近年個体数が増えたのか、身近な存在になってきたクロダイ(チヌ)。全国で楽しまれている落とし込み釣りの中でも堤防際にエサを落とすヘチ釣りは東京湾が発祥。特有の道具を使ったり、エサにこだわったり、と魅力は数多くあるが、足もとという距離の近さで大ものが釣れる可能性があることが何よりの魅力。身近な釣り場で、シンプルな道具立てで、クロダイが釣れる。取材当時にヘチ釣りを教えていただいたのは横浜市にあった釣具店・アークス根岸店の佐藤弘充さん。横浜エリアで広くヘチ釣りを楽しむエキスパートだ。

解説◎佐藤弘充
写真と文◎月刊つり人編集部
身近な堤防で大物が狙える!クロダイの「ヘチ釣り」とは
近年、生息数が増加したためか身近な存在となってきているクロダイ。この魚は外洋や港湾部、河川などさまざまな場所でねらえ、釣り方も多彩。中でも落とし込み釣りは落ちてくる物によく反応するという習性を利用する釣り方だ。岸壁に着いているカニや貝を捕食しているクロダイに対してエサをゆっくりと落とし、あたかも壁から剥がれ落ちてきたかのように演出することで口を使わせる釣り方は、岸壁ギリギリ(ヘチ)にエサを落とすためヘチ釣りと呼ばれている。
クロダイのヘチ釣りに必要なタックルと道具
ヘチ釣りに最低限必要な道具は
1.タックル
2.ベルト
3.ペンチ
4.ガン玉・ハリ
5.タモ
6.エサ箱
7.ライフジャケット
また、偏光グラスを用意すれば日差しの強い日にもラインの変化が見やすいので、こちらも準備しておくのがおすすめだ。特に釣果に差が出るタックルや仕掛けの選び方を詳細に解説しよう。
繊細なアタリを捉える専用ザオ
ヘチ釣りは小さなアタリを掛けていく釣りであるため感度の高いサオが求められる。それにプラスして落とし込みという動作をこなすための操作性も必要だ。そのため専用のサオは8:2や9:1といった先調子が多い。
長さは堤防での釣りの場合、取り回しがよいのは2.7m程度。穂先を水面近くまで近づけることで風の影響を受けにくくなるため、足場の高い堤防では3mのサオを用意しておくとよい。ズーム機能のあるサオならさまざまな状況に対応できる。
仕掛けを自然に落とすためのタイコリール
仕掛けを自然と落としていくためにはリールの回転性能がとても重要。また上げ下げの動作を何回も繰り返すため軽量なリールが好まれる。そのためヘチ釣りでは1:1のタイコ型リールが使われる。回転がなめらかものほど深場へ落とし込む動作がスムーズになる。
.jpg)
ミチイトの視認性で釣果に差が出る
ミチイトはナイロン。しなやかで扱いやすく、水馴染みもよいため落とし込みやすい。ラインの違和感を捉えて掛ける釣りなので、オレンジや蛍光グリーンなど落とし込み専用の見やすいイトを使うことが釣果に直結する。太さは1年をとおして2号。ハリスはフロロがおすすめで、根ズレに強いため岸壁際を探るこの釣りに最適だ。1.5号を1ヒロセットしよう。ヨレを抑えることができるため小型のヨリモドシを使って接続するとよい。
.jpg)
仕掛けとなるハリとガン玉の選び方
釣具店で見てみるとクロダイ用のチヌバリの他にカニ専用や貝専用といった種類のハリが見つかる。これらのハリはチヌバリをベースにガン玉を装着しやすく作られたもの。それぞれ特徴があるが、まずはチヌバリで問題はない。ボサガニやイガイを使うので5号のハリが丁度よい。
ガン玉はハリのチモト付近にペンチを使ってしっかり噛ませる。B〜5Bまで用意して使い分ければさまざまな状況に対応できる。オモリは軽いほうが魚の食いがよいためできる限り軽いオモリを使うとよい。ただ潮の流れが速いときには感覚が掴みづらいため重めのガン玉を打つ。入門者の場合は操作に慣れるために重めのガン玉から使い、徐々に軽くしていこう。
ヘチ釣りのエサ選びは、入手しやすいボサガニが基本
ボサガニは安価で、取り扱っている釣具店が多く入手しやすい。弱りやすいのでサカサオケから必要な分だけをエサ箱に入れて携帯する。エサ箱にはネットの切れ端などを入れておくとカニが弱りにくい。
また夏場などはエサ箱がプラスチックだと温度が上昇し弱りやすいので暖まりにくい木製がおすすめ。エサ取りが少ないようであれば1人20匹あれば充分楽しめるが、魚の活性が高い場合には50匹と多めに用意しても足りないこともある。
岸壁で採取できるイガイも特効エサ
クロダイもよく釣れるがフグなどのゲストも引き寄せる。また、ボサガニは岸壁ギリギリに落した時に張り付いてしまうことがある。この難点を解決できるのがイガイだ。
イガイは岸壁に張り付いている貝の仲間でクロダイの大好物。クロダイのほかにイガイに食いつく魚がいないためクロダイだけにねらいを絞ることができる。また岸壁にへばり着くことがないため壁際ギリギリへタイトにアプローチすることが可能になりクロダイとの距離がグッと縮まるのだ。
ただし、難点はイガイを取り扱っている釣具店が非常に少ないこと。最近の東京湾では数が減ってきているようで入荷していないこともある。海釣り公園や沖堤防などでは採集禁止のところが多いため、自分で採集する場合は必ず事前に確認して欲しい。
またカニ型のワームやイガイのルアーも販売されている。これらも合わせて持っておくとエサの残量を気にせずに1日楽しめるのでおすすめ。他にはアオイソメを使えば根魚やスズキなども掛かりやすくなり、五目釣りが楽しめる。
エサの付け方
カニとイガイのハリへの付け方も写真で紹介していく。
カニの付け方
.jpg)
イガイの付け方
釣り方の流れと、釣果を伸ばすコツ
ヘチ釣りは堤防の岸壁沿いを歩きながら探っていくのが基本だ。サオを軽く立てた状態でイトを引き出しておき、エサは水面のやや上にある状態から釣りが始まる。
なるべく壁沿いにエサを落としていく
ゆっくりとサオ先を下げていき、エサをなるべく岸壁ギリギリに着水させる。クロダイは壁のほうを向いてエサを捕食しているので壁に近ければ近いほどよいアプローチになる。落とし込んでいく速度は1秒で10cmくらいが基本。サオ先と同時に自分の姿勢も低くしていくことでリールの操作なしで水面から3〜4mは探ることができる。満潮時の水面付近にはイガイの層があり、食い気のあるクロダイはイガイの層の付近まで浮上する。イガイそのものもエサだが、イガイの層の中にはカニやイソメやエビなども潜んでいる。
ハイシーズンはイガイの着いた層のみ探る
まずはこのイガイの層の上から下までをサオ1本分のストロークで探る。これからのハイシーズンはタナ釣りといって、このイガイの層の付近だけをスピーディーに探っていく釣りが有効だが、シーズン初期は全層を探ったほうがいい。
さらにイトフケを出してサオで送り込むか、回転性のよいリールならスプールを回転させて仕掛けを落とし込んでいく。
アタリがないまま着底したら仕掛けを回収し、5mほど移動して再投入。ポイントを変えると潮の流れが微妙に変化し沈降速度も変わってくる。沈下速度を一定に保つことがセオリーとされるが、季節や天候などによって効く速度は異なるので釣れなければ速度を変えてみるのも大事。また、仲間が釣れたときはエサやタナだけではなく、オモリの号数も確認したい。
ラインは張らず緩めずで落とす
落としていく時はラインを張らず緩めずの状態で落としていくのがポイント。といってもフカセ釣りではないのでヘチ釣りではイトフケは作りすぎる必要はない。むしろ張り気味にして落とし込むことでライン変化が出やすくなる。たとえばイトを張って落とすから居食いのときにイトが入らずフケができるし(通称ストップアタリ)、張っていれば微妙な重みを感じることもある。イトフケがあるとどうしてもアワセが遅れ気味になる。
アタリはとても繊細だ。水面とイトの接点の上あたりを点ではなく線で見て、サオ先付近にも注意を向け、小さな違和感を見逃さないことが大切。
アタリの見極めとやり取り
アタリがあったらサオ先を上げて聞いてみる。ここで重さが乗ったらしっかりとリールを押さえて鋭くアワセを入れよう。ただし、ツブと呼ばれるイガイの1枚掛けの場合は即アワセが基本になる。
フッキングが成功すると1:1のタイコリールによるスリリングな接近戦が始まる。サオ尻を肘に当てサオを保持してファイトする。このときもリールをしっかり押さえてテンションが掛かり続けるようにする。サオの反発をうまく利用し、決して綱引きはしない。魚を引っ張り上げるのではなく、サオを曲げた状態をキープして自然と浮き上がってくるのを待ち、玉網を使って掬う。
繊細なアタリからは想像もつかないような強烈なファイトが始まることも多い。他の釣りにはない足もとという至近距離でのスリリングなやり取りは一度味わったらこの釣りの虜になることだろう。湾奥の河川や港、堤防などクロダイは身近にいるので最寄りの釣り場で大ものをねらってトライしてみてほしい。
※このページは『つり人 2021年8月号』に掲載した記事を情報更新・再編集したものです。


