうれしい派に所属していますが、80cmオーバーの御三家と50cmオーバーのフエダイを目標に掲げ、日々サオをだしています。
ブッコミ釣りは時期を問わず楽しめる
また、ブッコミ釣りの魅力は、釣り人がその気になればオールシーズン楽しめる点にもあります。ハマフエフキやフエダイは5月から9月、マダイは9月から6月、コロダイやサメ類は通年、大型のエイは冬がベストシーズン。近年ではカゴ釣りの傍らで置きザオを楽しむ方も増えてきており、その裾野は着実に広がっています。
ブッコミ釣りのタックルは安価に揃えることも可能
では、実際にどう始めるべきか。まずはサオとリールです。
ロッドはパワーのあるものなら何でもOK
サオに関しては正直なところ、重いオモリとエサを投げられれば何でも構いません。ルアーロッドやイシダイザオを使う仲間もいます。私が6年以上愛用しているのは、ダイワのタマンモンスターとガーラモンスターです。
沖縄専用ザオですが、釣具屋を通じて入荷してもらいました。しなやかな穂先の感度と食い込みのよさ、50kg以上のエイをも浮かせる強靭さを併せ持つ点が気に入っています。他にもダイワのキャスティズムやBKG、シマノのボトムキングなど選択肢は豊富です。初心者の方なら、1万円前後で購入できるOGKのエコタマンから入門し、この釣りの感触を確かめてみるのがいいでしょう。
リールは剛性とPE3~5号を巻けるイト巻き量が重要
リールに関しては、強い魚と対峙できる剛性とイト巻き量が重要です。安価なリールでは負荷に耐えきれず破損することもあります。私は現在、ダイワのウインドキャスト4000QD/6000QDやオルルド釣具のリミテッドサーフにPE3号または5号を巻き、リーダーは50~80Lbを7~10ヒロとって、飛距離と対象魚に応じて使い分けています。
コスパを重視するなら、ダイワのクロスキャストやオルルド釣具のリミテッドサーフが非常におすすめです。強度さえあれば高価なものである必要はありません。
仕掛け作りは自由度が高い
仕掛けもまた自由です。「10人のブッコミ人がいれば10通りの仕掛けがある」と言われるほどです。私は釣武者の遊動フリー天秤Mを使用する仕掛けを愛用しています。金属製で繰り返し使え、万が一ロストしても環境負荷が少ないのが特筆すべき点です。
その他、オルルド釣具のL字天秤やガルツの石鯛天秤パイプも使いやすいです。テンビンを自作する方もいて、選択肢はさまざまです。
ハリの選択は特に重要
ハリスは30~50Lb(約8号〜14号 )。ハリはがまかつのファインタマンやささめ針のカン付真鯛など、フッ素コートが施された刺さり重視のものを推奨します。サイズの目安は10~24号です。ハリは対象魚に応じた強度を確保する必要があり、タマンスペシャル、クエバリ、伊勢尼バリのほか、ムシエサを付けるなら丸セイゴ、サーフ真鯛などが選択肢に入ります。
ハリの選択で釣果が変わりますので、私はここにあげたものはすべて釣り場に持参するほど重要と考えています。
鉄オモリは環境にやさしいだけじゃない
オモリに関して、私が強く提唱したいのが「鉄オモリ」の活用です。従来の鉛オモリは加工のしやすさから安価ですが、水中での溶出による生態系への影響が指摘されています。その点、鉄オモリは水中で分解・自然界に影響を及ぼさず循環されるため、圧倒的に環境に優しい素材です。
私が製作している鉄オモリは、根掛かりしにくい棒型をベースにしており、鉄は鉛のように簡単には変形しませんので、岩の形に変形して抜けなくなることも発生しにくいのです。
また鉄は鉛よりも格段に硬いため、底を引きずった時に手に伝わる感度の高さも特筆すべき点です。鉄オモリは実用性と環境保護を両立させたアイテムです。
スーパーで買えるエサを複数用意して釣果アップを狙う
エサについては、まさに工夫のしがいがある面白い要素です。スーパーでアジを購入して冷凍保管したり、生のスルメイカを短冊にしてストックしたり、サバの切り身を準備したりと、身近な食材が特効エサになります。安価に入手できるうえ、小分けにしておけば「いつでも行ける」という利便性も大きな魅力です。
私はこうしたスーパー産のエサに加え、釣具店でイワイソメやアオイソメなどを調達し、複数を使い分けます。
その年によって「当たりエサ」がガラリと変わるのも、ブッコミ釣りの奥深さ。5月のシーズンインからどのエサを選定するか。それがその1年を占うと言っても過言ではなく、事前の準備からすでに勝負は始まっているのです。
釣り方はシンプルだが、海底の地形把握が釣果を左右する
最後に、釣り場選びと実践についてです。ビギナーの方は釣り場紹介の雑誌を購入し、釣り場と近隣の駐車場を調べておくことをおすすめいたします。釣り場の選定ができている方はグーグルマップの航空写真である程度の地形が把握できます。
ここで私がおすすめしたいのが海底地形マップの「釣りドコ」です。伊豆地方の全域や三浦半島・紀伊半島の一部の詳細な水深図が公開されているサイトもあります。海底の地形に対する解像度が上がり、釣果も上がること間違いなしです。
釣り場に着いたら、仕掛けにエサを付けて水深の変化がある場所に投げ込むだけです。重点的にねらうべきスポットは水中の沈み根やカケサガリ、足もと・沖の障害物周辺など。水深が浅くても障害物があり、エサになる生物がいそうな場所、通り道に使われる魚道は釣れる可能性が高いです。
仕掛けが着底したらドラグを少し緩めてイトのたるみを巻き取り、仕掛けを手繰り寄せ、障害物や凸凹に引っかかったら巻くのをやめて待ちます。15~30分おきにエサをチェックし、穂先のケミホタルや満天の星空を眺めながら、仲間と積もる話に花を咲かせるのも楽しいひと時です。
タックル、仕掛け、そして環境への想い。これらが揃ったとき、あなたのサオに「磯のダンプカー」が掛かり、ドラグが逆転し始め、鼓動が高まることでしょう。最高の釣りに出かけてみませんか?
※このページは『つり人 2026年6月号』に掲載した記事を再編集したものです。

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