関東屈指のアジングフィールドである「外房」。遠浅のこの海域において、釣果の鍵を握るのは状況に応じたリグの使い分けだ。
本記事では、外房アジングの魅力を発信し続ける第一人者・渡邉長士さんが、実践的な攻略法を伝授する。さらに、「ルアーでアジは釣れない」と笑われた約30年前の黎明期から現在に至るまで、外房アジングの歴史と進化についても語ってもらった。
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解説◎渡邉長士
1981年生まれ。千葉県在住。幼少の頃より釣りに親しむ房総半島の申し子。四季折々のターゲットをねらい、なかでもライトゲームには絶対の自信を持つ。月刊つり人では20代のころからアジングの情報を発信してきた。
アジをルアーで釣ろうと思った理由
――渡邉さんがアジングを始めた頃の話を聞かせてください
まだ「アジング」という言葉が流行する前にアジをルアーで釣っていました。2002年に「タックルボックス」という雑誌に寄稿したんですが、実際にやり始めたのはもう少し前で1999年。27年ぐらい前だから高校生の頃です。自転車で岩船港という港にシーバス釣りに行ったんですが、夜の港内で小魚がパチャパチャと跳ねていた。
これだけ港内にベイトが入っていれば、シーバスが釣れるだろうと思ってルアーを投げましたがアタリは出ない。ルアーがベイトに合っていないのか? ベイトは何だろう? そう思って足もとにも見えていたベイトの正体を確かめようとルアーのトレブルフックを外してスナップに付け、ベイトフィッシュであろう魚を引っ掛けようとしたんです。
トレブルフックを沈めてみると勝手に魚が掛かった。上げてみたらそれがアジ。口の中にトレブルフックが入っていた。珍しいこともあるんだなぁと、もう1回同じことをやるとまた釣れた。ちゃんとトレブルフックを口にくわえたアジが上がってきたんです。この時にピンと来て、アジはルアーでも釣れるのかもしれないと思ったんです。
翌日にスプーンでねらってみるとアジが釣れた
翌日、エリアトラウト用の5フィート台のベナベナのロッドに1gのスプーンをセットして同じ堤防で投げてみると、やっぱりアジが釣れてしまった。
当時はライトゲーム専用のタックルも少なかったし、ラインもなかった。フロロカーボンは細くてもバス用の3ポンドまで。この太さのフロロカーボンはやっぱり飛ばないし、トラブルも多い。だからナイロンの2ポンド、ルアーは1g程度のスプーンやトラウト用の小型ミノーを使ってアジをねらっていましたね。2000年代半ばくらいにはジグヘッドワームを使うメバリングが流行し始めて、それからアジにも1g、1.5gのジグヘッドにワームを付けて釣ってみるようになった感じです。
ちなみに外房にはメバルが少ないんです。だからアジとメバルの釣り方もかなり違う。一般的にメバルは、広範囲をただ巻きで探っていればヒットすると思うんですけど、外房の場合は根や堤防のエッジをかなりタイトに探らないと釣れない。だからメバルをねらっていてアジが混じることはあまりない。
アジとメバル、どちらが外房で釣りやすいかといえばアジです。メバルはシーズンが限定されますが、アジは一年中釣れて絶対数も多い。ただ1~3月のスポーニング前後はアジよりもメバルのほうがイージーに釣れる。
「アジング」という呼び名の定着と発展
まだ「アジング」という呼び方が一般的でなかった頃は「アジルアー」とか「アジゲー」なんて呼ばれていました。でも自分の中ではすでに「アジング」と呼んでいて、メバリング、ジギング、エギングという名前の釣りはあったので、それに倣った感じです。
アジングと言えば周囲に笑われたし「ルアーでアジが釣れるわけねえだろう」と突っ込まれました。そんな人たちの前で実際にアジを釣って見せれば納得してくれる。そのうち毎日堤防に通っている地元のエサ釣りのおっちゃんたちが「ルアーでも釣ってみるか」と試してくれるようになった。
ただ本格的な流行は遅かった。火種はできていましたが、燃え広がらなかったんですよ。で、2007年くらいから広島をはじめ西日本から人気が高まって2010年代になってようやく外房にもアジングファンが増えてきた感じです。
外房が関東の主要なアジング釣り場になった理由
――月刊つり人で渡邉さんが「アジング」という言葉を初めて使って紹介した号が2006年5月号です。以降は本誌でもアジングをじわじわと取り上げるようになって、外房はいまや関東の主要なアジングフィールドです。やっぱりアジが多いのでしょうか?
関東の中では釣果が安定していますね。アジングが広まった当初は釣り禁止の港も少なく、常夜灯の効いた港で大らかに釣りができました。内房や南房でも釣れる場所はありますが、ムラがあるのとシーズンを通じてアジが回遊するポイントは少ない。神奈川県もアジが寄り付く場所にムラがある。外房なら365日どこかで必ずアジが釣れます。
外房アジングのベストシーズン
――周年釣れる外房ですが、特にアジングの好機と言えるのはいつ頃でしょうか?
12~1月の年末年始あたりは釣れ盛ることがあります。2~3月は1年で最も水温が低くなって難しくなる。3月初旬に勝浦港の水温を測ったら14度でした。それが4月になると水温が17度を超えるんです。アジの適水温は17~23度と言われているんですけど、4月に入れば釣果は安定していきます。
外房でアジをねらいやすい時間帯
――外房のアジの時合はとても短い気がするんですが、どうなんでしょうか?
それはマヅメの話ですね。マヅメに食い気が立って回遊してくるアジは時合が30分程度で下手すると1~2尾釣れて終了です。でもナイトゲームであればそんなこともありません。
単純にアジの群れが小さいのだと思います。もっと大きな群れが回遊していれば時合は長いはずなんです。おそらくですけど、やっぱり群れの中で競争が生まれないとフィーバーする感じにはなかなかならない。
外房のアジのアベレージサイズ
――外房のアジのアベレージサイズを教えてください。
18~20cm弱が多いです。ただ、夏は小さく「ジンタ」と呼ばれる豆アジばかり。秋冬は大きいサイズも出て、春はアベレージサイズがよく釣れる。ちなみに外房で40cm以上のアジを釣ったことはありません。これまで釣った最大は36cmです。
でかい魚は基本的に沖の深場にいます。外房は遠浅なのでショアからはルアーがなかなか届かない。限定的ですが深場に近いエリアもあります。等深線の描かれた地図を見ればわかりますが、勝浦よりは鴨川のほうがねらって尺アジが出やすいエリアです。
遠浅な外房だからこそ多彩なリグを使い分ける
――外房は足もとからドン深な釣り場はほぼありません。西日本や日本海では結構な深いボトム付近をねらう釣りもしますが外房にはない。だから遠浅な外房ならではの工夫もあるんじゃないかなと思うんです。
やっぱり釣りの基本が違う。西日本のように足もとからドン深の釣り場が多いとジグ単を使ったフォールの釣りがメインだと思うんです。こっちは浅いからリトリーブの巻きの釣りが基本になってしまう。そこがまず大きな違い。ジグ単だけでは釣りこなせないポイントも多いです。
ダイワの「月下美人 鯵天R」というキャロ用シンカーが出ていますが、自分がプロデュースした製品で、コンセプトは遠くの表層を引けることです。ウエイトに浮力剤が入っていて、片方に寄せているから斜めになるんです。だから浮き上がりやすく、遠投しても遠くの表層を引ける。ただ千葉では使いやすいかもしれませんが、それこそ西日本の深場では逆に扱いにくい。そこでウエイトを180度変えると今度は潜りやすくなる。深いところでも使いやすいんです。
ジグ単、キャロ、フロート、ダウンショットの使い分け
――よく使うリグの種類とその使い分けを教えてください。
自分はジグ単、キャロ、フロート、ダウンショットの4つのリグを使い分けています。ジグ単は説明不要かもしれませんが、漁港の近距離で釣れるポイントで使用します。3gのジグヘッドでも30mぐらいしか飛ばないですからね。
キャロライナリグは遠投してリトリーブする釣りに使う
キャロライナリグはやっぱり遠投して「巻く釣り」です。リトリーブがメインになる釣り場はキャロの出番が多く、地磯やサーフでよく使います。ウエイトは6gか9.5gです。基本的にレンジをキープするようにリトリーブして使いますが、時おりシェイクを入れてアピールします。
フロートリグは表層をスローに探れるのが強み
フロートリグは表層や表層付近でワームを漂わせるなど、スローに探れるのが魅力です。地磯でも使いますが、外房では浅いサーフで出番が多い。特に横風が強い時に使います。横風はリグが滑って動いてしまいますが、フロートは抵抗が大きくてリグを止めやすい。ブレーキをかけられる。あと流れに乗せて送り込めるのもフロートの強みです。
キャロもフロートも組み合わせるジグヘッドは1gもしくは2gと重めです。多くの人はアンダー1gの軽量ジグヘッドを組み合わせます。0.5gと軽くすれば食わせやすくなるかもしれませんが、キャスト時に絡みやすくもなるんです。フロートが先行して飛んで、軽いジグヘッドが後ろからついてくる。その時にどうしてもジグヘッドがリーダーに巻き付いてしまう感じになる。そこでジグヘッドを重くすると、フロートと離れて飛びやすくなります。そもそもフロートやキャロを使うシチュエーションは、シビアな活性のアジをねらっていません。エサを求めて回遊している沖の高活性なアジをねらうんです。食わせることよりもトラブル回避を重視したほうがいいというのが僕の考えです。
もうひとつ工夫しているのがハリスです。キャロもフロートもハリスを2段階に太さを替えています。絡みを軽減し、根掛かり時のロストも最小限に抑えられるようにと考えていいます。そのラインの太さはアジの大きさによって替えますが、外房では次のようなラインシステムが標準です。
・メインライン:PE0.4号
・リーダー:フロロカーボン6ポンド
・ハリス:上部(キャロ側)5ポンド・40cm、下部3ポンド・40cm
ダウンショットは遠投が利く
ダウンショットの一番の利点は遠投ができること。どのリグよりも一番飛びます。加えてディープを素早く探れるのも利点です。特に船道ねらいで出番が多い。マヅメを絡めた時合を釣る時は、時合がくる前に沖の船道でアジがウロウロしていることが結構ある。そのアジもダウンショットを使って遠投で探れば拾いやすい。いわば時合を長くできます。マヅメの回遊が始まりアジが手前で釣れるようになれば、ジグ単にスイッチする。そういう使い方をすることが多いです。
ダウンショットシンカーは水深と飛距離によって変えるんですが、メインは10gか15gぐらい。シンカーからスイベルまでの幹イトはフロロカーボン2.25号で1m弱、枝スは5ポンドで長さは15~20cm。組み合わせるジグヘッドは0.5gです。
外房アジングでPEラインを選ぶ理由
――渡邉さんはメインラインにエステルやフロロカーボンをほとんど使わないそうですね。
PEライン一択です。外房は遠投しないと釣れない場所が多い。だからジグ単でも1.5g以上を多用しますが、エステルなどのモノフィラ系ラインで操作をするとモワッと伸びる感覚がある。それが自分は好きじゃない。
PEラインであれば沖のポイントでも操作感が上がるしアタリも分かりやすい。PEのメリットは感度と強度です。伸びが少ないレスポンス性能は海藻帯を釣るのに凄く相性がいいです。外房の春は海藻がいっぱい生えています。エステルとかフロロカーボンで釣っていると海藻に掛かった時にビヨンビヨン伸びちゃって切れにくく釣りにならない。PEであれば瞬間的な力でスッと切れます。
ラインの放出距離が長くなるほどレスポンスのよいPEラインが威力を発揮します。また外房は浅くて流れもほとんどありませんから、PEのメリットが活かしやすいフィールドといえます。これが深くて流れも速い釣り場だとPEの浮力が邪魔になることもあります。
PE0.15号の強度と使いどころ
ジグ単であればPEの0.15号を使います。この細さでも強度は2.8ポンドぐらいあります。モノフィラ系の2倍以上あるんです。根掛かりの回避率も高いし、単純に大型のアジや他魚が釣れても余裕がある。
ただし、使いやすい重さはジグ単でいえば1.5g以上です。1g以下のジグヘッドだとPEの浮力が邪魔をして操作感が悪くなる。ただそれも上手く利用すればメリットにもなります。手前はラインが浮いて沖でジグヘッドが沈んでくれるメリットです。藻場の先をねらう時なんかは有利です。
もともとアジングはナイロンから始めて、フロロカーボンもエステルも使ったけど、外房はやっぱりPEが合うように思います。その感覚に慣れてしまうとなかなか戻れない。ちなみにジグ単のリーダーはフロロカーボン3ポンドが標準でトリプル8の字で結んでいます。
外房アジングにおすすめのワームとカラー
――おすすめのワームと揃えておけばよいカラーを3つ教えてください。
基本はアジングビームです。カラーを3つ揃えるとすればクリア系のケイムラ、ちょっと弱いグロー、キャロやフロートに組み合わせるなら強めのグローがあってもいいかもしれません。浮遊感を出したい時にはブレーキングビームを使います。
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主力ワームは「月下美人 アジングビーム」(下)と「月下美人ブレーキンビーム」。ジグヘッドは「月下美人アジングジグヘッドTG」1~2gを主に使う
30年向き合ってみえたアジングの魅力
――最後にアジングの魅力と渡邉さんの目標を教えてください。
30年近くアジングをやっていますが、一言でいえば「高いゲーム性」ですかね。食べて美味しい、引きが強い、いつでも釣れるなど、魅力はいっぱいあるんですけど、やっぱりゲーム性の高さが一番じゃないかと思います。考えて釣らないといけないし、再現性を見出してパターンにハメた時はすごく気持ちがいい。周りの人とも差がつくし、ダメな時は全く釣れない。
外房で40cmオーバーを釣りたい夢はありますが、ストイックに大型のみを追い続けるのは面白くありません。目標といえば釣り場を復活させたいですね。コロナ禍以降は港の立ち入り禁止場所が増えてポイントがかなり減ったんです。どこの港でも気軽にサオをだせるような外房になるように働きかけができたらと思っています。
※このページは『つり人 2026年5月号』に掲載した記事を再編集したものです。




