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つり人編集部2026年1月28日

【渓流釣り】先行者なしの「秘渓」を探す3つのポイント。川の名前に注目?

渓流釣りの楽しみは大ものを釣ること? 数を釣ること? 私の楽しみ方はずばり「秘渓」捜しである。2日間の旅路であれば初日は必ず新規開拓。結果が芳しくなければ翌日はお気に入りの渓へというように、ひっそりと隠れた渓谷を見つけてサオをだしたい。

月刊つり人

文◎戸門 剛(とかど・ごう)
写真◎つり人編集部

1984年生まれ。週の半分は山へ入り、源流の大イワナを狙う生粋の渓流師。『山の幸、川の幸 ともん』店主。

「秘渓」を見つける第一歩は現地での情報収集

渓流釣りが好きなのは人と会わないから、というタイプも多いのではないか。かくいう私もそのひとり。人嫌いではないが、釣りの間ぐらいせめて自然とだけ対峙したい。渓のせせらぎ、木漏れ日を揺らす葉々のざわめき、慌てて飛び立つカワガラスの羽音、侵入者を認めたニホンジカの甲高い鳴き声……。

「釣れますかァー?」

そんな声が頭上から聞こえたら興醒めする。しかし、待って欲しい。多くの場合、我々釣り人は余所者である。川は誰のものでもないが、そこに住む人にとってはオラが庭ならぬオラが川。挨拶や会話こそが円満の秘訣だ。「……ところで○×沢って知ってるかい?」とでも始まればしめたもの。

そして不思議と釣りに興味のない人の情報ほど脚色されていないことが多い。真摯に耳を傾けていれば、きっとネットにはない目から鱗の情報を知ることもあるだろう。

戸門剛さんは小誌おなじみの若き渓流マン。「郷土料理ともん」の料理人
戸門剛さんは月刊つり人おなじみの若き渓流マン。「郷土料理ともん」の料理人

河川名にも注目してみる

平成の大合併を経て市区町村名までもが変わった今日だが、ほとんど変化のないものもある。河川名だ。さてどれだけの釣り人がそこまで注意しているだろう。私の師匠で父でもある秀雄から「河川名の『色』を意識しているか」と言われたことがある。

いわく「赤や白の付く川は概して魚影が薄く、黒と付く川にはよい思い出が多い」と。赤と名の付く川は噴出する温泉等により水質が酸性およびアルカリ性が強いためか、川石が変色した渓相をよく目にした。一方黒と名の付く川は森閑としたあるいは苔生した渓相のことが多かった。私が20代の時に繰り返したのは、魚影が薄いはずの赤と名の付く河川縛りの旅。そんな所にこそ穴場が存在するのではと考えたのである。

探索行はほとんど返り討ちに終わったものの、驚くほどの魚影が走る渓を知ることもできた。河川名から渓のようすに思いを馳せる、そんな旅もぜひおすすめしたい。

新規開拓で見つけた落差のある小渓流。魚を育む水量と付き場があった
新規開拓で見つけた落差のある小渓流。魚を育む水量と付き場があった

地形図には夢が隠れている

最近登山用GPSアプリを愛用する釣り人が多い。私も実際に使っているが山中や谷間で自身の現在地が分かるこの安心感たるや。しかし危険の伴う渓流釣りでは地形図を読めるようになって損はない。滝、堰堤、ゴルジュ(V字谷)等だけでなく木々の植生にも目を向けよう。等高線の間隔が狭いのは急峻な斜面の証だが、木々が生い茂っていればそれを伝って意外なほど楽に上り下りができる。また針葉樹林よりも広葉樹林の山のほうがエサとなる昆虫の落下が多く狭間を流れる渓も魚影が濃い。

ゴルジュの区間は労の多いわりに魚影が薄い。ゴルジュの前後がねらいめ
ゴルジュの区間は労の多いわりに魚影が薄い。ゴルジュの前後がねらいめ
取水堰の下流部には砂れき地が生まれやすい
取水堰の下流部には砂れき地が生まれやすい
取水堰は堰から水色の破線が伸びている
取水堰は堰から水色の破線が伸びている
針葉樹林よりも広葉樹林に囲まれた渓のほうが魚影は濃い
針葉樹林よりも広葉樹林に囲まれた渓のほうが魚影は濃い

特に着目してほしいのが取水堰である。取水堰の下流部は水量が乏しいため、通い慣れた釣り人以外には素通りされがちだ。グーグル・アースなどの立体地図で頭に描きにくい地形変化を可視化するのも有用である。しかし今は地形を一変させる災害規模の豪雨が毎年のように起こる。地形図にのみ頼り過ぎてはいけないというのも覚えておこう。

それでは実際にとある渓の取水堰上流へ隠れ渓谷を捜しに行った時の話をしたい。

渓流ポイントの探し方:実践編

舞台は信州伊那谷。天竜川の一大支流・三峰川水系だ。仙丈ヶ岳に端を発する三峰川は標高差2400m、流程およそ60kmもの大渓流である。三峰川を語るのに外すことができないのがヤマトイワナの存在だ。当地は木曽谷と並ぶヤマトイワナの生息地として知られていたが、それも今は昔。純系が残されたのはもはや最源流域のみといえる。一般車両通行禁止ゲートにより、三峰川固有のヤマトイワナに会いたければ20km以上の林道歩きを余儀なくされる。しかし三峰川は今も人気が高い釣り場だ。新緑の頃からは瀬にもイワナやアマゴが姿を見せ、開けた渓相なのでフライフィッシャーやルアーアングラーも好んで入る。

河原砂漠の先には……

主な釣り場は支流の黒川を分けてからの本流上流部。その入り口となる黒川合流点の川相を見れば多くの釣り人は首をかしげる。なぜなら荒涼とした河原砂漠が広がりショベルカーが各所で河畔を整えている。正直、目を覆いたくなるような景色だが、川らしい姿も捜せばあるのだ。地形図を見て思いをめぐらしたのは三峰川支流・黒川のさらに支流の取水堰上流部だ。

堰の下流は枯れ果てそうなほど水が乏しい。それでも上流は……
堰の下流は枯れ果てそうなほど水が乏しい。それでも上流は……

未だ冬枯れの頃、夜明けとともに私は歩き出した。臨時通行止の影響で入渓点となる支流の出合の約3km手前からスタート。肌寒さを覚えながらも軽快に歩き、およそ30分で出合に到着。さあ、ここからが本番。だが川は依然として砂漠のような風景のまま。そして取水の影響で川の水は申し訳程度に流れているのみ。弱気な考えも浮かぶが、黙々と歩き続ける。余談だが中央構造線に位置する当地は地質がもろく、落石や崖崩れが頻発する。崖の側に停めていた車がフロントガラスを大破させていたのを見たこともある。頭上に注意を払うことも忘れてはならない。

目的地の取水堰に到着

道中、口笛のような高音が木霊した。対岸の斜面に二頭の鹿。四つ足動物のバランス感覚を見せつけるように断崖を跳び抜け視界から消えた。徒渉しながらの旅路は少しずつ高度を上げ、目的地の取水堰がすぐそこまで迫った。不安は未だ拭いきれない。仮に水門が開いていたら、このか細い流れが全水量という可能性もある。やがて前方に堰堤が見えた。上流に水はあるか? イワナたちは息づいているか? 期待と不安に歩みを早めた。そして取水堰の上は、豊かな水が流れていた。

大岩を乗り越えた先に渓の核心部はあった
大岩を乗り越えた先に渓の核心部はあった
豊富な水がしたたる取水堰の上流部。渓流らしい流れに癒される
豊富な水がしたたる取水堰の上流部。渓流らしい流れに癒される
大オモリでハリスは長め。ピンポイントで魚を誘う
大オモリでハリスは長め。ピンポイントで魚を誘う

そこには渓流然とした流れがあった。それだけのことがうれしいのである。ザックを下ろして息を整え、お茶を一口。流れを観察していると石には苔が付いている。川が荒れていない証拠だ。休憩もそこそこに仕掛けを張り、目前の落ち込みでサオを伸ばした。天然のキヂを投入し、ようすを見るもアタリはない。驚き走る魚影がないかと流れに足を踏み込む。道中の長歩きと遡行性を重視して沢登りのウエットスタイルで来たが、南アルプスの雪解け水は脳天に稲妻が走るほど冷たい。

イワナが登場

ここぞというポイントにサオをだして遡行を続けると、魚はいた。主に釣れるのはニッコウイワナかニッコウとヤマトの混じりと思しき個体である。岩に根を下ろした大樹に目を向け、渓歩きを楽しみながら進む。やがて太陽は頭上に輝き、薄暗い渓に日が差した。魚の活性が上がったことを期待する。

身を低くしてようすを見るが、手前の淵には魚影がない。落ち込みの裏に巻く底波にキヂを乗せて誘いをかける。すぐに反応はなく、大岩の上はどんなポイントだろうと意識を上流に向けた瞬間、矢羽根の目印が水中に突き刺さった。

愛竿はダイワ「早蕨」。予備ザオとして「雪渓」も持参
愛竿はダイワ「早蕨」。予備ザオとして「雪渓」も持参
矢羽根目印にオモリ1 号以上。イトも1~1.2号と太い
矢羽根目印にオモリ1号以上。イトも1~1.2号と太い

反射的に合わせると力強い手応えが響く。岩穴に逃げ込まんとするのをいなし、落ち込みから淵に引き出す。青く透き通る水面に踊ったのはヤマトイワナ。短く太い流れの山岳渓流に適応し尾ビレが大きく発達している。丁寧に寄せてすくい上げたのは白い渓底の石を映したかのような魚体だ。

取水堰の上に残されていた幸運。また素晴らしい渓を知ることができた。世の喧噪が一段落し、緑の美しい季節になったなら、隠れ渓谷を捜してみてはいかがだろう。ただの登山で終わったとしても、それも思い出。もし美形魚と出会えたなら、きっと忘れえぬ旅になる。

白点がなく背中に独特な斑模様があるのがヤマトイワナ
白点がなく背中に独特な斑模様があるのがヤマトイワナ

※この記事は月刊『つり人』2020年6月号に掲載したものを再編集しています

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