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つり人編集部2026年4月30日

山から7km、海沿いの釣り場になぜクマが?森と海を繋ぐ「獣道」の正体

2026年4月29日(水・祝)、秋田県秋田市の人気海釣りスポット「秋田県北防波堤海釣り施設」周辺で、再びクマの目撃情報が寄せられた。同施設では昨秋2025年11月8日にもクマが出没しており、「海釣り施設にクマ?」と驚きをもって受け止められた一件は記憶に新しい。折しも同施設は、昨秋の経験を踏まえたクマ対策を一段と強化し、安全確保を徹底した運営体制で2026年シーズンのプレオープンを迎えたばかり。

なぜ、工業地帯と海に囲まれたこの場所にクマが現れるのか――。書籍『山のクマ・街に来たクマ 大出没の理由(ワケ)』では、昨秋の出没事例を運営組織の(一社)秋田港有効利活用協会・副会長 佐々木清治氏へ取材を行っている。その移動ルートやクマ出没後の影響を追った、当時の取材内容を紹介する。同施設が講じている具体的な安全対策にも触れているので、ぜひ最後まで読んでみてほしい。

著者:つり人オンライン編集部

写真と文◎月刊つり人編集部
アイキャッチ画像提供◎(一社)秋田港有効利活用協会

1946年創刊の雑誌「月刊つり人」を筆頭に数々の釣りに関するコンテンツを作成してきた「株式会社つり人社」のWeb編集部。渓流釣りなどと密接なクマ関連の書籍も多数刊行している。

2025年に秋田県北防波堤海釣り施設に出没したクマ

秋田県北防波堤海釣り施設は、2020年8月にオープンした秋田市飯島(秋田港)に位置する海釣り施設。長さ810mの北防波堤を有効利活用した釣り場は、クロダイ、マダイ、ヒラメ、アジ、キスなど多彩な魚種と魚影の多さを誇る。秋田市中心部からクルマで近く、足場が非常によく安全対策も充分に施され、ベテランからファミリーまで気軽に楽しめる新しいアウトドアレジャーの場として大人気を得ている。

その施設敷地内にまさかのクマ出没である。後述するが地理的に地元の人ほど「あり得ない」と思われたのではないだろうか。同施設の運営組織(一社)秋田港有効利活用協会副会長の佐々木清治さんに、2025年11月8日当時のようすを詳しく振り返っていただき、まとめさせていただいた。

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海釣り施設の釣り場となる北防波堤

駐車場に犬のような生き物が

まず、(一社)秋田港有効利活用協会HPから当日の様子を引用させていただく。クマ出没の知らせと翌日の施設閉鎖を告げるものだ。

「本日、北防波堤入り口に子熊が出没しました。近くに親熊もいる可能性もあり大変危険な状況の為、11月9日(日)は残念ながら閉鎖とさせていただきます。釣りを楽しみにしている方もいらっしゃるかとは思いますが、安全第一を考えての閉鎖となりますのでご理解のほどよろしくお願いいたします。」『秋田港釣り(北)防波堤 11月8日・開放情報』

また秋田県庁HP「クマダス」(県内のクマ等の目撃・被害情報を地図上で確認できるシステム)にも同日、次の目撃情報が寄せられていた。

「目撃日時2025年11月8日9時40分。西側防波堤にいる大きさ0.8mのクマを目撃。その後、北側へ立ち去り。建物まで5m」

当日、クマは管理棟と駐車場がある敷地の岸壁側付近に現われた。現場に居合わせた監視員と担当役員は最初は犬かと思ったという。そのうちに「クマ?クマ!?」と誰かが言い出し「わ、クマだ!」となった。黒い動物がクマと認識された瞬間である。監視員と担当役員はとっさにハンドマイクで駐車場内の人たちにクマの存在を知らせ、「車に入ってください!」と呼びかけた。さらに大声でクマを追い払おうとすると、クマは驚いたのか岸壁側のヤブ伝いに内陸側へ逃走した。クマはサイズ的に子グマと思われ、近くに親グマが潜んでいる可能性もあり、現場の緊張感はさらに高まったことは想像に難くない。監視員らは地震情報取得用に管理棟に常備しているラジオを付けるとマイクを利用して大きな音で流し、駐車場への再接近を防ごうとした。

(公財)日本釣振興会・水際線有効活用委員会で東京出張中だった佐々木清治さんは、帰りの新幹線車内で「クマ出没」の一報を受けた。防波堤で釣りを楽しんでいるお客さんたちに今戻ってもらうのはかえって危険だ。そこでクマがまた現われ、万が一防波堤に向かっても簡単に入れないように防波堤入口のゲートを閉じ、カギはかけずに鎖を何重にも巻きつけるようにと現地スタッフに指示した。

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写真中央付近が施設の駐車場、右手前が北防波堤入口の鉄柵ゲート

クマ出没は想定外の事態

「想定外中の想定外。(クマ出没は)想像したことすらなかった」と佐々木さんは語る。とはいえ日ごろからクマのニュースに接する機会の多い秋田県だけに、この緊急事態に対して完璧な対応だったのではないかと思うが、あいにく新幹線は福島の山間部を走行中で通話状態はかなり不安定だった。「何度も電話を入れて、向こう(現場)からも“今こういう状況です”と返事がかかってくるわけです。ところがトンネルで切れてはつながっての繰り返しで。もういらいらして、万が一怪我人が出たらと思うと気が気じゃなかった」。幸い現地の対応が奏功してクマは戻ってこなかった。またその後も施設へのクマ出没は確認されていない。

秋田北防波堤海釣り施設の期間中開放日は土日祝日である。翌9日(日)は閉鎖を決定し、再開後も安全対策を講じながら対応していくこととなった。

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北防波堤の付け根付近に位置する管理棟と駐車場。クマは左手のブッシュ付近から現われたものと思われる

なぜ海沿いの工業地帯に?クマはどこから来たのか

冒頭で『地理的に地元の人ほど「あり得ない」と思われたのではないだろうか。』と記した一文を裏付けるように、佐々木さんにとっても施設へのクマ出没は「想定外中の想定外」だった。というのも、秋田県北防波堤海釣り施設の周辺一帯は、秋田港を中心に風力発電所や精錬所、石油コンビナート、化学・電子・パルプ工場などが立ち並ぶ秋田湾臨海工業地帯である。また秋田マリーナやこまちスタジアム等のレジャー・スポーツ施設も充実している。工業地帯付近には松林が南北に延びるが、これは砂防目的で植林されたもので本来クマなどの大型哺乳類が生息する林ではない。

さらに視野を拡大してみると、秋田湾臨海工業地帯は海沿いを南北に走る国道7号線を境界に主に西側(海側)に展開している。国道7号線は秋田市内の主要道路で交通量も多い。では国道東側(内陸側)はどうかというと、道路沿いは商業施設が並び、次いで住宅街となる。また国道と並行するようにJR奥羽本線が走る。住宅街が切れるあたりからは「米どころ秋田」の田んぼ風景が広がり、秋田自動車道付近までくるとようやくクマ本来の生息圏にふさわしい低山の緑の風景となる。

この間を距離で表わすと、秋田北防波堤海釣り施設から国道7号線までは直線で真東に約2.7km、秋田道まではそこからさらに約4.2kmもある。そんなところにクマが出たのだから驚くしかない。

ただクマダスによれば11月8日以前にも周辺でポツポツと目撃情報がある。恐らく1、2頭のクマがあちこち動き回っては人の目に触れていたのだろう。

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北防波堤と秋田港そして秋田湾臨海工業地帯を遠望する

川沿いのルートを通って海まで?

それにしても一体どこから?クマが里や街に出る移動経路の一つに河川沿いが挙げられる。たしかに秋田港には旧雄物川(秋田運河)が注ぐが、河口部の工業地帯はブッシュもなくクマの姿は丸見えだろう。ところがインターネットの地図で航空写真をチェックすると、秋田港にはもう1本あまり大きくない川が流れ込んでいる。その川、新城川の上流部はイワナが棲む渓流でれっきとしたクマの生息域だ。改めて、新城川全域を見てみると山から里、平野部から河口に至るまで両岸には動物の移動に格好と思われるブッシュや河畔林が点在していることが確認できた。クマはこのルートを伝ってきたのではないか。ただ、そうだとしても一体何のために?という疑問が残った。

クマ出没後の影響

秋田北防波堤海釣り施設へのクマ出没は地元でもニュースにならなかったようだ。もっとインパクトのある目撃情報が連日のようにあり、目立たなかったのだろう。それでもSNS等では情報がそれなりに拡散したようで、佐々木さん曰く「その後はやっぱり来場者がぐんと減りました。特に家族連れの方は極端に減って収益にも響きました」。

経済でいえば、話が少しそれるが秋田市内の川反(かわばた)という歴史ある飲食店街もクマの影響をモロに受けた。特に2025年11月19日朝、防犯カメラに成獣のクマが道路を歩く映像がニュースで流れ、忘年会シーズンを前に飲食店ではキャンセルが相次いだ。コロナ禍を何とか耐えしのいだ矢先のクマ騒動でお手上げ状態になったところもあったらしい。

クマ対策を強化して迎えた2026年シーズン

今シーズンの秋田北防波堤海釣り施設では、従来は来場者に券売機の前に並んで券を購入してもらっていたのを、クルマの中で待機してもらい、係員が車を回って受付をする方法に変更。管理棟で大音量のラジオを鳴らし、クマスプレーも常備するなど、安全確保を徹底してプレオープンに臨んだ。

しかし冒頭で触れたとおり、当日、施設内でクマが目撃された。現場は折しも津波訓練の直後で、利用者をすみやかに退避させることができたという。釣り人が安心して楽しめるよう、一刻も早い事態の収束を願うばかりだ。

※このページは『山のクマ・街に来たクマ 大出没の理由』の内容を抜粋・再編集したものです。

環境レポート クマ

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列島をゆるがすコロナウイルス。けれども、日増しに暖かくなる春の日を、じっと家にこもって過ごすのはやっぱり体によくない。その点、手軽な海の釣りは、風も気持ちよく、大人も子どもも、思い切り深呼吸しながら時間を過ごせる。ウミタナゴ、メジナ、クロダイ、カレイ、アオリイカ、カサゴ……。元気な魚たちが泳ぐフィールドで、がんばろう、ニッポン! そのほか、3名手の渓流解禁レポート、里川で見つかる美味しい道草、みちのくタナゴ旅など旬の釣り満載でお届け。

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