伊豆の国市在住のアユ釣り名手、三嶋英明さんはウナギ釣りも大好きだ。ブッコミ、置きバリもするが「釣り応えが一番ある」と言うのが穴釣りである。アユ釣りの合間もウナギの雰囲気があれば、スリル満点の穴に仕掛けを差し込む。そんな三嶋さんにウナギの穴釣りの基本とコツを聞いた。

解説◎三嶋英明 写真と文◎月刊つり人編集部
伊豆の国市在住。第29回シマノジャパンカップ鮎釣り選手権での優勝をはじめ、全国大会でも輝かしい実績を残すアユ釣りのエキスパート。アユ釣りの合間にウナギの穴釣りを楽しむ。
ウナギの穴釣りとは?岩の下の穴にエサを送り込む原始的な釣り
ウナギは日本各地の川に生息するが、その生態はあまりに神秘的である。はるか南方のマリアナ諸島周辺海域の水深150m付近で産卵し、その仔魚が日本沿岸に流れ着き、川や湖で育った成魚が再び産卵場に戻ると考えられている。
ちなみに日本からマリアナ諸島までの距離は2200km超。はてしなく遠い極東の水辺をなぜ成育の場とするのか、不思議としかいいようがないのだ。
さて、ウナギは天然魚のみならず放流もされており、海との間を寸断されたダム上流部にも意外にいる。そしてウナギは多くの川でヤマメ・アユと同じく遊漁期間中に、遊漁券を購入のうえ釣ることができる。
伊豆半島の中心を流れる狩野川もまた、天然もいれば放流も行なわれるウナギ釣り場のひとつ。この川のほとりで生まれ育ったアユ釣り名手、三嶋英明さんは小学校低学年のころからウナギ釣りを楽しみ、特に思い入れが深いのは穴釣りという。ここでは三嶋さんの穴釣りの道具立て、ポイント、掛けるまでの一連のキモを追って解説していきたい。
ウナギ穴釣りの道具立て:サオは棒でOK、イトは極太・ハリは太軸

サオは棒でもよい。その役割は穴の中にエサを送り込むのみ。掛ける、取り込むといった一連の所作はイトを持って手釣りで行なう。このため落ちている竹でも充分にサオとなる。長さは100〜120cmが適当だ。
「アユを釣っている最中に魅力的な穴があれば〝これ〟を使って探ります」
そう言ってベストから出したのは黒板やホワイトボードを指すための伸縮式の指し棒だ。
仕掛けは強度が重要
仕掛けはPEライン10号にウナギバリ14号を結び付けたもので全長はサオの1.5倍ほど。サオに仕掛けは結ばず、ハリ先を棒の先に引っ掛ける。そしてラインを張ったまま穴の中にエサを差し込む。
「腕くらいの太さのウナギは、やわなイトでは抜けません。PEなら10号前後、ナイロンなら20号、タコ糸でもいいですね。穴から引っ張り出す時は凄まじい力が必要です。ハリも太軸でないと伸びてしまう」
エサはアユのぶつ切り。決め手は"香り"
エサはアユ。ぶつ切りが基本で食い渋れば3枚におろして骨のない状態にする。さらに食いが悪ければ内臓のみを付けることもある。
「狩野川上流部ならアユをエサにするのが一番ですが香りは大切で、養殖はダメ。天然じゃないと食いません。釣りたてほどいい香りがしますが冷凍ものでも釣れます」
地域によってはアユをエサに穴を探るとオオサンショウウオやスッポンが食らいつく。それほどアユは魔性のエサだ。
ウナギがいる穴の見つけ方:安定した石と瀬肩がねらいめ
この日、三嶋さんが探ったのは「狩野ドーム」前の瀬と宮田橋上流「飯田オトリ店」の前の瀬だ。特によいというのが瀬肩の周辺。
「注目するのは安定した石です。高水でも流されにくくアカが残りやすい石の周りに小砂利があると理想的です。こんもり盛り上がった丘になって、水を受けているとウナギの雰囲気があります。私の経験では浮き石の下には少ないです」
大型のウナギほど入口が小さく奥が深い穴に潜み、場所によっては1mのサオがすっぽりと入ってしまうくらいの奥行があるという。
流れが強すぎる場所、深すぎる場所は避ける
注意点として、流れが強すぎるのはよくない。サオが水流を受けてブルブルと震えてしまうとウナギは違和感を抱きエサを食い込みにくくなる。水深でいえば腿以上になると探りにくい。
オトリ店の前やアシ際も見逃せない
「見逃せないのがオトリ店の前です。アユ釣りの人が川から上がって腰かけて、一休みするような石の下には、いいウナギが潜んでいることがあります。死んでしまったアユを流すような場所は特にねらいめですよ」
もうひとつが両岸にあるアシなどのボサ周り。特に瀬肩のアシ下にいい横穴があれば必ず探るスポットと話す。
釣り方は穴に差し込むだけ
釣り方は単純だ。サオ先にハリを掛けて穴に差し込むのみである。ウナギがいれば答えは早く、アタリがでれば次のような手順になる。
- 「ガツ!」と最初の一噛みがある。ウナギはついばむようにしてエサを取る。
- サオを抜き、仕掛けおよびエサを穴の中に残す。
- 本アタリがきたところで合わせて一気に引っ張り出す。
アワセたら一気に抜き上げる
「アワセが遅れるとウナギが穴の中でとぐろを巻いて出てこなくなります。掛けたら即座に抜かないと取れません。全く取れない時は手で穴を掘り起こすこともあるほどです」
なお抜き上げた瞬間にハリが外れることも多い。タモを魚の下に添えておくと万全である。取ったウナギは玉ねぎ袋に入れておくと脱走しにくい。
匂いで誘い出すのも作戦のひとつ
ウナギの嗅覚は鋭い。匂いで誘い出すのも作戦のひとつで、内臓を出したアユを手にし穴の前にかざしてみると、顔をひょっこりのぞかせるウナギもいる。
「匂いをふりまきながら釣り探ると反応の早さが違います。釣り下っているなら、下流の穴に匂いが効いて穴の入口でいきなりガツガツ食ってきます。穴の奥で掛けるより当然取れる確率は高まります」
ウナギのほか頻繁に当たるのがモクズガニだ。まずサオをハサミでつかむ感触があり、さらに仕掛けを引っ張るとギシギシ、ギリギリと硬質な手応えを感じる。引っ張っても出てくることはまれで大抵は外れてしまう。
アユ釣りとセットで楽しむのもオススメ
最後にこの日のようすを駆け足でレポートすると、三嶋さんは朝一でエサのアユを釣った。名手の鮮やかな泳がせ釣りは好循環でオトリが回る。2時間半ほどで20尾をキャッチし、それをエサにウナギ釣りを始める。昨夏の台風で実績の高い穴が埋まったと言い、まさに手探り状態。そしておよそ1時間後には岸際にある段々瀬の穴でウナギらしい反応が出た。
「アタリましたよ」
と笑みを浮かべ本アタリを待つ。やがてきたグンという力強い引き込みを思い切り合わせれば、にょろりと水面から舞い上がったのは50cmほどの本命だった。
三嶋さんは狩野川に限らず河津川、戸田大川、興津川、藁科川でもウナギを釣っていて、アユ釣り遠征に出かけるたび各地の穴を探っている。穴釣りは老若男女問わずにできる。ぜひ、天然ウナギのスリルと美味を味わっていただきたい。

※このページは『つり人 2020年9月号』に掲載した記事を再編集したものです。



