首都近郊の渓流釣り場として多くの釣り人が訪れる秩父エリア。その中でも難しいとされる中津川の神経質なヤマメを、千島克也さんが軽い仕掛けのナチュラルドリフトでねらう。

文◎千島克也 写真◎月刊つり人編集部
埼玉県秩父地方出身。地元の荒川水系の渓流で幼少期からヤマメ釣りに親しむ。中津川を渓流釣りの道場として腕を磨き、極小ガン玉を使ったナチュラルドリフトを得意とする。ダイワフィールドテスター。
思い出の中津川でヤマメ釣り
私が初めて渓流釣りを体験したのが地元の埼玉県秩父地方を流れる荒川水系の渓流である。実家から歩いて15分ほどで浦山川に行き、小さい頃からヤマメを釣って遊んでいた。高校生になり原付バイクの免許を取得してからは行動範囲が広がり、大滝方面にも足を運ぶようになる。特に中津川は頻繁に通った。
全体的に落差が少なく高巻きなどの必要がない川なので、秩父の渓流の中では比較的歩きやすい渓流である。簡単に入渓できることから釣り人も多く、ヤマメはスレているのが常だった。私の渓流釣り道場と言える川のひとつであり、気難しい魚を釣るために試行錯誤を繰り返していたのはいい思い出だ。
この冬、秩父地方は雨雪が少なく解禁から川は渇水だった。水量の少なさに釣りに行く気になれず、なにかと他県の本流へ足を運んでいたが、5月上旬にまとまった雨が降ったため、久しぶりに中津川でサオをだすことにした。
荒川水系のヤマメにはピンチョロが効く
朝4時に起床し、車で1時間ほど走ると秩父市内に入った。私は荒川の支流で釣りをする場合、秩父市内の荒川本流でエサを採取してから釣り場へ行くようにしている。秩父の渓流は川虫がいないわけではないが、現地で採取するよりも荒川本流でエサを採取したほうがすぐに集まる。特に荒川水系はピンチョロをエサにしたほうが釣果に期待できることも多く、下流で集めるほうが効率がよい。
ピンチョロは流れの緩やかな浅場にいることが多く、特に落ち葉が川底にたまっているような場所に多く見られる。私はピンチョロを採取する時は枠が大きく網に張りがあるアユダモを使っている。この日はひと掬いで10匹ほど入った。昔ほどは採れなくなったが、多いときは一度に30匹ほど入り、早々に1日分を充分確保することができた。早くエサ採りを終えることができれば、その分釣りの時間が増える。私は中津川へと車を走らせた。秩父市内から1時間弱のドライブだ。
中津川はタフな状況
この日は午前中に強風が吹く予報だった。道中で視界に入る木々は風でかなり揺れており、滝沢ダムの湖面もかなり波立っている。谷が深い秩父の川とはいえ、釣りになるか少々不安になりながら中津川のポイントへ到着した。
中津川は降りられそうな場所には残置ロープがあることが多いので入渓点はわかりやすい。ちょっとした崖を下って川へ降りたが、谷の中も風が強い。加えて川の中には風で落下したような落ち葉がたくさん流れており、正直釣れる気がしない。やはり中津川は簡単にはいかないようだ。
極小ガン玉のナチュラルドリフトでスレたヤマメを攻略
穂先をメガトップRにした流覇H70(ダイワ)を、マルチは伸ばさずに6.4mで使用する。仕掛けは通しでイトはタフロン速攻の0.25号。手尻はマイナス30cmほど。ガン玉は風があるので少し大きめのG1からスタート。エサはもちろんピンチョロである。
試行錯誤の末ヒットパターンを発見
最初のポイントは流心の対岸の反転流。仕掛けを振り込み底付近までエサを沈めてから仕掛けを反転流に乗せていく。数回繰り返したところでアタリがあった。ハリには掛からなかったが、落ち葉がたくさん流れている状況でよくエサを見つけたなぁと感心してしまう。その後、しばらく粘るもののアタリがないので上流へ釣り歩く。しっかりした流れでは反応がなく、足もとの浅い瀬に試しに仕掛けを振り込むとすぐにアタリがあった。合わせると掛かったのは体長15cmほどのヤマメだった。この瀬で釣れたことがヒントとなり、昔、試行錯誤していた時の釣りを思い出した。それは極小ガン玉でナチュラルドリフトさせる釣り方である。
私はG1からG4にガン玉を変更。釣れた流れに似た瀬の中を流すと反応が増えた。そして先ほどより少し大きめのヤマメがヒットした。やはり、極小ガン玉でのナチュラルドリフトが効果的なようだ。
軽い仕掛けならエサを離さない
この極小ガン玉の役割は、仕掛けを自然に流すためだけでなく、ヤマメがエサをくわえた時にオモリの重さに違和感を抱いてエサを放してしまうことを防ぐためでもある。
この釣り方は昔から使ってきた中津川極小オモリパターンだが、当時と比べてサオは進化している。この日使用していた流覇H70の穂先はカーボンソリッドのメガトップR。穂先の先端部は当時のサオと比べれば格段に軟らかくなっており、細イトが使えるだけではなく食い込みがよい。極小ガン玉のメリットに軟らかい穂先が拍車を掛けて食い込みをよくしてくれている。しかし、それでもアタリがあるのにハリに掛からなかったり、食い込み切らずにバラしてしまうことも多かった。
ヤマメはハリまで見えているのか? ピンチョロ2匹掛けの工夫
ここで今まで1匹掛けだったピンチョロを2匹掛けにしてみる。するとエサをしっかり食い込むことが増え、ハリ掛かりもよくなった。これは落ち葉がたくさん流れる状況でもエサのピンチョロをしっかり見つけてくることから着想を得たものだ。すなわち、ヤマメにはハリが見えているのではと考えたのだ。
中津川は透明度がかなり高い。そのため視界がよくエサやハリがはっきりと見えているのではないだろうか。当然、人の姿は丸見えなので視界に人の影が入らないように、やや下流からアプローチすると反応がよくなった。
光が差し時合が始まる
谷にも日差しが差し込み、水温も上昇したようでヤマメのライズが始まった。ライズしているヤマメは水中を流れるエサに見向きもしないことが多い。この時もエサのピンチョロを何度か表層に流してみるが、一切アタリがない。完全に羽虫を捕食しているようだ。そこで私のエサ箱の中で羽化したピンチョロがいたのでそれをエサとして使ってみた。

仕掛けを振り込むとエサは浮いたまま流れていく。するとヤマメは羽化したピンチョロに食いついた! まずまずのサイズでサオがよい曲がりを見せる。しばしやり取りを楽しんだ後、タモに抜いた。少し青っぽく体高のある太いヤマメだ。渇水が続き、川虫が流れないために羽虫をメインで捕食していたのだろうか。
ヤマメの活性と日光
このポイントは他にもライズが見られた。釣り始めの場所では全く反応はなかったが、このポイントのヤマメは活性がすこぶる高い。異なる条件は太陽が川底を照らしているかどうか。谷が深い中津川の水温は5月上旬と言えどまだ低く、川底まで陽を照らすポイントを好んでいるのかもしれない。確認のため、アタリのなかったエリアをもう一度釣り歩いたが、やはりアタリはない。いかにもなポイントも多数あるのだが、そのエリアはまだ日差しが当たってはいなかった。
流れを見極めれば軽い仕掛けでも底まで届く
一度退渓してランチタイム。この時間になると風もだいぶ収まってきて、午後の釣りにも期待が持てる。昼食後は昔から何度も入渓してきているエリアに向かった。
淵や瀬が連続するエリアだが、まったくアタリがない。しかしこれは昔から変わっておらず、少し上流に歩くと釣れだすのだ。今回も少し上流へ進んでから釣れ始めた。午前中とは違い、このエリアは比較的水深のあるポイントにヤマメが集まっている。水深がある場合でも、食い込み重視でオモリの重さは変えず仕掛けを振り込むほうが反応はよかった。どこに振り込めば軽いオモリでも沈めることができるか、考えながら釣ることが大切だ。流速の早い流れに直接振り込めば軽い仕掛けは簡単に流されてしまう。緩い流れに馴染ませ、早い流れに巻き込まれるような流し方をすると水深のあるポイントでも底まで沈めることができる。
スレヤマメを完全攻略
ここではヤマメの活性が高く、風もないことからサオの操作も安定してまさに入れ食い状態! スレたヤマメを釣るために工夫を重ねてきた川とは思えないほどの好釣果に時を忘れて釣り続けた。気付けば17時30分になっていて、暗くなる前に納竿とした。
最近は本流釣りばかりで渓流釣りから離れていたため、中津川にヤマメがこれほど多くいることを知らず驚いた。近年は秋の台風での影響が少なく、ヤマメと産卵後の卵が流されずにしっかり残っているのだろうか。私が渓流釣りの道場としていた中津川は、今回も学ぶことが多く、そして存分に楽しむことができた一日であった。
※このページは『つり人 2026年7月号』に掲載した記事を再編集したものです。


