長引くコロナの影響もあり、いっそう注目されている「家食(いえしょく)」の充実。小社から発売中の『一生幸せになれる料理147 お魚イラストレシピ大百科』が好評だ。釣りファンはもちろん、一般のお客さんに日々接している書店員さんからも「これは楽しいです」と多くの引き合いをいただいている。手に取れば〝幸せになる〟その特徴をご紹介したい。
イラストで楽しめる魚料理の本。
こちらの記事は月刊『つり人』2022年6月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
長引くコロナの影響もあり、いっそう注目されている「家食(いえしょく)」の充実。小社から発売中の『一生幸せになれる料理147 お魚イラストレシピ大百科』が好評だ。釣りファンはもちろん、一般のお客さんに日々接している書店員さんからも「これは楽しいです」と多くの引き合いをいただいている。手に取れば〝幸せになる〟その特徴をご紹介したい。
目次
著者の熱意と分かりやすさ
魚をまるごと1尾の姿からさばいて料理する。本書は著者の大垣友紀惠さんが、自身がこれまでに釣って、さばいて、料理してきた13種超の魚について、美味しく食べるための準備、食材としての各魚の特徴、時短などの工夫も盛り込んだ調理法、さらには便利な保存法や普通なら捨ててしまうことも多い部位まで無駄なく食べきるアイデアも入れてまとめた一冊(厚さ25㎜!)
どのパートも、楽しく踊るような手書き文字、色鮮やかで魚の個性もとらえたイラスト、食欲をそそる美しい写真が一体になって目に入ってくるので、一度のぞくとページをめくる手が止まらない。
ご本人の言葉を借りれば、「たのしい」「うれしい」「おいしい」が詰まった、新しい世界への入り口になっている。
初版が今年の1月に発売されると、全国の書店やネット書店でまたたく間に完売。
こだわりの製本プロセスを経て作っていることもあり、3月になってようやく増刷分をお届けできるようになった。
東京池袋の大型書店・ジュンク堂書店池袋本店で実用書コーナーのチーフをしている山本寿子さんも「(数々の料理レシピ本と比べても)1つ1つのページに著者さんの情熱があふれ出ていて、売り場の仲間とも〝これはすごいね〟とすぐに話題になりました。
初版は店舗入口の特設コーナーに置くと好評で、増刷入荷分も実用書のメインコーナーに配置しています。何より見ていて楽しいですし、多くのお客さんに知ってほしいですね」と太鼓判を押す。
新しい釣りにも積極的にチャレンジしている著者の大垣さん
大垣さんは国内外で数々の受賞歴を持つデザイナー、イラストレーター、アートディレクターで、モットーは「人々が笑顔になれるデザイン」をすること。
釣り好きのお父さんと、料理上手なお母さんの下で育ち、小さい頃から生きものが大好きになり、現在は忙しい仕事と同じくらい、魚を釣って食べることに情熱を注いでいる。
小学生だった12歳の時に、ANA 機体デザインコンテストで最優秀賞を受賞し、そこから生まれた「マリンジャンボ」がデザイナーとしての原点の1つになったが、実はこの本が世の中に送り出されるのに際しても、その時の縁が大きく働いた。
そのストーリーについては後半でご紹介したいが、まずは手に取って見ているだけでも幸せな気分になれること請け合いだ。
ビギナーからベテランまで、すべての人に楽しんでいただける内容だが、これから魚料理を始めてみたいという人にとっては、キッチンバサミを多用し、魚をさばくことのハードル自体を下げてくれている点なども、とても参考になるはず。
もちろん、本書がそうした内容を積極的に紹介しているのも、大垣さん自身の「自分も便利だし、より多くの人を笑顔にできるはず」という実感があるからだ。
また、冒頭でも触れたとおり、この本では通常の魚料理本ではほとんど扱われず、捨てられてしまうことも多いような魚の部位(頭や骨など)についても、無駄なく食べる方法や美味しさを数多く紹介している。
これも小さな頃から生きものが大好きで、釣りあげた魚に対しても感謝の気持ちを抱き、一部分も無駄にしたくないという、大垣さんの日頃からの思いが反映されている。
何より実際に「美味しい!」ので、経験のある釣りファンにとっても実践的で役立つのはもちろん、お子さんと楽しむ食育などにもぴったりだ。
印刷&製本の現場へ
この本を最後の形に仕上げているのは、どちらも北海道札幌市に拠点を置く、株式会社アイワードと石田製本株式会社。
本書は384ページという大ボリュームながら、同サイズの本としては非常に珍しい「左右に180度開く特別仕様」になっている。
キッチンで開いてもそのまま横に置いて読めるので非常に実用的!
つまりどこのページも開いても、手を離した状態でそのまま見られるのだ。これには著者である大垣友紀惠さんのこだわりと、それを実現させられる縁があった。
『1995 年版マリンジャンボカレンダー』企画・製作= 柴田三雄事務所 撮影= 柴田三雄 『FLYING CANVAS 全日空マリンジャンボ』発行= 柴田三雄事務所 著者= 柴田三雄(1993 年発行)
完成したマリンジャンボの前に立つ当時の大垣さん(写真集より)
大垣さんは12歳の頃から、デザイン、文章、そして音楽の3つの分野で日本一を受賞したという経歴の持ち主。
その一つが前頁でも紹介した「マリンジャンボ」でのANA機体デザインコンテスト最優秀賞であり、斬新さと夢のあるアイデアは、大人も含む多くの人たちにワクワクと驚きを届けた。
そして今回の『一生幸せになれる料理147お魚イラストレシピ大百科』を送り出すにあたっては、まず描いた魚たちが、生命感に満ちた複雑な色合いそのままに、忠実な形で読者の手もとに届いてほしい。
さらに、実際の料理の時には、ストレスなく役に立ってほしい。一部の薄いノートなどでは見られるような、開いた状態のままになってくれる出来上がりを希望していた。
今回、実はとても難しいこのリクエストに応えてくれたのが、冒頭の2社だった。
共同作業で実現するこだわりの仕上がり
まずは印刷を行なってくれたアイワード。前頁に掲載した一部の内容をご覧いただいても分かるとおり、本書のイラストや写真はどれも瑞々しさにあふれている。
アイワードの工場内にはドイツ製の巨大印刷機がずらりと並び、印刷時は元の色味を再現するために現場のオペレーターさんが微妙な調整を実施。その工程はとても細かい。
編集部が工場を訪れてそのようすを見学した際、代表取締役で営業本部長の奥山敏康さんは大切そうにあるものを見せてくれた。それが「マリンジャンボ」就航を記念したカレンダーと写真集だった。実はこの縁があったことで、同社と大垣さんとの交流が生まれ、見ているだけでも楽しくなる、生き生きとした色味の本が刷り上がった。
印刷を終えた段階では、1 枚の紙の表裏に32 ページ分(片面16 ページ)が印刷されている。製本作業ではそれを半分に裁断し、両面16 ページ単位にする(写真の状態)。さらに3 回折ったものを綴じて裁断すると本のページの順番になる
糸で綴じられた本は、この後に接着剤でしっかり固定される。石田製本の技術によって、180 度開きやすく、しかも耐久性の高い本が完成
そして特殊な製本を担ったのが石田製本。代表取締役の石田雅巳さんは、本書のキモともいえるパタリと開いたままで置ける製本についても、特に隠すこともなく解説してくれる。
というのも、やはりちょっと見たところで真似ができるような技術ではないからだ。
この本は背の部分を糸で綴じ、さらに接着剤で固定するのだが、糸が通る穴が大きいと接着剤が染みやすくなる。
そうなると背の部分で紙同士がくっつき、180度開くのは難しくなる。
とはいえ、接着剤がしっかり付いていないと本の耐久性に影響する。そのあたりの加減はまさに職人技で、やはり今回のリクエストに全力で応えていただいた。
釣りが楽しくなる魚料理のレシピ本としてはもちろん、そんな「本」としての実力も兼ね備えているのが本書。
すでに釣魚料理を楽しんでいる人はもちろん、これから魚を自分でさばいたり、料理してみたいという人にもぴったりの内容なので、ぜひ一度手に取って、その仕上がりに触れてみていただきたい。