近年注目を集めるエラストマー素材をタイラバのネクタイに落とし込んだ「Salvation」。東大阪の押出成形技術が実現した極薄設計は、ただ新しいだけではない。わずかな水流で生まれる微波動がシビアな状況を打破し、素材特有の「浮力」がフックと同調してミスバイトを防ぐ。タイラバアングラーの新たな選択肢となり得るこのネクタイの実力に迫る。

写真と文◎月刊つり人編集部
1946年創刊の雑誌「月刊つり人」を始め、数々の釣りに関するコンテンツを作成してきたつり人社の編集部。
目次
エラストマー製ネクタイ「Salvation」誕生の背景
ルアーフィッシングに使われるソフトベイトは軟質塩化ビニール製のものが一般的だが、近年ではアジングやバスフィッシングでエラストマー素材のものが登場し、適材適所で使われるようになってきた。
そして、タイラバにおいてもエラストマー製ネクタイが登場。「Salvation(救い・救済)」と名付けられたそのネクタイをリリースしたのは「ONE'S ON(ワンズオン)」。東大阪の下町で、樹脂パーツなどを製造する株式会社東具PLASの西浦崇さんの遊び心と情熱が仲間を繋いで走り出したブランドだ。
なぜエラストマーなのか。その可能性を探るため、西浦さんを訪ねた。
押出成形による薄さがもたらす「なまめかしい動き」
釣り好きの西浦さんは、仕事柄さまざまな樹脂素材を研究するなかでエラストマー素材と出会い、自社技術によってソフトルアーを作れないかと考えた。同社が得意とする押出成形は、ただでさえ軟らかいエラストマーを薄く・長く成形可能。なまめかしい動きで誘うタイラバのネクタイはうってつけだった。
「押出成形ではベイトに似せたワームのような造形は苦手ですが、薄く成形できるので素材の軟らかさ、アクションのテラテラ感で勝負しようと思いました」と西浦さん。
その製品開発に興味を持ったのが三重県・伊勢志摩で釣具店「mizube」を営み、タイラバをはじめとするオフショアゲームに精通するマルチアングラーの竹藤大輔さん。竹藤さんがブランドプロデューサーとして加わったことで、タイラバ用ネクタイ開発プロジェクトが加速した。
シビアな状況に強い
クラウドファンディングを経て完成した「Salvation」はタイプS、タイプF、タイプCと3種類がある。メインとなるのがタイプSで、幅広かつ両端に水を受けやすいギザギザを設けたもの。薄く細長いタイプFとひも状のタイプCは、好みの長さでカットしてメインのネクタイ(タイプS)にプラスして使うサポート役だ。釣り場の状況に合わせてアングラーが自由にボリュームとアピール力を変えられるという、長い造形が得意な押出成形の特徴が実釣上のメリットにマッチしたラインナップとなっている。
「Salvation」シリーズの特徴はなんといっても動きのなまめかしさだ。ストレートタイプのネクタイでありながらわずかな水流に反応して誘ってくれるのが強みである。
「タイプSの厚さは0.5~0.7mm、タイプFに至っては0.2~0.3mmという薄さです。薄すぎると絡みますし厚すぎると動きが悪くなるので、ちょうどいいところを探していろいろ試しました。潮が止まったりして食い渋ったときとか、とにかくフィネスな釣りが求められるときには猛烈に強いです。カーリータイプのネクタイが効かないときのローテーションとしてぜひボックスに入れておいてほしいと思います」と西浦さんは自信をのぞかせる。
浮力と微細な波動を生かせるエラストマー製ネクタイのメリット
実際に使い込んでいる人の評価はどうだろうか。「ONE'S ON」ブランドプロデューサーの竹藤大輔さんは当然ながらこのネクタイで最も釣果を上げているひとりだ。ホームの志摩エリアで、連日のようにマイボートで釣行している竹藤さんはこう話す。
「今のタイラバシーンはシリコン製カーリーが一強で、強波動のビッグネクタイも流行ってきています。私のホームの志摩エリアでもこういったカーリー系のネクタイが好まれますが、クリアアップしたときなどはやはりSalvationが効きます。全国各地のアングラーに協力していただいて、Salvationのモニターをしてもらっていますが、とくに重点的に使い込んでもらった東京湾も含め、同様の反響をもらっています。
マイボートもそうですが、遊漁船ってタイがいるであろうポイントを決め打ちで回っていきますよね。そのタイを確実に食わせていきたいとなったときに、潮が緩んでいるときでもほんの少しの水流で動く、薄いエラストマーにしか出せない波動はやはり有利だと感じています。弱い小魚の尾ビレのような波動が出ているイメージです。だから東京湾や大阪湾など船が多くプレッシャーの高いエリアでも効きます。
ちなみに志摩エリアのタイは、近海の浅場に居ついている個体と、ディープからベイトを食いに上がってきている個体の2種類が釣れます。タイは大きくなると味が落ちると言いますが、イワシなどをメインベイトにしているディープの個体は大きいほど脂が乗って美味しく、アタリ個体として喜ばれます。でも、どちらも同じようにSalvationで釣れていますから、基本的にはベイトの種類を問いません。そのなかでとくに強い状況を挙げるなら小イカがメインベイトのときです。薄いタイプCを長く出したセッティングがめちゃくちゃ効きました」
浮力が活きるセッティング
エラストマーの浮力が活きるセッティングもあるという。
「タイラバを巻くとネクタイとフックが潮になびいてついてくるわけですが、フックはネクタイより重いので、ネクタイから離れて垂れ下がる形になり、これがミスバイトや浅掛かりによる身切れの原因になります。そこで、タイプFやタイプCをフックにセットすればエラストマーの浮力でネクタイに沿ってなびいてくれて、アゴの理想的な位置に掛かりやすくなります」
アングラーの釣行になにかひとつプラスできるような「ワンプラス」の価値を大事に展開しているという「ONE'S ON」ブランド。次回の釣行にエラストマー製のネクタイを忍ばせてみては。
※このページは『つり人 2026年4月号』に掲載した記事を再編集したものです。



