<img height="1" width="1" style="display:none" src="https://www.facebook.com/tr?id=170559842213036&amp;ev=PageView&amp;noscript=1">
つり人編集部2025年12月14日

極小毛バリで楽しむオイカワ釣り 名手が教える「蚊バリ」の奥義

秋から冬に栃木の釣り人が夢中になるのが、可憐な小魚「ガンガラ(オイカワ)」。鹿沼市在住のアユ名手・福田和彦さんが語る、極小の毛バリ「蚊バリ」を使った、オイカワ釣りの魅力と奥義を紹介する。

写真と文◎編集部
解説◎福田和彦

秋冬に楽しい!オイカワの毛バリ釣り

オイカワは全国各地の中流域に生息している小魚だ。東日本では「ヤマベ」、西日本では「ハエ」と呼ばれる。海なし県の栃木県では秋・冬のターゲットとして親しまれ、当地のベテランはオイカワを「ガンガラ」と呼ぶ。

「ガンガラ釣りはアユ釣りが終わったあと、ヤマメ釣りが始まる春までの楽しみです。特に10〜11月はよく釣れて面白いんだから」

そう話すのは栃木県鹿沼市に住む福田和彦さん(72)。ダイワ鮎マスターズでも優勝経験のある、アユ釣り競技界のレジェンドだ。自宅裏を流れる利根川水系・思川支流の黒川が福田さんのホームグラウンド。近年の黒川はアユが絶好調で大賑わい。天気や水況がよければ、毎日アユを釣るのが福田さんの夏の日課だ。そしてアユシーズンが終わると、勤しむようになるのがオイカワ釣りである。

「カミさんとお昼を食べてから、午後の数時間だけ釣りをします。ガンガラは簡単に釣れちゃうけど、よりたくさん釣るにはどうすべきかと、ウキや毛バリも自作してこだわっています」

全長1cm弱の小さな毛バリ「蚊バリ」を使う

そう、福田さんの釣法はオイカワ釣りで最も手軽な蚊バリ釣りである。「蚊バリ」と称される全長1cm弱の小さな毛バリは、チモトに金や銀のビーズが付けられ、多彩なカラーパターンがある。古くから市販されているものには「音羽」「二葉」「菊水」「清姫」「白雪」「歌姫」といった、雅で小粋な名が付いている。

「ハリスは細いほうが食いはいいかな?小さいハリのほうがよく釣れるかな?こだわるのが楽しいから毛バリや仕掛けを研究するけど、ガンガラは市販品でも充分に釣れる。とにかく気軽に楽しんでほしい釣りなのよ」 そうにこやかに語る福田さんのこだわりや、蚊バリ釣りの基本を紹介しよう。

oikawa01
オイカワといえばオスの婚姻色が美しいが、それが見られるのは夏。秋や冬は、名残りがある程度の銀鱗である

福田さんのサオと仕掛け

適したサオの長さは5.3〜6.4m。福田さんの愛竿はダイワ「清流X硬調」6.4mである。1〜1.2号のミチイトにウキを介して、ハリスと枝スが0.3〜0.4号の5本バリ仕掛けを結ぶ。市販品は毛バリの間隔が短いが、福田さんは60cmと長めに間隔を取っている。そのほうが仕掛け絡みのトラブルが少ないからだ。また広く探るためにも、手尻(サオ尻から仕掛けの先端まで)は約1mと長めにする。ウキがつかみやすい位置になるように、ミチイトの長さを調整しておくとよい。

ウキは仕掛けを飛ばすためと、毛バリを浮かせて流すためのもの。福田さんのウキは木製だ。ちなみに市販品の多くは発泡素材のウキである。木製にこだわる理由は、仕掛けを振り込みやすいから。このため軽いバルサは使わず、パイン(松)などの無垢材を切り出して流れの抵抗を減らすため流線形に削る。穴を開けてミチイトと仕掛けを結び付けるためのタコイトを通し、固定している。

uki
福田さん自作の木製ウキ。流線形に削り、穴を開けてタコイトを通して固定。この15cmほどのタコイトの上下に結びコブを作り、上はミチイトをチチワでぶしょう付け、下は蚊バリ仕掛けを結ぶ

蚊バリの色は「銀」と「黒金」がマスト

蚊バリの色は多彩だが、福田さんが圧倒的によく釣れるというのが「銀」と「黒金」。5本ある毛バリの配色もいろいろ試した結果、「一番上が銀で一番下が黒金のヒット率が高い。間の毛バリの色はなんでもいい」と言う。特別な虫が飛んでいるわけではなく、シンプルな毛バリでよいそうだ。

「すべての蚊バリを釣れる色に替えてもいいんだけど、それじゃ面白くないでしょう。どの色がよく当たるかを見つける。釣りは探求するのが楽しいの。毛バリの色や並びもこだわってきたけど、もう決まっちゃった。魚釣りはよく釣れるものを見つけるまでが面白い。釣れるまでの探求がなくなるとつまらない」

ちなみにハリはがまかつ「細地袖」の2.5号。チモトのビーズは手芸用製品。フライタイイング用のティンセルを3色撚って巻いたり、手芸用の金糸や銀糸を巻く。ボディーのマテリアルはピーコックが主体だが、アオサギやカラスの羽根を調達して巻くこともあるそうだ。

kebari
福田さんの自作蚊バリ。がまかつ「細地袖」2.5 号に0.3号のハリスをスレッドで巻き付けて接着。そのうえで手
芸用の金糸・銀糸や、フライ用のティンセルなどをシャンクに巻き、ボディーにはピーコックやアオサギの羽根も使う。チモトには手芸用の極小ビーズを接着して完成。右下の「銀」と「黒金」は特によく釣れるそうだ

名人に学ぶ釣り方のコツ

ポイントは水深が膝下程度までの浅瀬が中心になる。水面直下に毛バリを流して釣るため、流れの緩い場所や深場は向いていない。浅瀬は水生昆虫が豊富で虫が流れてきやすく、高活性な魚も多い。水深がくるぶしくらいのチャラ瀬でも釣果は出やすい。

10月初旬、福田さんは自宅裏の府中橋上流で釣りを始めた。そこは瀬落ちから続く脛くらいの水深のトロ瀬で、下流に行くとザラ瀬になり小堰堤に落ち込む。

kurokawa
黒川は睦町の府中橋上流。市街地を流れる小河川ながら、オイカワが泳ぐ

「の」の字で振り込み 下流方向に扇状に探る

手尻が長い仕掛けなので、振り込みは頭上で「の」の字を描くように行ない、斜め下流に向かって仕掛けがまっすぐ伸びるように着水させる。着水後は下流方向を扇状に探る。サオで仕掛けをリードするように、ゆっくりと引くのがコツである。

一流し目で水面にポチョッと波紋が出て、毛バリが引き込まれた。小気味よい躍動がサオに伝わる。小型ではあるものの、本命のオイカワだ。一番上の銀の毛バリに食い付いている。

「向こうアワセで勝手に掛かってくれます。だから簡単。流れが強いほど掛かりやすい」

2投目には2尾がヒット。今度は一番上と一番下の黒金だ。その後も連発で、オイカワだけでなくウグイやカワムツも混じった。

ugui
ウグイも釣れる。栃木県では「アイソ」と呼ばれ、食用魚として親しまれていた魚。かつては川漁も盛んだった

曇り空や夕方のほうが釣りやすい

「曇り空なのがいいんだよ。ピーカンの快晴だと食い渋ります。それでも夕方には魚の活性が上がって入れ食いになる。蚊バリを深く食い込んでくれるからバレにくい」

アタリが途切れると、下流にじわじわと立ち位置を移す。するとまたよく当たる。ザラ瀬に差し掛かるやや上流のカガミでは、オイカワのサイズがアップした。丸々と太った18cmクラス。いわゆる「イワシヤマベ」がたて続けに躍り上がった。

fukuda
丸々とよく肥えたイワシヤマベを手にする福田さん

「空揚げにして食べてみて。揚げたてはすっごく美味しいし、南蛮漬けにすれば数日もちます。大きいのは塩焼きでもいい。こっちの人はみんな喜んで持って帰るんだから」

さらに下流のザラ瀬までくると、途端にアタリが遠のいた。「おかしいな。ここが本命ポイントなんだけど」 と福田さんは首をかしげる。周辺の石は黒く磨かれており、時おりアユが跳ねる。

「アユが追っ払っちゃったかな。ガンガラもナワバリ意識は強いけど、アユにはかなわない。アユは本当に強い魚だよ」

10月初旬とはいえ、黒川のアユはまだ落ち切っていなかった。それが影響しているのだろう。それでも50mほどの距離を探っただけで、次々にオイカワがヒットした。

「子どもでも大人でも、たくさんの人が川に来て魚と遊んでくれるとうれしい。釣り人のいない川は寂しいでしょう。ガンガラは気軽に釣れて食べて美味しい。ぜひ多くの釣り人にやってほしいです」

釣り人を増やしたい。それもまた福田さんの願い。蚊バリ釣りはシンプルで素朴。親子で楽しむのもよし。数時間のチョイ釣りでも癒される。

oikawa02
福田さんの作ったオイカワの南蛮漬け。こだわりは桃屋の「キムチの素」を使うこと。ニンジンと長ネギを刻み、砂糖を混ぜた酢に、下処理をして素揚げしたオイカワを漬け込む。2~3日寝かせたほうが、軟らかくて美味しい

※このページは『つり人 2025年12月号』の記事を再編集したものです。

魚種別釣りガイド オイカワ 淡水の釣り 淡水小物釣り

記事検索

  • 検索フィールドが空なので、候補はありません。

月刊つり人 最新号

つり人 2020年5月号

列島をゆるがすコロナウイルス。けれども、日増しに暖かくなる春の日を、じっと家にこもって過ごすのはやっぱり体によくない。その点、手軽な海の釣りは、風も気持ちよく、大人も子どもも、思い切り深呼吸しながら時間を過ごせる。ウミタナゴ、メジナ、クロダイ、カレイ、アオリイカ、カサゴ……。元気な魚たちが泳ぐフィールドで、がんばろう、ニッポン! そのほか、3名手の渓流解禁レポート、里川で見つかる美味しい道草、みちのくタナゴ旅など旬の釣り満載でお届け。